ブルア廻戦   作:天翼project

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今回は原作213〜215話までの範囲でお送りします


特異胎天─肆─

 

あの時…古聖堂でKeyが空崎ヒナに感じたのは秘儀の潜在能力(ポテンシャル)と、K()e()y()()()()()だった。

アリスのように”器”ではなく”檻”になってしまう可能性も考え、確実に主導権を握る為にアリスの内側で力を取り戻しながら期を伺っていた…ヒナの魂が折れる瞬間を。

 

そして今、ヒナが特異現象捜査部として戦う最大の理由であったアコを救うこと、それが徒労だったことを知って心が打ちのめされた今のヒナは、Keyにとって格好の器であった。

 

「ひ、な…?」

「…」

 

この短時間に目まぐるしく移り変わった状況にアリスは目の前の事態を飲み込めず、ヒナへと呼びかけることしか出来ない。

しかし当然ヒナ本人からの答えが帰ってくるはずも無く…代わりにKeyがアリスの目の前まで詰め寄った。

 

アリスが反応するまでもなくKeyはアリスの鳩尾に強烈な拳を入れ、大気が揺れるような衝撃と共にアリスはぶっ飛ばされ直線上にあったビル数棟をぶち抜いてどこかへと消える。

 

「これで見納めでしょうか…さて、いつの時代も虫はどこからともなく湧いてくるものですね」

 

アリスがぶっ飛ばされた際の破壊音、そしてKey自身が放つ結界(コロニー)内に充満するような途方もない”死”の感覚を感じ取ってこの場に向かってくる者をKeyは察知していた。

寄ってくるのは、アコを結界(コロニー)内に送り届けた後に様子を見に来ていたレンゲ、そして結界(コロニー)内を駆け回り取り残された一般人の保護や救助を行っていたカヤ。

 

どちらも今この結界(コロニー)にいる者としては最高戦力として数えられるであろう傑物。

そんな2人の煩わしさをヒナの記憶を通して読み取ったKeyは手をグー、パーと開いたり閉じたりして調子を確かめると、掌印を結んだ。

 

 

「『鵺』」

 

 

Keyが発動させたのは、身体が持っている秘儀…ヒナの『十種影法術』

呼び出したのは、ビルの屋上を止まり木のようにして鎮座する全幅数百mにも至るであろう超巨大式神、『鵺』だった。

ヒナが呼び出していた時よりも遥かに禍々しさを全面に押し出した様相の鵺は空を覆うような巨大な翼をはためかせると、一瞬全身が帯電する。

続いて稲光は曇る空へと向かって迸り…暗雲が眩く閃光を放つと、地上へ万雷の雷が降り注いだ。

 

太く激しい雷は着弾したビルを丸ごと消滅させ、地面を深く穿ち、結界(コロニー)内を次々と焼き尽くしていく。

 

「壮観ですね、これで邪魔者を仕留められたのなら楽で良いですが…少なくとも()()()はしくじってしまいましたか」

 

「…Key…!諸悪の根源…災禍の病巣!ここで、あなたを救護します…!」

 

名も無き神々の転身であるミネはKeyに気絶させられた後も素早く復帰し、盾を構えてKeyの背後へと降り立った。

同時に、ミネを中心として溢れる理解不可能な光が自らを焼いてくるのをKeyは感じていた。

 

(ミネルバの神秘特性…あらゆる”病気”を取り除く『救護のオーラ』ですか。空崎ヒナに巣食う異物として、私自身も”病気”の元と認識され徐々にヘイローを引き剥がされようとしていると…何度思い返してみても意味が分かりませんね)

 

「救護!」

「フフッ、出来るものならばやってみなさい!」

 

(奴が、Key…!ヒナさんを救う為には、Keyがより深くヒナさんに根を下ろす前に引き剥がさなくては!多少荒治療になりますが…後に謝罪します。今は耐えてください!)

