誤字報告をしてくださっている方、いつもありがとう御座います。
誤字を見つけたらどうぞ遠慮なく報告してくださると助かります。
ミレニアム、セミナー本部駅を中心に半径400mに渡って降ろされた巨大な結界。
異変を察知した特異現象捜査部が現場に急行し結界周辺で待機する中、連邦生徒会からの指示によって結界内に踏み込んだホシノは状況の悪さに鼻を鳴らした。
「フンッ…こりゃ酷いね。結界の中心は地下の方かな?一般人を閉じ込める結界…なるほど、狙いは分かったよ。それじゃ…特別に乗ってあげるよ」
「ホシノ先輩1人にやらせるんですか!?」
一方結界の外で待機していたアリスは、チームとして同行するシュンからホシノが先行したという話を聞いて気を立てていた。
「理屈は分かりますが、アリス達だってバックアップ等の手伝いは出来るはずです!」
「ちょっと持っててください」
「え?あ、はい…」
そんなアリスに突然布で巻かれた大きな銃を手渡したアリスよりも小さな少女は、近くにあった階段にハンカチを広げるとシュンがその上に腰掛けた。
「ありがとう」
「はい!じゃあ返してください」
「えぇ…」
───特異現象捜査部 中等部1年 春原ココナ
「ですから、今からそのバックアップに向かうんですよ」
「あ、そうなんですか…」
「シュン姉さんにバックアップをさせるなんて、小鳥遊ホシノさんとはなんて贅沢な人なんでしょう!」
「ホシノちゃんを普通の子と同じように考えてはいけませんよ、ココナちゃん」
「シュン姉さんだってあれみたいな普通のお姉さんとは違います!」
「うわーん!あれって呼ばれました!」
見た目の割にグサグサ言ってくるココナに若干ショックを受けながらも、シュンの引率の元結界へと踏み込もうとした3人だったが…その直前にシュンの端末が鳴り、その確認の為に足を止める。
「…アリスちゃん、行先変更ですよ」
「えっ?」
「セミナーDBセンター入口駅にも同様の結界が降りたそうです。私達はそこへ向かいますよ。着いてきてください」
「は、はい!」
急な行先変更だが、それでも任務に前向きなアリスは元気に返事をし、車を呼び戻すのも手間なので目的地へ足で走ることに。
そこそこ離れていたが、神秘を肉体で強化出来る生徒にとってはあっという間に走破出来る程度で、その上神秘の消費も負担にならない絶妙な距離。
セミナーDBセンターを中心に降りた巨大な結界の近くまで来た3人は、先に調査を進めていた監督オペレーターと合流した。
「状況は?」
「はい、地下鉄の駅全体を覆う一般人が通過出来ない結界が降りているようです。さらにその内側、地下5階のホームを中心として特異現象捜査部の生徒が入れない結界も降りていて、この2つの結界の間にこれら結界を降ろしている特異体かアウトローがいると思われます」
「間?中ではなくてですか?」
「恐らくですが自らも外に出るデメリットを抱える事で結界の強度を高めているのかと。調査に当たっていた監督オペレーターが既に2人やられています」
想像以上に厄介な事態になっていそうだとアリス達は眉間に皺を寄せる。
話を続けようとした監督オペレーターだったが、その先の話題を思い出したからか途端に口ごもる。
「それから…その、まだ断言は出来ないのですが…」
「構いませんよ。言ってみてください」
「それが───結界の中に、改造された生徒がいます」
「っ!」
監督オペレーターからの報告を聞いた後、1人で突っ走りそうになったアリスをシュンが宥め、地下に入る階段の前で1度立ち止まり何か内側を探るように作業を始める。
一刻も早く突入したいアリスはそんなシュンを急かすも、それをココナに咎められていた。
「何してるんですか!早く行かないと…!」
「しっ!シュン姉さんは今カラスと視覚を共有しているんです!集中力がいる作業なんですから静粛に…」
「大した事じゃありませんよ。ご自由に相談を」
「良いそうですよ」
「もう、シュン姉さんってば…大体アリスさんは…!」
「何を〜!」
「…はい、大体分かりました」
