ブルア廻戦   作:天翼project

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今回はアニメ5話までの範囲でお送りします



特異戴天 ─弐─

 

古聖堂の外でアリスを待っていたヒナは、地下を覆っていた特級複製特異体、アンブロジウスの生得領域が閉じたのを察知していた。

 

(生得領域が閉じた…ということは、あの特異体は倒されたのね。あとはアリスが戻ってこれば…)

「残念ですがあの者は戻りませんよ」

「っ!」

 

背後から聞こえた声にヒナは考えることもせずに距離を取りながら振り返り、マシンガンを構える。

そこにいたのは…アリス、の身体の主導権を握っているKeyだった。

Keyは引き金に指をかけ既に攻撃しようとしていたヒナを手で制する。

 

「そう怯えないでください。今は機嫌が良いので、少し話でもしましょうか」

「話…?」

「ふん…これは何の契約も無く私を利用しようとしたツケでしょう。小娘は入れ替わることに手間取っているようです。まあそれも時間の問題でしょうが…それで今、私に出来る事を考えてみました」

「何を…やめなさい!」

 

ヒナが止める間もなくKeyは自らの胸に腕を突き刺すと、体内から心臓を引きずり出した。

体外でも心臓は脈動を続けているが、Keyはそれを地面に投げ捨てると踏み潰してしまう。

 

「な、何を…」

「小娘を人質にします」

「人質…?」

「ええ、私は心臓など無くとも生きていけますが、この小娘は違う。私と入れ替わることは死を意味します」

(こいつ…)

「さて、話は終わりました。もう怯えて構いませんよ。殺します。理由は特にありません」

「…」

 

気が済んだのか、Keyはレールガンをヒナへと向ける。

エネルギーがチャージされ、砲口が光を帯び始める。

アリスが辛うじて乗せるそれとは違い、エネルギーにはKeyの神秘が大量に混ぜられていて、直撃すれば今のヒナでは一撃で蒸発してしまうだろう。

 

(不平等な現実だけが平等に与えられる。嫌な世の中ね…)

「…言っておくけど、アリスは戻ってくるわよ。心臓を抜いたせいでその子の心も理解できなくなったようね」

「ほう?死ぬとわかっているのに?」

「アリスはそういう奴よ」

「買い被りすぎですよ。この小娘は人より頑丈で鈍いだけ。先刻も今際の際で怯えていたような腰抜けです。断言しましょう、この小娘に自死する勇気などありません」

 

自らの穴の空いた胸に手を置いてアリスを貶すKeyだが、既にヒナの興味は移りこの状況を打開する策を練っていた。

注目するのは、ヒナが古聖堂を脱出する前に確かに抉り取られているのを見たアリスの腕だ。

 

(…腕が治ってるわね。治癒…神秘を反転させて得られる”恐怖”をこいつは使える。心臓無しで生きていられるとはいえダメージはある筈。アリスが戻る前に、心臓を治させる…心臓を欠いたままじゃ私に勝てないと思わせる!)

 

それは、ヒナがKeyに挑むということを意味する。

アンブロジウスにすら身体を動けなくさせる程に恐怖を感じていたヒナには、無謀極まりない判断だった。

それでも…

 

(出来るかどうかじゃない…やるしかないのよ!)

「…ふっ、せっかく外に出たのです。広く使いましょう」

 

ヒナの挑戦を汲み、Keyはクイッと手で挑発する。

それを合図にヒナはマシンガンをKeyに向かって乱射した。

Keyはレールガンの巨大な銃身を地面に突き立て盾のようにして…アリスがやっていたのを真似して…それを防ぐ。

しかしあくまで銃撃は牽制、マシンガンを捨てたヒナはKeyに接近すると、顔面を蹴り上げる。

 

「式神使いが肉弾戦とは、面白いですね」

「チッ!」

 

だが蹴りは容易く掴まれて止められ、その隙にKeyの背後を狙おうと高速で飛来した大きな鳥のような式神…鵺の突進も、少し体勢を逸らすだけでヒョイと避けてしまう。

 

「ほら、まだまだ、もっとですよ、もっと!」

「舐めてくれるわね…!」

 

