「コガネ、
『却下されました。
「そうはいかないよ」
『却下されました。
どこまでも続くように見える雪原。
百鬼夜行のどこかにあるそこを『特異操術』によって支配下に置いたクズノハを伴って進むマルクトは、コガネとの交渉をしようとしていた。
その内容は『死滅回遊の永続』を侵すようなものであるため当然コガネはそれを却下するが、ならばとマルクトはクズノハを引き合いに出し脅すように言った。
「キヴォトスにはクズノハが特異現象の発生抑制と監督オペレーターの結界術を補助しその精度を底上げする為の数多の浄界と呼ばれる大結界がある。その中でも要となる四つの浄界…サンクトゥムタワーを中心とした浄界、クズノハの座す場所であり不可侵の聖域である黄昏宮の浄界、名も無き神々の墓場であるアビドス砂漠の浄界…そしてここ、超古代より不可思議な力が働きその全容を顕にしないミレニアムの『廃墟』の巨大浄界。死滅回遊はクズノハが作ったこれらの浄界をベースに作られた”梵界”…つまり浄界より高位の結界なんだ」
『へ〜』
「適当な相槌ありがとう。死滅回遊の
コガネにそう説明するマルクトは、隣を歩く虚ろな瞳で淡々と付き従うのみのクズノハに目を向けてつまらなそうに鼻を鳴らした。
ともあれ、元凶こそマルクトであれど被害がここまで拡大したのがクズノハによる要因も大きいのは事実。
というのも、ミレニアム事変の後クズノハがこれらの浄界を解き放てば死滅回遊は終わりマルクトの野望は全て水泡に帰しただろう。
だがこれらの浄界がなければ脈々と続いた特異現象との戦いや結界術のノウハウを太古の時代よりやり直さなければいけなくなってしまう。
その2つを天秤にかけた時、クズノハは多くのキヴォトスの民が死ぬことを許容し、浄界を守りつつもマルクトではなくミカ達が打ち勝つ事に賭けていた…その結果がこの状況だ。
「さて、そのクズノハは今私の掌中にある。この浄界を張った本人だからね。破壊することは簡単…じゃあもう一度聞くけど、コガネ。死滅回遊の新規
『
マルクトからの脅迫に死滅回遊の
今すぐ死滅回遊を終わらせられるか、新たな
どちらにせよ死滅回遊の”永続”は叶わなくなってしまう。
こうなった以上、コガネは少しでも長く死滅回遊を継続できる選択を選ぶしかない…即ち、マルクトの提案は通ってしまうということだ。
『
「さらに
『
「あはっ、これならどんな
Keyから譲って貰った空崎ヒナが持っていた
建物の中を散策し…目星を付けた床をトンと叩くと、床が抜け地下へと降りる。
そこを進んだ先に機械的な施錠が施された部屋があり…それをクズノハに解除させると、開いた扉の奥には椅子のようなものに座らされた一糸まとわぬ少女の肉体が置かれていた。
「う〜ん、似せて作ったとはいえ実際に見てみると本当に良く似てるね。クズノハもそう思わない?」
「…」
「…つくづくつまらないね、君は。これはKeyの手土産に持っていくけど良い?」
「…ああ、浄界の構成には問題ない」
支配下に置かれマルクトの質問に嘘を吐くことも誤魔化すことも出来ず、聞かれたことをあっさりと答えてしまうクズノハ。
自分で聞いておきながらなんの抵抗もなく良いようにされるクズノハに心底失望したようなため息を着いたマルクトは、呼び出した適当な特異体にその少女の肉体を回収させその場を後にするのだった。
特異現象捜査部の本部、S.C.H.A.L.Eにて。
Keyを逃し敗北を喫したレンゲは不機嫌に通路を歩き、同行していたココナは気を遣うように紛らわせられるような話題…マルクトが追加した
「あの
「ああ…そうだな。大方死滅回遊に使われる結界が邪魔なんだろ。だがこれでシンプルになったってこった」
「シンプルに…特に何も考えず戦えばいいってことですか?」
「まあな。マルクト達さえ倒せば当面の敵はいなくなるんだ。そうすりゃ後はゆっくり時間をかけて解決を目指して行きゃ良い」
「しかし…そうなると、Keyとも戦うんですよね?それってホシノさんと戦うようなものでは…?」
