ブルア廻戦   作:天翼project

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今回は原作183〜184話までの範囲でお送りします

例の展開は相当カオスになっています


D.U.第2結界─弐─

 

「───神秘解放『スコルピウス』」

 

接触不可能なシュロの厄介な秘儀に翻弄されるアツコは、真面目に攻略するのが面倒になり神秘を解放、領域を展開する。

そしてその領域の必中効果によって、シュロの脳内には領域のルールの開示が行われた。

 

(こ、これは…頭の中に流れてくる!これがあいつの秘儀であり領域の…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

 

さっちゃん…皆のお姉さん。責任感が強く誰よりも前に立って仲間を引っ張る頼れるリーダー。自分探しがてら様々なバイトをしているが毎回踏み倒されてお賃金を貰えたことは無い。天然。

 

みさき…冷静で思慮深いクールビューティ。状況を読む力に長けていて状況把握能力はさっちゃんに勝るとも劣らない。自傷癖と花粉症と閉所恐怖症が玉に瑕。湿度が高い。

 

ひより…末っ子気質な甘え屋さん。ネガティブで判断力に欠けるが思いやりのある優しい子。目がよく動体視力も高い。1度情けを受ければその3倍は要求する厚かましさと開き直り精神の持ち主。

 

ひめ…皆のお姫様。心優しくお花が好きなちょっと気の抜けた子。人を信じやすく、それが災いして騙されることもしばしばあるが皆が守ってくれている。子供の作り方を知ってるぞ。

 

べあ…皆のマダムの赤い人。大きい。怖い。犬とか蹴ってそう。

 

 

 

 

アリアリアリアリアリアリアリアリアリナミン製薬の錠前サオリだ、よろしく頼む。

『スコルピウス』はアツコが考えたゲームのルールが必中効果として反映された領域だ。

今回のルールは簡単、私が出した手にアツコが勝てれば第2段階へ突入、マダムの撃破チャンスへと移行するぞ。

そこでマダムを撃破出来ればアツコはゲームクリアとなって第3段階へと移行、それをさらにクリアすれば多大な恩恵が受けられる。

ちなみにラウンドを移行する事にアツコにはボーナスが入って強化される仕組みだ。

ゲームの開始はアツコが攻撃する度に行われ、第1段階の成功率は3分の1、第2段階の成功率は5分の1、第3段階の成功率は7分の1となっている。

どの段階でもゲームに失敗すれば次のゲームは第1段階からやり直しになってしまうので注意だ。

 

なおゲーム中は偶に『演出』が発生し、『演出』が発生したゲームでは失敗してももう一度挑戦するチャンスが得られる。

この『演出』が4回続いた場合その段階を確定でクリア出来るぞ。

 

『演出』の種類は、

・マダム舞台装置化チャンス

第2段階をスキップ出来るチャンスだが、この予告演出が成功した場合は第3段階移行時のボーナスが得られないぞ。

 

・青春宣言

第3段階に出た場合は確定で1回以上は失敗してもやり直せる演出だ。

その分第1段階と第2段階に出た時の当たりは弱いぞ。

 

・ᓀ‸ᓂばにたすカットイン

連続4回の演出に発展しやすい演出で、出ればほぼ確実にそのラウンドをクリア出来るチャンスだ。

 

・爆発オチエンド

第1段階で出ようが第2段階で出ようが、この演出が出た時に成功すれば問答無用で残りの段階を全てスキップして第3段階のクリアボーナスを得られるぞ。

但しマダム舞台装置化チャンスと同様、これでスキップした段階移行時のボーナスは得られないので注意だ。

 

などがあり、下の方の『演出』ほどゲームクリアの期待度が高くなる。

 

それでは最初のゲームを始めよう。

第1段階のゲームは単純なじゃんけんだ。

では行くぞ…

 

ヴァニタスじゃんけんじゃんけんぽん!

