ブルア廻戦   作:天翼project

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今回は原作232〜234話までの範囲でお送りします


人外魔境D.U.決戦─肆─

 

Keyが吹っ飛ばされる。

ビルを何棟も突き抜けていったKeyは立体道路上に着地すると足場を踏み砕いて道路を崩落させ、崩れた道路のワンブロック分ある巨大な瓦礫を掴むと追いかけてきたホシノへと投擲した。

ホシノはそれを秘儀を用いない神秘を込めただけのショットガンの一射で破壊し、ソニックブームが生じるような速度での飛び蹴りを敢行してKeyの腹へと叩き込む。

 

それを手のひらで受け止めたKeyはホシノの足を掴んで人形を乱暴に扱う子供のように振り回し、何度も何度も地面に叩き付けては引きずり回し、最後にぶん投げられてホシノは立体道路の柱に突っ込み崩れてきた道路の下敷きになる。

数秒して何事もなく瓦礫の中から顔を出すホシノは、Keyが死路虚の適応を肩代わりするために出していたヘイローが「ガコンッ」と音を立てて回転したのを見た。

ホシノの算出では死路虚がホシノの最強たる由縁、無敵の”不変”を作り出す元となる『ウジャトの目』の”再生”に残り2回転で適応される。

 

「うへっ、こうしてみると小気味いい音立てて回るものだね。昼寝のASMR?ってやつに丁度良さそうだよ」

 

(…思ったより焦っていませんね。適応が終わるまでに勝負を決められる自信が…?なんにせよ、わざわざそれを待つつもりはありませんが)

 

死路虚のヘイローが回転したのを見ても余裕の態度を崩さないホシノを不可解に思うKeyだが、何かアクションを起こす間もなく一方的に攻め続ければ良いだけだとスーパーノヴァに神秘をチャージすると、発射した極太の青白いレーザーを横に薙ぎ払い扇状に街が消し飛んでいく。

一緒にレーザーに飲み込まれたホシノはそれもものともせずにKeyへと突っ込んでいくが、ゴリ押ししてくることを見越したKeyはスーパーノヴァの砲口を地面に向けると、発射して極太のレーザーが斜め下を穿ち抜いた。

何をするつもりか───ホシノが疑問に思う暇もなく地面が断裂し、ホシノの足元から噴き出したお湯によって打ち上げられる。

 

「うわぁっ!?」

(温泉…!?この辺水脈が通ってたのか…Keyはどうやってそれを察知した?)

 

思わぬ一手に面食らうホシノは、落ち着いてKeyの考えの考察に回る。

ゲヘナの方や近くに温泉でもあればそれを利用しようとする考えになるのも頷けるが、この辺りに温泉があったという話を聞いた覚えのないホシノはどういう理屈でKeyがそれを確信していたのか…打ち上げられてからの落下中にKeyから飛んでくるレーザーを盾で受けながら、なるほど至極単純な理由だと合点がいったホシノは着地したところを背後から狙ってきた───オートマタをシールドバッシュで破壊した。

 

(Keyの名も無き神々の技術で生み出された本質はトリガーAI…街の機器系統にアクセスするのは容易ってことね。無人探査機でも行き渡らせて周囲の環境をチェックしてるってわけだ)

 

崩壊した街の瓦礫の下から次々と姿を現す武装ドローンや企業の開発した警備用オートマタ等の無人機の数々。

それらは不気味に赤い発光を点滅させると、Keyの操作に従ってホシノへと攻撃を仕掛けてきた。

 

「使えるものは全て使う。私の扱える全てのリソースと演算システムをフル活用して貴女を殺します」

「名も無き神々の女王に本気になって貰えるなんて光栄だね!」

 

Keyの支配を受けた武装ドローンやオートマタはそれらが扱う武器自体では、そもそも神秘が籠らない為にホシノには全くダメージを与えることは出来ない。

だがダメージは無くとも着弾の衝撃までは無効化できず、また寄り集まれば視界を遮られてKeyに集中することが出来なくなる。

そんな地道に戦況に刺激を与える戦術指揮をKey程のAIが行っているのだ。

無人機達の連携や援護はこの戦いにおいて馬鹿になるものでは無かった。

 