後ろでわちゃわちゃと言い合うアリスとココナを尻目に、結界内に侵入させたカラスの視界を通して駅の地下の構造を把握し…そして突如カラスが死亡したことで視界の共有が解除される。
「アリスちゃん、弱い改造された生徒をたくさん殺めるのと強いアウトロー1人を鎮めるの、どちらが良いですか?」
「!」
「まあアリスちゃんは後者でしょうね。こちらを見てください」
シュンが開いたこの駅の案内のガイドブックをアリスとココナが覗き込む。
シュンは先程カラスの視界で見た情報と照らし合わせながら地下の現状について解説する。
「改造された生徒が多く集まって一般人を襲っているのは地下4階。一般人のほとんどはおそらく地下5階にいるのでしょう。地下に逃げることしか出来ない子達を追いやったといったところですか。そして、私のカラスが狩られたのが地下1階と2階の間…ここに結界を降ろしている特異体かアウトローがいる可能性が高いかと」
「ということは…いるんですね?このすぐ下にあいつが」
アリスの質問にシュンはこくりと頷くと、マップを指差しながら補足した。
「顔は確認できていないので断言は出来ませんが、改造された生徒がいるということはそういうことでしょうね。正直他のチームと合流したいところですが、時間をかけていると地下4階の子達が全滅しかねません。私とココナは直通の7番出口から降りて一般人を救出します。アリスちゃんは暫く単独行動を任せますが…私達が降りた頃には結界が上がるのが望ましいですが無理をする必要はありません。身の危険を感じたら直ぐに地下4階まで降りてきてくださいね」
「大丈夫です、シュンさん。アリスは…もう負けませんから!」
一般人の救出はシュンとココナに任せ、アリスは元々のルートを通って生徒を改造し異形に変える悪辣なアウトローを仕留める為に地下へと降りる。
電気系統はまだ生きているのか天井の電灯が通路を明るく照らし…その先に鎮座する異形の姿を晒していた。
手にかけた生徒を食いちぎり咀嚼音を響かせるのは、蝗虫のような姿をした多腕の特異体。
『…アア、ナニミテンダ?』
(喋った…それだけの知能があるということは、それなりに強力な特異体でしょうか)
『オマ、オマオマエ…シャーレ、ノガキダロウ?』
明確に言語を理解し言葉として話せる特異体は相応の知恵と力を付けた危険な個体である場合が多い。
その上、S.C.H.A.L.Eのことを知っている…というより何者かに吹き込まれたのだろうが、力と共に人を翻弄する狡猾さを持った特異体は極めて厄介な部類だ。
いきなり面倒そうな相手と鉢合わせたとレールガンを構える手に力が入るアリスだったが…
『ナア、オレ八カシコインダ』
「…はい?」
自分から頭の悪そうな事を言い始める特異体にアリスも思わず面食らう。
どうやら本当に言語を理解し対話できる最低限の知恵を持っているだけで、それを騙し討ちや罠にかける為に使える程の悪知恵はまだ身についていないらしい。
だからといって弱い相手というわけではないが、それでもアリスは多少気持ちを落ち着かせてこの特異体を成長前に狩るという心持ちで挑むことにした。
「…あ、その前に…白い髪と赤と黒の格好のアウトローが来てる筈です。どこにいますか?」
『アウ…アウトロー?』
「神秘で悪さする人の事ですよ」
『ッ!ソレグライシッテイル!オレハカシコインダ!ムツキ八シタニイル!オレハココデケッカイヲマモッテイルンダ!』
「ムツキ…コハルもそう呼んでいましたか。まあ今は名前なんてどうでもいいですか」
(前にホシノ先輩からは結界術は神秘で行える基礎的な技能の1つで強くなくても使えるとは聞きましたが…この特異体が結界を?2枚も!?…どうにも引っかかります…うん?あれは…)
『ムツキノヒギハ、ヨクナイ。アレハ、タシカニワルイモノダ』
思考に耽るアリスに勝手に喋り続ける特異体。
そんな特異体の横…通路の脇に、小さな杭が打ち込んであるのをアリスは発見する。
あの杭から神秘が漏れ出ているのを察知すると、アリスは軽くストレッチをして戦闘態勢に入った。
(あれは結界を守っていると言っていました。となるとあれが怪しいですね。こういった巨大なバリアに動力源があるのはお約束です!)
