ブルア廻戦   作:天翼project

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アニメ33話までの範囲でお送りします。
今回はかなりグロ要素強めな為、閲覧注意です。


ミレニアム事変 開門

 

Q.あなたにとって小鳥遊ホシノとは?

 

 

アリスの場合

 

「頼れる先輩です!ホシノ先輩がいなかったら、私は今頃死刑だったでしょうから。ですが一緒にゲームで対戦すると大人げないです!それで…」

 

 

 

 

ヒナの場合

 

「一応恩人よ。一応。でもちょっとグーたらし過ぎね。それからこれは私に限った話じゃないでしょうけど…」

 

 

 

 

カズサの場合

 

「正直そこまで知らないんだよねー。まあちょいちょいスイーツとか奢ってくれたりお土産買ってきてくれたりするのは嬉しいかな。あとは何より…」

 

 

 

レンゲ、ミノリ、ペロロの場合

 

「馬鹿」

「馬鹿だな」

「デモ!」

「でもまあ…」

 

 

 

ユウカの場合

 

「怠惰、後輩へのセクハラ、命令無視。悪い所をあげようとすればキリがないけど、決して揺るがない長所なら1点…」

 

 

 

 

 

 

彼女を知る者にそう問えば、悪口に愚痴は幾らでも出てくるだろう。

だが、それでも最後には皆が口を揃えて同じ事を言う。

 

 

 

 

 

 

『最強!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

ミレニアム、セミナー本部駅の地下鉄ホーム。

そこには…疲労で呼吸を荒くし、余裕の無い様子を見せる『最強』の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り…

 

アル達によって人質にされた大勢の生徒達はその戦いに巻き込まれ次々と命を落とす地獄絵図。

ホシノは彼女達を少しでも救おうと自分の攻撃に巻き込まない為に攻めには回れず、防戦を強いられていた。

その上アルとカヨコが用いる『神秘展延』という技術によりホシノが秘儀で実現する擬似的な不変を貫通してダメージを与えうる状況。

 

誰がどう見ようと劣勢と思われたが…アルからの挑発に威圧で返したホシノは今このホームにいるアウトロー3人の内の1人…カヨコを睨んでショットガンの銃口を向ける。

 

「そこの陰キャちゃんは会うのは3度目だよね。舐めた真似してくれちゃってさぁ…まずは君から潰してあげるよ」

「…何で私」

 

煽っていたのはアルなのに何故か怒りの矛先が自分に向いたことにカヨコは内心どっと汗を流して焦っていた。

隣ではアルが手のひらを合わせ、口パクで(ごめーん!)と謝っている。

少し引いた位置で銃を構えているモモイは終始興味無さそうに小さく息を吐く。

 

そんな中、ホシノはズンズンと踏み出してアル達へ迫った。

 

「ほら来なよ、どうしたの?逃げるなって言ったのはそっちでしょ?」

「それは言ってないし…どうなっても知らないわよ!」

 

迫るホシノに臆する気持ちを奮い立たせ、アルはカヨコと共にホシノへと白兵戦を仕掛ける。

カヨコの回し蹴りはしゃがんで回避したホシノの頭上を通り過ぎるが、ほぼ同時にそれを読んでいたアルは低い姿勢で躱し方的に体勢が悪いホシノへと殴り掛かる、が…

 

「…え?ちょっ…!?」

「せーのっ!」

「や、やめ…ぐぎぃぃ!?」

 

振りかぶった左腕をホシノが横から掴んで受け止める。

しかしその時にアルはホシノの手から感じる柔らかさに違和感を感じ…その隙にホシノは掴んだその腕を固定すると、アルの肘を可動域の反対側に折り曲げた。

激痛に悲鳴を上げるアルへ追撃しようとしたホシノだったが、カヨコが飛び蹴りでホシノを押し飛ばしてそれを阻止する。

 

(狙いはあくまで社長か。さっきの宣言は心理誘導、こんな単純なブラフに引っかかるなんて情けないね…)

「でも、許さない!」

「うへっ」

 