私はパーを出したぞ。

勝っても負けても虚しいだけだ…

 

 

 

 

「あ、負けちゃった」

「手前の脳にゴミのような情報流さないでくれますかぁ!?」

 

アツコの領域の必中効果によりそのルールを強制的に理解させられたシュロ。

当のアツコは領域内で行われるゲームでチョキを出して失敗していたが、特に気にする様子もなく指をチョキチョキと動かすと…シュロの胴体を挟む直前の大きなハサミが出現した。

 

「っ…!こんなもの…!」

(…いや、本当に…?やっぱり…駄目…!)

 

そのハサミに自分は『稲生物怪録』の秘儀がある為無駄だと高を括っていたシュロだったが、不思議と感じた悪寒に従ってサッとしゃがんだ。

その直後に大バサミは刃を閉じて…シュロの髪の一部を切断し、切られた灰色の髪がハラリと落ちる。

 

「なっ…なんで、当たるんですかぁ…!」

「そっか、知らないよね。神秘を解放することで展開される結界に秘儀が付与された生得領域、その領域内ではどんな相手にも攻撃が絶対に当たるんだ…君のそのすり抜ける力があったとしてもね」

「っ!?そんな、ありえませぇん!」

 

自分の無敵の秘儀が通じないことを告げられ、シュロは半ば自棄になってボロボロの本のページを捲ると、そこから無数の笠のような特異体を出現させてアツコに襲いかからせる。

アツコはそんな特異体達をまとめて腕の一振で吹き飛ばし…領域内に無駄に荘厳な賛美歌が響き渡る。

 

それと共にシュロの脳内にもまたあの演出の声が流れ込んだ。

 

(しまった…!あいつが攻撃する度にこの演出が入るんでしたぁ…!)

 

 

 

 

アリアリアリアリアリアリアリアリありがとうオリゴ糖の錠前サオリだ。

縁もたけなわ、遊戯はまだ始まったばかりだから楽しんでいってくれ。

ところで話は変わるが海で皆”水着”というものを着てはしゃいでいるが、水着とは下着と何が違うのだろうか。

防水性の違いか、その他機能性の違いか、なんにせよ私は下着のまま出歩くのが駄目で水着は良いという風潮があまりよく分からない。

 

それでは今回のゲームを始めるぞ。

 

ヴァニタスじゃんけんじゃんけんぽん!

私はチョキを出したぞ。

勝っても負けても虚しいだけだ…

 

 

 

 

 

「あ、今回は勝ったよ」

 

(なんで特に意味の無い小話が挟まるんですかぁ!)

「ふっざけんじゃねぇですよ!」

 

演出に対してグーを出していたアツコは握り拳を天へと突き上げるように掲げ…領域内に幾つもの巨大な岩が出現し、それがシュロが呼び出していた特異体の群れをまとめて押し潰した。

シュロ自身にも岩は落ちたが、それをシュロは本からこけしのような特異体を呼び出すことで迎え撃ち、岩を破壊することで防いだ。

 

「絶対に当たるとは言っても防げないわけじゃねぇようですぇ!」

「まあね。私の領域は攻撃力低めだからね」

「ハッ!この風情も風流もないくだらないお遊び、直ぐに終わらせてあげますよぉ!」

 

(今のじゃんけんの勝利であいつは第1段階クリア、先程の感じからして演出自体の妨害は不可能、1度ゲームが始まれば見守るしかない…ならそれを見守るかゲームのクリア前に本人を倒すしかありませんがぁ…まず問題はゲームの段階が進んだ時にあいつが得るボーナスとやら。あんまり重ねられるのも面倒ですのでぇ…ゲームに失敗させて第1段階に戻させる!)

