ブルア廻戦   作:天翼project

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今回は原作174〜175話までの範囲でお送りします


元ミレニアム自治区結界

 

アリスが(ポイント)の譲渡総則(ルール)を追加するより前のこと。

 

元ミレニアム自治区結界(コロニー)で猛威を振るっていた泳者(プレイヤー)の一角、カイザー・プレジデントをクロコが下したことによってプレジデントの手駒であったオートマタやカイザーPMCは機能を喪失。

プレジデントによる神秘の供給によって強化されていた彼らは頼りにしていた力を失ったことで直に結界(コロニー)内の特異体に喰らい尽くされる。

 

そんな様子を観測していたのは、戦場を俯瞰し我関せずを決め込んでいた2人の泳者(プレイヤー)

その内の1人、浦和ハナコは上空をふよふよと漂いながら興味深そうにそれを行ったクロコを眺めていた。

 

(プレジデントの手駒も使い物にならなくなって…ご本人の戦闘力も生半可なものでは無いはずですが、あの方は中々…まあ鬱陶しい人達がいなくなったのは良いとして、問題はこれで…)

 

 

 

 

 

そしてビルの屋上から同様にそれを見下ろしていた黒舘ハルナもまた、クロコへと興味を向ける。

 

「コガネ、1分以内に(ポイント)に変動があった泳者(プレイヤー)を表示してください」

 

『はぁーい!』

 

ハルナの指示によりコガネは目を光らせると、モニターを表示する。

そこに浮かび上がるのは、『砂狼クロコ 所持(ポイント)35点』の文字。

 

「砂狼クロコさんですか。最近(ポイント)を上げていた方ですわね。私が近付いても反応がなかったと思えば、クロコさんに手一杯だったわけでしたか。おそらくこれで…」

 

 

ハナコとハルナ、それぞれの読みは同一ではあるが、次の展開に対しての感情は正反対。

 

 

((剣先ツルギが動く!))

 

 

「面倒ですね…!」

 

「面白くなってきましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん」

 

カイザー・プレジデントの頭をもぎ取って撃破したクロコは戦闘の際に服に付いた埃を払い落とし、銃の調子を確認して次へと備えていた。

そこに、恐る恐るといった様子でぞろぞろと数十人の人が近くの物陰から姿を現した。

 

「あの…クロコさん…?」

「ん、もう出てきて大丈夫。このまま北上して結界(コロニー)の縁の方を目指すよ」

 

それは、ここに来るまでにクロコが保護してきた結界(コロニー)内に取り残された一般人達。

初めから結界(コロニー)の範囲にいた一般人はマルクトから1度だけ脱出の機会を与えられていたが、彼女達はマルクトの話を信じられなかった、或いはその場所を離れられなかった等の事情でそのまま結界(コロニー)に閉じ込められてしまったのだ。

 

彼女達を安全な場所に避難させるためにクロコは露払いをしながら誘導を行い結界(コロニー)の外側を目指そうとするが…初等部らしき少女が歩き疲れた様子なのを見つけると、周囲の安全を確認して足を止めた。

 

「ん…少しこの辺りで休憩しよう。そこのスタジアムは強い泳者(プレイヤー)の縄張りだったけど、もうやっつけたから安全。暫くは誰も近付けない。近くに温泉もあるしそこで休むのも…いや、皆!早く中に入って!」

 

プレジデントが拠点にしていた大きなスタジアムに一般人達を避難させようとしてたクロコは、近付いてくる極めて強力な気配にそれを急がせる。

彼女らは何が何だか分からずもクロコの鬼気迫る様子に足早にスタジアムの入口へと駆け込み、全員が中に入ったのを確かめたクロコはスタジアムの入口…その上の方へと呼びかけた。

 

「『センセイ』!」

 

 

”うん”

 

 

そこに姿を現したのは、プレナパテス。

プレナパテスは入口の天井に強く腕を叩き付け…崩壊させて簡易的なバリケードを作り上げた。

相手がその気になれば簡単に突破されてしまうだろうが、少なくとも戦闘の余波からはある程度防いでくれるだろう。

 

ひとまずの一般人達の安全を確保したクロコは近付いてくる気配の方向へと振り向き───その方向から、ビル1つを粉砕しながら人影が1つ現れた。

 