立て続けにヒナは体術を主体としてKeyに攻撃を仕掛けるも、その尽くが躱され、防がれ、捌かれる。

まるで教導でもしているかのようなKeyの流れるような体運びによって一連の攻防は踊っているのかと見紛う美しさすら感じさせる。

しかし消耗しているのはヒナのみで、段々とその息が荒くなり始めた。

やがて精度が鈍ってきたヒナの拳を受け止めたKeyは、その腕を引いて顔が触れそうな距離まで近付くと、おぞましいまでの殺気を込めて言い放った。

 

「もっと、神秘を込めて」

「っ…大蛇!」

 

Keyの手を振り払ったヒナは手印を結び、巨大な蛇の式神を呼び出す。

軽く20mはあるであろう”大蛇(おろち)”は地中からKeyを咥え上げ高所まで長い身体をピンと伸ばす。

 

「畳み掛けなさい!」

 

そこに鵺が電気を纏って大蛇に咥えられたKeyに突撃するが…

首を傾けるだけでその突撃を回避したKeyは大蛇を内側から引き裂いて破壊し、ヒナの目の前に降りてくる。

 

「言ったでしょう、広く使いましょうと」

「しまっ…」

 

Keyはヒナの襟を掴むと乱雑に放り投げ、200mは離れた建物の屋上に落下する。

さらに跳躍して一瞬でそれに追い付くと、ヒナの背中を蹴り飛ばして近くの建物の外壁に突っ込ませた。

 

地上に落ち頭から血を流すヒナは自身とKeyとの力の差を痛感し、自嘲していた。

 

(神秘とか秘儀がどうこうの次元じゃない…力も速さも体術も、何もかも格が違う…)

「ふん…良い秘儀ですね」

 

追撃を仕掛けようとするKeyに鵺がヒナを守ろうと突撃するが、それを腕の一振で吹き飛ばしながら、Keyは賞賛を送った。

吹き飛ばされた鵺はヒナの横に墜落し、弱々しく鳴いている。

そんな鵺の頭を優しく撫でながら、ヒナは朦朧とし始めた思考を全力で回す。

 

(生得領域を抜けるのに一通りの式神は使ってしまった…玉犬の白と大蛇は破壊されて、鵺ももう限界が近い…破壊される前にこっちは戻した方が良いわね)

 

鵺がヒナの影に沈んで姿を消したのを見ていたKeyは興味深そうに声を上げた。

 

「なるほど、貴女の秘儀は影を媒介にしているのですか?」

(今更気付かれたところで問題は無いけれど…)

「…だから何よ?」

 

(…?端末や遺物を使うような在り来りなものでは無い。応用も効くと見える)

「貴女、何故あの時逃げたのですか?それでは宝の持ち腐れ…まあ良いですが。どの道その程度では治しませんよ?」

(…そっちの狙いもバレてたのね)

「つまらない事に命を賭けましたね。この小娘にそこまでの価値はないというのに」

「…価値、ね」

 

Keyからの問いかけにヒナが思い起こすのは、古い記憶。

 

 

その人物は、独断行動が多く暴走癖があり、合理性を優先し堅苦しく決して善人とは言い切れない人物ではあったが、それでも自分を慕いひたむきに尽くそうとしてくれる後輩だった。

 

 

『お体に気を付けてくださいね、ヒナ委員長』

 

 

(不平等な現実だけが、平等に与えられる…恨まれるような役職ではあったけど、報われるべき人間だった…それでも特異現象は理不尽に降りかかった。私を捨てた親は今もきっとのうのうと生きてる…因果応報は自動じゃない。悪は法の下で初めて裁かれる。私達は、そんな歯車の一つ。努力する人が、少しでも報われるように…私は不平等に人を助ける)

 

「…そうですか。貴女が命を燃やすのはこれからだったというわけです」

 

ヒナの覚悟を決めた真っ直ぐな瞳に、Keyは愉快そうに笑う。

Keyの余裕も、命の価値も、それら邪魔な思考を全て放り捨てて…ヒナは構えた。

 

「魅せてみなさい、空崎ヒナ!」

「布留部由良由良”八握(やつかの)…”!」

 

ヒナが唱えようとしたその時…ツー、という機械音が鳴る。

その音を聞いた瞬間にヒナは構えを解くと、立ち上がってKey…アリスを見つめた。

 

 

