ブルア廻戦   作:天翼project

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今回はアニメ25話までの範囲でお送りします


season2
懐玉


その夏は忙しかった。

 

昨年頻発した災害の影響もあったのだろう、ウジのように特異体が沸いた。

 

鎮める、取り込む、その繰り返し…鎮めて、取り込んで…皆は知らない特異体の味。

吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしているような…鎮めて、取り込む。

 

私が見たのは何も珍しくは無い、周知の醜悪。

知った上で、それでも信じようと思ってきた筈だった。

あの日から…自分に言い聞かせている。

 

あの日から…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もともとは焼き肉チェーン店を展開する運営会社の社長一家が住んでいたそうです。しかし昨年の7月例のBSE問題で焼き肉店が壊滅的な打撃を受けたことから多額の借金を苦にして一家心中…以来社長宅は心霊スポットとしてうわさとなり地元の学生が肝試しとして訪れ相次いで行方不明になっているとか」

 

 

監督オペレーターの運転する車に乗せられて、2人の生徒が任務の説明を受けていた。

 

「心霊スポットの類いはとかくうわさが広まるのが早いですからね。特に最近はネットによって信じられない程の早さで広まっていきます。その結果、私達特異現象捜査部の出番が増加傾向にあるんですよ」

 

大人びた、虎のような耳を持つ女性は一緒に任務を受け負う生徒に特異現象捜査部の最近の情勢を嫌味っぽく話す。

 

 

────特異現象捜査部、高等部4年 春原シュン

 

 

「なんにせよ、被害は立ち寄った者だけに留まらず近隣住人にまで及んでいると聞きます。早く元を絶たないと被害が増え続けてしまいますよ」

 

シュンの話を聞きながらも、やることは変わらないと任務に前向きに挑む狐のような耳を持つ少女は監督オペレーターから渡された書類に熱心に目を通した。

 

 

────特異現象捜査部、高等部1年 桑上カホ

 

 

 

「間もなく到着します。準備を」

 

 

監督オペレーターの声に従い、シュンとカホは装備や持ち物のチェックを済ませ車の窓の外に見える…不気味な洋館を見やった。

 

 

 

 

 

洋館の前にシュンとカホを降ろして監督オペレーターは撤退し、残った2人は洋館の正門まで近付く。

 

「これ…結界は必要でしょうか?」

「今は大丈夫だと思いますよ?外に特異現象の気配は感じませんし、十中八九原因は内部に潜んでいます。外から叩く必要がある時に改めて降ろしましょうか」

「分かりました…では行きますよ」

 

ひとまず内部を探索するだけということで隠蔽用の結界を後回しにし、先行したカホが洋館の玄関の扉に手をかける。

ごくりと喉を鳴らしてドアノブを回し…つっかかりもなく回りきったことに若干拍子抜けした。

ならばと早速扉を開けて中に入ろうとするが、今度は何かが詰まって内開きの扉が開き切らない。

辛うじて空いた隙間からカホは身体をねじ込むと、建物の中は至る所にゴミ袋が散乱し、それが引っかかっていたらしい。

 

「汚い…建物自体長いこと手入れされてないのは仕方ないですが、家主がいた時からこんなゴミ屋敷に…?」

「こんなに広い建物なのに足の踏み場が少ないですし、掃除に無頓着だったのでしょう。もしくは外から清掃員を呼んでいたのかも知れません」

 

そこらから漂う悪臭に鼻を摘むカホだったが、シュンは気にせずどんどんと奥へ進み、カホも慌ててその後に着いていく。

進んでいると一際開けた空間に出て、ダメ元で壁にあったスイッチを押してみたところ意外にもまだ電気は生きていたのか、天井から吊り下がる大きなシャンデリアに明かりが灯った。

すると暗くてよく見えなかった室内の全貌も見えるようになり、予想以上にゴミ屋敷だったことにカホは苦笑いする。

 

「凄いですね…」

「取り敢えず建物内を一通り見てみましょう。私はこのフロアを確認しますので、カホさんは2階をお願いします」

「は、はい…え、1人でですか…?」

「何か問題でも?」

「いえ…大丈夫です…」

 

別行動を提案するとサクサクと進んでいってしまうシュンに惜しみながら別れたカホ。

言われた通り2階へ上がり、足元に注意して豪邸だけあってだだっ広い廊下を探索する。

 

多くの部屋があるようで、1つ開ける度に気合いを入れ直しながらカホは次々と部屋の扉を開け、異常がないことを確認すればまた次の部屋へ。

 

