少し引き伸ばし気味で読みにくいかもです
カヤの奮闘により消耗したマルクトへの怒涛の畳み掛け、そしてモモイの奇襲がトドメとなり遂に打倒を果たしたクロコ達。
棺桶の中で1人呑気にすやすやと眠っているカヤに内心感謝しながら、クロコは今後の動きについて考えていた。
(Keyとマルクトは同時に攻略する。早く片付いた方からもう片方の手伝いを…カヤのお陰で想定よりずっと少ない消耗でマルクトに勝てた。今のツルギとハナコはKey相手に連れていくのは心配なダメージだけど、ハルナは余力十分な上最悪遠くから援護させるだけでも良いしまだ戦えるかな。モモイも無傷で仕留めてくれたし…っと、シュンさん達に報告しないと)
これからKeyとの戦いを手伝いに行くにも十分な余力を残せたことを良い誤算だと表情を綻ばせ、運搬担当のココナを送って来てもらおうと連絡を入れるクロコ。
暫くして無線が繋がりマルクトを倒した旨を伝えようとしたが───
「───え…?ホシノ、先輩が…負けた…?」
先に伝えられた凶報に、クロコは目眩がするような感覚に陥った。
あの誰よりも頼りになって、誰よりも強くて、大好きなあの先輩がKeyに敗れて死亡したという事実を直ぐには飲み込めず息が詰まる。
しかし、それでも…心のどこかで、そうなるのでは無いかという予感はしていた。
勝利は信じていた、あの人が死ぬはずが無いと思っていた。
でも…もしかしたらと。
「…分かった。こっちは片付いたから、ココナを呼んで欲しい。尚更急いで加勢に行かないと」
「どうしたのクロコさん?」
「…いや、大丈夫。急ごう」
モモイからの心配の声に問題ないと答えたクロコはマルクトとの戦いで受けたダメージが今になって響いてきたのかぐったりとした様子のハナコとツルギ、そして武装のメンテナンスをしていたハルナを呼び集めてココナが来るのを待つことにした。
あと1分もしない内に迎えに来るだろうが、その僅かな時間も無駄にしない為にクロコが装備や作戦の確認をしていたその時───
不意に、完全に沈黙していた筈のマルクトの死体からとてつもない神秘が吹き荒れた。
「「「「「!」」」」」
完全に殺した筈だと油断していた一同は咄嗟に臨戦態勢を取りマルクトの死体を睨む。
吹き荒れる神秘は次第に嵐のように強まって…マルクトの死体を中心に、莫大な数の特異体が溢れ出てきた。
「ちょっと、何あれ…!」
「まさか…マルクトが取り込んでた特異体…!?」
波のように、吹雪のように、壁のように、群れを成して数えるのも馬鹿らしい数が無差別に辺りを攻撃して周り、クロコ達にも狙いを定めてくる。
『特異操術』の術者が死亡した後取り込んでいた特異体がどうなるのかという記録は残っていない。
その秘儀そのものが珍しい上に、そもそもこれだけの量の特異体を1人の術者で取り込めるはずも無く、過去に『特異操術』の術者が死んだ時はせいぜい十数体の特異体が漏れでる程度で記録に残る程の騒ぎにもならなかったのだろう。
またクロコ自身も過去にユメを倒した時に同じような事態にはならなかったので…あの時は直前にユメが『うずまき』で取り込んでいた特異体を全て消費していたため…その可能性を失念していた。
マルクトから溢れた特異体の大半は2級以下の低級のものばかりだが、軽く数万〜数十万もの母数が母数だけに秘儀を有する個体も少なくない上特級相当の特異体も数十体散見される程だ。
これだけの特異体、当然放置する訳には行かないと迫ってくる特異体を迎撃しながらクロコは思考を巡らせる。
これを抑え込むには、自分が対応しなければならないだろうと。
「どんだけ蓄えてたのさあいつ…!最後の最後まで面倒なことばっかり…!」
「…モモイ、せめて君は先に行って。私達でこいつら片付ける」
「クロコさん…?」
「ホシノ先輩と美甘さんが負けた。もうアリス達が戦ってる」
「っ…!…ごめんなさい、お願いできますか?」