 

領域から次々と送られてくるこの意味不明な遊戯を自分なりに必要なら情報のみを取捨選択し、攻略法を編んでいくシュロ。

まずは演出時に行われるハサミや落石のような攻撃に対処出来るように3体のこけしのような特異体で自分を守らせる。

さらに特異体を絶え間なく放つことで少しでもアツコの気を引こうとする。

だが…

 

「この領域内では私のルールは絶対。ほら、第2段階の始まりだよ」

「チッ、またあのふざけた演出がぁ…!」

 

特異体を勢いよく蹴り飛ばし、吹き飛ばされた特異体はこけしの特異体も巻き込んで領域の縁の壁に衝突し、諸共消滅する。

そしてその攻撃行動が起点となって再びゲームが開始した。

 

 

 

 

 

アリアリアリアリアリアリアリアリ有馬記念の錠前サオリだ。

馬刺しというものは食べたことがないが、正直豚肉と牛肉の違いがあまり分からないでいる。

これに限った話では無いが、食感を抜きにすればキノコとかも食べ比べて全部一緒だと思う自信があるぞ。

 

さて第2段階のゲームはマダム撃破チャンス、生贄を使って力を得、取り柄であるボディすら失った怪物へと変化するぞ。

この状態のマダムは領域内の全ての参加者を無差別に攻撃するが、アツコはこれを1分以内に撃破出来れば第2段階クリアとなる。

撃破の判定はマダムへの攻撃時に初回は5分の1の確率の抽選で行われ、クリティカルヒットが出れば撃破。

抽選に失敗して攻撃回数を重ねる程にこの確率は低下していくぞ。

 

なお他の参加者はこのゲームクリアの妨害が可能だが、マダムの攻撃は無差別だと覚えていてくれ。

 

 

 

 

 

「来たね」

「相変わらずクソみたいな前語りが付いてきやがりましたがぁ…そうですかぁ、邪魔出来るんですねぇ!なら幾らでもやりようはありますよぉ!」

 

領域内に、おぞましく開いた花のような頭部を持つ赤い怪物が現れる。

それはアツコとシュロを見下ろすと、頭部から4方向へのレーザーを放って攻撃する。

追尾性の弱いそれはアツコどころかシュロですら簡単に避けられる程度のもので、カイブツ自身の速度もノロイためアツコならば直ぐに倒してしまえるだろう。

だからこそシュロは全力でゲームクリアの妨害を試みた。

 

無数の傘の特異体を怪物を守らせるように配置し…それを怪物が腕を薙ぎ払って一掃してしまう。

 

「こっちは手伝ってやろうってのにぃ…!ルールも面倒なら具現化するものまで面倒ですねぇ!」

「うん、だから戦った相手からはあんまり好かれないんだ」

「させねぇですよぉ!」

 

怪物へと飛びかかったアツコを、シュロはこけしの特異体をその間に割り込ませることで一気に怪物まで近づかれるのを防いだ。

こけしの特異体と空中で正面衝突したアツコは跳躍の勢いが殺され、こけしの特異体を瞬時に殴り潰して怪物に近づこうとするも、さらに3体のこけしの特異体と20を超える傘の特異体が正面を阻む。

 

(マダムの攻撃を利用すればあいつの妨害も蹴散らせるけど…もう30秒しかないや。ここをクリアしとかないと勿体ない)

 

(行かせませんよぉ…!これ以上またあのふざけた語りが聞かされてたら言語能力に深刻な障害が残りかねないじゃねぇですか…!)

 

第2段階をクリアしたいアツコと、それを邪魔して第1段階へと戻したいシュロの攻防。

その間に挟まれる怪物はアツコをシュロの支援ごと吹き飛ばし、時にシュロも攻撃して何度も毒を吐かれる不憫な存在と化した。

 

無限かと思えるほどに溢れる特異体の群れに第2段階移行によるボーナス…神秘出力の強化の恩恵を得た身体能力をもってしても中々押し切れず一度も試行回数を稼げないまま残り時間が段々と減っていき、焦りを覚えたアツコは賭けに出るために無防備に怪物の前へと立つ。

アツコを妨害するようにとシュロからの命令を受けている特異体達は一斉にその正面を阻むが…

 

「っ!お前ら待ちやがれです…!」

 

その意図に気付いたシュロは特異体達に退くよう指示を出すも時すでに遅く…特異体達の背後から怪物がレーザーを放ち、正面を一掃してアツコへと襲いかかる。

 

残り3…2…

 