『シッテイルカ?カタチガカエラレタヒト八アジガオチルンダ。オレハカシコイカラチガイガワカ…ブベラァ!?』
まだ喋り続けている特異体に急接近したアリスは特異体の顎下を蹴り上げ、浮いた特異体の横腹にレールガンの巨大な銃身を薙ぎ払って横向きに叩きつける。
壁にめり込んだ特異体の頭部にさらにレールガンの銃口を突きつけると、極大のエネルギーを至近距離から発射して通路の壁に深い穴を開空けた。
「あなた達は、いい加減にしてください」
底冷えするようなアリスの声に…壁に空いた穴の奥から特異体が這い出ながら笑い返した。
『ハッハッハ!オマエ、サテハカシコクナイナ?オレガナンノトクイタイカワカッテイナイダロウ。オレハカシコイカラシッテイル。コノヨハ、カシコクナイヤツカラシンデイクンダ!』
「いや、バッタの特異体ですよね?」
『…ハア!?ア、アアア!オマエ、カシコイナ!?』
「???」
突然動揺し始める特異体にアリスも疑問符を浮かべて戦意を削がれる。
現在アリスの中でこの特異体の危険度は知恵を付けた狡猾な特異体から、成長途中の厄介な特異体へ、そして最終的にはただの馬鹿な特異体へと格下げされた。
しかし忘れるなかれ、農作物だけでなく紙や着物、小屋など植物性のあらゆるものを食い荒らすバッタへの畏れの感情が
まさに災害と呼べるほどにその被害を広げるものへの激情が集って具現化したその内に内包する神秘の量は馬鹿に出来るものでは無い。
バッタの特異体は脚を曲げると、脚のバネを存分に活かした強烈な跳躍でアリスへと飛びかかった。
キャノン砲のような速度と勢いで迫る巨躯をアリスはレールガンを盾にして横に弾き、粉々にしてしまう勢いで壁に衝突した特異体はがむしゃらに多腕を振り回してアリスを叩き潰そうとする。
しかし、アリス自身の小柄さと大きなレールガンを軽々扱う身体能力からなる俊敏さでそれらを全て躱し、時にはレールガンを盾として扱って弾き返した。
一向に決定打を打てない特異体は攻撃を中止すると、不思議そうに首を傾げる。
『ニゲテバカリ…オマエ、ドッチダ?』
「何がですか?」
『カシコイノカ!カシコクナイノカ!オレハカシコイ!』
「いえ、そもそも賢い人はあまり自分のことを賢いって言わないと思いますけど」
『ナ、ナニィ!?』
当然の返答に勝手に驚いている隙にアリスは拳を打ち込もうとするが、咄嗟に反応してきた特異体の腕がそれを迎え撃つ。
アリスの乱打と特異体の四本の腕の乱打がぶつかり合い、両者の間には火花が散った。
『ナラバッ、テカズショウブダ!ヨンホンウデタイニホンウデ、オオイホウガツヨイニキマッテ…グハァ!?』
手数で押し切ろうとした特異体だったが、アリスは腕の本数の差をものともせず単純な腕の振りの速さ、引き戻す速さ、動作の速さ、それだけで特異体の手数を上回り、一方的に殴りつけたのだった。
アリスの尋常ならざる膂力による乱打をまともに受けてしまった特異体は膝から崩れ落ち…アリスに向かって毒液を吐きかける。
『ダガ…オレノホウガ!カシコイ!』
特異体は伸縮する腹部を利用した股下からの尻の棘による奇襲を仕掛ける。
が、アリスはそれを容易く受け止めると特異体の腹に足を当て、伸ばされたその腹部を引きちぎった。
『ナッ…』
「あなた、人を食べましたよね…でしたら、覚悟も出来ているのでしょう?」
小細工で不意を突こうとする程度の狡猾さはこの特異体も備えていた。
だがそれ以上に、小細工では埋まらない圧倒的な実力差が両者の間にはあったのだ。
そしてアリスは特異体にレールガンを放ち、結界を張っている杭を踏み潰して破壊する。
それによって結界が上がったのを確認すると、最後に特異体に食い荒らされていた生徒の前にしゃがみこみ、両手を合わせて冥福を祈るのだった。
そして杭が破壊された事で結界が上がった事は、地下にいた者達も察知して展開の動きを悟っていた。
