元SRTの生徒が暇な日常にぼんやりとする話   作:ふぁっしょん

1 / 2


 ふわり、ふわり、などと、蝶のような足取りで歩く。

 コンクリートの硬い跳ね返りが足裏を虐めてくるから、靴が欲しい、なんてことを思う。

 けれど、びしょびしょの靴は重いし、足指がひどく冷えるから、いやだ。

 冷えた靴下はもっといやだ。だから、履かないで歩くと決めていた。

 足指の先が小石がちくちくとして、だから猫足、つま先立ちで、ふわり、ふわり、などと歩いている。

 少し痛い。皮が薄くなったかもしれない。

 

 

 近頃暇だから、散歩を趣味にすることにした。気分転換に良いと聞いたのだ。

 それで街中を歩いていたのだけど、運悪く温泉開発部に遭遇してしまった。

 彼奴らは大きな噴水をあげ、道はちょっとした川と化し……

 それで靴が濡れた。

 

 

 手でびしょびしょの靴と靴下を摘まんでいる

 手指の先が冷えてきた。

 まだまだある帰路をいくことを思って、ふと、いやだなと思った。

 生足でバスに乗りたくない。

 気分の問題だ。予定もないし、いやな気分になりたくない。

 

 

 私は靴の中に靴下を押し込んで、道端に座り込んだ。

 背負った鞄を開いて電話を開く。

 折り畳みスマホである。まるでガラパゴス携帯のように、開くやつだ。

 手首を振ると、ぱかりと開く。

 私はこれが好きだ。だから買った。

 ところで、誰に頼ろうか。

 

 しばし画面を見つめる。

 momotalkは開きたくない、通知が溜まっているから、見たくない。

 それで連絡先をみた。

 

 しばらく見て……

 はふ。

 そんなため息がもれた。

 どいつもこいつも、声をかけるのが億劫だ。

 

 私はなんだか気鬱になってきた。

 びしょびしょの靴を振ると、いまだに水が滴って、いやだ。

 靴下を引きずり出して、絞る。

 びたびたと水が滴る。

 

 ひとまず乾かさなければならない。

 私は意を決し、地図アプリを開いた。

 しばらくみて、決めた。

 この、シャーレとかいうところへ行こう。

 それで、私は立ち上がった。

 

 

 

 シャーレなるところは、近頃よく耳にするから知っている。

 曰く、先生なる奇妙な大人がいて、いろいろ設備があり、いろいろと暇を潰したりすることができると。

 暇さえあればいく、などという生徒さえいるらしい。

 学園自治区などといった敷居を跨ぐその具合は、なんだか奇天烈というか、奇妙だ。

 縁遠い話だった。ひとまず今日までは。

 

 

 

 見ると、シャーレとは大きな場所にある。

 案内を見たところ随分と設備が揃っていて、ひとまず私は裸足のまま眺めた。

 靴はまだ湿っている。洗ってから乾かしたいから……

 この、シャワーがある場所へ行こう。

 

 ぺたぺたと、人間風に足をつけて廊下を歩く。

 平日昼間、人は少ないが、音がする。

 どうやら噂は正しいらしい。

 

 

 シャワー室で靴を洗い、靴下をを洗い、ドライヤーをあてて乾かす。

 ぼんやりとして、虚空を眺めていた。

 そのときである。

 見覚えのある顔が入ってきた。

 かつての、SRTの後輩だ。いまは転校したから違うわけだが……

 

 彼女はぎょっとした顔になり、しかしなんだか気まずそうにして、奥へ歩いて行った。

 私は、よくわからなくて、ちょっと考える。

 休暇モードで回らない頭は答えを出さない。

 

 しばし、私のドライヤーと、後輩のシャワーの音だけが響いていた。

 そして、その間、私はずっと虚空を見ていた。

 なにもしたくない気分だった。

 近頃はずっとそうであった。




気分が乗れば続く
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。