ブルア廻戦   作:天翼project

54 / 155
今回は原作148〜150話までの範囲でお送りします
(147話は話の都合上このタイミングに入れると中途半端になるので別の話にスライドさせて入れることになりました)


葦を啣む

 

アリス達と別れ、今回の混乱に乗じて暴れ回っているアウトローを制圧する為レンゲは結界(コロニー)を避けながら百鬼夜行自治区へと出向いていた。

目標はレンゲにとっては因縁深い指定アウトロー集団…”魑魅一座”。

その本拠地である屋敷の前に集合していたレンゲは、集まっていた他に派遣されていた特異現象捜査部の者おおよそ30名と事情を説明し協力を取り付けたヴァルキューレ警察学校の警備局から50名余りと共に、監督オペーレーターであるアヤネから今回の作戦を説明…もとい最終確認をされる。

 

「相手は長きに渡ってキヴォトスの裏で暗躍していた凶悪なアウトロー集団です。連邦生徒会からは基本捕虜を取ることは考えず、構成員は発見次第即殺せよとの旨です。但し圧倒的な優位性を得て完全に拘束出来た場合に限り生かして回収することを許可すると。魑魅一座が所持する資料などは可能な限り回収するように…また、今回は百鬼夜行支部から派遣された方々が裏口から攻め込む手筈になっているので突入後は合流を優先してください。ご武運を祈っています」

 

アヤネが説明し終えると他の生徒達は気合いを入れて準備に取り掛かり、屋敷から1人も取り逃がさないように包囲や罠の設置を進めている。

そんな中、レンゲは連邦生徒会からの作戦資料を読み込んでいたアヤネに声をかけた。

 

「アヤネさん、再三聞くけど本当に大丈夫か?」

「何度だって『はい』と答えますよ。私は、もっと皆さんの役に立たなくちゃ行けないんですから。セナさんのお陰で怪我は大方治りましたし、休んでなんかいられません」

「…なら良いけどよ。しっかし連邦生徒会は何考えてんだ?ただでさえ人手不足の癖にこんな大勢集めて…」

「それほど警戒しているからこそなのではないでしょうか?実際ずっと暗躍し続けているわけですし…」

 

今回の派遣の任務の説明を聞いた時からずっと違和感を感じていたレンゲは何やら嫌な予感を感じていた。

しかし時間は待ってはくれず、 気付けば他の生徒達は皆準備を終えいつでも突入出来るようにスタンバイしている。

仕方なくレンゲはアヤネに一旦別れることを告げ、他の生徒達と合流する。

 

百鬼夜行支部側からも準備が整ったと連絡を受け取ったアヤネは、空に拳銃を一発打ち上げて合図をする。

 

それを皮切りに、集まった特異現象捜査部の者達は屋敷の正面玄関や窓から次々と内部に突入し制圧を開始する。

だが…

 

(…堂々と目の前で準備したとはいえ集合からまだ20分と経ってない。にも関わらず連中の対応が早いな)

 

屋敷に突入した生徒達は魑魅一座に苦戦を強いられており、武装の火力や屋敷に仕掛けられている罠に絡め取られ思うように進めていなかった。

集合から最終確認、そして準備まではスムーズに短時間で行われ、如何に魑魅一座という集団の統率が取れていたとしても後手に回る以上完全な対応は出来ないはずなのだ。

しかし何故か各突入地点で先回りされていたようで、配布された無線からは応援を求める声が鳴り止まないでいた。

 

(話に聞いた通り、そうなる心構えはしてたが…実際本当だったとすると確かに混乱するな、これは)

 

実の所、今回の魑魅一座の突入班への対応の早さは予見されていたものではあった。

ならば何故こうも苦戦しているのかというと…”そうである”可能性が高いと聞いていたのはほんの一部の生徒だけだったからだ。

 

レンゲは今回の任務に赴く前…それよりももっと前、ミレニアムでの怪我から復帰した後にミカと話した時の出来事を振り返る。

 

 

 

 

『魑魅一座の本拠地を特定していただって…?ナギサが?』

『うん、1回久しぶりにトリニティに帰ってナギちゃんの側近だったって子に話を聞いたら、どうにもナギちゃんってばずっと魑魅一座を追いかけることに執心してたみたいでね。ミレニアムの事変のちょっと前にはトリニティ主導での一斉検挙計画が立てられてたらしいよ』