アルが復帰するまで1人で受け持とうとカヨコは銃を乱射し、ホシノの意識を周囲の一般の生徒達に分散させる。

可能な限り彼女達を守らなければ行けないホシノは、自分が防げば流れ弾を止められる攻撃を無視できない。

 

そう踏んだカヨコだったが…ホシノは近くにいた線路上に落ちている生徒を掴みあげるとホームの上に投げる事で強引に攻撃範囲から退避させるという荒業に出た。

 

「チッ…!」

「読みが甘いんじゃないかな?」

 

人質である生徒達を巻き込むのは、あくまでホシノの意識を『守れる生徒を守る』という目的に割かせる為のもの。

故にホシノは近くの守れる生徒は守るが、手が届かず助けられない生徒にまでは意識を割かないのだ。

そしてホシノの周囲から守るべき生徒がいなくなったのならば…一転して攻勢に回ってくる。

 

(だけど、まだ私達の後ろには残ってる。大振りな攻撃はできない。それに、さっきの社長への接触を見るに『ウジャトの目』を解いてる。人が少なくなったこのスペースで神秘による身体強化に集中したコンパクトな攻めに回るつもりか)

 

ショットガンと盾を両手に、獰猛に笑って駆け出してくるホシノに対してカヨコは数十を超える小型の式神を生み出してけしかけた。

 

(だけどそれならこっちも人混みに紛れてチマチマ攻める必要は無い。『ウジャトの目』を解いてる今の内に秘儀で押し切って───)

 

「あははっ!」

 

「展延を解いちゃ駄目よ!カヨコ!」

「!?」

 

高速で移動する小さな式神を盾の振りによる面攻撃の圧力だけで叩き潰したホシノは、そのままカヨコへと飛びついて抱き着くように掴みかかり、反撃に頭に向けて撃たれた銃弾を上体を逸らして回避すると───逸らした上体を戻す勢いでカヨコの額に強烈な頭突きをお見舞いした。

 

「がっ…」

「やっぱり、展延とやらと秘儀は同時には使えないみたいだね」

「くっ、カヨコ!」

(私がまだ比較的無事なのは神秘展延で身体を守ってたから…基礎的な神秘操作と体術でこのレベル…小鳥遊ホシノ、逆にあんたは一体何を持ち得ないっていうのよ!)

 

頭突きを喰らわせた後、カヨコを蹴り飛ばしてその反動で宙返りして着地したホシノ…その背中を回り込んでいたモモイが銃撃して狙うが、ホシノが『ウジャトの目』を再発動させた事で弾丸は容易く弾かれた。

 

「…」

 

(あの子、ちょっと面倒だな〜。容姿が似てるし、例のゲーム開発部の残り1人か。うざったいけど今は後回しかな)

「まずは…」

 

「よくも…!」

 

先程から遠巻きから撃ってくるだけのモモイに気を向けたホシノの背後からアルが無事な方の腕で殴り掛かるが、ホシノはそれを手のひらで受け止め、さらに復帰してきたカヨコの拳も空いた方の手で受け止めた。

カヨコは先程の頭突きで頭蓋骨が陥没したのか、頭から夥しい量の血を流して顔を真っ赤に染め、最早視力が生きているのかも怪しい状態だった。

 

「カヨコ!無理しちゃ…!」

「さっきから見てるに、その展延とやらは自分の肉体は覆えても銃弾に纏わせることは出来ないみたいだね?だから私にダメージを通そうとするならこうして肉弾戦に持ち込むしかないと。でもそれを続けるにはさ…もうこっちの陰キャちゃんが持たないんじゃない?」

「あがっ…!?」

 

ホシノは手のひらで受け止めていたアルの手を振り回して遠くへ放り投げると、残るカヨコを壁の方に突き飛ばし、そこにさらに盾を叩きつけた。

結果カヨコはホシノの盾と背後の壁に挟まれる形になり…ミシミシ、メキメキと、人体から鳴ってはいけない音が地下に響き渡る。

 

「ぎ、ぎ…」

「っ!小鳥遊ホシノ!こっちを見なさい!」

「ひぃぃ!?」

 