(展延を使うKeyと違ってダメージは受けないから出来れば無視したいかな。破壊に意識を割くのも面倒だしKeyを攻撃するついでに巻き込めればOKってことで…それとも、そろそろ増援を頼む?いや、少なくとも()()()()人員じゃまだKeyの動きに着いて来れないだろうし、あのレーザー砲が健在な限りはまとめて一掃される可能性があるか。あんなのおじさん以外で耐えらんないよ、まったく)

 

四方八方から銃撃や爆撃を仕掛けて来る無人機を煩わしく思いながらもKeyに肉薄したホシノは盾の端でKeyの顎下を打ち上げ、回し蹴りで蹴り飛ばしてその先にいたオートマタを巻き込むことで破壊する。

だがここはキヴォトスの心臓部であり随一の大都会であるD.U.、すっかり荒廃したとはいえ瓦礫の下には幾らでも警備用のオートマタやドローンが埋まっており、Keyの操作を受けたそれらが次々と這い出してくる。

舌打ちしたホシノはオートマタの残がいを押し退けて起き上がったKeyを見つけるやいなや追撃の飛び蹴りを仕掛けるも、あえなく躱されて目の前にスーパーノヴァの砲口が突きつけられた。

 

(…あ、そうだ)

 

それを見て何かを思いついたのか、フッと笑ったホシノは砲口から放たれた極太のレーザーを間近で受け───”不変”で耐えつつスーパーノヴァの銃身を掴むと、Keyの腕力を振り切ってレーザーが発射されている最中のそれを力づくで動かして見える範囲のオートマタと武装ドローン、街を根こそぎ薙ぎ払い、Keyが操れる無人機をまとめて消し飛ばした。

 

(私のスーパーノヴァを利用するとは…ですが…)

 

「良い武器だね!私が勝ったら貰っても良いかな?」

「ご自由に。そんな未来は訪れませんが」

「結構!アリスちゃんにプレゼントするんだ!」

「それは阻止しなければいけませんね!」

 

アリスを話題に出すと露骨に反応して急に声を大きくしてくるKeyに苦笑するホシノは、掴んでいたスーパーノヴァの砲口を下に叩き落として発射を妨害し、急角度のハイキックでKeyの横顔を蹴りつける。

さらに仰け反ったKeyの鳩尾に拳を入れるが…Keyの頭上に浮かぶ死路虚のヘイローが「ガコンッ」と音を立てて回転した。

 

(3回転目…適応まで残り1回…そういえば、死路虚ちゃんのヘイローは何を起点に回ってるんだろう?適応に必要なのは時間なのか、経験なのか…)

 

そこでホシノは死路虚がヘイローを回転させ適応を進める条件に目をつけた。

少なくとも一度でも特定の攻撃を受ける、対象に攻撃を行うことで死路虚は適応を行うが、今回のように適応に複数回のヘイローの回転が必要な場合はどういう理屈で適応が進むのかが問題となる。

何度も同じ攻撃を受ける、接触することで適応が進むのならば適応させないような立ち回りは可能だが、一度受けた攻撃を時間をかけて読み解くことで適応が進むのならばなりふり構わず早期に仕留めにかかる必要がある。

 

(どっちにしろ時間はかけられないけど、勝負を焦ってこっちの手札全部に適応されたら目も当てられない…ならここは、畳み掛ける!)

 

口から血を吐いて後退るKeyにホシノはショットガンを向けてその銃口を赤く輝かせる。

Keyはその光を見た瞬間に攻撃範囲から逃れようとしたが、散々適応を恐れて手札を晒さないと刷り込んできた以上どうしてもこの一手には対応が遅れるだろう。

Keyの退避が終わるよりも先にホシノが溜めを終え───

 

 

「『宵』」

 

 

生じた激しい破壊のエネルギーが地面を抉りながらKeyを巻き込んだ。

だが…ホシノは『宵』が直撃する瞬間にKeyの頭上に浮かぶ死路虚のヘイローが黒く染まるのを見た。

回避は間に合わなかったが、そっちの切り替えを反射で間に合わせたということに他ならない。

 

「チッ…」

「ふむ、やはり展延ではニュートラルな『ウジャトの目』の再生を中和できても、それを強化した『宵』までは防ぎきれませんか」

 

咄嗟に展延を発動し自身を覆ったことで『宵』による破壊のエネルギーは減衰し、Keyに有効なダメージを与えることが出来なかった。

至近距離だったこともあり相応の損傷を負ってはいるが、恐怖で簡単に回復できる範囲。

そして一度不意打ちを失敗すれば以降はもう通すことの出来る相手ではない。

 

