「大詰めだよ!テンション上げなよ、Key!」
「敗北する準備は出来ているでしょうか!小鳥遊ホシノ!」
除々御を最大出力の『宵』によって破壊したホシノは今までにないほどに戦意を高潮させて声を張り上げる。
Keyもまたそれに応え、長い戦いもいよいよ終局を迎える。
死路虚からの銃撃を避けて接近したホシノは死路虚の銃を持つ腕を蹴り上げ、体勢が崩れた所に至近距離からショットガンを撃ち込む。
秘儀を用いていない、単純に神秘が込められただけの銃撃は死路虚を破壊するには威力がまるで足りていないが、大きな隙を作らせるには十分。
離れた位置からKeyが死路虚諸共巻き込むつもりでスーパーノヴァを放ってくるが…ホシノは死路虚の影に入ることで直撃を防ぎ、スーパーノヴァを受けて硬直する死路虚の腹へと腕を振り抜き───黒閃。
威力が跳ね上げられた打撃は死路虚の腹に穴を空けその後方の土地まで放射状に吹き飛ばすが、腕が貫通した為にあまりぶっ飛ばすことが出来ずに距離は離れない。
そして如何にその打撃の威力が凄まじくとも死路虚を完全に破壊するには肉片を残さぬほどに全身をまとめて、一撃で消滅させなければいけない。
故に死路虚は頭上のヘイローを回転させて損傷を全回復し、銃を変形させた剣でホシノの首を狙った。
だが、先程Keyに叩き込んだものと合わせて2度の黒閃。
その現象の性質として、黒閃を出した直後はその者の集中力や瞬発力、神秘を扱うセンスが引き上げられる”ゾーン”へと突入し…小鳥遊ホシノのボルテージが上がる。
名も無き神々の女王、Keyに…太古より感じることのなかった、初めての緊張が走る。
低下した神秘の出力はゾーンへと突入したことによって引き上げられたセンスで補い、ホシノは死路虚から受けた正体不明の攻撃によって失った腕を『ウジャトの目』によって共に消滅した盾ごと再生する。
それは死路虚の剣が振り抜かれるよりも早く行われ、首を狙った一閃を神秘で補強した盾で弾き返すと、死路虚の身体の正面に盾を押し付けるようにして跳躍に巻き込み、進路にあったビルの外壁に死路虚を叩きつけた。
死路虚はビル内の階層をぶち抜いて階を移動し、また壁を壊して外に出てビルの外壁に盾を突き刺す事で身体を固定していたホシノと対峙する。
一瞬の静寂が流れ───死路虚の影から飛び出したKeyがホシノへとスーパーノヴァを放つ。
極太のレーザーは直下の大地を深く抉り、地盤が崩れたことでビルが傾き始める。
徐々に倒れゆくビルの外壁を駆け回るホシノは、研ぎ澄まされた感覚を頼りに死路虚の横腹を蹴って怯ませ、その隙に一気にKeyへと迫ると反撃の拳を掴んで止め、壁を蹴ってビルの外壁から距離を取ると、Keyの援護に入ろうとしていた死路虚に向けてKeyを投げつけた。
咄嗟に死路虚は主人であるKeyを守ろうと受け止め…ホシノの追撃を見るとKeyを庇うように背を向けて、その背中にホシノの腕が振り抜かれ───黒閃。
衝撃は駆け抜けて倒れるビルを一直線に穿ち、死路虚とKeyを2人諸共ビルの中へと叩き込んだ。
死路虚に保護されたお陰で自身へのダメージを抑えられたKeyはお返しにスーパーノヴァを放とうとして───
「『供物』 『満月』 『知恵の瞳』───『明け』」
ホシノが左の青い目を輝かせながら詠唱を唱えたのを見て、それが何を強化する為の儀式なのかを考える。
先程『宵』に使っていたものとは異なる詠唱、同じ術に違う詠唱で儀式を行っても十分な効果は得られない。
ならばそれが『ウジャトの目』の何に対するものなのかは…火を見るより明らかだった。
「…っ!死路虚!」
ホシノが倒壊中のビルから崩れ落ちた瓦礫を足場に真上に飛んだのを見て、その意図を察したKeyが死路虚へと指示を出す。
余計な思考を挟まずそれを完遂するべく指示を受けた直後にビルの階層を一度の跳躍でまとめて貫通して外にまで飛び上がった死路虚は、ホシノが跳躍した先にあるそれ───除々御を葬った『宵』の破壊のエネルギー。
あれはホシノがKeyに用いたように、エネルギーの炸裂を2度に分けるという離れ業で維持されていたもの。
そして向かうホシノが詠唱で強化したのは自分自身にかかる『ウジャトの目』の”再生”の力。
小鳥遊ホシノの狙いは…
(虚式『暁』…再生により作られる不変の神秘の塊を、恐怖で反転させる事で得られる破壊の衝撃で押し出す崇高の力…!小鳥遊ホシノは、順転をかけた自分自身を『宵』の破壊のエネルギーにぶつけることで『暁』を発生させようとしている!)