「うん。全部やっつけたら直ぐに行くから、守ってあげて」
「お待たせしまし…なんですかこれぇ!?」
呼びつけられて急いで転移してきたココナは、来て早々目の前で吹き荒れる特異体の嵐に腰を抜かしそうになるが、それをモモイが支えてあげるとなんとか気を取り直し、クロコ達に視線を送った。
クロコが首を横に振ると大体のことを悟り、ココナはモモイの手を握る。
「本当に良いんですね!?」
「また後から呼ぶから今はそっちお願い」
「では…行きますよ、モモイさん!」
「うん、ありがとう!」
最後に確認だけするとココナはモモイと共に決戦の場へ…正確には裏方担当であるココナが直接戦闘に巻き込まれない程度に少し離れた位置へ…と転移した。
それを見送ったクロコは残ったハナコ、ツルギ、ハルナとアイコンタクトを取ると目の前の空を埋め尽くす程の特異体を見上げる。
「ごめん、もうちょっと付き合って」
「そもそも以前の戦いで生かされた身、これまで行ってきた事の贖罪だと思えばどうってことありませんわ」
「1ヶ月も訓練したり高め合った中ですからね〜、ここまで来たら私達だってハッピーエンドとやらを見てみたいですので」
「さっさと片すぞ。クロコの消耗を最小限で行く方針は継続だ。元気なまま向かわせる」
「…ん、ありがとう」
最初は敵同士で始まった関係。
戦いを通して互いを知り、数奇な運命で生き残った後にたった1ヶ月とはいえ確かな絆を育んで、その巡り合わせがこうして結実していると思うとクロコは感慨深い気持ちになった。
特異現象捜査部に来てから様々な出会いがあって…今こうしてクロコが自分で居られるのは、暗闇から引っ張りあげてくれたホシノのお陰なのだろう。
(…ホシノ先輩。私達は大丈夫だから、後は任せて。皆、あなたからたくさんのものを貰ったから)
「恩人には返しても返したりない…だから、さっさと道を空けさせてもらう」
血眼になって襲いかかってくる特異体を鋭く睨みつけたクロコは意識を研ぎ澄ませ…そして僅かに走ったノイズに冷や汗をかいた。
(…カヤも回収してもらうの忘れてた…)
超人は、今も呑気に棺桶の中でぐーすか眠っている。
「貴女に何が出来ると言うのですか、小娘」
Keyの見上げる先から降り立つアリスとカンナ。
アリスは目端に涙を浮かべながらも、宿敵を打倒する為に力強い意志を持ってKeyへと立ち向かう。
カンナもまたそんなアリスを支えるべく、巨大化させたガベルを担ぎ愛用の拳銃にも手をかけて緩みなく警戒している。
「Keyィィィィ!」
「フンッ」
真っ先にアリスが駆け出し、Keyはそれを迎え撃とうとして…背後から迫ってくる数羽の烏にノールックで腕を振って分解し撃墜した。
「マルクトといい、Keyといい、このレベルになると落とされてしまうものですね…これくらいの援護しか出来ませんが、頑張って下さい。アリスちゃん」
遠く離れた位置から望遠鏡で戦場を観察しながら、シュンは烏を操ってアリス達を支援する。
そんな援護を受けながらKeyに迫ったアリスは、Keyが横に振るったスーパーノヴァの鈍器の如き砲身をスライディングで下をくぐり抜けるようにして避け、下から構えたレールガンを放つ。
上体を逸らしてそれを回避したKeyは足元のアリスを踏み潰そうと片足を上げるが、そこを狙ったカンナの銃撃で上げた足を撃ち抜かれ、振り下ろす足の軌道が逸れてアリスの顔の真横の地面を踏み砕いた。
慌てて転がって距離を取ろうとするアリスにKeyは続けて腕を振り分解の波動を放つが…ホシノとの戦いで散々消耗を重ねヘイローにも大きなダメージを負ってしまっている今のKeyの秘儀の出力は限りなく低下しており、アリスが強く神秘で身を保護するだけで凌がれてしまう。
(ここまで威力が落ちてしまっているとは…やはり
自分の出力の低下を歯痒く思いながらもまだまだ負けるとは微塵も思っていないKeyは意識をカンナの方へと向けた。