「そのクソバカピンクが復活するんだよ。ようやく目処が立ったところなんだ」
「くそばか…」
散々に言うレンゲだったが、その実感慨深い思いもあった。
ミレニアム事変で小鳥遊ホシノが封印されてから今日で19日…振り返れば短い時間ではあるが、その短期間に多くの出来事を体験したレンゲ達にとっては果てしなく長い時間にも思えたのだ。
そんな小鳥遊ホシノ復活の文字通りの鍵である”白衣の天使”、蒼森ミネはKeyに敗北した後にS.C.H.A.L.Eが有する集中治療室に運ばれ、セナやクロコの恐怖による処置を受けて回復していた。
が、それでも恐怖による治癒にも限界はある。
それが他人に向けられたものならば尚更で、Keyによって分解させられた右脚と引きちぎられた翼は回復しないまま欠損している。
「申し訳ありません…私達ではこれが限界でした」
「謝る必要はありません。むしろ謝らなければ行けないのは私の方です。ヒナさんを救い出せなかったことを…勿論感謝もしています。特にあの時、Keyに敗れた時に不知火カヤさんや栗村アイリさんの秘儀による干渉がなければあそこで命を落としていたでしょう」
実際にあの時、ミネがKeyによって地上に投げつけられ、そのまま地上に衝突していればヘイローの耐久値が限界を迎えヘイローが壊れてしまっていただろう。
それを落下地点付近にいたアイリが秘儀で作り出した巨大なミントアイスをクッションにして衝突の勢いを和らげ、それに加えKeyが呼び出した鵺の雷に足止めされながらも近くまで来ていたカヤの秘儀、『超人』がカヤの『死は人を笑顔に出来ない』という信念に従い効力を発揮したことでミネの死を遠ざけていた。
これらの要因と迅速な処置が間に合った結果ミネは一命を取り留めたのだ。
と、ベッドに寝かせられているミネにクロコが手を挙げて質問をした。
「ん、突然で悪いけどこれからの方針に向けて聞きたいことがある」
「…非常に残念な話ですが、今の私ではもうKeyと満足に戦えるだけの力は引き出せないでしょう。最悪特攻してでも私の神秘の特性でKeyを削ることも出来ますが…」
「それはしなくてもいい。あなたはKeyみたいに他の器に乗り移ったり出来る?」
「結論から言うと無理でしょうね。私は勝手に亡骸を遺物に変えられていましたので知りませんでしたが、現世に生まれ落ちてから救護してきた名も無き神々の転身に問い詰めたところ、誰も遺物に成る方法を知らないとのことです。それは今も同じ…ですが、Keyは違った。彼女は一度経験しただけで掴んだのでしょう。自らのヘイローを遺物として切り分ける方法を」
「…そっか」
ミネの戦闘力はKeyを相手にしても有効だがそれを活用することは出来ないと知ると、そもそもダメ元で聞いていたのでそれほどショックを受けた様子でもないクロコは本題を切り出そうとする。
が、その前にミネが喋った。
「今の私にはKeyは倒せません…なので、倒せる方に賭けることにします。アリスさんから聞いた、この時代で最も強いと呼ばれる神秘…小鳥遊ホシノに」
「…ん、お願い」
Keyに敗れた後S.C.H.A.L.Eに戻ったアリスは、その際一緒に着いてきた
アイリは気まずそうに言葉を濁すが、気合いを入れるように自らの頬を叩くと一連の流れをポカンと眺めていたアリスに話しかける。
「その、アリスちゃん!」
「あ、はい」
「私、前にアリスちゃんに助けられた時本当に嬉しかったし、アリスちゃんがカッコよく見えたんだ。だから、私もいつかアリスちゃんみたいな立派な人になりたいって…そう思ってたのに…私は、あのゲームが怖くて。死んじゃうのが怖くて、悪い人達の言いなりになって何人も死なせちゃった。変わりたかったんだ。あの後アリスちゃんについて行って一緒に戦いたかった。でも、私にはアリスちゃんみたいな勇気がないんだ…」
過去を精算するように告白するアイリに、それを静かに聞いていたアリスはふーっと域を吐くと俯くアイリの頭にポンと手を置く。
