ブルア廻戦   作:天翼project

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今回は原作255〜256話までの範囲でお送りします


人外魔境D.U.決戦─拾弐─

『ハァ?嫌デスよ』

『そう言わずにさぁ〜』

 

 

決戦より前の日の出来事。

オデュッセイア海洋高校管轄のクルーズ船。

今は事態が事態だけにすっかり客足も遠のき人も少ない中、ホシノとクロコは甲板のビーチチェアに寝そべる交渉相手…かつての百物語の際ホシノを相手に12分以上もの時間稼ぎをして見せた手練であるフィーナの元を訪れていた。

 

『小鳥遊ホシノが負ける相手なんて、ワタシが勝てるワケ無いじゃないデスか。化け物とかそういう次元じゃないでショウ』

『そういう異次元の相手を弱らせられるとしたらおじさんしかいないよ〜?それでヘトヘトになった相手を狩ってくれるだけで良いからさ〜』

『ヘトヘトなんてポップな状態異常で済んでたらソレはソレで厳しいと思いマスが?』

『ん…フィーナさん見ない間に流暢になってるね…』

 

何ヶ月か前と比べて語彙も増えてきたフィーナに感嘆するクロコだったが、そんなことを話してるんじゃないとフィーナが手を伸ばしたメロンソーダを取り上げたホシノはそれをさっと飲み干してしまう。

 

『チョッ!?何するんデスか!?』

『私はこれでも皆の先輩でね。だから出来るだけ皆に戦わせたくないし、頑張ってる皆には悪いけどその努力を無駄にできるくらいには私が勝っちゃいたいとも思ってるんだ。でも、もし私が負けた時は保険がいくつあっても足りやしない。その中で君の戦力はきっと戦いの天秤を傾けてくれる。だから…』

『…ワタシはキヴォトスを出るつもりデスよ』

『!』

『名も無き神々の女王だなんて…相手にしてられマセンよ』

『フィーナさん…』

『…分かった。ごめんね、無理言っちゃって。行こっか、クロコちゃん』

『随分アッサリと引き下がりマスね?』

『元々ダメ元だしね。それに百物語の時に君を見逃した恩はあの後クロコちゃんの面倒を見て貰ったので返してもらったし。死にたくて死ぬ人はいないよ。誰だって、死ぬ時はいつも不本意なものなんだから』

『…』

『ホシノ先輩…』

 

ホシノの発言にフィーナは黙ってサングラスで目元を隠し、クロコは百物語の時にプレナパテスと心中しようとした時のことを思い出す。

確かに人が死ぬ時は心残りがないなんてことはまず無いだろう。

だが、それでもこんな終わりなら良いのかもしれないと、そう思考えていた当時の自分に説教されたような気分だとクロコは思った。

 

そしてホシノはクロコを伴ってその場を去り…クロコは直前にフィーナにお辞儀をしてホシノの後を追って行った。

残されたフィーナはパラソルの影から顔を出してサングラス越しに照り付ける太陽を見上げると、ほうっと一息吐く。

 

『…本当に、冗談じゃアリマセン』

 

その目の奥に焼き付くのは、百物語より前のこと。

尊敬し慕っていたユメ…姉妹のようにいつも仲良くしていたキララとエリカ…よく皆を写真に収めてははしゃいでいたチアキ。

そんな中で時々皆を諌めたり、一緒に騒いだりして楽しんだ思い出。

 

ユメが集めた家族のような仲間達。

それらは皆、もう自分以外は誰も残っていない。

皆ユメが好きだった、皆が皆大切に思っていた。

そしてユメはそんな皆を愛してくれていた。

 

(…ユメ、アナタだからワタシ達は着いて行ったんデスよ…皆アナタは、どうすれば喜びマスか…?)

 

フィーナは自問自答する。

ホシノとクロコはそもそも違法乗船だったのか誰かの秘儀で転移したのだろう、船からは2人の気配が消えている。

もう自分に戦えと頼む相手など居ないことは、分かっているというのに。

 

『…ハッ、馬鹿デスね。ナニを考えているんデショウか、ワタシは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アア、結局来てしまいマシタよ!ギリギリ来てしまったセイでもう死屍累々デスけど!」

 

「…???本当に誰ですか貴女は?」

 

あれから考えに考え、とうとう決戦に参加することを決意したフィーナは死にかけていたフブキとKeyに排除されかけていたココナを救い出すと、フブキをココナに預けて本人はKeyの前へと着地した。

 

(…明らかに弱まってイル恐怖での治癒と、壊れかけのヘイロー…あの武装は…先程のを遠目から見たところ耐え切れない威力では無さそうデスね。なるほど、小鳥遊ホシノは…そしてその仲間達は無事Keyをヘトヘトにすることに成功シタと)