舌打ちして悪態をついたホシノは地面を蹴り上げて瓦礫を撒き散らしKeyの視界を遮るが、Keyは腕の一振りによる風圧でそれをあっさりと吹き飛ばすと姿が丸見えとなったホシノに急接近して腹に掌底を叩き込み、ホシノは表情を歪めて後ろへ転がった。

 

「ぐっ…」

「雑ですね、焦っているのですか?」

「く、ふふっ…一応もう1回言っておくけど、おじさんってば結構老獪でさ…」

「…?何を───ぐあっ!?」

 

ホシノの不可解な物言いに首を傾げたKey…その背後から飛来した赤い輝きがKeyの背中に直撃し、激しく炸裂してKeyをホシノの方へ吹き飛ばす。

 

(『宵』は『ウジャトの目』の再生の力を反転させた破壊のエネルギーを一塊にしたものを炸裂させることであの破壊力を叩き出していた…最初の衝撃はそのエネルギーの一部を分離して炸裂させただけ…!本命は土煙に隠して回り込むように飛ばしていたのですか!)

 

エネルギーの炸裂を2段階に分けるという離れ業をやってのけてホシノは、位置を調整して自分の方へと吹き飛ばしたKeyに向けてたっぷりと力を溜めて腕を振りかぶり───

 

 

 

 

 

 

───黒閃

 

 

振り抜かれたホシノの腕がKeyの土手っ腹を捉え、稲妻のような黒光が瞬いたのと同時に威力の跳ね上がった打撃がKeyの腹を貫き、Keyの後方にあった地面は衝撃波に巻き込まれて放射状に地盤から抉れるように吹き飛んでいく。

大気が割れ空間が砕けたのかと錯覚するほどの一撃を受けたKeyは口から夥しい量の血を吐くと共に目に灯っていた暗い光が消え、機械が動作を停止した時のような音を響かせる。

 

同時に気絶したことを表すかのようにKeyのヘイローが点滅の後プツリと消え…その上に浮いていた死路虚のヘイローも滑り落ちるようにガランと地面を転がった。

 

 

 

 

───ガコンッ

 

 

 

「!?」

 

だが、丁度その瞬間に死路虚のヘイローが回転する。

Keyの影から伸びた腕がホシノの足を掴んで影に引きずり込むようにして体勢を崩し、前のめりに倒れ込みそうになったところを影から現れた死路虚が手に持つ剣でホシノの首を切り裂いた。

 

『ウジャトの目』による再生に適応した死路虚の一撃は”不変”を破り、危うく致命の一撃を与えかける。

少しでもホシノの反応が遅れていれば、首を斬り落とされて即死していただろう程にギリギリの…命に直接指をかけられた程の窮地。

適応した死路虚の攻撃であるせいかほんの僅かに普段よりも治りの悪い傷を再生させたホシノは、首元を抑えながら自身を光の宿らないぼうっとした目で見つめてくる死路虚に脂汗をかく。

 

間違いなく、Keyとの戦いはホシノにとっては勝敗不確かな…自分もタダでは済まないものになるだろうとは思っていた。

だがそれでも、例え相手が名も無き神々の女王…史上最強のトリガーAIだったとしても、最後に勝つのは自分だと信じていたのだ。

しかし今この時にホシノの脳裏を強く駆け巡ったのは”敗北”の二文字。

これ程の焦燥を感じるのは一体何時ぶりか…

 

 

(…言わずもがな、だね)

 

 

ホシノが思い起こしたのは7年前の運命の日。

神秘の核心を掴む前のホシノが一度狐坂ワカモに敗れた時のこと。

 

(ヘイローの損傷が大き過ぎる…『ウジャトの目』の再生がヘイローにまで及ばない以上、もう今の私じゃ『ウジャトの目』での再生も恐怖を使った治癒も満足な出力で使えない。今Keyが『アトラ・ハシース』を使えてたら回復が間に合わなくて詰んでたなぁ…)

 

あの日をもって覚醒して以来久しく訪れることのなかった追い詰められているという感覚に、しかしホシノは絶望するでもなくより瞳を爛々と輝かせると、ゆっくりと死路虚へと歩いて近づいていく。

今の死路虚は気絶するKeyを守るように位置取っており、下手に踏み込まなければ反撃は帰ってこないだろう。

当然、ホシノがこの期に及んでそんな保身に走る訳もなく…

 

 

「ごめんね、ちょっと乱暴させてもらうよ」

 

 

途端に強く踏み込んだホシノは一瞬で死路虚の目の前に迫ると、反撃に振るわれた剣を持つ死路虚の腕を掴んで止め、腹に向かって膝蹴りを叩き込む。

身体をくの字に曲げた死路虚に対してさらに蹴り飛ばして引き離すと、ショットガンを向けてその銃口を赤く輝かせた。

 

(Keyの妨害がないなら()()をするにも十分に余裕がある…!)