それに少し驚いて肩を震わせたアイリは恐る恐る顔を上げ…目の前に構えられていた指におでこをピンと弾かれた。
「痛っ!?」
「正直に言うと、アリスはアイリがどんな人なのかは知りません!ですが、アイリが行動した事実と結果は確かに残っています!アイリのお陰で…ミネさんは助かりました。ありがとうございます、アイリのお陰でアリス達はまだゲームオーバーにはなっていません!」
「アリスちゃん…待って」
明るくハキハキとそう伝えたアリスは、ベッドを降りて病室を後にしようとする。
目に見える外傷はセナの尽力もありほぼ感知しているアリスだったが、アイリはアリスの言葉の裏に翳りのようなものを感じて退室しようとするアリスの袖を引いてそれを止めた。
「…」
「聞いたよ…アリスちゃんの中にはもうKeyって人は居ないんでしょ?それでも…まだ戦うの…?」
「関係ありません。元々あれに協力してもらったことなんてありませんでしたから。セナさんが言っていました。今のアリスは、Keyという神秘に浸された遺物のようなものなのだと。それに…
袖を掴むアイリの手を振り払い、アリスは病室を後にする。
引き止められなかったアイリは未だその隣に並び立てない自分の情けなさを、勇気のなさを悔やみ、その場にへたり込んだのだった。
アリスが向かったS.C.H.A.L.Eの大広間。
元々会議室として使われるそこは本来並べられていた机や椅子が端に片付けられ、出来上がった広々としたスペースに多くの生徒が集まっていた。
レンゲやアツコ、クロコにノドカ、そしてペロロの着ぐるみの中身だと言うサオリとミレニアム事変で左腕を失ってからようやく復帰してきたというミノリのS.C.H.A.L.Eの生徒や、
これだけの人数が集められたのは一重に来るKeyとの戦いに備えて…そして、小鳥遊ホシノの復活に向けた下準備の為だ。
アリスが大広間に入ると、真っ先にそれに気付いたモモイ…ミカと共に挑んでマルクトとの戦いに敗れた後は意気消沈としていたと聞いていたが、アリスを見るなりぱあっと表情を明るくして駆け寄ってくる。
「アリス!大丈夫!?」
「はい…モモイも、大変だったと聞きました。ミカさんが…」
「うん…私が弱かったばっかりに。でも、これ…」
「…?手帳、ですか?」
「マルクトと戦う前にミカさんが”神明結晶:裏”と一緒に私に託してくれた『ヘイローの研究記録』だって。何かに役に立つかもと思って…」
「モモイ…ありがとうございます」
その他集まっていた一同は思い思いに再会を喜びあったり、この先のことについての相談をして大広間は喧騒に包まれる。
そんな生徒達を微笑ましく見守りながら部屋の柱に寄りかかっていたセナは、ふと窓の外を見上げていつだったか、ホシノとの会話を思い出していた。
『育てるし、導くよ。強くて聡い子達を…もう、誰も独りになんてさせない』
(…ホシノさん、ユメ先輩…実はどちらかのことが好きだった、なんてことは天地がひっくり返っても有り得ませんが。私がいたじゃないですか。何が1人なんですか、クソバカピンク…もう、うじゃうじゃいますよ。貴女の帰りを待つ強いけどお馬鹿な後輩達が。だから───早く帰ってきてください)
しばらく騒がしかった大広間だが、部屋にアヤネが『神明結晶:裏』を運び込んだことで途端に静まり返り、緊張に包まれる。
アヤネは自然に人の捌けた部屋の中心に適当な風呂敷を広げると、その上に『神明結晶:裏』を置いた。
「ミネさん、お願いします」
「…いえ、ここで開くのはよろしくないかと」
「?」
「聞くに『神明結晶』の中は物理的な時間が流れていないと聴きます。つまり『神明結晶』の中では時間の経過が原因で餓死や老衰をすることがないと思われます。本人が自殺でもしない限りは」
「おお、コールドスリープというものですか?タイムマシーンみたいになりそうですね!」
ミネからの『神明結晶』の説明を聞き目を輝かせるアリスだったが、ミネは首を振ってその使い方を否定した。
