飛将、戦禍の轍をゆく   作:Cross Alcanna

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友情と忠誠の二重奏

 

「アスナァ!」

 

「はいはーい!!」

 

「…ッ!こんな攻撃が、当たると思っているのですか?」

 

「その割には、余裕無さそうだなぁ!?おい!」

 

 

いけすかないコイツに、啖呵を切る。ここまでの連携に、曲がりなりにも耐えているその実力は、本物だろう。が、このままいけば時間の問題だ。

 

見てくれとは裏腹に、心の内に秘めているであろう焦りが浮き彫りになってるのが、最たる証拠だろう。

 

こっちはミレニアムでも最高戦力と言われてんだ。コイツ1人に負かされてたまるか、って話ではあるんだが。

 

 

「…っ!?こんな所に、地雷ですか……ッ!」

 

 

アカネが仕掛ける爆弾に翻弄されながら、アタシの猛攻とアスナの遊撃、カリンの支援射撃を裁ききる。それが、どれだけの業なのか。……アタシでも渋るかもしれねぇ。およそ、人間1人の処理能力じゃあ間に合わねぇ筈。

 

……だが、ここまで粘るとは思わなかった。せいぜい、十数分が限界だと見ていた交戦は、気が付けば数十分にも渡っている。

 

戦いの最中ではあるが、コイツが機械なんじゃねぇかと勘繰っちまう。動きにも無駄がねぇせいで、その仮説を助長させられる。

 

そろそろ有効打が届く、と思ったところで地形変形が起こる。その度に体勢を整え直さないといけねぇのが、マジで腹立たしい。

 

 

「部長〜!いつの間にかAMAS、だっけ?がいるんだけど〜!?」

 

 

……アイツ、今度会ったら一発入れてもいいよな?あ?

 

あのメイドだけならまだ楽かと思ってる時に、こんな面倒な増援を寄越すなんて思わなかった。こんな事なら、後先考えないで全力でぶっ飛ばせば良かったかもしれねぇ。

 

……自称天才がいつかに言ってた、「あの女は性格も悪いのです」とかいう発言に、今なら同意出来そうだ。

 

…よし、作戦を変えるか。

 

 

「アカネ!爆弾の使い方を変えろ!」

 

「…………そういう事ですか、分かりました…!」

 

 

アタシの一声だけで、真意を察した様子。長年一緒に仕事をこなしてる仲なだけあるな。C&Cの中でも特に戦闘IQが高い奴なのは理解していたが、相変わらずだ。

 

カリンの方は……AMASの方に力を入れてるか。アスナもそっちに行ったか。

 

楽で良い。指示を飛ばさなくても理解出来る奴と仕事するのは、本当に楽だ。それでいて、アタシが望む結果に繋げられる。

 

……時間の問題だな、この野郎(後輩)

 

 

─想定より粘るわね、少し誤算だったわ。

 

 

「ッ!リオ……!」

 

「リオ様…」

 

 

トランシーバー越しみてぇな音質で放たれる冷たい声。

 

相変わらず、何考えてんのかわっかんねぇ。その目も、一体どこ見つめてんのか掴めねぇ。

 

どうやら、アタシらがここまで粘るのは予想外だったみてぇだな。

 

 

「はっ!天下の”ビッグシスター”も計算が外れる事があるんだなぁ!?」

 

─…………。

 

 

図星をつかれたみてぇだな。まだ勝った訳でもねぇのに、どこかスカッとした気分だ。

 

……だが、引っ掛かるな。

 

 

「……テメェ、()()()()()()()()()()()?」

 

─どうして?…理由は単純よ。

 

 

瞬間、何かを察知したアタシは身体を左に突き動かす。その予感は、正しかった事が証明される。

 

()()()()()()()()

 

 

「……隠してた手札を、切ってきた訳かよ!」

 

 

コイツ、まだ手札を持ってたのか。

 

しかもコレを撃ってきた奴、中々の腕前だ。アタシでも居場所を特定しきれねぇ程の距離から撃ってきて、この精度。少なくとも、ミレニアムにはこんなスナイパーはいなかった筈。

 

……厄介な事になりそうだな、クソッ!

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

「ふむ……やはり疲れるな」

 

 

少し前、私の元に調月から通信が来た。その内容は、さっきのような雑談ではなく、「スナイパーでの支援を頼みたい」という内容。

 

スナイパーなど、これまで使った事が無いというのだが。眼がいいのは確かだが、こうした無茶振りをしてくるとは思っていなかった。確実に当てるというなら、別の誰かでも味方に引き入れれば良いだろうに。

 

……いや、当てる事が目的では無いのか?支援射撃は別に、牽制になればそれでいいという発想か?