それを繰り返して数十分、遂に最後の辿り着き、恐る恐るゆっくりなどとは言わず、勢いよく扉を開けて中を覗き込み…異常がないことを確かめる。

 

 

「…ふぅ…ん?」

 

 

が、不意に聞こえてくる小さな物音。

足元から聞こえたそれにカホはそばにあった袋を退かし───そこから現れてどこかに駆けて行ったネズミに驚いて尻餅を着いた。

 

 

「くぅ〜〜〜っ…!」

 

 

「あらあら、大丈夫ですか?カホさん」

「うわっ!?シュンさん!驚かさないでください!」

 

音も立てずに後ろにいたシュンに、情けないところを見られたとカホは赤面する。

そんなカホに微笑ましいものを見るような目で手を引いて立ち上がるのを手伝ってあげたシュンだったが…

 

「はぁ…1階の探索は終わったんですか?」

「はい…?ここがその1階ですけど…」

「え?…だって…」

「私は1階の廊下を歩いてここに来ました。2階への階段は上がっていません」

「そんな筈は…私は突き当たりの部屋…を…」

 

先程自分確認した部屋の方を振り向いたカホだったが、その先には突き当たりなどない、延々と続く先の見えない廊下が広がっていた。

 

 

 

銃の先で足元に落ちているゴミをトン、トンと叩きながら2人は延々と続く廊下を歩いていた。

 

「お菓子の箱…スナックの袋…果物の空き缶…年季の入ったリュック…古びたトレーナー…もう3回は見ましたね」

「壁につけた印もです。どうやら私達は既に特異体のお腹の中のようですね」

「ええ〜…やっぱりそうなんですか…」

 

面倒なことになったと露骨に嫌そうな声を漏らし、カホは案の定圏外の端末を開いて時間と歩数計を確認する。

 

「…40分で4キロ程でしょうか。いつまで続くんでしょうね」

「生得領域ならば心象風景が具現化しますが、そのような様子がないのを見るに結界術の類いでしょう。被害者もここに取り込まれて特異体に殺されたのでしょうね。ですが、この特異体の秘儀を考えると本体は非力な筈です」

「となると…先程から歩数計を確認していたところ、シュンさんが付けた印の位置を通るのにかかった歩数は1度目が122歩数計、2度目が203歩、3度目が157歩、4度目が270歩とランダムでした。廊下のループする範囲が定まってないとすると、全速力で廊下を走れば循環構造に綻びが生じて抜けられるのではないでしょうか?」

「惜しいですね。やるならお互い反対方向に向かって、です。その方が結界の認識機能を狂わせやすい」

「なるほど…ではそうと決まれば!」

 

無限にループする廊下からの脱出の目処が立つと、早速カホは真っ直ぐに廊下の先へ向けて駆け出し、同時にシュンもカホとは反対方向へ向かって駆けた。

ただ普通に走るのではなく、可能な限り全速力を出さなければいけない為強引に速度を上げようとする度に肺を苦しくさせるカホだが…走っている途中、後方から轟音が聞こえ上手くいっていることを悟ると、目線の先に見えた光に飛び込んだ。

 

そして────

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

柄にもなく限界まで足を動かした事で随分と息切れしながらも、風通しの良い外の空気の匂い、暖かい陽の光を見上げると…

 

 

 

「助けに来ましたよ〜、カホせんぱーい」

 

 

短い桃色の髪と赤と青のオッドアイが特徴的な小柄の少女…今や有名な悪童が、悪戯っ子のような笑顔で瓦礫の上からカホを見下ろしていた。

 

 

────特異現象捜査部、中等部2年 小鳥遊ホシノ

 

 

「泣いてますか?」

「泣いてませんよ!?そして敬語を使いなさい敬語を!」

 

出会い頭に小馬鹿にするように煽るホシノに思わずカホも大声を上げてキレ散らかす。

そこに、カホと別れたシュンが瓦礫の上を優雅に歩いて現れた。

 

「私も泣いたら慰めてくれますか?ホシノちゃん」

「シュンさんは泣かないでしょう?強いんですから」

「ふふっ」

 

「ぐぬぬ…良いですかホシノ!私は助けなど要りま───」

 

 

その瞬間、カホの背後の瓦礫の下から頭部が頭蓋骨のような形状をした巨大な特異体が姿を現す。

本体は非力な筈…と聞いていたカホはその特異体を見て頬を引き攣らせるが…直後、それよりも巨大な芋虫のような特異体が地面から出現し、その特異体を丸呑みにしてしまった。