かつてD.U.第1
特にカンナの領域によって出現する「処刑人の剣」は一撃でKeyを排除することすら可能とする。
(あちらが私へ用意してきた勝ち筋はあの女…?それ以外にもサブプランは用意してきているとは思いますが、当面の本命はあちらでしょう)
(…まあ勿論警戒されるだろうな。こっちだってそう簡単に通せるとは思っていない)
Keyの予想通り、ホシノとネルが負けた以上今アリス達が用意出来る最善の勝ち筋はカンナの領域となる。
だがカンナが領域を展開しようと掌印を結ぼうとすると、Keyが強引に間合いを詰めてそれを妨害してくる。
砲身の頑強さを利用したスーパーノヴァの鈍器としての運用はカンナ達にとって十分な脅威として効果を発揮し、まともに喰らえば重症を負いかねない。
振り下ろされたスーパーノヴァの砲身を避けたカンナは巨大化したガベルを振り回してKeyへと叩き付けようとするも、スーパーノヴァを盾にして防がれる。
そこへ回り込んだアリスがレールガンを放つがそれもKeyは身体を捻って回避し、振り向きざまに回し蹴りをアリスへと叩き込んで蹴り飛ばした。
「っ…まだ、まだ!」
「しつこいですね」
レールガンを地面に突き刺し静止したアリスは馬鹿の一つ覚えのようにKeyへ向かって駆け出す。
それを鼻で笑ったKeyは何度でも叩き伏せてやろうとスーパーノヴァの砲口にエネルギーをチャージし…それを上空から突撃しようと迫ってくる烏達に向けて放ち、薙ぎ払う。
発射直後の隙を狙ったカンナがガベルを振り下ろし、それをKeyが避けて地面を叩いたガベルが瓦礫を巻き上げた。
Keyのすぐ近くまで迫っていたアリスはその瓦礫を1つ掴んでKeyへと投げつけ、Keyはそれを秘儀で分解、その後ろから振り抜かれたアリスの拳も腕でガードし───
(…!?今のは…)
防御した途端、身体を根底から揺すぶられるような不可解な感覚に咄嗟にアリスの腕を掴んでガベルを振ろうとするカンナへと投げつける。
慌ててアリスをキャッチしたカンナだったが、そこを狙ってKeyはスーパーノヴァをチャージし…Keyの腕が弾丸によって撃ち抜かれ、それによって狙いがズレて放たれた光線がアリスとカンナの横を掠めた。
(…威力もさることながら、神秘の保護が削られましたね。あの攻撃は確か…)
「今の私なら皆の武器も使いこなせる。皆で…勝たせてもらう…!」
遙か遠方よりKeyを撃ち抜いたのは、ビルの上に寝そべり大型の対物ライフルを構えるサオリだった。
そのライフルの特性により、着弾した相手の神秘を削り防御力を低下させていく。
アリスの中にいた時の知識から狙撃手の正体を見抜いたKeyは口角を上げ、体勢を建て直して再び向かってくるアリスとカンナへと向き合った。
「レイドボスは私というわけですね。総力戦らしくなってきたじゃないですか。一体後何人来るのでしょう?」
「少なくともあなたの友達の数よりは沢山です!」
「それは困りましたね。クランの仲間数十人を友達と呼んでいいのなら結構な数が来そうです」
「なんでソシャゲやってるんですか!」
「なんの話をしているんだお前達は…」
割とどうでもいい掛け合いの最中もアリスはカンナと共に白兵戦を仕掛け続ける。
時折サオリからの狙撃やシュンからの烏の突撃による支援が来るが、それでも中々有効打を与えられない現状。
Keyの反撃はまともに受ければアリス達ではどれも致命傷になりかねない殺傷力を持っていて、戦いが長引く程集中力が持たず被弾する可能性も上がっていくだろう。
(どちらにせよ時間はかけられません…ホシノ先輩と戦ってた時の動きのキレが健在であれば白兵戦でもとっくに圧倒されてたでしょうが…ホシノ先輩から受けたダメージに加えて、今のKeyはチビメイド先輩から受けた雷撃でまだ身体が痺れてる!痺れから回復したら、アリス達では太刀打ちできなくなる!だからその前に、削る!)