盾を押す右手により力を加え、その横を通って壁にも左手を触れるホシノ。

何とかその意識を逸らそうとアルは近くにいた生徒の頭に銃を突きつけるが…ホシノは止まらない。

 

本来、壁にカヨコを押し付けたとしても耐久力の差により先に壁が壊れてその先に突き抜けるか、壁にめり込む程度にしかならないだろう。

だが、ホシノは『ウジャトの目』による再生を利用した”不変”を、触れている物体にも付与できる。

それによってホシノが押し付ける右手の盾、そして左手が触れる壁に『ウジャトの目』による不変が付与され…その上からホシノの腕力による万力のような圧力がかかっているのだ。

 

「しゃ…ちょ…」

「小鳥遊ホシノ!やめなさ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────グシャッ

 

 

「ぁ…」

 

不変に挟まれ、ホシノから圧力をかけられ、遂にはカヨコのヘイローが砕けて肉体が盾と壁に押し潰される。

圧力によって押し出された大量の血と臓物や肉が壁と盾の隙間から飛び散り、盾からはみ出ていた事で形を残していたカヨコの足が倒れた。

至近距離から返り血を被ったホシノは身体中を真っ赤に染め上げて…カヨコが死んだという事実に呆然とするアルへと視線を向けた。

 

「カヨコ…」

「大勢人を殺しておいて、まさか自分達が死ぬ覚悟もなかったとは言わせない。次は…君の番だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『神名結晶はあらゆる神秘を封じ込める結界そのもの。神名結晶に封印できないものは無いよ』

『でも、流石に封印条件はあるわよね?』

『…1分。神名結晶の開門後、封印の有効範囲の半径約4m以内に1分間小鳥遊ホシノを留めないといけないんだ』

『このっ…死にたいの!?そんな無理難題を押し付ける為に手を組んだ訳じゃないわよね?その条件であれを1分?ふざけるのも大概にしなさいよ!』

『あはは、アルちゃんどんだけトラウマなのさ!』

『まあまあ落ち着いて。1分とは言っても…』

 

 

 

 

 

 

(無理…無理よそんなの…でも…でも!カヨコの犠牲は、絶対に無駄にする訳にはいかない!)

 

呆然としていたアルだったが、必死に状況を飲み込むとホシノに背を向けてホームへと上がり、人混みに紛れるようにして逃走を始めた。

それを追いかけるホシノだったが、やけに逃げる速度が遅いことに首を傾げ…そしてその意図を察する。

 

(なるほど、付かず離れずあくまで私に狙わせ続けると。でもそれも限界じゃないかな?『動いたら殺す』とでも脅してずっと身動きしていなかった生徒達が君達の不利を察して脅しを無視して逃げ始めてる。上に上がる入口は…さっきの子が塞がせてた式神は消えたけど、崩落しちゃって依然出入りは出来ないか。でも皆が私達から離れれば…その時が最期だよ)

 

アルは逃げながら近くの生徒を捕まえてホシノに向かって投げつけ、受け止めさせることで少しでも時間を稼ごうとする。

だが確実に人の密集度は減っていて、そう長くは持たないだろう。

 

「モモイ!手伝わないならあなたから殺すわよ!」

「はいはい、やればいいんでしょ…」

 

アルに急かされ、モモイは気怠げに射線近くの生徒を巻き込みながらホシノへと銃撃を浴びせる。

だが『ウジャトの目』による不変に守られているホシノを傷付けることは叶わず、またホシノも今はアルに狙いを集中させているためモモイに対して目もくれない。

 

(…さっきみたいに『ウジャトの目』を解いて誘うのはもう通じないだろうし、このまま追い込むか…ごめんね、皆。全員は助けてあげられない…でもその代わり、絶対に報いは受けさせる)

 

生徒達の被害を割り切ったホシノは牽制や妨害をものともせず少しづつ逃げるアルとの距離を縮めていく。

一方アルは時間を気にかけ、未だユメが来ない事に悪態をついていた。

 

「もう20分経ったじゃない…!なにしてんのよあいつは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだ。小鳥遊ホシノも余裕そうだし、もっとヒリヒリさせないとね〜」

 