『あいつが…なんでそこまで…』

『さあ?それは私にも分からないけど…前と変わってないなら、ナギちゃんって結構優しくて律儀だからね。どっかの誰かさんとの約束を忘れてなかったんじゃない?』

『…』

『話を戻して、その調査で分かったのは魑魅一座の本拠地だけじゃなかったんだって。これはその側近の子しか知らされてないらしくて、ナギちゃんも信頼できる人にしか教えちゃダメだって言い付けてたらしいんだけど───魑魅一座と内通してる連邦生徒会の役員がいるらしいよ』

 

 

 

 

(他にはどこにその内通者がいるかも分からないからそれを知らされてる奴が少ない分向こうの対応に面食らってる奴が多いが…それを聞いていたからこそ違和感もある。魑魅一座と内通してるって奴は何を考えてこんな戦力を送り込ませたんだ?仮にも1級が2人、準1級が5人、2級が10人と突入班の多くはそれなりの実力者が担ってるが…もしこれで勝つようならそいつと魑魅一座の関係は潰えることになる。逆に負ければそれはそれで、これだけの戦力を一気に失って連邦生徒会側としては圧倒的に都合が悪い筈。何が目的なんだ…?)

 

特異現象捜査部の突入を密告して対策させるのは理解出来る。

だがこれだけの戦力同士でのぶつかり合い、双方で立場を守りたいのならばその内通者のするべきは魑魅一座に交戦させないよう逃がす事だ。

どちらが勝っても内通者にとっては立場が危ういはずの作戦…或いは、本当にそこに意味を見出すべきなのか。

 

(突入班の戦力に口出しできない下っ端役人か何も考えてない余程の馬鹿の考えた作戦って言うなら話は楽だけどな。何かを見落としてる気がする。こんなことをする奴に、心当たりが…)

 

「死ねぇ!」

「くたばれ!」

 

「チッ、邪魔だ!」

 

考え事をしながらも構成員が他の生徒に気を引かれている間に一気に奥まで戦線を押し上げようと前に出るレンゲに、2人の構成員が立ちはだかる。

それを片方を銃撃で吹っ飛ばし、もう片方を天井に頭が突き刺さる威力の強烈なアッパーをぶち当てて戦闘不能にした。

道を切り開いたレンゲは屋敷の奥へと進みながら相手から奪った手榴弾や閃光弾を使って魑魅一座を撹乱していく。

 

最初は押し返そうとしていた魑魅一座も突入班の精鋭によって徐々に押され始め、前線はぐんぐんと進んでいってその度に魑魅一座の抵抗も激しくなる。

だが既に向こうは防戦一方、このまま押し切れると一同は調子づいて攻め手を強めていく。

 

と、突入から30分近い攻防が繰り広げられていた時、レンゲは裏口から突入したという百鬼夜行支部の突入班を発見するといきなりその生徒の胸ぐらを掴んだ。

 

「おいお前!」

「は、はいい!?なんでしょう!?」

「そっちの状況はどうなってる?被害は?捕虜は捕まえられたのか?」

「え、ええと…被害は多少出ていますが、それでも制圧自体は順調に進んでいます。相手の抵抗が激しいのでやむなくヘイローを破壊していますが…」

「そうか」

「なんなんですか…」

 

傍から見えばカツアゲしているかのような話の聞き方をするレンゲに被害に遭った百鬼夜行支部の生徒は身体を揺すられたことで吐きそうにし…ふと愚痴を零す。

 

「はぁ…なんだってこんな先輩に辛辣な子ばっかり…あなたといい桐生さんといい今の2年の世代ってこんなんばっか───」

 

「おいまて!キキョウも来てるのか!?」

「今度はなんですか!?」

 

哀れ災難、その生徒は再びレンゲに胸ぐらを掴まれる。

その事情を知ったことでとなく、レンゲは今の愚痴を聞いて激情に飲まれていた。

 

「今桐生つったな!そいつも来てるのか!?」

「は、はい…今回の任務に自ら志願したようで、制圧を進めている最中私の指示も聞かずに1人で奥に進んで行ってしまって…心配で急いで追いかけてきたんですけど…」

「っ!何考えてんだあいつ…!お前に前線張れる訳ないだろ…!」

「ふぎゃっ!?」

 

問い詰めた生徒を横に放り投げたレンゲは他の生徒達の合流も待たず屋敷のさらに奥…魑魅一座の抵抗の激しい方へ向かっていく。

本当にここをキキョウが突破したのか、どこかで迷っているのではないかと考えるも、ここに来た時から感じていた悪寒がレンゲを焚き付けて奥へ進むように警鐘を鳴らしてくる。

レンゲはその勘に従って屋敷の奥、建物全体から見た中央に位置する部屋に辿り着き…そこにあった地下に続く階段を見た。

 