「…では私達はアリスちゃんを待ちましょう」
「はい!シュン姉さん!」
シュンは感心の声を上げるとココナと共にアリスを待ち…
地下5階に潜んでいたムツキはそれを成した相手に面白そうに笑った。
「へ〜、あの子がやられるなんて相当腕の立つ子が来てるのかな?ざーんねん、私も遊びたかったけど…仕事だから仕方無いか〜」
地下へと降りたアリスは待っていたシュン達と合流すると、地下5階を目指してさらに階段を下る。
移動中、シュンは申し訳なさそうにアリスを賞賛した。
「凄いですね、アリスちゃん」
「えっ?何がですか?」
「正直もう少し苦戦するかと思っていました。アリスちゃんは、もう十分1級に相応しい実力を持っています。秘儀なしでここまでやれるのはフブキちゃん以来じゃないでしょうか」
「…ムツキじゃありませんでした。もし相手があいつなら、こうはいかなかったでしょう」
「シュン姉さんからのお褒めの言葉ですよ!有難く受け取ってください!」
「うわーん!シュンさんアリスこの子苦手です!」
謙虚なアリスに何故かキレ散らかすココナ。
助けを懇願するアリスにシュンはクスクスと笑うと、気分が良いうちにさっさと終わらせようと階段を駆け下りる速度を早めた。
そして地下5階に到達し通路の奥へと進んだ先は…
「…これは」
「遅かったでしょうか」
そこに人の気配はなく、ムツキのものと思われる痕跡は既にそこを遠ざかった後だった。
ただ、何故か1人だけ生徒が蹲っているのがアリス達の目につく。
「そこのあなた、大丈夫ですか!?他の人は…」
「…」
「あっ…!」
セミナー本部駅にある地下鉄。
そこへ降りたホシノは、3人のアウトローと対峙していた。
「うへ〜、準備バッチリって感じかな?」
「ふふっ…来たわね」
「懲りないね〜、次負けたら言い訳出来ないよ?」
線路の上で待ち構えていたのは、以前ホシノを襲撃して返り討ちにあった陸八魔アル、S.C.H.A.L.Eと百鬼夜行支部との交流会を襲撃して撃退された鬼方カヨコ、そしてホシノは初めて目にかかる以前アリス達が撃破したゲーム開発部のアウトローの1人である才羽モモイ。
地下鉄のホームには大勢の生徒が押し込められていて、アル達が脅したのか身動き出来ずに揉み合っている。
ホシノの煽りに先頭に立つアルは、やけに自信満々でホシノを煽り返す。
「初めて言い訳する準備は出来てるかしら、小鳥遊ホシノ」
「…そんなことしなくたって逃げないよ。もし逃げたらここの人達皆殺す気でしょ?」
地下鉄に続く階段に突如巨大な何かが詰まって人の出入りが出来なくなる。
ホシノはそれがカヨコが呼び出した式神だと見抜いていた。
「ふっ、逃げたら殺す…ねぇ。じゃあその回答は───」
今回の騒動を起こす前、アル達はユメから作戦の説明を受けていた。
それに当たっての話題の1つが、現在の地下の状況に大きく関わっている。
『じゃあアルちゃん、小鳥遊ホシノが1番力を発揮するのはどんな時か分かるかな?』
『勿体ぶってないで話しなさいよ』
『つまんないの…それはね、小鳥遊ホシノが1人の時だよ』
「───逃げずとも、よ!」
「…」
アルが指を鳴らすとそれに合わせて駅の改札が開き、ホームに押し込められていた生徒達が次々と線路の上に落ちてきた。
アル達の周りに、そしてホシノの周りに何十人もの生徒達が落下し…下手に秘儀を用いようものなら大勢を巻き込んでしまうだろう状況。
「君達、下がって。死ぬよ」
近くに落ちてきた生徒に注意を促すホシノだが、アル達の意図を察して眉を顰めた。
(地下の出入口を塞いでるのは下手にこじ開けようとしたら外の人も巻き込んじゃうかもしれないって思わせる為か。あんな強い神秘で作られた式神が塞いでたらその奥のものを神秘で察知するのは難しいしね)
「さあ、あなたのせいで大勢死ぬわよ!小鳥遊ホシノ!」