その時を待ち、高みの見物を決め込むユメ。

 

 

 

同じ頃、セミナーDBセンター入口駅の地下5階に降りていたアリスは、そこで蹲っていた生徒に声をかけたのだが…

 

「そこのあなた!大丈夫ですか!?他の人は…」

「…みんな化け物に…電車に乗って…わ、私は満員だったからいらないって〜!!」

「っ!?」

 

その生徒のヘイローが突如ぐにゃりと歪むと、それな合わせてその生徒の身体も変形して異形の姿へと変化し…変形に耐えられなかったのかその場で息絶える。

凄惨な様にココナは「ひっ」と声を上げてシュンの背中に隠れ、シュンは目を細めて異形の遺体を見つめる。

 

そしてアリスはまた人が死んだ悲しみと、それを引き起こしたであろう怨敵に激しい怒りを湧き上がらせた。

 

「あいつが来てたんですね…いや、電車に乗って…?」

 

しかし、変形する直前に生徒が言っていた言葉を思い出し咄嗟に近くに掲示されていた路線図へと目を向け…この駅と隣接する駅を見て、嫌な予感を感じた。

 

「まさか…ホシノ先輩…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《8両編成で参ります。黄色い点字ブロックの内側で…》

 

「うん…?」

 

 

アルを追っていたホシノだったが…その時、ホームにアナウンスが流れた。

何事かと思えば、線路の先から電車の光が見え停車しようと速度を落としているようだった。

 

「来たわね!」

 

そしてそれに気が付いたアルはぱあっと笑顔になる。

その様子を見てろくでもないことを企んでいると察知したホシノはアルを追う足を早めるが…

 

出入り口が崩落したことで地下から出れずにいた生徒達は、一目散に停車する電車に駆け込もうとして───扉が開いたかと思えば、先頭の生徒が電車の中から現れた異形に頭を吹き飛ばされて絶命する。

 

「あいつら、何考えて…!」

 

電車から次々と降りてくる異形はまだ生き残っている生徒達に襲いかかり、この空間の地獄らしさがより一層跳ね上がる。

自分を動きを制限する為の人質である筈の生徒達を凄まじい勢いで殺し回る異形達に、その目的が分からずホシノは立ち尽くしていた。

 

一通り電車の中の異形が外に出た後、最後にぴょんとムツキが飛び出してアルへと手を振った。

 

「アルちゃ〜ん!」

「ムツキ!」

「いや〜、空気が美味しいね〜!恐怖が満ちてて良い感じ!全部終わったら週末ぐらいに人集めて狩りして遊ぼうよ!あ、でもあんまり悲鳴とかうるさいとカヨコちゃんに怒られるか…」

「…カヨコは死んだわ」

「…マジ…?…アルちゃんも腕…そっか、あいつが…」

 

無邪気に笑っていたムツキだったが、無惨に押し潰され原型も残らないカヨコの死体と痛々しく折られたアルの腕を見ると途端に瞳に影を落とし、冷たい視線でホシノを射抜く。

 

「チッ…!」

 

生徒達を殺して回る異形を片付けて少しでも被害を減らそうとしたホシノだったが、流動する肉塊に乗りサーフィンでもするかのようにホシノに急接近して肉塊で作ったハンマーを薙ぎ払うムツキ。

それはホシノの胴にクリーンヒットし…逆に肉塊のハンマーの方が砕け散る。

 

「あは、本当に効かないや」

 

(白い髪と赤黒い格好の小柄なアウトロー…アリスちゃんやユウカちゃんの報告にあった奴か)

 

「おっと危ない!」

 

ホシノが反撃に放ったショットガンを紙一重で回避したムツキは袖から溢れさせた肉塊で触手を作ると、それを天井に突き刺した。

 

「ねえ、せっかく減った人質が増えた時の絶望感ってどんな感じかな?」

「っ!まさか…!」

 

ムツキは天井に突き刺した触手を引っ張り…それによって天井が抜け、その上にいた100を軽く超える大量の生徒達が地下へと落下してくる。

その異常な密集度からして、上の階に潜んでいた特異体かアウトローが彼女達を1箇所に集めたのだろう。

 