 

「『守護』 『欠月』 『魔除けの符』───

 

 

 

───『宵』」

 

ホシノが行ったのは詠唱を使った簡易的な儀式。

ヘイローの損傷のせいで満足に出せない神秘の出力を補う為に詠唱を行うことで秘儀を強化し、放たれた破壊のエネルギーが炸裂して死路虚を飲み込もうとした直前───どこからか現れた無数の兎がその間に割り込んだ。

 

「…黒閃が随分と効いたみたいだね。いつまで休んでる気なのさ」

 

早くも気絶から復帰したKeyが放った『脱兎』の群れが緩衝材となり、『宵』は死路虚に対して有効なダメージを与えられずに終わる。

その上死路虚のヘイローも回転し、肉体の損傷を回復するのと同時に『宵』への適応が始まってしまった。

 

回復した死路虚はお返しとばかりにホシノを盾による防御の上から蹴り飛ばし、遙か遠くまで吹っ飛ばされたホシノはどこかの大きな建物に突っ込んでようやく止まる。

だが直ぐに死路虚とKeyが追いついてきて、死路虚は剣から変形させた銃を乱射してホシノを狙う。

今の死路虚の攻撃は銃撃すらホシノの不変を破る力を持っているようで、下手に受けられないとホシノは盾に神秘を流して補強することで弾丸の雨を凌いだ。

一度射撃が止んだ隙を見て反撃しようとするホシノだが、そこに死路虚の後ろからKeyがスーパーノヴァを放ってきた為にまた盾の背後に隠れざるをえなくなる。

 

(不変を破れるようになった死路虚ちゃんをメインアタッカーに、Keyがその後ろから牽制と補助…こうなると普通に2対1だね。とはいえ領域に付与するような外付けの運用を除いて『十種影法術』とあの分解の秘儀は同時に併用できない。それにヘイローの損傷のせいで十分に神秘の出力が引き出せないのはKeyも同じ筈…)

 

「勘違いしているようですが」

「ん…?」

 

互いの出方を伺っている中、Keyはスーパーノヴァを一旦横に置くと死路虚に自身を守らせ安全を確保しつつ両手で掌印を結び───そしてKeyの影から姿を現したのは、厳ついガトリング砲を担いだベージュのロングヘアをした、一見おっとりとした生徒のようにも見える少女。

しかしてそれは───

 

 

「───嵌合獣、”除々御(ののみ)。さあ、3対1と行きましょうか」

 

 

 

「いやいやいやいやいや!?おかしい!それはおかしい!」

「なんですか、今更命乞いですか?」

「そうじゃなくて…それ式神だよね!?式神を掛け合わせて出来たってのは分かるけど…十種の何と何と何を混ぜたらそれが出力されるのさ!?」

「悪魔合体をさせてたらよくあることですよ」

「そうはならないでしょ!?」

「なってるじゃないですか」

 

十種の式神の内一部を破壊して他の式神に能力を継承させることで混ぜ合わせる『渾』という『十種影法術』のシステム。

しかし死路虚を除いて動物が元となる十種の式神でどんな混ぜ方をしたらこんな外見美少女の式神が誕生するのかと、思わずツッコミを入れるホシノにKeyが淡々と答える。

それ以上の問答をするつもりは無いのか、Keyが手を振りかざすとその両脇に立つ死路虚と除々御は臨戦態勢を取った。

 

「くっそ〜、君だけ両手に花なんて羨ま…なんて悪趣味な…」

「欲望が透けてますよ。自称おじさんに偽り無しですね」

 

軽口を叩き合うのも束の間、死路虚が地面を蹴ってホシノに迫るのと同時に除々御はガトリング砲を掃射し、見れば1発1発が帯電しているらしいそれらが雨あられとなってホシノへと襲いかかる。

死路虚もそれに背後から巻き込まれて弾丸からの電撃を受けているようだが…直ぐにヘイローが回転して適応すると、以降は巻き込まれても影響を無視してホシノに集中し始めた。