「なんだこれ…ハァ…クソッ…!逃げ道ぐらい用意してるよなそりゃ…いや、それよりキキョウは…まさか…」

 

強引に抵抗を打ち破って来た為息も絶え絶えになったレンゲだったが、未だ先に進めという悪寒に地下へと降りることを決意する。

どうも、不思議なことにある一定のラインを超えたあたりからすっかりと抵抗が無くなるどころか魑魅一座の構成員の姿も見ていないレンゲは、しかしそれを疑問に思う余裕もなくフラフラとした足取りで地下通路を進んでいく。

やがて明るく照らされた広間のような場所に出て、そこには────

 

 

 

「…お前かよ、ニャン天丸」

「良く来たな…儂はお主を、()()()覚えているぞ」

 

そこにいたのは、腰を据えて刀に手をかける魑魅一座の首領、ニャン天丸。

そしてその横に血塗れになって倒れる…

 

(キキョウ…!)

「こいつも余程恨みでもあったのか真っ先にここまで来たが…やけにすんなり進めたとは思わんか?お主らの気配を感じ取った時、儂が指示を出してあえておびき寄せたのだ。お主らの始末は儂の手で付けたかったからな」

「…なんのつもりだ?」

「簡単なこと…何故儂ら魑魅一座がキヴォトスを手中に収められなかったか分かるか?」

「お前らにその器がなかったから、だろ!」

 

どう見ても危険な状態にあるキキョウに一刻も早く処置をしたかったレンゲは身体能力を存分に活かし一発でニャン天丸を沈めようとした。

迎撃に振り抜かれたニャン天丸の刀を…レンゲは刀身の横を蹴り上げて折る。

 

(()った!)

 

得物を失ったニャン天丸を仕留めようとレンゲは愛用のスナイパーライフルをその額に直で当てようとして────気付けば腰を深々と抉られ、傷口からは内蔵が零れ落ちていた。

 

「…は…?」

「何故儂らが天下を取れなかったか…」

 

見ればニャン天丸はかなりの魔改造がされたのかやたらとゴツイ拳銃…というよりはハンドキャノンと言うべき銃を取り出していた。

刀という視覚的に分かりやすい武器を囮とした不意打ちは見事に嵌り、ニャン天丸は呆気に取られその場に崩れ落ちるレンゲを見下ろしながら言った。

 

「お主らのせいだ。特に、あの日お主が逃げ桐藤ナギサに儂らの拠点を密告したことによって魑魅一座はその戦力の大部分を削られることとなった。あの出来事が無ければ戦力は健在、キヴォトスは既に我が手中にあったのだ。出来損ない風情がここまで足を引っ張るとは…片時もお主らの顔を忘れたことは無いぞ。今回もまた、お主らのせいで余計に戦力を削ってしまった…この疫病神の出来損ないどもめ」

 

吐き捨てるようにそう語ったニャン天丸は、倒れるレンゲとキキョウに背を向け地下通路の先へと姿を消した。

レンゲは今の戦いで気を失っていたが…辛うじてぼんやりとした意識の中一連の話を聞いていたキキョウは、体内から血が失われていく感覚を認知しながらも力を振り絞ってレンゲのもとまで這いずっていく。

 

レンゲの元まで辿り着くと、胸に手を当て…心臓がまだ動いていることを確認して起き上がって正座し、自分の膝の上にレンゲの頭を乗せた。

 

「なんとなく、いつかこうなるんじゃないかなって思ってたけど…はぁ…馬鹿みたい…子供みたいに癇癪起こして…恩返しのつもりで調子に乗って…結果このザマ…反吐が出る…」

 

自分に対する怒りを連ね、意識が途切れるその前にキキョウはレンゲの顔に自分の顔を近付けて────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外の木々が優しい風で揺れる音。

障子の向こうからほのかに差し込む日の明かり。

 

畳張りの部屋の上で、レンゲはちゃぶ台越しにキキョウと向き合っていた。

キキョウは、頬杖を着いて不機嫌そうに口を開く。

 

「私の秘儀、もう分かってるでしょ?神秘で物体を作れる。でも、大きいものとか複雑なものは作れない。普通ならね…これを作ったら私は消えるから、後は1人で頑張って」

「…待て、待ってくれ…行くな、キキョウ…」

 

立ち上がり背後の襖…外はあんなにも明るいというのに、無限の暗闇が広がるその襖の奥へと進もうとするキキョウを、レンゲが弱々しく呼び止める。

そんな様子を見て可笑しく思ったのか、キキョウは意地悪な笑みでクスリと笑った。

 