同時に、水色の髪の発育の良い少女がぴょんぴょんと瓦礫の上を飛び跳ねながらホシノに背中から抱き着いた。

 

 

「駄目だよ、ホシノちゃん。弱いものイジメなんかしちゃ」

 

 

────特異現象捜査部、中等部3年 梔子ユメ

 

 

「強い人をイジめるバカなんてどこにいるんですか」

「貴方の方が天然に煽ってますよ、ユメちゃん」

「揃いも揃って…貴女達は…!」

 

 

「桑上先輩、無事ですか?」

「はっ!?セナ!」

「心配しましたよ、2日も連絡がなかったんですから」

 

散々馬鹿にされ怒り心頭のカホだったが、そこにやってきた白髪に角のある少女を見ると、途端に笑顔になりハグに向かう。

 

「セナ!貴女はあの2人のようにならないでくださいね!」

「ふふっ、なりませんよ。あんな腐った死体みたいな方々には」

 

 

────特異現象捜査部、中等部2年 氷室セナ

 

 

「酷い言われようだなぁ〜」

「ユメ先輩気を付けてくださいね〜、カホ先輩が通ったところ崩れそうですから」

「うっさい!…あれ?」

 

セナとハグして癒されていたところに遠慮もなく飛んでくる腐った死体のような方々こと、ユメとホシノにキレていたカホは、セナが言っていた『2日も』という部分に引っかかる。

 

「あ、やっぱり特異体の結界で時間がズレてた感じですかね?珍しいけどたまにありますよね、シュンさんが付いていたのにおかしいと思ったんですよ」

「そのようですね…ということは、可愛い子供達が私に会えなくて心配しているかも知れません。直ぐに戻らなくては」

「相変わらず子供好きだね〜」

 

今回の事件を起こした特異体もユメの操る巨大な芋虫の特異体に囚われている為すっかりとお疲れムードとなり撤収を始めようとする一同だったが…ピタリと足を止めたシュンは、ホシノ達の方を振り返ると良い笑顔で聞いた。

 

「そういえば、結界はどうしましたか?」

 

「「「あ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『続いてのニュースです!昨日ミレニアム近郊で起こった爆発事故ですが…』

 

テレビの向こうで、意気揚々とクロノススクールが報道を行う。

それを見せつけるようにある程度流した後、話の為にテレビの電源を落とした車椅子に座る全体的に色素の薄い女性は、正座するホシノ、ユメ、セナの方へ振り返った。

 

「この中に結界は自分で降ろすと監督オペレーターを置き去りにした人がいますね?そして結界を忘れたと…名乗り出てください」

 

 

────特異現象捜査部、監督官 明星ヒマリ

 

 

 

「犯人探しはやめませんか!」

「ホシノですね」

 

元気に手を挙げてふざけた事を言い出すホシノだったが、その態度とユメとセナに揃って指を差され、ヒマリの特性車椅子に搭載されたアームがホシノの頭にゲンコツを落とした。

 

 

 

 

 

 

小一時間説教された後、たんこぶが出来た頭を気にしながらホシノは体育館でバスケットボールを抱えて蹲り、愚痴を零す。

 

「そもそも結界って必要なんですか?あの辺カイザーグループが買い占めた土地で社員の寮ぐらいしかありませんよね?肝試しに行く生徒も居なくなったみたいですし、連中が何か見てびっくり仰天しようが関係ないでしょ?」

「だーめ、大人の皆が頑張って働いてるのに心の平穏が保てなくなって業務に支障が出ちゃったらどうするの?」

「はぁ…大人なんかに気を遣うのは疲れますよ」

「そんなに大人を毛嫌いするものじゃないよ〜?大人が子供を守って、導く。子供はそれに応えて元気に成長する…それが社会のあるべき姿なんだよ?きっといい大人だっているんだって、そう信じてみようよ」

「…ユメ先輩は甘過ぎます。そんな夢物語…あるわけないじゃないですか」

「むう…」

 

認識の違いに言い合い、睨み合うホシノとユメ。

近くで医療書を読み漁っていたセナは、喧嘩になりそうだと本を持って巻き込まれないようそそくさと体育館から出ていった。

 

「…1回外出ようか、ホシノちゃん」

「寂しいんですか?1人で行けばいいじゃないですか」

 

ユメは大型の特異体の身体の一部を出現させ、ホシノは背負っていたショットガンに手をかけて────

 