物理的時間が流れていないならば封印からの19日間、小鳥遊ホシノが『神明結晶』の中でどのような時間を過ごしたのかを外にいる者は誰も知ることが出来ないのだ。
一瞬のように感じている可能性もあれば、100年経過したかのように感じている可能性もある。
「…つまり?」
「小鳥遊ホシノさんの精神状態を危惧してのことです。彼女は現代で最強と謳われる神秘の持ち主なのですよね?」
「その小鳥遊ホシノが『神明結晶』の中で途方もない時間を過ごしていて発狂している可能性もあります。それによって解放された瞬間に錯乱して暴れ出すような事でもあれば…」
「それは、考えたくないですね…」
ミネに続いてセナからの指摘を受け、最悪の事態を想像した一同は顔を青ざめさせ…特に仰々しく『神明結晶:裏』を運び込んできたアヤネは気恥ずかしそうにしながら風呂敷に包み直し、S.C.H.A.L.E管轄の広々とした私有地…百鬼夜行支部との交流会の時に使われて今は瓦礫の山となっている廃墟街跡地でホシノを解放することに決まる。
『神明結晶:裏』の移動は迅速に行われ、万が一の際に護衛や制圧、戦闘に長けたミノリやクロコ、レンゲにアツコにアリス、健康状態を考え同行したセナと解放を担うミネ、そしてミネからの指定でD.U.第1
カヤが瓦礫の少ない更地に広げた風呂敷の上に『神明結晶:裏』を設置すると、そそくさとそこを離れてアリス達はいつでも動けるようにしながら物陰から解放の様子を見守っている。
ミネは松葉杖を着いて身体を支えながら適当に支給されたライオットシールドを素振りして調子を確かめていた。
それは素振りするものなのかと見守っていた一同は疑問に思うも、準備は整いついにその瞬間がやってくる。
周囲の安全を確かめたセナは、拡声器を持つミノリへと合図を出した。
「…お願いします」
「デッモーーーー!」
「参ります…救護!」
ミノリが拡声器で合図を出すと、それを受け取ったミネは松葉杖を手放し倒れ込むようにしながら盾を地面へと叩き付けた。
その衝撃によって周辺の地面は割れ…同時に光の衝撃波が広がって『神明結晶:裏』を包み込む。
事前に準備をしたことで威力を増したそれは秘儀を消滅させる力を存分に発揮し、『神明結晶:裏』を構成する神秘や秘儀を解くように消し去っていく。
やがてその全体像が光に覆われて───
「…あれ?」
「あ…」
光が晴れた時、『神明結晶:裏』は跡形もなく消え去っていた。
そこにホシノの姿は無く、慌てて駆け寄ったアリス達は地面に埋もれてるわけでも無いのを確認すると一斉にミネに視線をやった。
自分のせいなのかとミネは無言で服のお腹辺りを捲り上げると近くに落ちていた先の鋭い鉄パイプで切腹を試みようとするが、クロコとレンゲに止められてあえなく失敗に終わっている。
「えーっと…」
「ミネさんの神秘は病を取り除くと聞きましたし、小鳥遊ホシノが社会の癌みたいなものですから一緒に消えてしまったのでは?」
「辛辣過ぎませんか?」
「まあ…あまり否定出来ませんね」
「ん、ホシノ先輩の性格が悪いことは否定しない」
「伊達にクソバカピンクって呼ばれてねーからな」
「仕方ない」
「デモ!」
「うわーん!ホシノ先輩が四面楚歌です!」
カヤに続いて日頃の愚痴を吐くように散々に言セナ達だったが───突如として鳴り響いた地響きが大地を揺らし、同時にとてつもなく大きな神秘が出現するのをアリス達は感じ取る。
それが今『神明結晶:裏』を消滅させたことと無関係ではないと推測した一同はまさか、と胸を高鳴らせた。
「これって…」
「本当に…人を心配させるのが上手ですね、ホシノさんは」
「最深部は地下8000mのゲヘナのアビスの底の底。火山の地下深くの溶岩溜まりに『神明結晶』を置いてきたんだよ。勿論二重三重の封印を施して、検知器として特異体の監視も付けたんだ。取り込んだクズノハから『裏』の存在は聞いていてね。仮に封印を解かれても君を殺せるように…なのに、マジでどうなってるのさ、君は」
誰かへと向けてそう語るマルクト。