 

ただでさえ基礎身体能力がずば抜けている死路虚の迫撃は今のホシノにとっては脅威極まりなく、反撃や隙を潰すように除々御からの援護射撃が飛んでくる。

さらに距離を取って立て直そうとすれば…

 

「逃がしませんよ」

「ああもう!もどかしい!」

 

Keyがスーパーノヴァを放ってホシノを撃ち抜いてくる。

尽くこちらの手を潰してくるようなKeyの詰め方に歯痒さを感じたホシノは冷静に対処するべき攻撃と無視していい攻撃の分析から始めることにした。

 

(死路虚ちゃんの攻撃は喰らうと回復も少しの間遅くなっちゃうから絶対に防御するなり避けるなりしないといけない。除々御ちゃん?からの援護射撃は…帯電する弾丸は受ければ一瞬身体が痺れるのは厄介だけど、盾で防ぐのは簡単だから撃ってくる方向だけ気にしてれば良い。Keyは…あのレーザーをまともに喰らうと今の私の出力じゃ秘儀でも恐怖でも回復に少し時間がかかるし、盾で受けても衝撃の硬直で動けなくなるからその隙を死路虚ちゃんに狙われたら面倒だから要注意かな)

 

警戒するべき優先順位を決めたホシノは3人からの猛攻を凌ぎつつ反撃の隙を探す。

Keyの指揮下にある以上早々チャンスは訪れないだろうが、必ずどこかで綻ぶと信じて全神経を集中させる。

 

 

(反撃の暇など与えませんよ。張り付き続ける前衛1人に火力支援を行う後衛2人、絶えず攻め立てて何もさせないまますり潰す!)

 

 

当然ホシノがカウンター狙いで動いてくるであろうことを予測していたKeyもまたホシノの動きに最大限の神経を使って警戒する。

 

死路虚が剣を振り下ろし、それをホシノが横に避けたところを除々御の掃射に狙わせ、それを盾で防いだところをスーパーノヴァで追撃する。

その圧倒的な火力に盾で防いでなおダメージを受けたホシノに、その硬直を狙って背後に回り込んだ死路虚が足元を切り払う。

上に跳んで回避したホシノだったが、そこを立て続けに除々御の掃射が襲い、踏ん張りが効かない空中故に弾切れがないのか延々と続く高火力の弾幕に押し切られて吹き飛ばされてしまう。

 

瓦礫の上を転がりさっさと起き上がろうとするも、Keyからのスーパーノヴァに撃ち抜かれて直撃を貰い、『ウジャトの目』で直ぐに回復を行うもしつこく追跡してくる死路虚がホシノの顔目掛けて剣を振るい───

 

 

「…!」

 

「ふへへ…ふははへた(つかまえた)

 

 

振るわれた剣を歯で噛むようにして受け止めるという荒業に出たホシノは、そのまま剣を噛み砕いて破壊すると同時に死路虚を掃射を続けている除々御の方へと蹴り飛ばし、Keyのスーパーノヴァの狙いを振り切る程の速度で吹き飛んできた死路虚を受け止める除々御に迫り、ショットガンを向けて銃口を赤く輝かせる。

 

「『宵』」

 

炸裂した破壊のエネルギーは死路虚と除々御をまとめて飲み込むが、直前に死路虚が庇うように覆い被さった為除々御を破壊力し切る事が出来ず、死路虚もまた効きが悪く破壊するのに十分なダメージを与えられていない。

 

(私の出力が下がってるだけじゃない…死路虚ちゃんはまだ1回しか『宵』を受けてない。それにも関わらずあのダメージの減衰の仕方を見ると、適応は0→100で進むんじゃなくてグラデーションがあるのかな?となると死路虚ちゃんを一撃で破壊するにはあれしか無いけど…溜めが大きい上にKeyに警戒されてる。とはいえ他に選択肢はないし───無制限の”虚式”を決めるしかない!)