折を見てカンナが神秘解放を狙い、それを妨害されつつもアリスが攻撃を差し込んでKeyを削ろうとする。
最初にアリスの打撃を防いでからは回避に専念しだしたKeyは少なくとも4人分の手数を相手に徐々に押され始めているのを感じていた。
アリスの放ったレールガンを右手で弾き、左手で後方から振り下ろされるカンナのガベルを受け止め、後ろ蹴りでカンナを突き放す。
直後に狙ったサオリの狙撃は秘儀で自分に届く前に分解することで防がれ、挟み込むように別方向から飛んできた烏も同様に分解して撃墜される。
続けて飛びかかったアリスが閃光弾をKeyの足元に放るも、それも炸裂する前に分解されてしまい効果を発揮せずに終わる。
舌打ちしたアリスは飛びかかったいきおいでレールガンの砲身を振り回し、Keyもスーパーノヴァの砲身でそれを受け止めた。
「う、おりゃあぁぁぁぁ!」
「…っ!」
(やはり小娘…あの時から格段に膂力が向上していますね…!)
互いの武装を押し合う力比べで、アリスは少しずつKeyを圧して後方へと下がらせていた。
かつてヒナの肉体を乗っ取った直後にアリスの見せたのと同様の鬼神の如きパワー、その一点においてアリスは確かに今のKeyを上回っていた。
「ふっ、飛べぇ!」
「ぐっ…」
アリスが一気に加える力を強めた事で後方へ弾き飛ばされたKey。
すかさず狙ったサオリの狙撃を秘儀により分解して防ぐKeyだったが、その対処に意識を割かれた事で飛び出てきたカンナへの対処が遅れてしまう。
Keyは苦し紛れに秘儀を放ちカンナに分解の波動が襲いかかるが、多少皮膚が崩れながらも神秘による保護で凌いだカンナは吹っ飛んでくるKeyをガベルで空高く打ち上げた。
「良い連携ですね…この1ヶ月余程鍛錬を重ねたと見えます」
「最後にものを言うのは仲間と努力なのだと…決まっているものですから!光よ───!」
空中で身動きの取れないKeyに、アリスがレールガンを放つ。
スーパーノヴァの砲身を盾にして直撃を避けるも全身が放たれたエネルギーに飲み込まれたKeyは、未だ痺れの引かない身体に鞭打ち空気の面を蹴る事で空中で直角移動するという異次元の機動でエネルギーの奔流から抜け出した。
「まったく、こっちはセーブポイントも無しにここまで来てると言うのに。加減の1つでもしてはいかがです?」
「抜かせ!」
これだけ追い込まれてなお軽口を叩くKeyにカンナが巨大化したガベルを投げつける。
軽くスーパーノヴァの砲身で弾き返したKeyだったが、その際の衝撃が痺れた身体に予想以上に響いて一瞬身体が硬直、目敏くその瞬間を狙ったサオリの狙撃がKeyに直撃し、勢いよくKeyは地上へと落下した。
ここが畳み掛け所だとKeyの落下地点にアリスはレールガンを放ちシュンもカラスを突撃させるが、Keyが薙ぎ払ったスーパーノヴァの光線により烏は焼き払われ、レールガンのエネルギー砲もスーパーノヴァの高専の出力に負けて押し返されてしまう。
「ぐ、ぎぎ…」