対してアツコは、レーザーに真っ向から飛び込むとその中を泳ぐかのように突っ切って怪物の顔の正面まで飛び上がり…残り時間1秒のところで渾身の拳によって怪物の顔面を殴り飛ばした。

 

 

「…うん?」

「はっ、あはは!残念でしたねぇ!」

 

 

しかし、アツコが拳を振り抜く直前に拳と怪物の顔の間にこけしの特異体が割り込んだ。

怪物への攻撃の判定は直接の接触でなけれ発生せず、こけしの特異体が間に挟まったことでその条件は満たせない。

そして、結局第2段階開始から一度も抽選を行うことが出来ずに今この時をもって制限時間は0。

第2段階は失敗となった。

 

「また初めからやり直してくださいよぉ!」

 

 

「ううん、諦めたりなんてしないよ」

「はぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ᓀ‸ᓂばにたすばにたーたむ

たとえ全てが虚しいことだとしても、それは努力を続けない理由にはならない

 

 

 

 

 

 

 

制限時間が逆転し、残り10秒の段階へと巻き戻る。

 

 

「は〜あぁ!?」

「ᓀ‸ᓂばにたすカットインだね。あれが出れば何もしなくてもこの段階をクリアしたみたいなものだけど…今回は時間が無いから巻きで行くね」

「ちょっ…しまっ…!?」

 

完全に第2段階を意識から抜いていたシュロは突然の『演出』に困惑し、その間にアツコは起き上がろうとしていた怪物の胴体に強烈な蹴りを入れた。

 

 

 

マダム撃破チャンス!

”Week”!?”Effective”!?”Normal”!?”Regist”!?or…”Critical”!?

 

 

 

無駄に騒がしい演出が脳内に投影され、領域内に響き渡る賛美歌がそれを盛り上げる。

今更この領域のシステムにこの曲選はどうなってるんだと内心毒づきながら、この段階に入ってしまえばもう妨害は不可能とシュロは抽選が外れることを祈った。

 

 

(外れてください…外れてください…外れろぉ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

hit…hit…

 

 

 

 

 

 

”C R I T I C A L H I T”

 

 

 

「終わりだよ」

「がっ…そんな…ありえ、ないでしょ…う…そんな、都合良く…」

 

鳩尾に拳がめり込んだシュロは、目を回してその場にうなだれるように倒れ込んだ。

 

第2段階クリアによりゲームは第3段階へと移行…その際にアツコが得たボーナスは、神秘操作の精度上昇と五感の強化。

それは第1段階のボーナスで増幅された神秘出力、本人が制御しきれずシュロの特異体を突破しきれなくなるほどに持て余したそれを完全に掌握する事が可能になり、存分に増幅された出力を活かせるようになったことで、この時点でアツコの身体能力はシュロがまったく反応できないまでに跳ね上がった。

 

元々の戦闘経験の差、シュロはそれを手数で埋めてはいたが…それが通じなくなった時点で勝機を逃してしまっていたのだ。

実力でも…運でも。

 

「ごめんね、私不幸はとっくに使い果たしちゃってたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…今だけ私はただのペロロだ…心頭滅却すれば…なんだったか…)

 

アツコと共に東京第2結界(コロニー)へと侵入したペロロは、侵入時のランダム転送によってアツコとはぐれ、1人港のコンテナが立ち並ぶ地帯を散策していた。

その途中、近くから感じた凄まじい血の匂いと死臭が鼻をつき、警戒のためにコンテナの上で微動だにせず大きなぬいぐるみとして振る舞うことで周囲に溶け込もうとしたが…特に何も変化は感じられずペロロは仕方なくコンテナの下へ降りる。

 

(この血の匂い…3人分ぐらいの死体はあるか…?だが気配からしてこの状況を作った奴の神秘は微弱…いや、精巧に隠しているようだな。こういった神秘のオンオフが上手い奴は大抵手練れだから厄介だ)

 

今回は戦闘をアツコに任せるつもりで主目的の”白衣の天使”の捜索に注力するつもりだったペロロは近くに居るであろう強者に備え何時でも背中から武装を取り出せるようにすると、コンテナ地帯へと足を踏み入れて────