「レンゲのそんな顔初めて見た。永久保存版だね」

「やめろ…」

「ふふっ…約束しよっか、レンゲ。私とレンゲの約束。私が…レンゲから一つだけ残して全部持ってってあげる。その代わり…全部壊してよ────そう、全部」

 

 

 

 

 

 

 

 

本意だったか不本意だったか、しかし確かにレンゲとキキョウの間で交わされた契約。

キキョウがレンゲから神秘の全てを奪い去る代わりに…自らの命と神秘を全て賭してレンゲへ返礼を送るという契約。

 

それによってレンゲからは全ての神秘が失われ、天与宣誓としての肉体が完成する。

そしてその奪い去った神秘と己の全てを賭したキキョウは『構築秘術』で作り上げた返礼を…葦という名の全霊を、レンゲへと送った。

 

「…」

 

薄く目を開いたレンゲは、自分の手の中にある温もりと…手の中に握り込まれた、柄に毛のようなものがあしらわれた剣を目にした。

次に首を動かすと、そこには虚ろな目をしたキキョウが倒れている。

 

「キキョウ…起きろ…」

 

もう、キキョウがそれに返事をすることはなかった。

先程見たものは夢なのか、それを考えることも無くレンゲは剣を握り締めて立ち上がる。

切られた腰の傷からは未だどくどくと血が溢れ臓物がまろび出るが、不思議と痛むことはなく動きに支障は出なかった。

今はただ…交わされた契約とは別の…キキョウとの()()を遂行するべく、レンゲは地下通路の奥へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんだ?」

 

レンゲとキキョウを殺したと思っていたニャン天丸は、背後で何か異変があったことを察知して振り返る。

すると、薄暗い通路の先からコツコツと足音が聞こえ…その姿を見てニャン天丸はコヒュッ…と小さな悲鳴を喉の奥から漏らした。

 

「…何処に行く気だよ」

「お主は…狐坂…」

 

先程とはまるで別人のように雰囲気の変わったレンゲに、ニャン天丸はかつて魑魅一座に所属し、そして迫害された狐坂ワカモの姿を重ねる。

それは、忘れようと努めていた身体に染み付いていた圧倒的恐怖…鬼神の如き”災厄”。

 

完成した天与宣誓の、その躍動を。

 

 

「…起動『焦眉の赳』!」

 

 

恐れおののき、しかしニャン天丸はその恐怖を振り払うように秘儀を起動する。

ニャン天丸が懐から取り出したハンドキャノンは銃身が赤熱かし、銃口からガスバーナーのように激しく炎を吹き出す。

 

「今一度この手で骨の髄まで焼き付くしてくれる!来い!出来損ない───」

 

吼えるニャン天丸に、レンゲはすれ違いざまに剣で一閃…その頭を上下に分かつ。

断末魔もあげることなく死んだニャン天丸の遺骸を振り返ることも無く、レンゲは淡々と通路の奥へと進んで行った。

 

「キキョウ…始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下通路のその先、魑魅一座が用意していた緊急用の避難経路の奥で、突入班が本拠地の囮に梃子ずっている間に残りが脱出の準備を進めていた。

魑魅一座の幹部であるアラタが主導となって指揮を行い、構成員達はテキパキと物資や財産を運び出している。

 

「はぁ…ニャン天丸の奴、なんか拘ってたけど早くしろよな。何のためにあいつら犠牲にしてまで逃げてきてるんだと思ってるんだか…お、噂をすればか。おい!遅いぞ…あ?」

 

指揮をしながらも1人残ったきり一向に来ないニャン天丸に腹を立てていたアラタは、通路の方から聞こえてくる足音に気付いて文句と共に出迎え用とする。

しかし現れたのは思っていたものではなく───確認に行かせた構成員の生首を掴んで現れたレンゲだった。

 

それを見たアラタや構成員達は一瞬思考をフリーズさせるも、レンゲが生首を乱雑に放り捨てたのを見てようやく状況を理解して各々臨戦態勢を取る。

 

「てめぇ!よくも!お前らやっちまえ!」

 

アラタの指示と共に構成員達は一斉にレンゲに銃撃するが、レンゲは一瞬ふらっと身体をよろめかせたかと思えば次の瞬間には姿を消し、現れたかと思えば構成員の首を跳ね飛ばし、また姿を消して、現れては首を跳ね飛ばし…これを繰り返して次々と構成員を屠っていく。

いつまで経っても排除できず、それどころか一方的に戦力を削られてる現状に業を煮やしたアラタは運び出していた物資の中からロケットランチャーを取り出し、レンゲの動きを予測して偏差撃ちする。