「たかがヒトの子の生み出した武装が、超古代の名も無き神々の遺物に敵うはずが無いでしょう」
負けじとレールガンに搭載されている様々な機能を作動させて出力の向上を試みるアリスだったが、それでもスーパーノヴァの出力を上回れない。
レールガンのエネルギーを押し返すスーパーノヴァの光線は遂にアリスまで届き…大爆発が起こった。
ここまで翻弄された憂さ晴らしの如く破壊力を高められたそれはキノコ雲を立ち登らせ、その様はこの世の終わりを想起する。
さしものアリスとてあの一撃を受けて無事では済むまいとタカを括ったKeyだったが…
「どりゃあぁぁぁぁぁ!」
「ああ、嫌われるタイプの雑魚キャラでしたか」
目に見えて身体を焦がしダメージを負っているアリスだったが、戦意は一切衰えることなくがむしゃらにKeyへと攻撃を繰り返す。
傾陽は多少の削りになれば良いと秘儀により分解の波動を放ち、アリスはその中を半ば捨て身に近い形で突っ切った。
分解をほとんど神秘による保護で凌ぎきったアリスは片腕をぐるぐると回した勢いでKeyに振りかぶり、堪らずKeyは大袈裟に飛び退いてそれを回避する。
「名も無き神々の王女ともあろう方が随分と及び腰ですね!名が無いどころか名前負けしてませんか!?」
「そもそも私は一度も自分でその呼称を名乗ったことはありませんよ。私を恐れた者達が勝手にそう呼ぶようになっただけの事」
「ではその人達は見る目がありませんね!王は王でも、あなたはただの魔王です!」
激情を乗せたレールガンのエネルギー砲をひらりと避けたKeyだったが、そこにどこに潜んでいたのか真上から落ちながらカンナがガベルを振り下ろし、Keyはそれをスーパーノヴァの砲身を盾に受け止める。
受けためた衝撃で足が地面に沈み、伝搬したそれが地面にヒビを入れた。
「カンナ、そのまま抑えていてください!」
「急げよ!」
ガベルをさらに巨大化させKeyに圧力をかけている間に、アリスはレールガンをチャージしてそれを解き放つ。
スーパーノヴァをカンナのガベルを止める盾に使ってしまっているKeyはカンナから加えられる圧力により動けないのもあり、仕方なくスーパーノヴァを持っていない、空いている右手で迫るレールガンのエネルギー砲を受け止めて弾いた。
そこへ追撃としてサオリの狙撃が迫るが、エネルギー砲を防いだ際に拡散してエネルギーの一部が地面を穿ったのを見ていたKeyは、それによって足元の地盤が緩んでいると推測しカンナからかけられる圧力を利用して地面を粉砕、空いた穴に水から落ちる事で狙撃を紙一重で回避する。
そこから更にもぐらのように地中を掘り進んだ後地上に顔を出したKeyは、その瞬間を狙ってきたアリスからのレールガンによる砲撃を飛び上がって躱すと反撃にスーパーノヴァを放った。
それを横に避けて回避したアリスは、Keyの動きのキレが戻り始めているのに気付く。
(チビメイド先輩が与えた痺れが回復しようとしてる…!その前にもっとダメージを稼がないと!もっと消耗させないと!)