「申し訳なくなって来マスね。これでは良いとこ取りデス!」

 

「…何処の馬の骨かは知りませんが、来るというのなら…『解』」

 

意気揚々と向かってくるフィーナに、Keyは腕を横薙ぎに払い分解の波動を放つ。

対してフィーナは波動が孕む神秘…それを頼りに距離を測ると、まるでブレイクダンスでもしているかのような軽快な動きで潜り抜けてしまった。

 

「…!なるほど、ここに来るだけあって十把一絡げな相手ではないということですか」

 

その身体能力だけを見て既にフィーナを厄介な敵であると認めたKeyはスーパーノヴァをチャージすると、放った光線を滅茶苦茶に振り回して周囲を破壊し尽くす。

それさえ躱し切りKeyに肉薄下フィーナは、スーパーノヴァの砲身によるガードの上からKeyを蹴り飛ばし、暫く上空で放物線を描いたKeyは商店街の一角に天張りのガラスを突き破って落下する。

 

「想定より重かったですね…さて、次は…」

「コッチデス!」

「!」

 

そんなKeyに一瞬で追いついたフィーナは背後から殴り飛ばし距離を離させると、背負っていた愛用のマシンガンを取り出してそれをKey目掛けて乱射する。

遠距離からの射撃ならばとスーパーノヴァの砲身を盾に悠々と防ぐKeyだったが…

 

「…?なんです…?止まらない…?」

 

フィーナの射撃は止まらない。

リロードを挟まず、ひたすらに延々と弾丸が押し寄せてくる。

それだけではなく、時間が経つ事に銃弾の威力が上がり受け止めるKeyの腕に少しずつ痺れを与え始めてきていたのだ。

 

(無限に飛んでくる弾丸は神秘そのものを弾丸に置き換えて放っている…実弾には威力は劣りますし燃費も悪いですが、不可能では無い。私も空崎ヒナのマシンガンを使っていた時に少しやりましたし。問題は段々と上がっている威力…これがあの娘の秘儀ですか)

 

「フィーナの連射モード、デスよ!」

 

フィーナの秘儀、それは特定の小範囲…直径1m以内に留まる限り神秘の出力が向上していくというもの。

弾丸の代わりに放つ神秘の弾は実物より性能が劣化し神秘の消費も割に合わず実用的な技術ではないが…フィーナに限り、次第に高まっていく神秘出力に合わせて神秘の弾の威力も増加し、豆鉄砲にしかならない筈の攻撃はいつの間にか致死性の破壊力を帯びるようになる。

 

(足…足が起点。あの場を動かさせられれば…)

”王女は鍵を手に入れ、方舟は用意されました”───光よ

 

Keyは間隔を測り、幾らか被弾することを覚悟でスーパーノヴァの砲身によるガードを解き、直ぐに砲口をKeyへと向けて詠唱で出力を上げた光線を放つ。

その瞬間に数発威力の増した弾丸を浴びるものの、スーパーノヴァの光線によって直線上の弾幕は焼き払われ、フィーナへと破壊の光が迫り───真上への華麗な跳躍で回避される。

そして、

 

「ワタシの秘儀は…縦軸ならば動いても効果は途切れマセーン!」

「カスみたいな仕様ですね。レトロゲーで見たような抜け道を秘儀が作らないで下さい」

 

飛び上がってからも続く射撃は再びKeyを襲い、その威力にKeyも堪らず近くの遮蔽物に身を隠す。

今のフィーナの射撃の威力にコンクリートやレンガの壁など数秒も持ちはしないが、一瞬の隙を作る程度ならば十分。

あっという間に粉砕されかけた建物の壁の裏から、Keyが腕を振り上げて縦方向に伸びる分解の波動を放つと、フィーナも仕方なく横に避けて秘儀の効果が中断された。

 

「タネが割れば大したものではありませんね!」

「まあ元々自分の秘儀に自信があった訳では無いノデ…コッチで行き マスよ!」

「っ!」

 

射撃は手慣らしと、地面を抉る走力でKeyに迫ったフィーナはカウンターとして放ってきたKeyの腕を身体の外に逸らすように受け流し、振り回されたスーパーノヴァの砲身を肘で真下に叩き落として砲口を地面にめり込ませる。

そしてKeyが体勢を戻そうとした瞬間に、2連続のジャブがKeyの腹と胸を捉えた。

 

「ぐっ…」

「名も無き神々の女王とはこんなものデスか!」

「追加戦士枠の癖に偉そうに…!」

 