 

 

「…ん?」

 

「いや〜、楽しいね〜!」

「ほんっとですね!」

 

体育館に入ってくるヒマリの気配を察知した2人は叱られないように打って変わって仲良くバスケを始める。

先程までは静かだった筈…とヒマリは首を傾げるが、キョロキョロと見回すとため息をついた。

 

「セナはいないのですか?」

「さぁ?」

「御手洗じゃないですか?」

「…まあいいです。この任務には貴女達2人に行ってもらいますよ」

「ひぃん…」

「うへ…」

「なんですかその顔は」

 

露骨に面倒臭そうな表情をする2人に呆れるヒマリだったが、なんとか体育館から連れ出して教室への移動中、任務についての話をする。

 

「荷が重いかもしれませんが、クズノハ様からのご指名です」

「「!」」

「依頼は2つ───

 

 

 

 

 

 

 

───巫女…クズノハ様の適合者である”勘解由小路ユカリ”の護衛と、その抹消です」

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に到着し、改めて任務の詳細を聞いたホシノとユメは、複雑な表情を浮かべた。

 

「護衛と抹消って…なんですかその矛盾した話」

「ホシノちゃん、ヒマリさんも難しい言葉を使い回したい年頃なんだよ。この前も全知がどうこう天才美少女がどうこう言ってたし」

「成程、今頃思春期を迎えたんですか」

「ぶっ飛ばしますよ貴女達」

 

「まあ冗談はさておいて…クズノハ様の秘儀の初期化って事ですか?」

「うん?何それ」

「いやなんでユメ先輩が知らないんですか…普通にS.C.H.A.L.Eの授業の範囲で習いません?」

 

1人話に着いてこれていないユメにホシノとヒマリはじとっとした目を向けるが、ポカンと頭にハテナを浮かべているのを見兼ね、ヒマリは教室のホワイトボードにプロジェクターで画像と資料を出して説明する。

 

「クズノハ様は不死の秘儀を持っていますが、不老ではありません。ただ老いる分には問題はありませんが、一定以上の老化を終えると秘儀が肉体を作り変えようとするんです。進化…人を超え、より高次元の存在へと」

「…じゃあ良いんじゃないの?進化って格好良くない?」

「クズノハ様曰くその段階の存在には意志というものがないらしいです。クズノハ様がクズノハ様ではなくなってしまう…特異現象捜査部の各支部の結界、連邦生徒会の本拠地であるサンクトゥムタワーの結界、監督オペレーターが扱う結界術、その全てがクズノハ様によって強度を底上げしています。あの方の力添えが無ければ、神秘を用いたセキュリティーや任務の消化さえままならないでしょう。最悪、クズノハ様がキヴォトスの敵にもなりえます。だから500年に1度巫女と…クズノハ様と適合する生徒と同化することによって肉体の情報を書き換えるんです」

 

「肉体が一新されれば秘儀の効果も振り出しに戻って進化は起こらないそうですよ」

「お〜、なるほど。ペロロ様になる分には良いけど、スカルマンになるのは困るってことですね」

「…もういいです」

 

せっかく長い尺をとって説明したというのによく分からない例えをする程度の理解しか出来ないユメに、ホシノとヒマリは匙を投げる。

咳払いをして気を取り直したヒマリは、ホワイトボードに映す画像を切り替えて話を本題へと移した。

 

「現在その巫女である生徒の所在が漏れてしまいました。今彼女を狙っている輩は大きくわけて2つ…クズノハ様の暴走によるキヴォトスの転覆を目論む指定アウトロー集団『ジャブジャブヘルメット団』、そしてクズノハ様を信仰し崇拝する宗教団体『盤星教』。クズノハ様と巫女の同化は2日後の満月、それまでに彼女を護衛し、クズノハ様の元まで送り届けてください。失敗すればその影響は一般の生徒にまで及びます、心してかかるように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

任務の説明が終わり、ホシノとユメは道中自販機で買った缶ジュースを飲みながら例の巫女との合流場所に向かっていた。

 

「それにしても、アウトロー集団の方はまだしも、どうして盤星教はその子の事始末したいんだろうね?」

「連中が崇拝しているのは純粋なクズノハ様。巫女…つまりは不純物が混ざるのが許せないんでしょう」

「ふーん?」

 

その後合流場所であるホテルに到着し、ユメが迎えに巫女が泊まっているという上の階へ、ホシノは警戒の為に外で待ち、細かな連絡の為に通話を繋げる。

 