「ぎぃゃあぁぁぉぁ!!」

「…その顔見たことある。特級に区分されてるアウトロー、”剣先ツルギ”」

「!オマエも…オマエも私の邪魔をするのかぁぁぁぁ!」

 

クロコの発言が何か気に障ったのか、ツルギは激情を燃え上がらせそれに呼応するように神秘も暴力的に膨れ上がって風圧を作り出す。

ビリビリと痺れるような、まるで衝撃波のような圧力がただツルギが猛り神秘を垂れ流すだけで巻き起こされているという事実にクロコも相手の面倒さを認知して集中を高めた。

 

「どいつもぉ!こいつもぉ!なんでぇ…きえぇぇぇぇぇ!!」

「ん、あれはまさに悪鬼羅刹。滅ぼすべき」

 

人を1000人殺してきたような形相を浮かべるツルギにクロコも臨戦態勢を取る。

同様にツルギもまただらんと垂らした腕に持つ2丁のショットガン、その片方をクロコへと向け…銃口から明らかに銃の性能に見合わない量の散弾が放射状に放たれた。

 

予想外の攻撃範囲に回避は不可能と瞬時に判断したクロコは自身を中心として爆発的に神秘を放出することでそれらを相殺し、次の攻撃が来る前にツルギへと迫って頭を掴み、ありったけの神秘で腕力を強化して地面へと叩き付ける。

並大抵の者ならばそれだけで頭が潰れたトマトのようになる一撃だったが…

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

「ん…!そう簡単にはいかないよね…!」

「きひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃっ!」

 

ツルギは片手の銃を置き頭を掴んでいるクロコの腕を掴み返すと、力づくで引き剥がして仰向けの体勢のままクロコを振り回して乱雑に放り投げる。

片手を地面に着き足を引きずりながら着地するクロコだったが、ツルギは置いていた銃を拾いながら先程の攻撃がまるで効いてないかのようにむくりと起き上がり、左右に身体を揺らめかせたかと思えば瞬き1つの間にクロコはすぐ目の前のツルギの凶悪な眼光と突き合わせていた。

 

強烈な膝蹴りが入りクロコの身体が浮き上がり、そこに両手のショットガンで射撃を加え吹き飛ばす。

吹き飛ばされた方向にあったビルへと突っ込み内装の部屋を幾つか突き破った所で止まったクロコは外に出ようと身体を起こすが…既にその時には追いついてきていたツルギの靴裏が顔のすぐ正面まで迫っていた。

防御も間に合わずに顔面を蹴り飛ばされビルの外まで突き抜けて、また追いつかれる前に錐揉み回転する身体の制御を取り戻してビルに空いた穴から跳躍しようとしているツルギを睥睨する。

 

「くははははは!」

「子供が泣く…叫び散らかすのもそのくらいにして欲しいな」

 

奇声を上げながら超高速で飛びかかってくるツルギにクロコは銃を構えると、牽制目的で乱射する。

当然対してダメージを与えることも出来ずにツルギは弾幕を突っ切って来るが…至近距離で撃とうとしてきたショットガンを横に蹴って妨害し、その反動を利用して自分の身体を真横に一回転させて逆さまに、ツルギの足を掴んで直下へと投げつけた。

 

落下地点で直ぐさま起き上がったツルギは未だ落下中で身動きの取れないクロコを撃ち落とそうと真上に両手のショットガンを向ける。

クロコの銃弾は脅威にならないと遠距離攻撃への警戒を怠っていたツルギに…クロコは真下へと滝のように神秘を放出してツルギへと叩き付ける。

 

まるで強い圧力をかけられたように地面にめり込んだツルギへ銃弾を撃ち込みながら着地すると、人型に空いた穴の底から顔を出したツルギにもう一度神秘の放出による衝撃波を放って地面を抉りながらぶっ飛ばし、近くにあった折れた電柱を拾い上げるとそれを着地したツルギに投げつけた。

 

 

 

「…出力はまあまあ、驚くべきはその神秘の総量ですわね」

 

 

「底が見えませんね。あちらの式神…?も強力と。プレジデントを狩ったのは伊達ではないということですか。それにしてもやっぱりツルギさんは怖いですねぇ」

 