 

現在のミネの優先目標は第1にヒナの救出、第2にKeyの抹消。

優先目標とは言うがヒナの救出とKeyの抹消は直結し、ヒナからKeyを引き剥がせれば器を失ったKeyはどの道形を保てず消滅するだろう。

しかし時間をかければかけるほどKeyはより深くヒナに根付き、やがて完全に一体化すればヒナを救うことは不可能になってしまう。

故にここからは時間との勝負になる。

 

「彼女から出ていきなさい!Key!」

 

素早くKeyの懐に潜り込んだミネは、顎下をアッパーで打ち上げて空高くまでKeyを跳ね上げると、それを追い越す勢いで跳躍し頭上まで回り込んだ。

そこから不自然な軌道で真下へと急降下、盾をKeyに打ち付け直下のビルを最下層までぶち抜いて地上へと叩き付ける。

盾と地面に挟まれるKeyだが、地面を砕いて掘り進むことで抜け出し、反撃にミネへ蹴りを放つ。

 

だがそれを巧みな盾捌きで受け流したミネは流した勢いでKeyにシールドバッシュを打ち込み、少し後退したところに盾を地面に突き刺すと、それが起点となって生じた光の衝撃波がKeyを強く焼いた。

 

「ぐっ…!」

「救護!救護!救護!」

 

(やはり、まだ完全にヒナさんの身体に順応出来ていない。抹消ならば今が絶好の好機!)

 

ヒナの身体に乗り移ったばかりで完全にその機能を掌握しきれていないKeyは、常にミネが身体から放出する神秘の特性とミネの秘儀を消滅させる秘儀による衝撃波の合わせ技でゴリゴリとヘイローを削られていた。

この機会を逃せばKeyを打ち倒せるチャンスは次いつ巡ってくるか分からないと、ミネは神秘の放出と秘儀の出力を上げていく。

このまま焼かれ続けるのは堪らないと衝撃波の範囲外まで後退するKeyだったが、間髪入れず詰め寄ったミネはKeyに抱き着くようにして神秘の放出を全開にした。

 

「そろそろ剥がれる気になりましたか!?」

「ふ、フフ…ようやく目障りな檻から解き放たれたのですよ…?そう簡単に…終わるわけがないでしょう!」

「!?」

 

背骨からへし折らんとばかりにKeyに抱き着く腕に力を込めていくミネだったが、Keyは辛うじて稼働する手を動かしミネの脚に触れた。

 

「『捌』」

「うぐっ…!?」

 

脚に触れた手からKeyの秘儀が発動し、ミネの右脚が分解されて崩れ落ちる。

それによる苦痛に思わずミネが腕の力を緩めた隙に拘束から抜け出したKeyは更に手のひらをミネへと向けた。

 

「『解』」

 

「そうは、行きません!」

「こちらの台詞です」

「っ!」

 

今度は直線上を巻き込む分解の波動。

それをミネは盾を構え神秘で保護することによって耐え凌ぐが、その一発によって自慢の盾はボロボロと崩れ使い物にならなくなり、守りを失ったところにKeyはどこからか拾ってきた…殴り飛ばした時にアリスが取り落としたレールガンの銃口でミネの顔面を殴りつけ、同時に引き金を引いてKeyの神秘が乗った極大のエネルギーの塊が放たれる。

斜め下に向いたそれに押し込まれ、放たれたエネルギーが地面を掘削し、それに巻き込まれたミネは地中の奥深くまでめり込んだ。

 

しかしそれでも諦めず、残った片脚に力を振り絞って地上に出る勢いでKeyに突撃し、その先にあったビルの上まで共に吹っ飛んでいく。

ビルの屋上に着地したミネは翼で動きを補助することで戦闘を続行しようとするが…Keyを相手に万全でもない状態で敵うはずも無く、あっさりと抑え込まれてしまう。

 

「離し…なさい…!」

「構いませんよ、ただし置き土産はいただきますが」

「あぐっ!?」

 

藻掻くミネだったが、Keyはミネの翼を力づくで引きちぎって羽を散らすと、最初に受けた攻撃の意趣返しのように顎下を打ち上げ、跳ね上がったミネの首を掴むと地上へと投げつけた。

ビルの屋上の高さからKeyの膂力によって投げつけられたことで、決して脆弱では無いミネですらあっさりと意識を失ってしまう。

 

追いかけてトドメを刺しに行くか、ミネから受けたダメージを回復するのを優先するか悩むKeyだったが…

 

「…む?…まだいたのですか」

 

 

 

 

 