 

…………考えるだけ無駄か。

 

 

「……懐かしい、感覚だ」

 

 

いつだったろうか。私が銃を使わなくなったのは。

 

気付けばこの武器を振るいながら闘う事が増え、それに反比例する様に、銃を使う機会は無くなっていった。

 

自分の銃がない訳では無い。ただ、使う必要が無かっただけの話。この世界で銃を使わないのは、異端。すれ違う者の視線が、奇妙なモノを見る目をしているくらいだ。

 

だが、そんな事にもいつの間にか慣れていた。最早、どうでもいいと思う程に。

 

 

「今は、そんな感傷に浸る暇は無いか」

 

 

どうでもいい事など、忘れてしまえばいいというのに。そんな心など、とうに捨てたはずなのに。

 

心の内の蟠りは、晴れる気配がない。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

「……だァァァクッソ!鬱陶しいったらありゃしねぇ!!」

 

 

あれからまた数十分経った気がする。止まない支援射撃に、大きな愚痴が零れる。AMASの増援もいつ途切れるのか分からねぇ。

 

それに、精度が良いんだか悪ぃんだか分からねぇ支援射撃。さっきみてぇな精度のいい射撃が来たと思えば、次の射撃はアタシを狙ってるとは思えねぇ精度の射撃が飛んできやがる。

 

何なんだマジで。そのせいで、どう動き回るのが正解かが判断しづれぇ。支援射撃に意識を向け過ぎると、精度の悪い一撃が飛んできた時にあの野郎から重い一撃を貰いかねない。かと言って度外視しても、精度がいい弾が飛んできた時に困る。

 

…これを狙ってやってんだとしたら、カリン以上に戦闘IQが高ぇって事になる。だとしたら、早期決着に持ち込まねぇと負けかねない。

 

……あんの野郎、想像以上に入念な用意をしやがって…!テメェは、一体何を相手取る気だったんだ。

 

 

「……!リーダー!AMASの増援が減少してきた!」

 

「!ようやくか……!」

 

 

カリンからの通信。AMASを撃退出来るのも、割と近いかもしれねぇな。

 

っつー事は…………言うまでもねぇ。

 

 

「はっ!増援もピークが過ぎたみてぇだぞ?テメェが力尽きるのも、本格的に時間の問題だろうな……!」

 

「……くっ!」

 

 

また少しずつ、敵の顔が曇り始める。かれこれ1時間以上はやり合ってんだ、アイツの体力も尽き始めてる事だろう。いくら支援があった所で、より苦しい事には変わらない。

 

それに、カリンの爆弾のおかげで、地形変形がほぼ意味をなさないレベルにまで追い込めた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()んじゃあ、意味ねぇよなぁ!?

 

 

─トキ、撤退して頂戴。

 

「っ!ですが……」

 

 

さっき聞こえてきた声が、また聞こえてきた。

 

撤退か。流石のアイツも、これ以上は厳しいって判断をした訳か。

 

 

「……分かりました。トキ、帰還します」

 

「させると思ってんのか!」

 

 

退かせる訳にはいかねぇ。愛銃から、これでもかと言わんばかりの鉛を撃ち出す。

 

 

「ッ!ここでか…!」

 

 

止んでいたあの射撃が、アタシ目掛けて飛んでくる。それは、今までで1番精度が良かった。

 

意識から薄れていたソレに、アタシは被弾せざるを得なかった。……チッ、存外痛いな。ここまで重い一撃を出せるSRとなったら、癖の強い代物くらいか?

 

……やっぱり、()()()()()()()

 

 

「部長!」

 

「今はいい!それよりも、アイツは……」

 

「…逃げられました。部長が被弾して、我々の意識が部長にいった事を狙ったと思われます」

 

 

アタシらの隙をついて逃げたか。退き際はしっかり退く事に専念できるその頭の切り替えは、評価できるか。

 

…してやられたな。ふっつうに悔しい。

 

射撃も止んだ。つまり、アタシらに対する足止めはこれで終いって訳だ。だからといって、先生らと合流するまでに何も起こらない保証は無い。

 

 

「……今は、んな事言ってる場合じゃねぇ」

 

 

立ち上がる。身体が少し悲鳴を上げている気はするが、知るか。少なくとも、アタシらは今止まるべきじゃねぇんだ。

 

あのチビが、無事でいる保証も無い。窮地に立ってるのは、アタシらだけじゃねぇかもしれない。

 

止まる理由は、無い。

 

 

「追うぞ」

 

 

……借りは返すぞ、この野郎。

 

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