 

「…面倒」

 

クロコとツルギの激闘の様子をそれぞれ観察していたハナコとハルナ。

そんな2人の視線を察していたクロコは、どうやって手札を隠しつつツルギを仕留めようかと頭を悩ませる。

それぞれが特級として区分されるアウトロー、1人だけならばクロコが本気を出せばそこまで苦労することはないが、連戦、或いは乱戦となると話は変わってくる。

 

かなり強めに攻撃した筈のツルギもぴんぴんとした様子で復帰しており、力をセーブした状態でまともに相手していれば時間がかかり過ぎてしまうだろう。

 

「…もうちょっと真面目にやろうかな」

「くひひ…どこだぁ…!どこにもない…私の────がどこにもなぁいいい!!」

「…怖」

 

取り敢えずもうしばらく弱点を探りながら相手取ることを決めたクロコだったが、狂ったように奇声を上げ続けるツルギに若干尻込みする。

しかし連戦を視野に入れて手札を隠しつつの対特級アウトロー戦、条件としては非常に厳しいが…それの達成を諦める程クロコの冠する『特級』という文字は軽くはなかった。

 

(物資が有限な以上いつか結界(コロニー)を出入りできる総則(ルール)が必要になってくる。けど、プレジデントみたいに攻撃範囲も広く無差別に攻撃する泳者(プレイヤー)は他の結界(コロニー)にもいるはず。それを自由にさせたくは無いから追加するとなると全ての結界(コロニー)を平定した後…結界(コロニー)の平定を確認するにも連絡を取る為の総則(ルール)がいる)

 

アリスがまだ(ポイント)譲渡の総則(ルール)を追加していないこの時点で、クロコにとって事態の収拾の為に追加しなければいけない総則(ルール)は最低でも4つ。

(ポイント)の譲渡総則(ルール)』、『死滅回遊からの離脱総則(ルール)』、『連絡手段を確立する総則(ルール)』、『結界(コロニー)を出入り出来る総則(ルール)

アリスやヒナがまだミレニアムでの事変から身体にも心にも余裕が無いだろうと、クロコは無茶とも思えるこの状況の打破を決める。

 

(私が400(ポイント)を取る。そして…私がマルクトを殺す。ホシノ先輩に、2度も大切な人を殺させたりなんかしない)

 

危機的な状況を前に決意を新たにしたクロコは、改めて復帰してきていたツルギを睨むと音を置き去りにするような踏み込みで肉薄し、ショットガンを持つ腕を蹴って取り落とさせ、もう片方も自身に照準が合わせられる前に手首を手刀で叩いて武装を解除させた。

両方のショットガンを落としたツルギは舌打ちするも特に焦ることはなく、クロコの胸ぐらを掴み上げ後方の地面に向かって半円を描いて叩き付け、今度は反対側へと叩き付け、それをメトロノームのように繰り返して何度も地面に叩き付けるがクロコが爆発的に神秘を放出したことで吹き飛ばされて中断される。

 

ツルギから解放されたクロコは念の為落ちたショットガンを踏み砕いて使い物にならなくさせ、飢えた猛獣のように突っ込んでくるツルギの首を脇に挟んで締め上げると、後ろに転ぶように倒れ込みツルギを頭から地面へと突き立てた。

 

頭だけが地面に刺さったツルギは少し藻掻いて頭を引っ張り出すが、その瞬間を狙ってクロコの蹴りが顔面に入ってその場で縦に一回転してうつ伏せに倒れ込む。

 

「きしゃあぁぁぁぁ!」

「ん、まだ元気…ならこれはどう?」

「ぎえっ!?ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 

未だダメージらしいダメージを与えられた手応えのないクロコは、今度は趣向を変えてツルギの近くにあった車のガソリンタンク部分を撃ち抜き、炎上にツルギを巻き込んだ。

全身が炎に包まれ叫び声を上げるツルギだったが…クロコは炎の中の狂気的な瞳と目が合い、咄嗟に後ろに跳んでツルギの突撃を避ける。

 