逸る焦燥がアリスの身体を突き動かそうとするが、先程のスーパーノヴァの直撃のダメージすら気合いで堪えている現状。
そう長い時間の戦闘では無いにも関わらず、あの一撃だけでアリスの肉体には致命的なダメージが加わっていた。
それでもアリスが死に至らないのは───
「落ち着けアリス。焦ると余計奴に手玉に取られるぞ」
「…はい、すみません」
再び駆け出そうとしたアリスの肩をカンナが掴んで止める。
無理をして自分が死ぬ事がこの後のどれだけの保険に影響を与えるかを冷静に考えて、アリスは一旦一息着くことにした。
幸いKeyも痺れの回復を優先しているのか、アリス達が攻めてこないのならKeyもまた仕掛けては来ない。
「ダメージは現時点でもそれなりに稼げている。今の時間にやれるだけのことはやった。次は…」
「はい、大丈夫です。押し通しますので、頑張ってチャンスを見つけてください」
「ああ、最初から最後まで負担のかかる役を任せて悪いな」
「それがアリスの役割ですから」
「…」
(手応えに比べて小娘のダメージが小さい?肉体強度だけでは無い…回復?回復している?小娘…まさか、この1ヶ月の間に恐怖による治癒を会得したとでも?つくづく気に食わない小娘ですね、貴女は)
アリスの尋常ではない耐久力に業を煮やしたKeyは、身体の痺れも大分引いた所でスーパーノヴァのチャージを始めた。
そして放たれた光線を左右に散らばってアリスとカンナが避けると、それを助けるようにサオリの狙撃がKeyへと向かい、Keyはそれを防ぐ為にスーパーノヴァの放出を中断して迫る弾丸を秘儀で分解する。
(これも鬱陶しいですね…そういえば、烏の突撃が止んだ?まあ数に限りはあるでしょうが、それでも危なくなれば使ってくるはず。頭の片隅に置いておく必要があるとして、狙撃手の方を狙うには…)
Keyは先程からチマチマと狙撃してくるサオリを排除しようとスーパーノヴァの砲口を向けるが、そうはさせまいと横からカンナが拳銃で狙い撃つ。
特別な遺物でもないそれは本来なら豆鉄砲も良いところだが、細かい被弾も気になり始める程に消耗を繰り返しているKeyはそれを避ける選択肢を取り、そうして出来上がった隙にアリスが飛びかかった。
「こっちですよ!Key!」
「呼ばれなくても、ちゃんと殺してあげますよ!小娘!」
懲りずに向かってくるアリスに嘲るように答えたKeyは先程の二の舞を踏まないようにアリスが振り回すレールガンの砲身を真っ向からは受け止めずにアリスの力を利用して受け流しつつ体制を崩させた。
自分の力を流され転倒しそうになるアリスにKeyの蹴りが迫るが、アリスは死に物狂いでその脚を掴んで止め、受け止めた腕が痺れる程の衝撃を受けながらも声を張り上げて叫んだ。
「カンナ!」
「ああ、あの時のやり直しといこう───
───神秘解放『マッド・ドッグ・コート』」
「フンッ…」
アリスの作り出した決定的な隙を突き、遂にカンナは神秘の解放に成功する。
展開された裁判所のような領域にアリス、カンナ、そしてKeyの3人が取り込まれ、始まるのはD.U.第1
(本来は私の領域が対象の相手から取り上げる罪はランダム…有罪を取れても死刑を取れるだけの罪を取り上げてくれるとは限らない。だが
カンナの背後に出現した式神、”ジャッジマン”が今回の裁判の罪状を読み上げる。
『天童アリスは20XX年、10月31日。ミレニアムで大量殺人を犯した疑いがある』
「彼女は殺していない。二審での自白は重い責任感に駆られ出た虚偽のものだ。真犯人は…Key、お前だ」
カンナにそう指を差されたKeyは、余裕を崩すことなく不気味に笑うのだった。
後書き 笑みの裏側
カンナ「彼女の自白は虚偽のものでありうんたらかんたら〜」
Key(『異議あり』とか言ってみたい…あの流れやってみたい…)