本来のキレを欠いているとはいえ極まった体術を扱うKeyの間合いの内でありながら、それを上回るほどの迫撃能力によって着実にKeyへとダメージを積み重ねていく。

それは曰く、ホシノですら神秘に頼らない肉弾戦ならば広く動き回れる場所ならばともかく狭い場所では殴り合いたくないと言わしめるフィーナの戦闘センスの真骨頂だった。

 

さらに───

 

 

「…っ!次から次へと…『解』!」

 

「ちぇっ」

 

 

フィーナと撃ち合っていたKeyの背後から、モモイが商店街の店の屋根の上から血の噴出する勢いで加速させた弾丸…『生苦』を放ちKeyを狙った。

それをすんでのところで回避され、反撃の『解』を受けて腕の皮膚が崩れ舌打ちするモモイだったが、まだまだ追撃は終わらない。

 

Keyの頭上、そこから落下する勢いに任せてアリスがレールガンの砲身を叩き付けようとし、Keyはスーパーノヴァの砲身でそれを受け止めた。

 

 

「Keyィィィ!」

「この構図何度目ですか小娘ぇ!いい加減にしなさい!」

 

 

ダメージを回復してようやく戻ってきたアリスに対して露骨に嫌悪感を顕にするKeyはアリスを弾き返してスーパーノヴァを構え、その出力を上げるために詠唱を開始しようとする。

だが…

 

 

”王女は鍵を───なっ!?」

「レンゲ先輩!」

 

「気張れお前らぁぁ!」

 

 

Keyからの黒閃を受け一度は戦線離脱を余儀無くされたレンゲ。

しかし肋を幾つも折り内臓が幾つも潰れ、腹と口から溢れんばかりの血を零しながらも気合と根性で復帰してきたレンゲは釈魂刀でKeyのスーパーノヴァを持つ右腕を切り落とした。

 

結果Keyは貴重な火力リソースを手放してしまうこととなり、この期を逃すまいとレンゲが声を張り上げる。

 

 

(今なら、今なら勝てる!倒せる!Keyを────ヒナ、を…)

 

 

迷いは、そう簡単に晴れるものでは無い。

モモイによって多少は落ち着いても、いざ追い詰めると怨敵が受肉した肉体…苦楽を共にした仲間の姿が脳裏を過ぎり、一瞬繰り出そうとした腕の動きが鈍ってしまう。

 

そしてその一瞬をKeyは見逃さず───

 

 

 

 

 

 

「馬鹿っ…!」

「あっ…」

 

Keyの残った左腕、それがアリスを突き飛ばしたフィーナに直撃し────黒閃

 

黒い稲妻が迸り、威力の跳ね上がった打撃はフィーナを商店街の外まで吹き飛ばしてしまう。

咄嗟に駆け付けたモモイはアリスを抱き抱えると、一度傾陽から距離を取りレンゲの方へと合流すると、傾陽に狙われないように動き回りながら話し合う。

 

 

「な、なんであの人…」

「…アリス、あれ誰だったの…?」

「そういやクロコとクソバカピンクが『助っ人頼みに行ったけど失敗した』って話してなかったか?それがあいつかも…」

「そんな、アリスを庇って…」

「…アリス…のは壊れてそうだな。モモイ、その無線でココナにでも頼んで回収してもらえ。結構遠くに飛んでったからKeyに妨害されることはないだろ」

「う、うん!」

 

そもそもフィーナ自身協力を断っておきながらギリギリになって参戦した身。

その素性をアリス達が詳しく知る筈も無いが、それでも確かにKeyに少なからずダメージを与えアリスを庇ってくれた人。

みすみす見殺しにするわけもなくモモイは一度Keyの相手をアリスとレンゲに任せると、装備の中から無線を取り出して裏方役の方へと救助を頼んだ。

 

そしてそんなアリスとレンゲはここに来て2度目の黒閃を決め更にボルテージが上がり、より研ぎ澄まされたセンスによりせっかく低下していた神秘の出力が戻り始めているKeyに苦戦を強いられていた。

 

 

『解』

 

 

放たれた波動がKeyの正面にある建物を根こそぎ分解し、地面ごと抉るようにして消し飛ばす。

何とか範囲から逃れたレンゲは、このままでは遠隔の『解』ですら致命傷になりかねない威力にまで戻ってしまうことを危惧して反撃の暇を与えないように果敢に攻め込むことを決める。

 

「うおぉぉぉ!」

「天与の娘、既に死に体のその身体でまだ戦いますか?」

「クソバカピンクとクロコが命張ったんだ!ならアタシは首だけになってもテメェに喰らいついてやるよ!」

 