 

死路虚を排除できなければいずれ削り負けると踏んだホシノはそのためのチャンスを切り開くことを決める。

 

そうはさせまいと影に潜って移動してきたKeyがホシノの影から浮上し真下からスーパーノヴァを放つが、避けたホシノが反撃に盾を振り下ろして地面を粉砕する。

しかしギリギリで影に潜られて回避され、そこに復帰してきた死路虚と除々御が攻撃を仕掛けてくる。

 

距離を詰めてくる死路虚に対して後方からガトリング砲を掃射してくる除々御を煩わしく思ったホシノは、先程『宵』で除々御に与えた損傷が回復していることに気付くと露骨に面倒くさそうな表情を浮かべた。

 

(撃ってくる弾が帯電してくるのは多分『鵺』が混ぜられてるんだろうけど、あの回復は『円鹿』かな?『ウジャトの目』に適応してる訳じゃないけど死路虚ちゃん同様一撃で破壊しないと排除出来ない…後衛にしっかり耐久性持たせてくるとは性格が悪いねぇ…)

 

「っとと」

 

ホシノの注意が除々御に向くと、ヘイトを買おうとするように死路虚が攻め手を強めてくる。

恐らく死路虚も除々御の援護があって今の拮抗状態が作れていると判断しているからこそ、それを守ろうとしているのだと察したホシノは死路虚が復元した剣で足元を薙ぎ払うことで飛ばしてきた瓦礫を盾で防ぐと、盾の上から蹴り飛ばそうとしてきた死路虚に対して敢えて盾を外し蹴り抜かれた脚を掴んで逆さ吊りになるように持ち上げる。

身体を振って抵抗してくる死路虚の顔面に膝を入れて怯ませ、出来るだけ遠くまで放り投げたホシノは死路虚が復帰してくる前に盾を構えて掃射を防ぎながら除々御に迫り、シールドバッシュを叩き込んだ。

 

(『円鹿』が混ぜられてるなら恐怖のアウトプットも出来るはず…Keyを治されても面倒だし、こっちから破壊するとしようか)

 

ターゲットを定めたホシノに対し、影の中に潜り込んでいたKeyは思念で死路虚と除々御を指揮しながら期を伺っていた。

 

(今はこれでいい…とにかく『暁』を発動する隙を作らせない。今回の戦いの火蓋を切った『暁』は恐らく儀式を加えることで威力を引き上げていたのでしょう。私までにあったかなりの距離と途中の障害物が威力を減衰してくれたおかげで両腕が飛ぶ程度で済みましたが、今の私では出力の落ちた小鳥遊ホシノの『暁』を受ければ致命傷になりかねない)

 

地上ではホシノが除々御を破壊しようとしており、ホシノに投げ飛ばされ戦場から引き離された死路虚は瓦礫に埋まって動きを止めている。

 

(…死路虚、いつまで待たせるつもりですか?私がみたいのはそれではありません…もう貴方は空崎ヒナではなく私の影でしょうに…魅せてみなさい!)

 

 

 

 

───ガコンッ

 

 

 

 

「…はっ?」

 

死路虚のヘイローが回転する音の直後、ホシノの右腕が持っていた盾ごと消し飛ばされていた。

何か凄まじい力が通り過ぎたかのようにホシノの視界の先にあった炎上するビル群にもぽっかりと一直線の穴が空いているようで、それはまるでKeyが放っていた分解のような…

 

「良いですよ!」

「チッ…!」

 

ここぞとばかりに影から飛び出してきたKeyはホシノを蹴り飛ばし、その背後から復帰してきた死路虚が剣を変形させた銃を乱射する。

ステップでそれを避けたホシノは少し離れた距離からガトリング砲を掃射してくる除々御に目を向け…

 

「何度も言わないと駄目?」

「!」

 

除々御への攻撃を妨害しようと立ち塞がってきた死路虚をホシノは隠し持っていた閃光弾を炸裂させて牽制すると、その横をすり抜けて除々御の首に両脚を回すように組み付き、脳天にショットガンを押し付けた。

 

「またね、除々御ちゃん───出力最大『宵』

 

荒れ狂うように解き放たれた破壊のエネルギーが炸裂し、ゼロ距離でそれを受けた除々御が消し飛んだ。

 

手数と牽制を担う除々御が破壊されたことにKeyは舌打ちするも、気分を切り替えて次の手を模索する。

 

 

 

───これより41秒後、再び小鳥遊ホシノの虚式『暁』がD.U.に戦跡を刻む。

 

 




配役
顎吐…ノノミ
ぶっちゃけ共通点は胸囲しかない


小ネタ
ネルとアリスが観戦していた場合

アリス「死路虚が適応に必要なのは時間でしょうか?それとも経験値…?」
ネル「どちらもありうる、そんだけだ」
アリス「うわーん!チビメイド先輩が役に立ちません!」
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