強襲を躱されたツルギは今度は燃え盛る車を持ち上げて雑にクロコへと放り投げ、それを蹴りで打ち返されると腕で叩き落として粉砕する。

直後に地面を這うような低姿勢でクロコの足元に接近して足払いをかけ、跳んで避けられると今度は両腕を地面に叩き付け、腕力だけで地割れを引き起こした。

 

「なんて馬鹿力…!」

「ぐひゃひゃひゃしゃ!きえぇあああ!」

 

猛攻は止まず、地割れによる足場の揺れによってクロコが体勢を崩したところに腰に組み付いたツルギは建物の方へと跳躍すると何棟もの建物を貫通しながらクロコを壁に叩き付け、勢いが落ちたところで足を地面に突き刺して踏ん張り、ジャーマンスープレックスをかける。

ゴキッ、と嫌な音を首から立てたクロコだが…ゼロ距離からの神秘放出でツルギを吹き飛ばして1度距離を取ると、顔を顰めて首元を抑えた。

 

「痛ったい…寝違えた時みたい。それより、あなたもか…」

 

ようやく炎が鎮火したツルギは全身に酷い火傷を負っていたが、それらは逆再生されたかのように元の状態へと戻り、やがて目に見える外傷は全て完治していた。

先程からクロコが感じていた手応えの無さの正体…それはツルギの圧倒的な”恐怖”による自己再生能力によるものだった。

 

戦闘が進むに連れて形相をより凶悪に歪めたツルギはそれに呼応するように感情も昂り神秘が吹き荒れ、動きにも迫力と鋭敏さを増してより速い速度でクロコへと迫る。

放たれた発勁は腕によるガードの上から衝撃を伝え、踏ん張りも無意味と言わんばかりに軽くクロコを吹っ飛ばしてビルを貫く。

一蹴りでそれに追いついたツルギはクロコを上空まで蹴り上げると、ビルの壁を駆け上がってある程度登ったところで壁を蹴ってクロコに飛びかかり、直角に落ちるような不自然な軌道でクロコをビルの屋上に叩き付け、そのままビルを縦にぶち抜いて最下層まで落とし、建物丸ごとを粉砕する。

 

 

しかしボルテージが上がっているのはクロコも同様、ダメージが蓄積する度に逆に高まった集中力は動きのキレを引き上げて、追撃に振るわれたツルギの腕を受け流してカウンターに胸に肘を打ち込んでぶっ飛ばすとその先にあった橋の下にツルギが落下する。

 

それを追いかけるクロコだったが、見下ろした橋の下にツルギの姿はなく…橋の下を回り込んで反対側から登ってきたツルギがクロコの背後から奇襲を仕掛けた。

だが、それに反応したクロコは橋の柵を引き抜くと飛びかかってくるツルギにぶつけて迎え撃ち、ツルギの真上まで跳ぶと腕をハンマーのように振り下ろして下の川へと撃墜した。

 

クロコも川に降りると既にツルギも復帰していて、やはり何事も無かったかのように佇んでいる。

 

(あっちも終わりが見えない…いつになったら倒せるんだろう…)

 

「なんで、邪魔する?」

「ん…?なんでって、何が?」

 

先程までの明らかに狂っていた状態から一転、突如として冷静さを取り戻したのかそう問いかけてくるツルギにクロコは首を傾げる。

その血走った目には深い怒りと執念が見て取れ、アウトローには容赦しないクロコをしても相手の事情が気になってしまうような強い激情の由来があるように見えた。

 

「なんで、私を追うんだ?」

「あなたがアウトローだから。人の青春を奪うような連中は───」

 

「私の青春を奪ったのは、オマエらだろう!私は何もしてないのに、人を見た目で判断するなぁ!」

「ん…?いや、ん…?あれ、でも…」

「オマエらはぁぁぁ!!」

「ちょっと…!」

 

その会話とツルギの様子から何かおかしいと感じたクロコだが、完全に暴走状態に入ったツルギは最早クロコの言葉に耳を傾けずに襲いかかった。

大袈裟に足を振り上げて水を巻き上げ、高く上がった水柱で視界が悪くなった一瞬を突いてツルギはクロコの肩へと掴みかかり、喉元を噛みちぎる。

 

「っ…!ん、ん…!」

「ぐぇ!?」

 