 

放たれたロケットランチャーは丁度姿を現し構成員の首を跳ねたレンゲへと飛び…大爆発を起こす。

 

「はっ…はは!どんなもんだ!しかもこいつはただのロケットランチャーじゃねーぞ!ヘイローを破壊する効果を持った遺物が使われた爆弾で…あれ?おいお前達、まさか揃いも揃って巻き込まれたわけじゃねえよな!?」

 

確実にレンゲを仕留めたと鼻の下を擦るアラタだったが、普段ならば褒め讃えたりおだててくれる部下達の声がないことに焦りを覚える。

他の構成員から離れている構成員を狙った瞬間を狙ったつもりだったのにと内心言い訳するアラタだったが…爆発の煙が晴れた時、それを目にしてしまった。

 

「…は?」

 

そこにあったのは、1人残らず首を跳ねられた構成員達の姿。

先程のロケットランチャーの爆発で視界が悪くなるまでは確かにまだ何十人も立っていた。

それなのに、この数十秒の間に全滅している…そして、この殺し方をする者はまだ生きているということの裏付けにもなる。

 

「…どこだ、どこ行きやがった!出てこい!お前、絶対に許さ───」

 

有無を言わさず、背後を取ったレンゲが剣でアラタの首を跳ね飛ばす。

浮き上がった首を掴みあげ、その顔を確認するとレンゲはアラタの首を近くにあった池へと投げ捨て、他にもう生き残りが居ないこと…撃ち漏らしが無いことを確認して、来た道を戻るのだった。

 

 

 

やたら長い通路を逆走し、道中再びニャン天丸、そしてキキョウの死体を視界の端に収めながらも何かに取り憑かれたように進むレンゲは…ここまで生きた者と誰にも合わなかったことに気付く。

地上に残っていた戦力は確かに厄介だったが、それでも突入班のメンバーなら突破は可能な程度、誰かがあの地下通路まで辿り着いていてもおかしくないというのに…

 

嫌な、という枕詞はつかない。

ただ()()を覚えたレンゲは屋敷の外、その広々とした庭に出て───そこに積み上がった、無数の死体の山を目にする。

 

「おかしいと思ってたんだ。内通者って奴がいるなら、今回のアタシ達の突入にももっと良い対処法があったんじゃないかってな。突入に対して手早く反撃する?囮を残して本隊は逃げる?連邦生徒会が出した依頼、そもそもアタシらが来る前に魑魅一座に伝えてここを捨てさせることぐらいずっと前に出来た筈だ。ならなんでそうしなかったのか…それは、アタシらが思ったよりは早く魑魅一座に襲撃が漏れたが、魑魅一座としても割とギリギリなタイミングで襲撃を知ったんじゃないか?だからあんな中途半端な対処しか出来なかった」

 

自分の推測を語りながら、レンゲは握る剣の柄に万力のような圧力をかけていく。

怒りを堪えるように、感情の行き場を探すように…全ての元凶を睨みつける。

 

「思えば、あの時もそうだったよな。アタシが魑魅一座を抜け出した時だ。アタシが密告してナギサが拠点を潰しにかかった時、ナギサの方も少なくない被害が出たらしい。あの時アタシがあっさり抜け出せたのも違和感があったんだ。そもそも内通者の存在を知ったのならナギサの手腕でそいつを炙り出せないわけが無い。つまりは内通者なんて本当はいなくて、ただそっちに内側から引っ掻き回すだけの奴がいたってだけの話…お前なら、連邦生徒会に潜り込めるだけの諜報能力も、大きな戦力を敢えて呼び込む動機も、全部揃ってるもんな。昔はアタシを逃がして戦争を誘発して、今回も連邦生徒会に潜り込んで戦力を送らせて魑魅一座と衝突を演じた…そうなんだろ───イズナ」

 

「ん〜…見違えましたね、レンゲ殿」

 

屋敷に突入したS.C.H.A.L.Eと百鬼夜行支部の者達、そして今回の制圧作戦に協力したヴァルキューレ警察学校の生徒達合わせて裕に100を超える人の屍の山の上で…苦無を手入れしていた血濡れのイズナがレンゲの方を振り返る。

レンゲの姿を見たイズナは目を細め、妖しく口角を釣り上げて楽しそうに尻尾を振り、両手に苦無を構えた。

 

「まさか本当に魑魅一座の構成員を皆殺してしまうとは…レンゲ殿はすっかり人の心をなくしてしまったと見えます」

「あいつが全部持ってちまったからな。それにそれはお互い様だろ、女狐」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。