良くも悪くも、気にするべき人質が減っていた所にまた人質を足され、またもホシノはアル達を一気に片付ける機会を失ってしまう。

それをいい事に、ムツキとモモイが追い討ちをかける。

 

「くふふっ、『ム為転変』…『多重輪:撥体』!」

「『百蘞』…『超新星』」

 

ムツキは取り込んだ生徒2人分のヘイローを強引に重ね合わせ、その拒絶反応による反発を利用して肉塊を高速で打ち出し、モモイは周囲に血の雫を浮かべると、それをホシノへと飛ばした先で爆裂させる。

 

当然それらはホシノを傷付けるには至らないが…飛び散る血と肉塊の面攻撃は目眩しとして機能し、背後から飛びかかったアルがホシノを殴りつけようとする。

 

それにすら反応したホシノは振るわれた腕をノールックで掴み取り引きずり倒そうと引っ張るが…一切の抵抗もなく引っ張れた事に疑問に思い振り向くと、そこにはアルの姿はなく腕だけがホシノの手の中にあった。

 

(これは、折った方の腕…!)

 

ホシノに折られ使い物にならなくなった左腕を切り落として囮として使ったアルは断面の手前を布で締め上げて止血しながらそそくさとホシノから距離を取る。

 

「ぐ、ふふ…そうよ、混乱しなさい…!」

 

度重なる状況の変動、読めない相手の目的、自己犠牲を是とした囮、ホシノが混乱するには十分な要素が揃っている。

アリスと違いある程度の冷酷さを併せ持つホシノは本来ならばある程度の犠牲を割り切ってアル達を仕留めにかかるだろう。

だが、死者も生者も増え続けるこの状況ではその”ある程度”の天秤は最早機能しない。

 

(考えて、悩んで、迷いなさい!あなたが容認出来る犠牲は私達が殺す犠牲、あなた自身の手で犠牲は出せないでしょう!秘儀でも神秘解放でも私達を一掃出来なくなった時点で、あなたは─────)

 

 

 

 

 

 

「もういいや、やっちゃお」

 

「ちょっ!?」

「マジで!?」

「…!」

 

秘儀による攻撃は出来ないだろうと高を括っていたアル達だったが、ホシノが掌印を結んだことで一転冷や汗を流す。

片手で人差し指と中指を絡める特徴的な掌印…それは、ホシノの『神秘解放』の合図に他ならないのだから。

 

 

 

「───神秘解放『アイ・オブ・ホルス』

 

 

 

ホシノを中心に広がった結界はアル達と大量の改造された生徒、そして生き残っていた生徒達を覆い尽くして天上に顕現した巨大な目が見下ろし───瞬き1つにも満たない間に消失する。

 

 

それは、小鳥遊ホシノによる一か八かの”0.2秒”の神秘解放だった。

本来ならば神秘の弱い生徒が『アイ・オブ・ホルス』の影響下に晒されれば領域の必中効果による拘束が理性を蝕み廃人に変えて最悪発狂死してしまうだろう。

0.2秒はホシノが勘で設定した、神秘の弱い生徒が廃人にならず後遺症も残らないであろう『アイ・オブ・ホルス』の滞在時間。

0.2秒の間に領域の影響下に晒された改造された生徒を含む生徒達は立ったまま気を失ったが、生き残りは2ヶ月後には学業に復帰出来るだけの、そのレベルの神秘解放。

 

だがこの短時間では特級区分に認定される程のアウトローとなるとそれよりも効きは弱く、次の瞬間には意識を取り戻すかもしれない。

故に神秘解放直後の消耗した現状、反撃を考慮してホシノは標的を改造された生徒に絞ってその殲滅を開始する。

疾風のように地下内を駆け回り、改造された生徒達の頭を潰し、もぎ取り、破壊する。

 

現代最強の神秘は地下に解き放たれていた改造された生徒およそ1000体を、299秒で全滅させてみせる。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

だが流石に疲労は避けられず呼吸を荒くし、集中力が乱れ…

 

 

 

「あっ…」

 