「えっ…きゃああ!?」
言うやいなや、アルは近くにいた適当な生徒を掴みあげるとホシノへと放り投げ…その生徒ごと銃弾を貫通させてホシノを狙った。
鞄を変形させた盾でそれを弾くホシノだが、同時にカヨコとモモイが周囲の一般人を巻き込みながらめちゃくちゃに掃射を行ってきていることに気が付く。
強い神秘により強化された弾丸はまともに神秘を扱えない生徒ではキヴォトスの住人特有の耐久力があってもなお即死する程の威力を有する。
直ぐに止めたいのは山々だが、ホシノの武器では一般人が密集しているこの状況とは相性が悪く、またアル達に大きなダメージを与えられるであろう『宵』は威力と攻撃範囲の広さから同様に使うことが出来ない。
このまま殺戮を続けさせる訳には行かないと、仕方なく生身で掃射を止めようとカヨコ達に接近するホシノ。
しかし、それを待っていましたと言わんばかりにアルとカヨコは拳を振り抜いた。
「「『神秘展延』」」
「!」
アルとカヨコの拳は当然のようにホシノが秘儀により実現する不変に阻まれ一切のダメージを通さないが…直後、それぞれの拳が表面に薄い
押し潰されると判断したホシノは飛び退いて2人から距離を取る。
そんなホシノの焦りを見てアルは不敵な笑みを浮かべた。
「なるほどね…そう来るか〜。領域を使えるレベルにいるアウトローとなるとそんなこともしてくるってわけね」
(神秘展延って言ったかな…多分シン陰流の簡易領域に近い原理。領域で自分を包み込むことで必中効果を薄めながらも確実にこっちの秘儀を中和してるのか)
領域による秘儀の中和は、ホシノの不変すら崩してしまう。
常に全身に領域を纏う今のアルとカヨコの打撃は、確かにホシノにダメージを与えうるだろう。
その上、ホシノは神秘解放による領域を展開することも出来ないでいた。
ホシノの領域、『アイ・オブ・ホルス』の必中効果を受けないのはホシノとホシノが触れているものだけであり、領域内に巻き込んだ一般人全員を保護することは出来ない。
これはただ動きを止める領域ではなく、領域内に発生する凶悪無比な威圧効果は神秘の弱いものがまともに受ければ一瞬で廃人になってしまうほどに強いのだ。
仮に神秘解放時に領域内に一般人を入れないように展開したとしても、この閉鎖空間では壁と領域の外殻で一般人を押し潰してしまうことになる。
しかし、領域が展開出来ないのはアル達も同じだった。
ここまでの全ての準備はホシノに一般人を巻き込むことを避けさせて全力を出させないため…故に、ホシノが守るべき一般人の数が減り過ぎると、手加減する理由を無くしホシノは諦めて神秘を解放せざるを得ない。
アル達ではホシノに領域の押し合いで勝つことは出来ないが故の、あくまで安全策。
(癪だけど、
「ふふっ、逃げるなと言った筈よ。こうでもしないと分からないのかしら?」
神秘展延と人質により攻勢に回れないホシノに気を良くしたアルは近くにいた生徒を撃ち殺して挑発する。
以前ボコボコにされた鬱憤を晴らすかの如く調子に乗っていたアルだったが────
「いや〜、驚いたよ」
「っ!?」
そこまで受けに回っていたホシノからの威圧感が膨れ上がった事で滝のように汗が吹き出す。
それはアルにとってはまるであの時に差し向けられた殺気を彷彿とさせられるようで…それでも、利があるのは自分達だと余裕そうな態度は崩さない。
「な、何よ?言い訳かしら?」
「違うよお馬鹿ちゃん」
「お馬鹿ちゃっ…!?」
「この程度で私に勝てるって思ってるその脳みそに驚いたって言ってるの。理解出来る?」
(落ち着くのよ…20分…20分耐えれば、こいつだって…!)
どれだけホシノに対しての恐怖が湧き上がっても、アルはその希望だけを考えて立ち向かおうとする。
だが無情にも…怒れる
配役
憂憂…ココナ
蝗Guy…こいつに至ってはほぼ本人みたいなもの