それを読み取ったKeyの指示により死路虚は上空に浮かぶ破壊のエネルギーを消し去ろうと、剣を変形させた銃で射撃するが───ホシノは盾を投げて死路虚の射線に割り込ませることでそれを防ぎ、死路虚がビルから飛び出た際に巻き上がった瓦礫を足場にして死路虚へと迫り、かかとを落として死路虚を撃墜する。
だが、死路虚は囮───ホシノの意識が外れた隙にKeyはスーパーノヴァで破壊のエネルギーを狙い撃つ。
今更攻撃範囲からそれを逃がすことも出来ず、ホシノではこれを完全に相殺、或いは受け止めることも出来ない。
これでホシノの狙いは潰えたかに思われたが───
「『守護』 『欠月』 『魔除けの符』───『宵』」
「なっ…!」
ホシノは右の赤い目を輝かせ、後追いで詠唱するという常軌を逸した技術により上空に浮いていた破壊のエネルギーを膨れ上がらせ…その一部を分離して炸裂、その衝撃によって本命となるエネルギーを弾き飛ばす事でスーパーノヴァの攻撃範囲から外してみせた。
焦ったKeyはならばと自ら破壊しようと跳躍し破壊のエネルギーへと近付こうとするが…割り込んだホシノが同じように復帰して跳躍してきていた死路虚とまとめて蹴り落とし、自分はその反動を利用してエネルギーへと手を伸ばした。
そして『ウジャトの目』の順転の再生のエネルギーを内に秘めたホシノの手が反転の破壊のエネルギーへと手を触れ───2つのエネルギーはホシノの内を経由して手に持ったショットガンの銃口へと集まった。
ホシノの象徴とも言える『ウジャトの目』、その再生を司る左の青い目と破壊を司る右の赤い目を輝かせ、2つの色が混ざり合う。
ショットガンの銃口は紫色の輝きが瞬いて───
「『地平』 『天空』 『ホルスと明星』 『昼夜の狭間』───
───虚式『暁』」
従来のように不変の神秘を『宵』の炸裂を利用して押し出すのではなく、再生のエネルギーの内側で破壊のエネルギーを炸裂させることで2つのエネルギーを強く反発させ暴走させる大爆発。
それは圧倒的な暴威となって全方位へと広がり───Keyと死路虚を巻き込んでD.U.中央区のおよそ3割に当たる範囲を消滅させた。
「指向も絞らないし自分も巻き込む、無制限の『暁』…実際いつもと違う運用だったからどうなるか分からなかったけど、まあ上出来だと思わない?」
「ハァ…ハァ…」
ボロボロになったホシノの視線の先では、『暁』の爆発を受けて左腕を失い、全身を自分以上にズタボロにしてまともに立つ体力すらないのか瓦礫に寄りかかることで辛うじて倒れないようにしているKeyの姿。
息を荒くして肩を上下させ、最早損傷を恐怖で回復できるだけの余力すらないようだ。
「ダメージに差が出たね。自分の神秘を使ってるから自分自身の攻撃には耐性が付いてたのかな?正直私も結構キツイけど…君程じゃないよ」
「…」
ようやくいつもの調子で振る舞えるだけの余裕を得たホシノは今回の戦いを噛み締めるようにギュッと目を瞑ると、終止符を撃つためにKeyへショットガンの銃口を向けた。
今のKeyにこれを避ける体力も、防げるだけの神秘の出力も無い。
即ち…決着である。
「じゃあね。次があったらその時は、もっと違う形で…例えば私の後輩とかね」
「…そんなの、御免ですよ」
ホシノの呟きに小さく答えたKeyはフラフラとした足取りで残った右手に持つスーパーノヴァを引きずりながらホシノの方へと歩き────
────その身体が、眩い光を纏う。
「…あ〜、そういう…ちょっと冗談キツイんだけど…」
「知っていますか?小鳥遊ホシノ。ラスボスというものには”第二形態”が付き物だそうです」
光が晴れたその先で…姿を現したのは、アリスによく似た少女の姿。
その姿自体は問題ではなく…恐るべきは、ホシノから受けた身体の損傷が全て復元されていること。