「良いですかユメ先輩。盤星教は神秘や特異現象に知識があるだけの一般人が集まったもの、特段警戒する必要はありません。意識を向けるべきはヘルメット団の方で…」

『まあ大丈夫でしょ!私達は最強だもんね〜!だからクズノハ様も私達を指名したんでしょ?』

「はあ…まったく。そんな調子じゃ私は心配ですよ?」

『も〜、そんな硬いこと言って。もっと可愛い感じで行こうよ?語尾に”にゃん”ってつけてみたり一人称を”おじさん”にしてみたり。特定のマニアに受けるかもよ?』

「どこに需要あるんですか。それで喜ぶ人がいたら人間として駄目駄目ですよ」

『そうかな〜…あ、こっちは着いたからまた後でね…って、あれ?』

 

 

指定された部屋の前に到着し、インターホンを鳴らして通話を切ろうとするユメ。

が、その時扉の向こうでアラーム音が鳴り────

 

 

 

 

 

─────爆発が部屋と扉を吹き飛ばした。

 

 

 

外から指定された部屋の位置を確認していたホシノは、丁度そこの部屋が爆発したのを目撃して真顔になる。

幸い通話はまだ切れておらず、ユメとは直ぐに連絡が取れた。

 

 

「…生きてますか?」

『私はね〜』

「これで巫女が死んでたら私達のせいになりますかね…あ、落ちてきてます」

『あはは、今拾ってくるよ』

 

 

爆発を神秘で防御したユメは部屋の奥に進み、派手に空いた穴の前まで行くと、自由落下する少女を確認してそれを追って飛び降りる。

 

少し離れた場所で、下手人であるヘルメットを被ったアウトローは爆発で吹き飛ばされ高層から落下する少女を見下ろしていた。

この高さから落ちれば助かるまいとその場を後にしようとしたが…風切り音が響き、慌てて再度下を見下ろすと空飛ぶエイのような特異体にのったユメが落ちた少女をキャッチしていた。

 

「なっ!?」

「もう、目立つことするのは勘弁して欲しいな〜。今朝怒られたばかりなのに」

 

 

(…この子が巫女か)

 

 

ユメがキャッチした…青い羽織りと紫がかった身長より長い髪が特徴的な少女、勘解由小路ユカリ。

ユメは彼女の身体や脈に異常が無いことを確認すると、今度は上階から見下ろすアウトローに目を向ける。

 

「お前…特異現象捜査部の生徒だな?そいつを渡せ、殺すぞ」

「う〜ん、聞こえないからもっと近くで喋ってくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

「危ない危ない、いきなり任務失敗は笑えませんから…そう思いません?」

 

上を見上げユカリをユメが保護したのを確認したホシノは、背後から投げつけられた幾つもの爆弾…それらを腕の一振りによる風圧で吹き飛ばし、飛んで行った方向で爆発する。

 

跳ね返された爆弾を避けた下手人…ヘルメットを被った赤毛の目立つアウトローはホシノの前に出てくると、随分と自信満々に笑う。

 

 

「ふふん、あんた小鳥遊ホシノでしょ?こっちの界隈でも凄く有名よ。噂が本当か確かめてやるわ」

 

 

────指定アウトロー集団『ジャブジャブヘルメット団』隊長 河駒風ラブ

 

 

 

 

「そうですね…ならルールを決めるなんてどうですか?」

「あ?ルール?」

「ええ…やり過ぎて怒られたくないので、泣いて謝れば殺さないであげます。これがルールですよ」

「チッ…クソガキが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巫女が宿泊する部屋の爆破、ジャブジャブヘルメット団の襲撃、ユメとホシノによる迎撃…そんな一連の流れを離れたビルから眺めていた者が2人。

片方が欠けた2本の角を持つ女性と、狐の面と狐耳が特徴的な和装の女性。

角の女性は、掴みどころのないニヤニヤとした笑みで狐面の女性を横目に見る。

 

 

 

「おっぱじめてますね〜。盤星教には特異現象捜査部と戦えるような力はありませんが、金払いは良いですよ。どうです()()さん、巫女の暗殺に1枚噛んでみませんか?」

 

 

「もう狐坂じゃありません。嫁に入ったので、今は夫の性で()()ですが…良いですよ、そのお話受けて差し上げましょう」

 

 

 

邪悪な大人達は、驕る子供に魔の手を伸ばす。




配役
天内…ユカリ
パパ黒…ワカモ(大人)
バイエル…ラブ
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