吹き飛ばされてから復帰して来ていたアリスは、Keyに叩き落とされたミネの姿を見て胸の内から底の無い怒りが込み上げてくるのを感じていた。

それこそ、ムツキによってコハルやユウカ、カズサを殺されたあの時のような…胸の内で溶岩が煮えくり返るような、そんな怒りが。

 

「…」

 

両足で力強く踏み込んだアリスはKeyがいるビルから向かいのビルまで飛び上がり…着地の衝撃でそのビルの上層階全体に亀裂が入って崩壊しかけそうになる。

それを向かいのビルから眺めていたKeyはアリスの姿を見るなり薄ら笑い…同じようにそんなKeyの姿を見たアリスは怒りに任せてKeyへと飛びかかった。

 

 

 

「Keyィィィィ!」

 

 

 

跳躍の衝撃によって限界を迎えていたビルの躯体は崩壊する。

対してKeyはアリスを受け止めカウンターを打ち込もうとするが、とっこんできたアリスの想像以上の速さとパワーに押されて受け止めきれず、ビルの外側まで放り出されてしまう。

地上に落下する前に手にしていたレールガンでアリスを撃ち落とそうとするKeyだったが…

 

「っ!?」

「これは勇者の武器です…光よ───!」

 

先程の突進の際にレールガンを奪い返したアリスは、それをKeyへと放つ。

放たれた極大のエネルギーの塊を受け撃墜されたKeyは今のアリスの異常さに疑問を抱いていた。

 

(なんですか、あの力は…あの小娘が…?一体何故───)

「!?」

 

アリスのあの力がどこから来たのか推察しようとするKeyだったが、その暇を与えずにアリスは巨大な瓦礫を投げつけてKeyを吹っ飛ばし、地面を砕く程の踏み込みで吹っ飛んだKeyの背後に回り込むと、その背中に向かって再びレールガンを放つ。

 

それを踏ん張って耐えるKeyは、殺意に満ちたアリスの目を見て昔聞いたとある話を思い起こした。

 

(そうですか、小娘はあの時の…)

「マルクトめ、気色の悪いことをしますね」

 

「Key!あなたは、あなた達は!どうして普通に生きられないのですか!どうして!不幸を振りまかずにはいられないのですか───がっ…」

 

慟哭するアリスに、Keyは容赦なく腕を振るって分解の波動にアリスを巻き込む。

首元を抉られ地に膝を着くアリスを見下ろすKeyは、首を慣らしてダメージを確認すると余裕を持ってアリスからの質問に答えた。

 

「私から言わせてみれば、何故あなた達はそうまでして弱いのですか?何故弱いのに生きることに執着するのですか?つつけば崩れてしまうような脆弱な生き物が、永く幸福でありたいなどとどうして口に出来るのですか?」

 

(…ああ…この人達は…こいつらは…どこまで行っても、”敵”なんでしたね…)

 

「壊そうと思わなくても触れるだけで勝手に潰えてしまうような方が悪いのでしょう。あなた達は身の丈にあった不幸を生涯噛み締めれば良いのですよ」

 

「…あなたは魔王です、Key。魔王は…倒されなければなりません」

「ほう?あなたの知識で学びましたが…お約束というものは創作(フィクション)だからこそ起こり得るのです。現実に、そう都合良いことはありません」

「そんなことは、ありません。あなたに…皆の平穏を、青春を…奪わせたりなんかしません!あなたが噛み締めてください!魔王(Key)を打ち倒す勇者の(アリス)を!」

 

「…良いでしょう、来なさい!小娘!」

 

アリスは1歩前へと踏み出す。

それと同時に、Keyはアリスに手のひらを向けて分解を引き起こす波動を放った。

波動はアリスの腹に当たり───服とその表面のみを散らすのみに留まった。

 

「…?そんな筈は…」

 

更に、何度も何度も分解の波動を放つが、どれも服や身体の表面を崩すのみで致命傷に至らせるようなダメージを与えられない。

その異常な現象に、そしてアリスの耐久力に事態を把握しきれないKeyは波動を放ちつつ一度距離を取ろうとするが…並の者ならば塵すら残らない分解の嵐を強引に突破したアリスは皮膚が崩れ筋肉が露出する腕でKeyの顔面を殴り飛ばした。

 

「っ…!」

(何故あんなにも硬いのですか…!いや、違う!それだけじゃない!私の神秘の出力が落ちている!)