そしてようやく目の前に転がる紫色の結晶のようなものに気が付いた。

それと同時に、どこかからか声が響く。

 

 

 

神名結晶、開門

 

 

 

 

 

「っ!」

 

神名結晶が眩い光を放つ。

直感でその危険性を察知したホシノは神名結晶から距離を取ろうとするが────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────や、ホシノちゃん。久しぶり」

 

「…ぁ」

 

姿を現したユメに、ホシノの脳内では様々な憶測が飛び交う。

偽物か、変身か、幻覚か、他人の空似か…それら全ての可能性を否定して、それが本物であると『ウジャトの目』がホシノに事実を叩きつけてくる。

それに思い至った瞬間に───ホシノの脳内に溢れ出す、3年間の青い春。

 

 

神名結晶の封印条件は、対象を封印範囲の半径4m以内に1分留めること。

だが、この1分というのは…()()()()での、1分。

 

とうにその条件は満たされて───神名結晶から溢れる光がホシノの四肢を絡め取り、結晶の内側へと引きずり込もうとする。

 

「もう、駄目でしょ?ホシノちゃん。戦闘中に考え事なんて」

 

(…神秘が感じられない。身体に力も入らない…詰みか)

「…で、誰?君」

「やだな〜、ホシノちゃんの先輩だよ。忘れちゃったの?寂しいなぁ、ひぃん…」

 

大袈裟に涙を拭うジェスチャーをするユメ…その皮を被ったその女に、神名結晶に飲み込まれつつあるホシノは声を張り上げた。

 

「肉体も神秘も、この目に映る情報は確かにそれがユメ先輩のものであると言ってる。だけど…私の魂がそれを否定してるんだ!さっさと答えろ、お前は誰だ!」

 

「…」

 

断固として譲らないホシノに女はやれやれと肩を竦めると、前髪を掻き上げ…そこから覗いた額の縫い目を解いていく。

縫い目が全て解かれると女は頭を掴み上げて───

 

 

「キッショ、なんで分かるかなぁ」

 

 

開いた頭の中から、球状の殻で覆われた機械的な物体が脳の代わりにそこに収まっていた。

それを見て歯軋りするホシノの姿に満足すると、女は頭を戻し額を縫い直す。

 

「ま、そういう秘儀でね。脳を入れ替えたら肉体も転々出来るんだ。勿論肉体に刻まれた秘儀も使えるよ。彼女の特異操術とこの状況が欲しくてね。君さ、梔子ユメの遺体の処理を氷室セナにさせなかったでしょ?変に気を遣うんだね、お陰で楽にこの体が手に入ったよ」

 

既に半身が神名結晶に飲み込まれ、一切の抵抗も出来ないホシノな近付いた女はホシノの顎をクイッと上げ、その瞳を覗き込んだ。

 

「心配しなくても、封印はそのうち解いてあげるよ。100年…いや、1000年後かな?君強過ぎるんだよ。私の計画に邪魔なんだ」

 

「…ははっ、忘れたの?その身体が誰にやられたのか」

「砂狼クロコかい?残念ながら私は彼女にそこまでの魅力を感じないね。無条件の秘儀の模倣、底なしの神秘、どちらも敬愛する恩師が憑いていたからに過ぎない。砂狼クロコは君にはなれないよ」

「…」

「おやすみ、小鳥遊ホシノ。新しい世界でまた会おう」

 

背を向ける女。

ホシノは遂にその全身が神名結晶へと引きずり込まれ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!?うわーん!なんかキモいのがくっついて来ました!」

 

ホシノがいるであろう駅に向かったと思われるムツキを追ってアリス達が徒歩で線路の上を進んでいた途中。

突如大声を上げたアリスにシュンとココナが振り向いた。

 

「どうしましたか?」

「いえ、それが耳に…!」

 

『聞こえるか?天童アリス』

 

アリスの耳にくっついたそれ…焦点の合わない目とだらしなか垂れた舌が描かれた小さな装置から声が響く。

 

『時間がない、1度で聞き分けろ────小鳥遊ホシノが封印された』

 




配役
羂索…???
メロンパン…ガワはケセド
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