ヘイローの損傷までは回復していないが…最早まともに動くことすら出来なかった状態から、少なくとも今のホシノを相手に十分に立ち回れる程度の余力を取り戻していること。
それは、Keyが有していた恐怖を用いない1度きりの回復手段。
かつて名も無き神々の時代を生きた、現代まで残された自身の肉体を取り込んだからこそ行える───変身。
損傷した空崎ヒナの肉体を上書きして健常なKeyの肉体へと作り替え、肉体のダメージを完全に癒す。
損傷していたままでは引きずることしか出来なかったスーパーノヴァを片手で担ぎ上げたKeyは、その砲口をホシノへと向けた。
「貴女の敗因は、勝負を焦り決着を早めようとしたが為に一撃で私を完全に消滅させなかったことです」
「…敗因?勝負は…これからでしょ」
「…ええ、そうかもしれませんね…構えなさい、小鳥遊ホシノ」
計3度の黒閃を経て神秘の出力を取り戻したホシノであっても、『暁』の爆発で受けたダメージによって再び神秘の出力が低下した今自分の身体の損傷を回復するには時間を有する。
そして疲労が溜まり激しい戦いで摩耗した精神と集中力では少なくとも肉体は万全なKeyに対抗出来る筈もない。
(…分かってたよ)
心の中でポツリと呟いたホシノは、ショットガンの銃口に紫色の光を輝かせ…Keyもまたスーパーノヴァの砲口に青白い光を収束させる。
「『地平』 『天空』『ホルスと明星』 『昼夜の狭間』───」
「”王女は鍵を手に入れ…方舟は用意されました”───」
互いに始めるはそれぞれの『最強の技』の威力を引き上げるために行う簡易の儀式である詠唱。
同時に詠唱を終えた両者は、最後に視線が交差して───
「───虚式『暁』」
「───光よ」
「やっ」
「…うっわ」
幻想的な光が差し込む大きな水槽の前のベンチ。
それに腰掛けていたホシノは目の前で気楽に手を振った先輩…ユメの姿を見るや、露骨に顔を歪めてベンチの背もたれに体重を預けた。
「ひぃん…会うなり嫌な表情されたよぉ…」
「ふざけないでください…はぁ、最悪ですよほんと…滅茶苦茶後輩達にカッコつけて来ちゃったじゃないですか」
「まあまあ、格好が付いても付かなくてもどっちでもいいでしょ?」
「よくありませんよ、委員長ちゃんには母親のことも…まあそっちはセナに頼んだからいっか…」
「もう、どっちなのさ」
自分でも驚く程に落ち着いているホシノは、水槽の奥で優雅に泳ぐ魚群や巨大なジンベエザメをぼうっと見て表情を穏やかに緩ませる。
そんな様子にユメはホシノの頭に手を置くと、よしよしと撫で回し始めた。
「…」
「ふふっ…それで、どうだった?名も無き神々の王女は」
「はい?いやまあ…すっごい強かったですよ。あっちに委員長ちゃんの『十種影法術』…死路虚ちゃんがいなかったとしても読み負ければ普通に負けれましたし」
「ホシノちゃんがそこまで言うのか〜…悔しい?」
「悔しいなんてもんじゃないです。やれることは全部やりました。鍛えた肉体に身につけた技術、磨き上げたセンスに場当たりの発想と瞬発力…全部をぶつけて、それでも届かなかった。あれだけ後輩達に頼りにされたって言うのに、結局私は負けたんです…情けないったらありゃしません」
頭を撫でるユメの手を振り払い、脱力して天井を見上げるホシノにユメは暫し押し黙ると、ホシノの髪の襟足を指でツーっとなぞった。
ホシノはそれを擽ったそうにして首を動かすと、訝しげにユメを見て目を細める。
「…なんですか?」
「いや、せっかく伸ばしてたのに切っちゃったんだなって。お揃いだったのに…」
「まあKeyと戦うんですから少しでも身軽になる必要がありましたし…そんな我儘言わないでください」
「そお?う〜ん…ホシノちゃんは、後悔してない?まだまだ先が長かったのに…」
「…そんな事、言わずもがなです」
「!」
背もたれに体重を預けていたホシノはぐっと身体を起こすと、広げた自分の手のひらを見つめて名残惜しそうに、しかし柔らかく笑ってふっと息を吐いた。
