転生しても物騒な世界なんやが…   作:普段はブルアカ界隈を漂う何か

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一話にはなかったマトスレ要素が!
短め



あまりにも鮮やかな通過儀礼

 

「なんや、おらんの?優希」

「あぁ、魔防隊にスカウトされて魔都で働くことになったってよ」

「すっげぇ美人だったな、七番組の組長…」

 …さて。結構すぐに退院して戻って参りましたここは公立上野毛高等学校。優希クンはクラスメートの友人だったようなのだけど、今では文字通りに過去形になっていた。なるほどなるほど、あのワケアリそうな顔はそういうわけですかい。

 そんな話をしつつ、俺たちは教室の掃除をしている。クラスには男子のみ。あとから女子が登校してくるまでにやっておく決まりらしい。…とまあこれが、以前言っていた「無視できないくらいの齟齬」…この世界は女尊男卑である。なぜなら、魔都由来の超常能力――醜鬼に対抗できるそれの恩恵に女性だけが(あずか)れるから。

 とはいえ女尊男卑だからってここまでするか?とは思わなくもないが、国防の役目を果たしてもらえるとなればこうもなるか。俺はまあそう納得したけど、これがどこぞの名家の子やったら発狂モンやろうなぁ…。

 優希は掃除の腕前がプロ並みだったから地味に損失でかいんだよなぁ…等といった雑談をしつつ掃除を終え、女子様方を迎え入れてようやく授業が始まった。…それにしてもこういう高校の授業とかひっさびさやけど大丈夫やろか…前回は起きて即死滅回游やったし……まあ、なんとかなるか。

 

 

 

「しんど…」

 なんとかなるか~とか言ってたのはどこのどいつや。…ここの俺か。せやった俺単位制高校からすでに数学捨てとったやんけ…一般の高校やと必修なんか。ちんぷんかんぷんやったわ……なんなんあれほんまに、変な分数になってもうてもたまにそれで正解なことあんのとかやめてほしい切実に。

 その辺の頭脳くらいは戻ってほしかった…と思ったけど庭窪クン元からこうらしい。失望した…失望したぞ庭窪クンよ。心労がヤバイ。まだ17やぞ?こんな疲弊するか??

 あかんほんましんど…ちょっとそこで休むか。ちょうどいい感じに川の土手くらいの傾斜の大岩が……

 

「…は?いやここどこ??」

 気がつけば周囲に人気どころか町並みもなく、とがった岩が立ち並ぶ謎の空間。えっ天気悪。さっきまであんな燃えるような夕焼けやったやん。…しかもここ、呪力がある?――領域か?

 いやしかし、術式に目覚め(させられ)て呪霊が見える身体になった*1からわかる。別の世界だからか知らんが、この世界の呪力は薄い。おおむね無いと言っていい。それが、こんな急に……あぁいや、これ………アイデアロール成功したかも。

「…さてはここ、『魔都』やな…?」

 

 そんなアイデアロールに呼応したのか……近くの地面が動いた。かと思うと下から爆発するかのように土を跳ねあげて……こ、この孤独なSilhouetteは!……………誰?

「おぉん…」

 回答:頭と肩が一体になった異形の怪物。思わず変な声が漏れ出てしまいまs

「…いや言うてる場合ちゃうな!?」

 すぐさま人差し指と中指を立てた印を組めば、四角い結界に囲まれた。枠の部分だけ白く光ってるから形がよくわかる…いま「結界師?」って思ったそこの君、あとで握手をしよう。まあ大昔に読んだだけでたいして覚えとらんし、この術式そない似てるか言われたらそうでもないんやけど。結と解だけで滅はないし。

 向こうからやって来た…こいつが『醜鬼』やな?が勢いよくぶつかってくるけども、この結界は俺が信じてる分だけ頑丈になるクソ仕様ですはい残念でしたーぷぎゃー。裏を返せば俺が「あ、これ無理かも」って思たとたんに(ひび)が入ってまうわけやけど……まあ、一度に一個しか張れないとは言ってませんし?

 ドスッ、と鈍い音を立てて醜鬼の胴体に三つの大穴が開く。方函(ほうかん)術式というらしい俺のこれはあまり大きいサイズを出すのが苦手な代わりに、小さいサイズを大量に作るのが得意。なのでこうやって細長いのを展開する勢いで殴るのが主な戦法になってくる。今回勢いつけすぎて穴開いたけど…お、醜鬼倒れたか。お粗末様でした。

「やれやれ…ほなあとは出る方法考えなあかんわけやけど…」

 …などと言いながら振り返れば、同胞刺殺を眺めていたとおぼしき醜鬼×5。目があったとたん猛然とこちらへ向かってきた。わあ熱烈なアプローチ。念のため結界は張ったままにしといてよかったわ。他はなんにも良うないけど…まあええか。

 今度はゴスッ、ブチッとかいう音が鳴った。何って、両脇から細長いの一本ずつで串刺しにしただけやが。数の暴力だかなんだか知らんけど、仲良く肩並べて走ってくる方が悪い。せいぜい来世でもズッ友でな。

 

 

「…そこのお前、何者だ?」

 5体が仲良く倒れていくのに軽く手を振っていたら、背後から声をかけられた。やべっ人いた。しかし「何者だ」…術者としてはあまりにも不自然な台詞、となるとやっぱこれ領域ちゃうか、いやうっかり迷い込んで術者と勘違いされてる可能性も…とか邪推しつつ振り向いて、…思考がフリーズした。

 黒い軍服に身を包んだ凛々しい女性…は、まだいい。問題はその足元。女性はごつごつした真っ白なバケモ…醜鬼よりはだいぶ可愛げのある怪物の背に乗って、その首輪から伸びる鎖を手にしていた。ああ、なんか使役するタイプなんやな、と思って………そこまでで済めばよかったんやが。

「亨!?」

「…は?」

 …その怪物が俺の名前を呼んだ。聞き覚えしかない、優希クンの声で。

 

 

 

 

 

*1
あるいはそれ以前から見てた可能性もなくはないけど





・庭窪亨
スムーズに容赦ない戦闘へ移行できてるあたりにも死滅回游の後遺症が残っていますね。自覚がないのが一番タチが悪いってそれ一番言われてるから…。
方函術式。生得術式にさらに別作品を絡めていくぅ まるっきり同じものじゃないからセーフセーフ
そしてここで速報ですが、肉体の記憶が戻らないのはどうやら単なるバグである模様です。神さぁ…。


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