「それに…!」

「!」

 

レンゲの振るう釈魂刀を躱すKeyに、挟み撃ちにするように回り込んだアリスがレールガンを放つ。

背後から迫るエネルギー砲を神秘で強化した左腕で弾くが、レンゲからの足払いを受けて一瞬身体が浮き、そこに踏み込んできたアリスが突撃してKeyを建物の外壁に押し付ける。

近付いてきたのなら好都合と、Keyは組み付くアリスに手のひらを触れようとするが…直後にKeyが押し付けられていた壁が内側から破壊、衝撃によってKeyの身体が空中に投げ出された。

 

「カンナだって、フブキ先輩だって、サオリ先輩だって、モモイだって…!」

「そして私の可愛い妹だって!みんな君を倒すために命を懸けてるんだ!もう報われさせてよ!」

 

「報われないというのならそれが身の丈に合わない願いだったというだけです!誰も彼もがそうして死んで、勝手に嘆く!私は勝手に生きているのですから貴女達もそうすればいいでしょうに!」

「ふざけ、ないでください!」

 

モモイが蹴り上げた鉄柵を受け取ったアリスは、それを持ちながらKeyに突進して鉄柵で建物の壁に縫い付ける。

Keyは背後に壁に手を触れ『捌』で破壊することによってそれから抜け出すと、そこを狩り取ろうとモモイが『生苦』を放ち、同時にレンゲが斬り掛かる。

 

Keyは血の噴出の勢いで加速した『生苦』の弾丸を首を傾げて躱すと、振り下ろされる釈魂刀を指で挟んで止め、持ち手のレンゲごと真上に放り投げると地を蹴って飛び上がった。

 

「空中ジャンプという発想はありふれているというのに実践出来るものがあまりにもいないものでロマンが無いと思っていたところです」

「っ!上等だ…!」

 

そして繰り広げられるのは、壁にも地にも足を着けず、空中を蹴って異次元の機動を繰り広げる高速戦闘。

Keyの動きのキレは2度の黒閃を経たボルテージの増加と共に戻り始め、逆に一度黒閃を受けたことにより重傷を負っていたレンゲは少しずつ格闘でKeyに圧され始めていた。

 

両者の影が空中に軌跡を残す程の速度の中、遂にKeyの拳がレンゲを捉える。

レンゲは咄嗟に釈魂刀の柄でそれをガードしようとするが…

 

 

 

────黒閃

 

 

 

「っ…3、回目…だと…!?」

 

「ハハッ!」

 

 

 

黒閃を受けた釈魂刀、それを持っていたレンゲの両腕から骨が砕ける音が響く。

Keyの集中力が高まっていく。

ボルテージは上がり、センスは研ぎ澄まされ、より神秘の核心へと近付いていく。

 

(既に辿り着いたと思っていた神秘の最奥…それがまだ、こんなにも遠く広がっていたとは…!嗚呼、面白い!)

「見なさい!小娘!私こそが───()()です!」

 

「がっ…!?」

 

より深くゾーンに突入した今のKeyの出力はネルと戦っていた時と同程度に上昇していた。

放たれた『解』は最早レンゲに受け切れる威力ではなく、皮膚を、筋肉を、骨まで分解が侵食してその肉体を破壊する。

立つことすら出来なくなったレンゲにトドメを刺そうとKeyはもう一度『解』を放とうとして…その直前に周囲に血の球体が複数浮いていることに気がつく。

 

 

『超新星』!」

 

 

空間に設置された血の球体が機雷のように爆ぜ、Keyがいた建物を内側から粉砕する。

激しく砂埃が舞って視界が埋め尽くされ…それに紛れて接近してきたKeyがモモイの服の袖を掴むと、近くの建物の外壁へと投げつける。

 

「かっ…しまっ…」

 

背中から強く打ち付けられ息苦しさに襲われるモモイ。

そこにKeyが腕を振りかって────黒閃

 

 

「おぇっ…」

 

 

(…固形化させた血の塊を緩衝材にして致命傷は免れましたか)

 

 

腹を狙って放たれた打撃は黒い稲妻を迸らせる。

直撃すれば腹を貫通し即死するであろうそれを、直感に任せて吹き出した血を固め即席の鎧とする、いつかアリスと戦った時を思わせる防御をすることでなんとか生き延び、意識を保つことに成功したモモイ。

だが次はもう耐えられない。

 

Keyがモモイに手のひらを向け───そんなKeyの横顔をアリスが殴り飛ばす。

 

 

「…っ、やはり最後は貴女ですか!小娘!」

「あなたが魔王だと言うのから!アリスは魔王を打ち倒す勇者の剣です!その使命を!もう!迷ったりなんかしません!」

「出来るものならしてみなさい!貴女には不可能です!」

 