「…言っておくけれど、私は貴女を助けた理由に理論的な思考は持ち合わせていないわ。危険だとしても…貴女のようにひたむきな子が死ぬのを見たくなかった。迷ったけど…結局は我儘な感情論。でも…それで良いのよ。私は貴女の言う勇者なんて高尚なものじゃない。だから貴女を助けたことを後悔なんてしてないわ」

 

憑き物が晴れたような笑顔でその言葉を送るヒナ。

それを受け取り、アリスはその目を見つめ返す。

 

「…そうですか。ヒナは頭が良いですからね。アリスより、きっと沢山考えてるのでしょう。ヒナは正しいと思います…ですが、アリスも間違っているとも思いません」

 

瞳に光が戻ったアリスは、口と穴の空いた胸から夥しい血を流しながら微笑む。

ヒナも、朗らかに笑ってそれを見届けていた。

やがて、アリスは咳き込んで瞳の光を薄くしていく。

 

「…そろそろですね…ヒナも…カズサも…ホシノ先輩…は心配ありませんか。どうか、お元気で…」

 

最期に言葉を残すと、アリスはその場に倒れた。

ヒナは俯き顔に影を落とすと、誰にも見えないように歯噛みしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとどうなの!態々貴重な機器部品(モジュール)一つ使ってまで確かめる必要があったの?Keyの実力!」

 

D.U.のとある人混みの多い街の中。

四人組の内の先頭を歩く人物に、赤いコートを羽織る頭に角の生えた赤い髪の少女は不機嫌そうに突っかかっていた。

対して突っかかられた方の水色の髪の少女はニッコリとした蚊も殺したことも無いかのような優しい笑みのまま振り向いてそれに答える。

 

「うん。中途半端な当て馬じゃ意味無いし、それなりに収穫はあったよ」

「…言い訳じゃない事を祈るわよ」

「あんまりこいつ信用しない方が良いよ社長」

「アル様を騙そうとするなら殺します…」

「わぁ〜、四面楚歌〜」

 

他三人に隠すつもりのない敵意を向けられながらも先頭の少女は笑みを崩さず、適当なファミレスに入って席に着く。

その際その四人の異様な雰囲気に周りの席の生徒はヒソヒソと陰口を叩くが、一人が周囲に冷たい目線を向けるだけで残りはそれを無視し、話を続ける。

 

「そういえばもう一人いなかったっけ?」

「ん?あの子の事なら、今は一人別行動してるわよ。自由なのは良い事だけど、まとまりがないのは困ったものね」

「ふぅん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

S.C.H.A.L.Eにある解剖室で、一人の少女の遺体に白布がかけられている。

 

「申し訳ありません…会敵した時の選択肢は逃げるか死ぬか…絶対に戦わないように伝えたのですが…」

「わざと、でしょ」

「…と、言いますと?」

「特級相手、生死不明の五人の救助に一年生を派遣なんてありえない。それにアリスちゃんは私が無理を通して実質死刑を先延ばしにしてもらってるんだもん」

 

少女の…アリスの遺体を見て目を細めながら、ホシノは苛立ちを顕にして頭を搔く。

この雰囲気に報告をしていたアヤネは胃を痛めるが、今回の件に対する怒りはホシノと同様だった。

 

「大方それを面白く思わない連邦生徒会が私がいない間に特級を体良く利用してアリスちゃんを始末しようとしたんだろうね。他二人が死んでも私に嫌がらせ出来ればそれで良いとでも思ってるんじゃない?」

「気持ちは分かりますが…派遣時点ではあの特異体が本当に特級になるとは…」

 

「犯人探しなんて面倒臭い。いっその事連邦生徒会の連中を皆殺しにしようか?」

 

ホシノの本気の殺気に、アヤネも口を結んでたじろぐ。

そんな中、解剖室の扉がノックされ、角を生やした白衣の少女が一人入ってきた。

 

「珍しく感情的ですね」

「…お疲れ様です、セナさん」

「どうも、アヤネさん…ホシノさん、随分その子がお気に入りだったようですね」

「おじさんは何時だって後輩思いの聖人だよ〜?」

「あまりアヤネさんをいじめないでくださいね。私達と上の間で苦労しているんですから」

(恐縮ですセナさん…どうせならもっと言ってやってください…)

「アヤネちゃん失礼なこと考えてない?」

「何でもありませんよ」

 