 

そこでようやくKeyは自身の神秘の出力が弱り、本来の秘儀の威力を引き出せていない事に気付く。

アリス自身の耐久力が急激に向上しているのも勿論あるが…先程ミネからダメージを負ったこと、ミネの秘儀の特性によりKeyの秘儀が一時的に弱体化されていること、まだヒナに受肉したばかりで完全に定着していないこと、そして───Keyの内側でヒナの精神が直接抵抗し足を引っ張っていること。

それらの要素が積もりに積もり、Keyはアリスにすら押される程に大きくその力を落としていた。

 

「空崎ヒナ…見上げたものですね…!」

 

(ムラはありますが、それ以外の要因も含めて酷い時は出力が1割以下にまで落ちる…秘儀に頼らない肉体の動きの方ならばそこまで支障は出ませんが…まあ小娘を殺すのには十分でしょうか)

 

改めて身体の調子を確かめたKeyは、それでも尚真面目に戦えばアリス1人に負ける程では無いと確信する。

秘儀が駄目なら肉弾戦を主体にするだけでアリスではもう歯が立たなくなるだろう。

 

「なんにせよ、何事も仕上げというものは大事ですね」

「…」

「ん…?」

 

今度こそアリスを潰そうとするKeyだったが、不意にアリスの視線が自分ではない方向を向いたのに釣られて同じ方に目を向ける。

 

そこには、釈魂刀を担ぎ既に臨戦態勢を取っていたレンゲの姿があった。

先程鵺によって攻撃を仕掛けたにも関わらず、外傷の見えないレンゲにKeyはふっと笑みを浮かべる。

 

(雑に間引ける相手ではなかったですか…面白いですね)

 

「レンゲ先輩…」

「アリス、状況の説明を頼む。出来るだけ簡潔にな」

「はい…あいつは、Keyは…殺しても死にません」

「分かった」

 

「!」

 

瞬間、釈魂刀を地面に突き立てるようにして置いたレンゲはKeyへと回し蹴りを放って頭を狙い、それを腕でガードしたところに反対側から回り込んできたアリスがレールガンの銃身を叩き付けようと振り回してくる。

それを蹴り上げて軌道を逸らすことで捌いたKeyだったが、レンゲの蹴りを防いだ状態でそれをする為に無理な体勢を取ってしまい、その隙を見逃さずレンゲはKeyの腕を引っ張って引き寄せると、顔へ肘を叩き付けて仰け反らせ、さらに連続で顔面を殴りつける。

 

よろめいたKeyに追撃の掌底を打ち込んで吹っ飛ばし、そこにアリスはどこからか拾ってきた鎖を振り回してKeyの身体に絡ませると、鎖ごとKeyを振り回してレンゲの方へと投げ飛ばした。

 

「小娘、あなたは本当につまりませんね…」

「よそ見、すんな!」

 

投げられてきたKeyをレンゲが蹴り飛ばし、吹っ飛んで行ったKeyはその先にあったたてもののシャッターへと突っ込んで転がっていく。

直ぐに起き上がって来るが、その身体にはアリスとレンゲが与えた外傷は残っておらず既に回復しているようだった。

1度一息つくために合流したアリスとレンゲは、一向に倒れる気配の見えないKeyに辟易としながらも次の手を考えていた。

 

「しっかし、ヒナの顔で喧嘩が強いと違和感がすげぇな」

「レンゲ先輩を基準にしたら弱い人の方が多いと思いますが…」

「うっさい」

 

(死なねえって言っても、釈魂刀で切ったら恐怖で治癒できるのか…いや、今の目的は…)

「アリス、とりあえず目標は()()を殺してでも捕まえれば良いんだな?」

「…はい」

「もっと速くしても良いか?」

「…はい!」

 

「フフッ、来てみなさい」

 

道を阻まれることをむしろ愉快そうに、Keyは2人を迎え撃つ。

真っ先にアリスがKeyの背後を取り、足払いをかけようとするのを跳んで避けるKey。

そこにレンゲが飛び蹴りを仕掛けるも、それを受け止めつつレンゲの脚を掴んで地面に叩きつける。

が、脚を掴むKeyの手を振り払ったレンゲは地面に着いた手で身体を支え、その状態で脚を広げて駒のように身体を回すことで傾陽の横腹を蹴りつける。

 