(落ち着いて、大丈夫…どれだけ黒閃を決めてボルテージを上げても、アリスが殴れば出力を下げられる!アリスが負けなければ…今Keyを打ち倒せるのは、アリスだけなんです…!ヒナのことは…今は考えては行けません!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、Keyの黒閃を受け戦場となっている商店街から随分と離れたところまで吹き飛ばされたフィーナの元へ、モモイに救助を頼まれたココナが回収に来ていた。

 

「あ、あの…大丈夫ですか…?すぐにセナさん…お医者さんの所に連れていきますから…」

「…まだ待ってくだサイ」

「え?」

「このまま退場だなナンテ、格好が付かないじゃないデスか…もうひと仕事だけ、させてくだサイ」

 

(他人の為に命を張るナンテ、ワタシらしくない…デスが…そう、デスね…ユメの子供好きが、移ってシマッタのかもしれマセンね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Keyの放つ『解』により、横に回避したアリスの長い髪が巻き込まれそのほとんどが消滅する。

今回の戦闘を通してせっかく伸ばしていた髪がすっかりショートになってしまったのも気にせず、自分の身体がどれだけ傷付こうともアリスは前へと突き進みKeyへと挑む。

 

突き出された腕に合わせて膝蹴りを叩き込み、背中を触ろうとしてくる腕を掴んで止め、同時に両足をKeyの首に回してから背後に体重をかえてKeyに前のめりな体勢を強制させると、差し出された脳天に両腕を振り下ろして叩き付け、下向きに衝撃を受けたKeyの頭が地面にめり込む。

そこをさらに蹴り飛ばそうとするが、無造作に払われた腕から放たれた『解』で足場を崩され、アリスは退避を余儀無くされた。

 

ゆっくりと身を起こしたKeyはアリスを見据え、不快そうに表情を険しくさせている。

 

 

(…今の小娘は、ミレニアムでヘイローを操る娘と戦っていた時と同じ…必ず”黒閃”を出してくるという予感を感じさせられる。私が黒閃を出して上がったボルテージが、何度か小娘のヘイローを捉える打撃を受けただけで幾らか引き戻されている。仕方ありませんが、『解』を中心に距離を取って…何?)

 

 

これ以上アリスを相手に肉弾戦を仕掛けるのはリスクが高いと判断したKeyは、これ以上出力を下げられないように秘儀を主体に立ち回ろうと飛び退こうとするが───そこに飛びかかってきたのは、レンゲ同様骨や内臓を幾らかやられてもなお戻ってきたフィーナだった。

 

 

「一発憂さ晴ラシさせてもらいマスよ!」

 

「今更貴女に何が出来るというのですか…あ!?」

 

 

本調子では無いフィーナに興味をなくしていたKeyだったが、突如身体に掛けられた負荷…否、地面に縫い付けられるような”束縛”に思わず驚きの声を挙げる。

 

 

「ワタシの秘儀の本質は”地縛”!その場に留まるコトデ力を蓄え、相手に自分の神秘を蓄えるコトデ地縛を強要シマス!」

 

(私に神秘を蓄えた…!?あの弾丸ですか…!)

 

 

フィーナが実弾の代用として使った神秘の弾丸。

それは秘儀による神秘の出力の向上を活かす為だけでなく、この切り札を使うための布石でもあった。

そしてフィーナは一時的とはいえ動きが止まったKeyを蹴り飛ばす。

 

 

「頑張ってくだサイ…!ユメが信じた子供達…!」

「その怪我じゃもう無理です!十分でしょう!?セナさんの所行きますよ!」

 

 

無理してここにきたフィーナをココナが回収して離脱させる。

そしてそんなフィーナがKeyを蹴り飛ばした先には、アリスが拳を構えていた。

 

 

「このっ…小娘ぇ…!」

 

「ありがとうございます…また今度、必ずお礼を…!」

 

 

 

 

────黒閃

 

 

 

 

「がはっ…」

 

 

アリスの拳はKeyの胴に吸い込まれるように導かれ、直撃と同時に空間が歪むような轟音と共に黒い稲妻が駆け抜ける。

アリスの瞳に、闘志の炎が宿る。

 

黒閃によるゾーンへの突入、潜在能力の解放。

黒い火花が散る中────天童アリスが覚醒する。

 

 

 

 




備考
せっかく0から再登場したのに特に何もせず帰らせるのもあれなので、丁度配役が決まらず登場させなかったラルゥ枠が余ってたのでフィーナにはラルゥ枠の分も頑張ってもらいました
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