小話の間に手袋やマスク、器具の準備を終えたセナはアリスにかけられていた布を退かし、その遺体を観察する。

 

「これが例のKeyの器ですか。好きに解剖してよろしいのでしたよね?」

「うん。絶対に役立ててよ?」

「当然です。私を誰だと思っているのですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元気でって…自分が死んでたらわけないわよね」

「…ヒナはさ、仲間が死ぬの初めて?」

「同年代の子はね」

 

あの一件の後、治療を受け無事に退院したヒナとカズサはS.C.H.A.L.Eの近くにある公園のベンチに座り、二人で雑談していた。

 

「そういう割には平気そうじゃん」

「貴女もでしょう?」

「そりゃ、まだ会って二週間そこらだよ?そんな関係の浅い奴が死んだくらいでメソメソするほど情けなくない」

 

そう言うカズサだったが、それでも声には暗さが見て取れ、さらに唇を噛んでいる様子を見たヒナもため息を吐く。

 

「…暑いわね」

「…そうだね。こんな日には冷たいアイスでも食べたいよ」

 

「おーい!なんだいつにも増して辛気臭いな!」

 

そこに、大きく活発な少女の声が響く。

声の方向に二人が目を向けると、そこには額の一本角と蜥蜴のような尾が特徴的な赤髪の少女が立っていた。

 

「…レンゲ先輩」

 

「レンゲ」

 

さらに一本角の少女…レンゲの後方、物陰から彼女に声を掛ける者が顔を出す。

そこにいたのは、ヘルメットを被り口元をマフラーで隠す少女と…目の焦点があっていない舌を出した大きな鳥のような着ぐるみ。

 

「ああ?今話し中だ」

「聞いていないのか?一年生が昨日一人死んでいるらしいぞ」

「デモ」

「…バッカ!早く言え!これじゃ私が血も涙も無い鬼みたいじゃねぇか!」

「「…?」」

「なんで首傾げてんだ否定しろよ!」

「違ったのか?」

「プロレタリア」

「いや違うからな!?もっと気遣いぐらい出来るから!」

 

「…あの人達は?」

「二年の先輩よ」

 

現れて早々騒がしい三人に初対面のカズサは引き気味に聞く。

既にある程度面識のあるヒナは立ち上がると、指差しながらそれぞれの紹介を始めた。

 

「ったく、甘やかすだけが優しさじゃないんだぞ」

「レンゲ先輩。遺物の扱いなら学年一よ」

「中々気が強そうな人だね」

 

「労働」

「ミノリ先輩。語彙が革命用語しかない」

「物騒過ぎる」

 

「だがレンゲもクロコが居ると丸くなるじゃないか」

「ペロロ。後一人クロコ先輩っていう手放しで尊敬出来る先輩がいるわ。今出張で海外だけど」

「あんたペロロをペロロの一言で済ませるつもり?っていうか絶対中から声聞こえたよね!?誰入ってるの!?」

 

カズサの疑問に何故か誰も答えることはなく、言い合いを切り上げてペロロがカズサの前に来ると、腕部に当たる羽を器用に身体の前で合わせて詫びの姿勢を作った。

そした見た目の異様な威圧感からは想像出来ないクールな声が聞こえてくる。

 

「喪中にすまなかった。改めて、特異現象捜査部二年のペロロだ。よろしく頼む」

「は、はい…」

(巫山戯た見た目に対して声と性格のギャップが酷い…)

 

他の二年生組も集まり、各々自己紹介…一名自分では出来ていなかったが…自己紹介を済ませると、改めてレンゲがここに来た要件を話す。

 

「お前達には、百鬼夜行支部との交流会に出て欲しい」

「交流会?何それ」

「そのままの意味よ。百鬼夜行にある特異現象捜査部の支部との交流会。キヴォトスにある幾つかの大きな学校には特異現象捜査部の支部があるって説明は受けてるかしら?百鬼夜行にある支部は、本部であるここS.C.H.A.L.Eに次ぐ規模を誇る特異現象捜査部の二大巨頭とも言われてるのよ…でも、それって二年と三年がメインじゃなかったかしら?」