軽く吹っ飛ばされなんとか踏ん張るKeyに、アリスがレールガンを放って追撃する。

それをKeyは分解の波動を放って相殺するが、立て続けにレンゲが肉薄し、同時にアリスも背後に回り込んできてKeyを挟み撃ちにする。

2人から繰り出される怒涛の打撃を両手を使って器用に捌くKeyは、期を伺ってそれぞれの腕を掴んで止めると、上へ弾くように振り払ってアリスとレンゲの体勢を崩す。

 

(秘儀の出力が落とされるのはおそらく空崎ヒナの同胞へ秘儀による攻撃を行おうとした場合のみ…ならば無機物への干渉には妨害を受けない!)

 

「『捌』」

 

「「!」」

 

Keyは地面に手を着くと、秘儀を発動させて一体の地面をまばらに分解する。

それによって足場が崩れ踏ん張ることの出来なくなったレンゲに拳を入れながら接触と同時に『捌』を発動し分解を試みるが、ミネによって削られた分先程のように一瞬で分解仕切ることが出来ずにレンゲの腹を一部抉る程度に留まる。

そしてレンゲもその程度のダメージでは止まらず、反撃の頭突きを叩き込んでKeyを下がらせ、そこにアリスがレールガンを打ち込んで直撃させ、分が悪いとKeyは足場を分解した時に巻き上げられた瓦礫を伝って2人から距離を取った。

 

「フフッ、良いですよ!もっと───む…」

 

「っ!アリス!避けろ!」

「なっ…!?」

 

戦いを楽しみ始めていたKeyだったが、ふと感じた知人の気配に落胆したように肩を落とす。

少し間を置いて同じように接近していた者の気配に気付いたレンゲはアリスに注意を呼びかけるが…2人が対応する前に()()が発動し───

 

 

 

「出力最大…『霜凪』」

 

 

アリスとレンゲを巨大な氷が飲み込んだ。

一帯を、ビル郡を、街を巻き込み尽くを凍てつかせる氷。

Keyはそれを行った人物…無名の司祭の横に下がると、少しばかり残念そうにしながらも巨大な氷を見上げた。

 

「あなたですか…いつここへ?」

「マルクトに特異体を借りて…ですが、差し出がましい真似を致しました。どうかお許しください」

「邪魔立てを…と言いたいところですが、相も変わらずこの術は絶景ですね。時間も惜しいことですし、許しを与えましょう」

「有難う御座います…それと、念の為天童アリスの凍結は弱めましたが…」

「小娘ならもう用済みですのでどうでも良いですが…もう片方の娘に出力を神秘を偏らせたのは正解です。さて…」

 

Keyは掌印を結ぶと、ミネの秘儀を受けた時に強制的に解除された巨大な鵺を再び呼び出して無名の司祭と共にその上に乗る。

 

「肉体の仕上げをします。”浴”の準備をしなさい」

「既に出来ております。少々御足労いただくことになりますが…」

「結構。本当に痒いところに手が届きますね」

「勿体なきお言葉」

 

鵺は2人を乗せたまま飛翔しその場を後にしようとするが…Keyはふと氷の方を振り返り、意地の悪い笑みを浮かべる。

そこには、氷を砕いて脱出し鵺に乗ってここを去ろうとしているKey達に向かってフラフラとした様子で無様に腕を伸ばそうとしているアリスの姿があった。

 

「Key…!」

 

「…殺しますか?」

「”浴”を優先します。それによく見なさい…なんと愉快なものでしょうか───実に情けない」

 

既に空高くまで飛び上がり、今のアリスではそれを追跡する余力もなく空に向かって叫ぶことしか出来ない。

そんなアリスをKeyは嘲笑い、思い出したように手を叩いた。

 

「ほら、いたでしょう。無限光の…」

「…クク、確かにあの目や口元が特に…!」

「似ているでしょう?フフッ、フフフ!」

 

 

 

 

 

ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ

 

 

 

 

 

悪辣な笑い声を木霊させながら、Keyと無名の司祭は結界(コロニー)の外へと姿を消すのだった。

 

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