明らかな動揺と困惑に声を震わせるその視線の先に立つのは…廃墟の上からマルクトを見下ろし、ボサボサになった長い髪を風に靡かせる現代最強の神秘───小鳥遊ホシノ。
ホシノはマルクトをそのオッドアイを細めて睨むと、マルクトは身体をビクリと跳ねさせながらも強がるように煽った。
「どう?久しぶりだけど…寛げたかな?」
「君さぁ…もっと言葉は選んだ方が良いよ。何が最期の言葉になるかも分からない…今際の際なんだから」
「っ!」
話に付き合う義理も無いと早速マルクトを始末しようとショットガンを向けて放つホシノ。
尋常ではない殺意とその塊のような神秘の籠った弾丸にマルクトは死が目前に迫るのを見るが───その間に割って入った人影が弾丸を弾き、そしてホシノへ向かって跳躍する。
目にも止まらぬ速さで迫ってきた人影が振るった腕を受け止めたホシノは、人影の正体を目の当たりにして額に汗を滲ませた。
「…見ないうちに変わったね、委員長ちゃん」
「…覚えていますか?『小娘の身体をものにしたら真っ先に排除する』と…それでは排除します」
人影…Keyの腕とホシノの腕が押し合い、拮抗して互いに弾かれ合うように距離が取られる。
ホシノは背負っていた鞄のようなものを変形させて盾を展開し、Keyの傍にどこからともなく姿を現した無名の司祭が控える。
アリスに受肉したあの日、
「待って、Key。先に私との約束を果たして貰うよ」
「うへ〜、名も無き神々の王女ともあろうお方がお母さんに縫って貰った雑巾の言いなりとはね。アリスちゃんからもお尻捲って逃げて、みっともないったらありゃしないね」
「貴様っ…!王女になんと無礼を!」
ホシノの煽りにKeyに代わって激昂した無名の司祭は感情に任せて飛び出すと、『万象器』を発動させホシノを攻撃しようとする。
が…
「いや君は誰さ」
「かはっ…!?」
至極尤もなツッコミと共に向かってきた無名の司祭に『万象器』を使わせる間もなくホシノはボディブローを叩き込む。
ゴムボールのように跳ね飛ばされた無名の司祭をその後方にいたKeyがひょいと避けると、先程のマルクトからの呼びかけを思い起こし殺気を引っ込めた。
「…良いでしょう、貴方を殺すのは用事が済んでからにするとします」
「うへ〜…?」
(まあ、私としてもKeyとやり合う前にやっておきたいことがあるし…まったくこっちはユメ先輩の肉体を弔いに来たってのに、何かしらの契約だとは思うけどまさかKeyがユメ先輩の中の奴にここまで寄ってるなんて…面倒臭い…でも早い内にやっつけちゃいたいのも事実だし…)
思い通りに事が運ばないのはいつもの事として、今ここでマルクト諸共Keyを相手にするのと時間を置いて準備を整えた上で…逆にKey達にも時間を与えた上で…日を改めて戦う時、どちらの方がリスクが高いか、勝率が高いかを天秤にかけたホシノは、しばらく熟考するとため息を吐いて構えていたショットガンを降ろした。
「はぁ…今日何日?」
「うん?11月の19日だね」
「じゃあ12月の24で日を改めるとしようか」
「う〜ん?ロマンチシズムかな?私達が
「命日が2つもあったらややこしいでしょ?」
「…」
暗にそれがお前の命日になると告げられたマルクトは、そそくさとKeyの背中に隠れて虎の威を借る狐の如く、Keyに呆れられながらもホシノに純然たる事実を突きつける。
「勝てると思ってるの?Keyに」
「…」
『ホシノ…先輩と、どちらが強いのですか?』
『う〜ん、力の全てを取り戻したKeyならちょっとしんどいかな〜』
『負けてしまう、のですか…?』
「…ふふっ」
かつて、アリスが特異現象捜査部へと入部したあの日。
アリスから質問を受けた時のことを思い出してホシノは微笑むと、力強く答えた。
「勝つよ」
この先は原作の展開や情報の開示を見てから書き進めたいので、今回を持って本作は一時的に休載とさせていただきます。
いつも楽しみにしていただいている方々にはしばらくお待たせすることになりますが、これからも応援よろしくお願いします。