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

(あー…)

 

角を曲がった瞬間、丁度そこをコガネを引き連れ歩いていたのはオレンジ色の髪とメイドのようなヘアドレスが特徴的な小柄の少女。

雰囲気からして柄が悪く、両手には長い鎖で連結された2丁のサブマシンガンを持っている。

少女はペロロを発見するなり一瞬困惑したように表情を顰めた。

 

「なんだ、ペロロランドから脱走したのか?」

 

(くっ、なるべく戦闘は避けたい。勘違いしてくれているのならばここはただのペロロとして振る舞うか…)

 

 

「ペーロペロペロー!ペロペロー!ペロペロ様だペロー!」

 

 

「…」

「…」

「コガネ、あいつ泳者(プレイヤー)か?」

泳者(プレイヤー)だ!』

「何故バレた!?」

 

コガネへ確認を取った少女…今回D.U.第2結界(コロニー)を探索するに当たって最大の壁である泳者(プレイヤー)美甘ネルは、迸る雷の如き速度でペロロへと迫り右手の銃を真上に軽く投げると、右腕を突き出してペロロの腹をぶち抜いた。

続けて左手の銃を不自然に動かすと…鎖で連結された、先程上に投げられたもう1つの銃が左手の銃の操作に合わせてのたうち、勢いをつけてペロロの顔面へと直撃する。

 

(速い、重い、それに加えて…!)

 

仰け反り体勢を崩したペロロの脇腹にネルの華奢な脚が大気を引き裂くような風切り音を鳴らしながら叩き込まれ…同時にバリィッ!と激しい音と光を立ててペロロは横に吹き飛ばされ、コンテナの外装を突き破って中に突っ込んだ。

 

(ヒナの式神の『鵺』に近い、神秘が電気のような性質を持っていて、奴自身も常に帯電しているな…神秘で肉体強度を上げたり体表を保護しても、電流が体内を駆け抜けていくから防御出来ない!)

 

「どうした!もう終わりかぁ!?」

「ぐっ、いや、まだだ!」

 

コンテナから姿を現すのと同時に、ペロロはヘイローを切り替えて…背中から対物ライフルを取り出して構える。

ペロロ、アンチマテリアルライフルモードの解禁だった。

 

「ひぃ〜!?どうしてこんな辛くて苦しい場面で変わるんですかぁ〜!?」

「へぇ、気配がまるっきり変わったな。おもしれぇ…で?」

「うぅ…辛いですけど…苦しいですけど…それが生きるって事ですもんね…!」

 

ペロロは大きく後ろに跳び退くと、その状態で空中から正確無比な射撃を行う。

対物ライフルから放たれた弾丸は真っ直ぐにネルへと迫ってそれをネルは手の甲で弾いた。

が、普通の射撃ならば何でも無いはずの攻撃にヒリヒリとした痛みを感じると、途端に凶悪に笑ってペロロを睨む。

 

「弾に触れた手から神秘が削られたなあ。その上保護も弱まっちまってる。悪くねぇ」

「ひっ、いやそれにしては効いて…〜〜っ!」

 

ネルは移動の軌跡に電気のような光の尾を引くひどの速度で跳び退いたペロロが着地するよりも早くその着地点に回り込むと、飛べるはずもないペロロはそれを避けようがなく、着地した先でネルに羽を掴まれる。

なんとか藻掻いてそれを引き剥がそうとするペロロだったが…ネルは2丁の銃を繋ぐサブマシンガンでペロロの羽の根元を絞るように絡ませ、それをペロロの身体に対して外側へ引っ張り、ペロロの羽をもぎ取った。

 

「ふえぇ…」

「良くもねぇ。普通過ぎんだよ」

「ま、まだ…!」

 