「その三年が謹慎、クロコも暫く戻って来れないらしいから、代わりにお前達に出てくれって話だ」

「ふ〜ん?で、交流会って何するの?スイーツ店巡り?」

「あんたもあんたで割とおめでたい頭してるわよね」

「は?」

 

「こんなところで喧嘩するな。交流会はS.C.H.A.L.Eの部長…つまりヒマリ部長と、百鬼夜行支部の部長が互いに提案した勝負方法を一日ずつ二日かけて行うんだ」

「つっても、それも建前みたいなもんで初日が団体戦、二日目が個人戦って毎年決まってるけどな」

「デモ」

「個人戦と団体戦…穏やかじゃなさそうだね」

「ああ、殺す以外は何でもありの合戦だ。逆に殺されないようにみっちりしごいてやるからな」

「好きなだけ頼ってくれ。いくらでも付き合うぞ」

「共産」

 

ペロロが相変わらず見た目に反するやたら俊敏な動きを見せつけアピールするが、そのシュールさにカズサは返答に困る。

一人は強気で強情、一人はそもそも文字通りの意味で会話が出来ない、一人はペロロ。

あまりにも濃い先輩達にカズサは天を仰ぐが、深呼吸して向き合う事に決め、気になっていた部分に対しての質問をすることにした。

 

「…確か常に人手不足って聞いたけど、そんな事してる暇あるの?」

「良い質問だな。忙しいのは今の時期まで、冬の終わりから春までの生徒のストレス等の陰気が特異現象となって現れる繁忙期のようなものだ」

「年中忙しい時もあるけど、ぼちぼち落ち着いて来ると思うぞ」

「へぇ〜」

「で、やるだろ?仲間が死んだんだもんな。その鬱憤を幾らかここで解消すると良いさ」

「「やる」」

 

(私は…強くなる為なら、なんだってする。交流会は、知識と経験を身に付けられる良い機会の筈)

「…とはいえ、しごきも交流会も意味が無いと思ったら直ぐに降りるわよ」

「同じく」

「ハッ、まあこんぐらい生意気な方がやりがいがあるわな」

「プロレタリア」

 

そうしてカズサとヒナは、二年生組による指導と特訓という名のしごきを受けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、君達は今の秩序を壊してアウトローとして自由を謳歌出来るキヴォトスにしたいんだね?」

「大体はね。だけど少し違うわ」

 

ファミレスで話す四人。

相変わらずコソコソと自分達の話をしているらしい周囲を睨む黒衣の少女と、それを宥めながら携帯を弄っているダウナーな様子の少女。

そして頭から角を生やす赤いコートを羽織った赤髪の少女と、それと話をしている水色の髪の少女。

周りの目も気にせず赤髪の少女は自らの考えを語る。

 

「人は嘘で出来ている生き物よ。表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。けれど、人を縛る秩序と理性が本能を、本心を、感情を押し殺してる。それらを全て心の行くままに曝け出すアウトローこそが、真の人間なのよ。自ら自由を捨てたお人形さんは廃棄される運命…そう思わないかしら?」

「それはそれは、崇高な考えだね。けど、消えるべきは本来はあなた達だよ?」

「だから貴女に聞いてるのよ。どうすれば、私達は勝てるの?」

「…戦争の前に二つ、条件を満たせば勝てるよ」

 

そこまでの温和な笑みから、闇と危険を孕んだ笑みを見せた少女は、指を二本立てる。

それを興味深そうに聞く赤髪の少女は、ごくりと喉を鳴らして問う。

 

「…その二つっていうのは?」

「一つ。キヴォトス最強の神秘と言われる小鳥遊ホシノを戦闘不能にすること。二つ、Key…天童アリスを仲間に引き込むこと」

「…ちょっと待なさい。その天童アリスっていう娘は死んだのでしょう?」

「ふふっ…さあ、どうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い景観に、所々光が灯る空間。

地面を無数のケーブルが這い、至る所に歯車や壊れた機械のようなものが落ちている摩訶不思議な世界。

 

そこで、アリスは機械の残骸の山の上にある、無数のケーブルが繋がる椅子の上に座る、Keyと対峙していた。

 

 

 

「許可無く見上げないでください。不愉快ですよ、小娘」

 

 

残骸の山の上からアリスを見下ろすKeyは、苛立ちと不快を顕にしながらも、よからぬ事を企んでいるかのような笑みを浮かべるのだった。

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