「ユメ先輩との3年間を過ごせて、セナも一緒に付き合ってくれて、可愛い後輩が沢山できて、皆とふざけたり特訓したりして───楽しかったなぁ…」
「…そっか。ホシノちゃんが満足したなら、私は嬉しいよ」
「満足…というと、どうなんですかね」
「うん?」
ホシノが思い起こしたのは、決戦へと赴くホシノを見送る後輩達。
皆が激励し、喝を入れるように背中を叩いてくれたあの時。
もし、叶うことならば…
「…背中を叩いてくれた中に、ユメ先輩がいたらきっと満足出来たんでしょうね」
「…ふふっ。もう、ホシノちゃんってば」
そんなホシノの言葉を聞いて顔を背けるユメ。
ホシノがそんなユメの方に目を向けると、顔を見せないようにはしているが目元の端に雫が1つ浮いているのが隠せていない。
相変わらずだと苦笑するホシノは再び水槽へと目を向けると、しんみりとした空気を誤魔化すようにおどけだした。
「あ〜あ、でもせっかく死ぬなら可愛い子達に囲まれて死にたかったな〜」
「割と真面目にホシノ先輩っておじさんみたいな性格になってきてるわよね」
そんなホシノに、2人が座るベンチの横…もう1つのベンチに座っていたユウカが横からツッコミを入れ、その隣に座るノアが微笑みながら小さく手を振っていた。
「それこそ中等部は比較的もっとしっかりしてた筈なのに、高等部になってからよくサボってたんでしょ?特異現象捜査部に戻った時にホシノ先輩の噂聞いたらびっくりしたわよ…まあそんな気楽さがあったから私より長生き出来たんでしょうけど」
「そうは言っても、ユウカちゃんとホシノ先輩でしたら誤差の範囲だとは思いますよ?」
「そういう話じゃ無いわよ…」
「好き勝手言ってくれるねぇ、私だって色々大人になって手の抜き方を学んだだけだから。そういうユウカちゃんだって…」
「こら、ホシノちゃん。ユウカちゃんと言い争いになるようなことは言わないの!」
「ちょっ、分かりましたからやめてください…ち、近…もがっ…」
ホシノがふざけてはユウカを怒らせるいつもの流れを感じ取ったユメはホシノの頭をホールドして自分の胸に押し付けた。
豊かな双丘に顔を埋められ気恥ずかしさに顔を赤くするホシノだったが、ユメがホールドする腕の力をより強めたせいで顔が完全に胸に埋まり声を上げることすら困難になっている。
見かねたノアが諭してホシノを解放させると、色々な意味で顔を真っ赤にして呼吸を荒くするホシノに大人しくするよう言いつけてまたベンチに座らせた。
「まったくまた馬鹿やって…私、昔ユメ先輩に言ったことがあるのよね。もうホシノ先輩1人で良いんじゃないかって。ホシノ先輩は生まれ持ったそれだけの力を、誰かの為だけに使い続ける変態だったからね」
「ユウカちゃん、それとは関係なくホシノちゃんは後輩にセクハラする変態ですよ」
「ごめんノアちゃんの方も普通にムカついてきた」
さりげなく貶してくるノアにじとっとした視線を送るホシノだったが、ユメからの無言の圧力を受けてそれを収めると、深いため息を吐いて頬杖を着いた。
そんな黄昏たような様子を見たユウカは「だからこそ…」と話を続ける。
「例え敵わなくても、最後まで自分の命を後輩の為に消費するホシノ先輩の最期は、まぁあなたらしいわね」
「…それはどうも。ユウカちゃんはどうだったの?」
「あはは…その件については私が出しゃばってしまって…」
「良いわよ、責任が人を生かすことだってある。私が託した責任はきっとアリスちゃんを苦しめたでしょうけど…それでも、アリスちゃんが前を向くきっかけを得られたのなら…悪くなかったとは言わないけど、多少は報われたと思えるのかしらね」
「…背負わせすぎるのも、考えものだけどね。私なんかKeyなんていうでっかいものの相手をこれから皆に背負わせるんだよ?」
「ふぅん…そんなに皆のことが心配?」
「私が負ける相手と可愛い後輩達が戦うんですから当たり前でしょう」