羽をもぎ取られるも残ったほうの羽で対物ライフルを構えネルへと打ち込もうとするペロロ。

そこにネルは引きちぎった羽を投げつけてペロロの視界を覆った。

だが先程からネルの速度を測っていたペロロは辛うじて見えるネルの足元、その動きに反射神経を合わせてカウンターを入れることを決める。

目の前に迫るもぎ取られた羽、その端から見えるネルの脚…それが消えた瞬間、ペロロは引き金を引いて羽ごと迫る相手を貫いた…そう、思っていた。

 

「遅ぇ」

「後ろっ…!?」

 

ネルの速度はペロロの予測を上回り、真横を駆け抜けて背後を取るまでに圧倒的だった。

リロードが間に合わずペロロは銃身で殴りかかろうとするも、それよりも早くネルはペロロの顔面へと連打を叩き込みその着ぐるみの内部に居るであろう者に対して多大なダメージを与える。

殴られる度にネルの神秘の特性によって火花が弾け、体内にありったけの電流を流し込まれたペロロは身体が麻痺してろくに動くことすら出来なくなる。

 

「弱ぇ、弱過ぎんだろ…はぁ…」

 

コンテナにもたれかかって座り込むペロロに迫ったネルは、顔の高さを合わせるために屈むと一応といった様子でペロロへと問いかけた。

 

「お前、Keyがどこにいるか知ってるか?」

「…!」

 

(Key…って、アリスさんのことですよね…?目的は分かりませんけど…少なくともプラスになるようなことは無いはずですし…)

 

予想外の問いかけに言葉に詰まるペロロだったが、ネルの凶暴性と今の短い戦闘だけで感じ取れた気性からアリスに合わせるのは危険だと判断する。

 

「えっと…知りませんね…誰でしょう…?」

「…知ってる間だったな。吐けよ、殺さないでやっから」

「その…あの時の詐欺師の方がそんな名前だった気がします…!Key…けい…慶三さん!」

「死にてぇのか?」

「ひぃっ!」

 

誤魔化そうとするペロロだが、それを不快に感じたネルはペロロの腹に脚を乗せて腹部へと圧力をかけ、2丁の銃をペロロの顔へと向ける。

放たれる威圧感と殺気も強くなりつい悲鳴を上げて怯えてしまうペロロだったが…不意に、再びその気配が切り替わったのをネルは感じた。

 

「お…?」

「あんまり、ヒヨリを虐めないでくれる?それにこれは1人の身体じゃないんだから」

 

ペロロの外装の内から聞こえるのは、この状況でも随分と落ち着いた、冷静な声。

冷たく、虚無感の籠った少女の声。

その変化に口角を上げたネルはペロロの腹部に乗せていた脚により強い力をかけようとするが…先程ネルがもぎ取ったペロロの腕。

そこに空いた穴から飛び出た細い腕が持っていたスティンガーミサイル、そこから放たれた弾頭がネルの腹を捉えたまま加速し、向かいのコンテナへと突っ込んで爆発する。

 

 

「まったく…世話が焼ける」

 

───ペロロ、ロケットランチャーモード

 

 

「ここからは私が頑張らないと…ん?」

 

 

放った分の弾を背中から取り出し装填しようとするペロロ。

しかしその時、お腹の辺りでパチパチと小さく火花が散っているのを見た。

何事かと念の為腹部に神秘を集中させて保護を強め───向かいの爆煙の中から迸った電流がペロロの腹部を穿ち、風穴を開けた。

 

 

「がっ…ぁ…」

 

 

思いもよらない奇襲、神秘による保護を薄紙のように貫通した電気にペロロはその場に倒れ、それを爆煙の中から姿を現したネルが見下ろす。

 

ネルは、電気と同質の自身の神秘を電荷分離し、打撃を行った際に対象にプラス電荷を移動させていた。

それをマーキングとして、自身に蓄えていたマイナス電荷を地面方向への放電をキャンセルしつつ対象へと誘導する、神秘解放を使うまでもなく必中の雷撃。

 

風穴から流れて広がった血溜まりの上に倒れるペロロの背中に足を乗せたネルは、乱暴にその背中を蹴って改めて問いかけた。

 

 

「で、Keyはどこだよ」

 

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