骨が露出するほどに肉を持っていかれたクロコは激痛を堪えツルギを掴んで川の上に跳び上がり、空中から地上を見回して目的の地点を見つけるとそこへ向かってツルギを放り投げる。

地面をバウンドしながらもなんとか着地したツルギに向かってクロコは両腕に神秘を集めて渾身の力を振り絞り落下の勢いのままツルギ…ではなく、そのすぐ真下の足元に向かって腕を叩き付けた。

 

「ぎっ…!?」

 

それによって、先程ツルギが作り上げたものよりも遥かに大きな地割れが起こり、直下には底の見えない暗闇が広がっている。

足場が割れてそこに落ちそうになったツルギは、断層に腕を突き刺して落下を防ぐと、反動を付けて真上のクロコに飛びかかり、山さえ崩せるようなボディブローを叩き込む。

それによってバキボキと骨が粉砕される音が痛々しく響き、クロコは嘔吐と共に血を吐き出した。

 

 

 

 

「…勝負ありですね」

 

「あら残念、味見したかったですのに」

 

戦いの様子を眺めていたハナコとハルナもそれで決着が着いたと思い、次は自分に向かってくるであろうツルギにどうやって対抗するか各々策を練り始める。

 

ぐったりと手足を力が抜けたように垂れさせるクロコにツルギは首を骨ごと噛み砕いてしまおうと口を近づけ────

 

 

 

 

 

 

 

「んっ」

「…?…!?〜〜〜〜っ!?」

 

ちゅっ、とクロコは近付いていたツルギへと口付けをした。

一瞬何が起こったのか分からず硬直していたツルギは、状況を理解するのと共に顔を紅潮させ明らかな動揺を見せる。

慌ててクロコから顔を離して突き飛ばそうとするも、今度はその腕をクロコが掴んで離さない。

 

「ねえ」

「ひゃ、ひゃい…!?」

 

クロコが声を掛けるとこれまでの奇声からは信じられない、生娘のような高い声を上げて返事をするツルギ。

そんなツルギに向けてクロコは一言。

 

「取り敢えず、暫く寝てて」

「!?」

 

クロコは掴んだツルギの腕を振り回して真下へ投げると、上から叩き付けるように神秘を放出する。

光の柱のようなそれはツルギを飲み込んだが…今更ただの神秘放出が決めてになるはずもなく、ダメージを瞬時に回復させたツルギが歯を剥き出しにして唸り声を上げた。

 

「うぅぅぅぅ…!ぐぎゃぁぁぁぁぁ!」

「事が済んだらこの後一緒に温泉でもどうかな?丁度この辺りに温泉がある…地底火山もね」

「…!?ぎぇぁ…」

 

直後───巨大な地震と共にクロコが作り上げた地割れの底から、噴水のように溶岩が吹き出してツルギを巻き込み飲み込んだ。

先程の真下への神秘放出、地割れの奥底にまで届いたそれが地脈を刺激し、地底にあった火山が噴火を起こしたのだ。

 

溶岩に飲み込まれたツルギはドロドロとしたそれに身動きを絡め取られ、復帰することも出来ずに地割れのそこへと落ちていった。

それを見届けたクロコはツルギに食いちぎられた首元と粉砕された骨や内蔵を恐怖で治癒し、ハナコやハルナの方を見回す。

 

 

「うふふ…♡中々大胆ですね♡」

 

 

「あらまあ、なんて情熱的なのでしょう」

 

 

(恐怖が使えるのは隠したかったけど…やっぱり手を抜いたまま勝てる相手じゃなかったかな。あいつの戦闘力を見誤った)

「ぺっ…さて、次はどっちが来るかな」

 

口の中に残った血を吐き出し、クロコは連戦も望むところと銃をリロードして───

 

 

 

 

 

「使えるんですね、”恐怖”を♡」

「!」

 

警戒を続けていたクロコは、意識の内にいた筈のハナコが背後に回り込んでいた事に気付けなかった。

耳打ちするように口元に手を当て妖艶に囁くハナコへ振り向きつつ腕を薙ぎ払おうとするクロコだったが…バキッ、という何かが割れるような甲高い音、そして空間に生じた歪みとひび割れと共にクロコは遥か彼方まで吹っ飛ばされたのだった。

 

 

 

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