「じゃあ…負けちゃうの?」
「…」
少し意地悪な顔をしてそう聞いてくるユメに、ホシノは静かに目を瞑る。
頭の中を駆け巡るのは、皆と過ごした思い出の日々…そして、その中で確かに積み上げてきたもの。
ホシノがいなくなったとしても、きっとそれらは皆の支えになると信じて…
「勝つよ、きっとね」
「…うん!信じよう、最後まで」
「うへへ…あ、ヒマリ部長!連邦生徒会の後継はリオ部長に頼んできましたんで!」
「何ですって!?なんてことをしてくれたんですか、このままではサンクトゥムタワーがアバンギャルドタワーとかふざけた名前で建て直されてしまうではないですか!」
「心配する所そこなんだ…」
静かに水槽を眺めていたヒマリを見つけるやそれを伝えたホシノは、慌て始めたヒマリの姿を見てケラケラと笑う。
成長したのかしていないのか、なんにせよ根っこは変わらないホシノにユウカやノアは苦笑し、ユメは昔を懐かしむようにホシノと一緒に笑い合う。
ふとホシノが当たりを見渡せば、水槽を見て回ってはしゃぐユカリと付き人である黒井の姿や、バツの悪そうに端の方で小さな水槽を眺めているワカモの姿も見つける。
まるで過去に戻ったような…夢見心地の時間の中、ホシノは水槽を悠々と泳ぐジンベエザメを見て小さく呟いた。
「これが私の妄想じゃないことを祈りますよ」
「死路虚による適応は一度攻撃を受けると緩やかに解析が始まり、時間の経過によって完成します。その間さらに攻撃を受ければその時間が加速して、一度適応した術も決して解析を完結することなく更なる適応を続けます」
Keyが語るのは、ホシノを苦しめた死路虚の適応の仕組み。
語る相手は───スーパーノヴァによって撃ち抜かれ、上半身が消失し腰から下の下半身だけが仁王立ちして残るホシノの遺体。
「私が死路虚に求めていたのは”手本”です。私が貴女の不変を破り再生もさせずに葬れる手本…初め貴女の『ウジャトの目』の再生に適応した死路虚は、それを中和して無効化、そして再生を遅らせるように自らの神秘を変質させていました。それは私には出来ない芸当でしたので、私は待つことにしました。私に合った『ウジャトの目』への適応を。2度目の適応は私のように貴女の腕を分解した訳ではありません。あれは秘儀の対象の拡張───秘儀の対象を小鳥遊ホシノではなく秘儀、そして神秘そのものにまで拡張して、破壊する。不変も再生も肉体の保護も関係なく、それが神秘由来である限り一切合切を無視して分解する…至難の技でしたし、今の私ではスーパーノヴァの出力を借りなければ実現が困難な技でしたが、実に良い手本でした」
唯一残った小鳥遊ホシノの下半身は風に揺られてばたりと倒れる。
それを見下ろしたKeyは、曇りのない目で…自分をここまで追い詰めたホシノに対して心からの賞賛を贈った。
「実に見事でした、小鳥遊ホシノ。生涯私のアーカイブから貴女が消えることはないでしょう」
2人の戦いは、シュンが操る烏によって監視され、その状況が逐一特異現象捜査部の仲間達へと共有されている。
小鳥遊ホシノの敗北を見届けた瞬間、その死を悼む間もなく戦地に投入されたのは───”コールサイン
彼女が特異現象捜査部に所属していた際、ミレニアム支部が誇った虎の子…人呼んで、約束された勝利の象徴。
「いいもん見せて貰ったさ…それに、思ったよりまだまだ楽しめそうだなぁ!Key!」
「今は機嫌が良いので…頼みますから興を削がないでくださいよ?」
小ネタ
ホシノ「ところで…明らかに場違いな奴がいますよね」
ワカモ「…何か問題でも?」
ホシノ「いやなんで勝手に人の思い出に入ってきてるんですか。ユウカちゃんノアちゃん、ユカリちゃんガードして」
ユカリ「なんですのー!?」
ワカモ「あらまあ、タッパも小さければ器まで小さいこと」
ホシノ「は?」
ワカモ「は?」
ユメ「ほら仲良くしようよ〜!」