オッタルに憑依したけど、推しがフレイヤじゃない 作:もいもいん
オタクの妄想詰め合わせみたいな作品です。
「本当に退屈だわ。ねぇ、オッタル?何か面白いことをしてくれないかしら?このままだと私、ふらっと1人で出かけてしまいそうだわ」
意識が覚醒したと同時に俺の耳に入ってきたのは、どこか聞き覚えのある美声。
目の前の椅子に腰掛け、こちらに背を向けている人物からのものであろう。
はて、いつの間にやら俺は寝ていたのだろうか。
それにしてはしっかりと二本の脚で立ってるんだから不思議なものだ。
「ねぇ、聞いてるの?何か面白いことして?」
「そんな無茶振り勘弁してもろて。そんなこと言うなら、先ず自分が手本を見せ給え」
急な意識の覚醒により、寝ぼけているように纏まらない己の思考をそのまま口に出してしまった。
しかも向こうがフランクに話しかけてくるものだから、つい此方も友人にするような雑な態度で。
ところで、話をする相手によって取るべき相応しい態度がある。
現代日本人にとっては当たり前の常識であろう。
学校の先輩と同輩に同じ対応をするなんてありえないし、相手が大人なら尚更だ。
その基準に照らし合わせると、俺の反応は場に全く適さなかったらしい。
なぜなら、椅子から此方に振り返った女の姿は、ふわりとした銀髪と、同じ色のやや切れ長の瞳を真ん丸に見開いた絶世の美女。
「……オッタル?」
――俺がよく知る作品に登場するお転婆ガール、【フレイヤ・ファミリア】の主神様だったのだから。
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はてさて、あの後色々とイベントが起こった。
先ずフレイヤ様やお付きの従者に呆けた表情でガン見され、女神の指示で側付きの彼女が慌てたように都市最高峰の治療師であるヘイズを呼びに行く。
そして超絶可愛いヘイズちゃんや主神様と楽しくお話(診察)し、色々と俺についての事情が判明した。
大前提として俺がオッタルに憑依してしまっていること。
そして俺とオッタルの2つの魂の定着はフレイヤ様曰く不完全であり、一ヶ月も経たないうちに元に戻るであろうということ。
これには素直に安堵の息を漏らした。
あの【猛者】オッタルに代わってこれからの人生を歩むなんて恐れ多い。
というか普通に怖い。
絶対苦しいイベント何個もあるし、約束の時とかいう最終イベントでは身体張ること間違いなしやん、こいつ。
やってられっかバーカバーカ。
俺は指を紙で切っただけでも絆創膏を貼ってしまう男だぞ。
そんなのには耐えられん。
色々と俺の状況についてフレイヤ様やヘイズと整理した後は、俺の原作知識について語る番だった。
全知である神のフレイヤ様は、下界で魂の憑依なんてバグが起こりよう無いことを知っている。
というより、ダンまち時空での神様方はそこら辺結構シビアで、人類の魂の漂白作業やらには大分力を入れているらしい。
つまり、今回の憑依は全知である神様にとっても原因が不明。
となれば『異世界』『別次元』というゴールに辿り着くのも当然といえば当然であった。
「なるほど、つまり貴方は別の世界から来たということね」
「そうですね。フレイヤ様たちの活躍も文献に残されているので、完全に別世界というわけでは無いんでしょうけど」
「例えばどんなのが?」
「僕の知ってる範囲ですと、砂漠の国での王子と眷属達の物語とか、オラリオ暗黒期に関する文献が残されてます」
「へぇ……。確かに物語として残しやすいし、理解は出来るわね。嘘を吐いている様子も無いみたいだし」
「だからといって、自分がその中でも大物のオッタルさんに憑依するなんて思いもしなかったですけどね……はは」
神の前には嘘はつけない。
嘘発見器のような能力が有り、こちらの発言に虚偽が含まれているとバレてしまうのだ。
ただ、目の前の相手に『貴方はこちらの世界で書かれた物語に登場する、1キャラクターなんですよ』等と言える勇気も俺には無かった。
人間を創造したと自負する神様相手に、『貴方も造られた存在なんですよ』って言うとか、ちょっと非道にも程がある。
それ故に辿り着いたのが、「なんか貴方達に関する文献がある世界からやってきたんですよー作戦」だ。
実際ダンまちは書籍として販売されていたわけで、割と嘘ではない。
完全に別世界ではないというのも、こじつけではあるが、彼等の活躍を文字や映像として実際に見ているのだから、少なくとも俺の中では嘘ではない。
ようはバレなきゃいいのだ、バレなきゃ。
神相手に心を読まれていないか緊張する俺を知ってか知らずか、
自身の脳内整理に意識が行っていた俺とヘイズは、その音に釣られて彼女に視線を送る。
うーん、すっごい美人。
ぱっちりお目々の可愛い系女子が好きな俺でも、割と見惚れそうだ。
「起こったことは仕方ないから、今後について方針を打ち出しましょう。……オッタルは可哀想だけれど、アルカナムすら使えない私にはどうしようもないもの。それに、どうせ一ヶ月もしない内に戻るのだし、楽しまなきゃ損だと思わない?」
「それには賛成ですね。僕も折角本でしか知らなかった世界にいるんですから、色々と見たいことやりたいことが沢山あります」
「フレイヤ様は兎も角……貴方も大分頭がぶっ飛んでますね」
どこか呆れたように言葉を漏らすヘイズ。
普通に超タイプで緊張するからやめてほしい。
「先ず、貴方に課す絶対のルール」
「なんでしょう?」
フレイヤ様は自身の眼前で人差し指をぴんと立てる。
「1つ、私に過度な敬意を払わない。私の可愛い
「なるほど、わかりました。確かにお気持ちは察せられますし、実際僕もその方が有り難いです」
「そして、2つ。この話は此処にいる三人だけの秘密にすること。……とはいえ、これはそんなに支障ないわ。だって、私の
聞いてますか【フレイヤ・ファミリア】の皆さん。
貴方達、手のかかる子供みたいな扱いされてますよ。
というか普通に考えて、フレイヤ様から愛を貰うためにやることが殺し合いっておかしいよねここの人たち。
フレイヤ様なんてバベルで暇してるんだから、面白い話の1つでも出来るように外に出なさい。
というかそもそも砂漠編のアリィだって、別に腕っぷしは無かったでしょ。
結局人間は内面よ内面。
それかヘディンみたいに頭使えるようになれば、頭脳班が深刻な人材不足な【フレイヤ・ファミリア】では大いに役に立てるでしょうが。
勉強しなさい。
「まあ派閥トップのオッタルさんが中身別物なんて知られたら、ファミリアに激震が走るし、最悪下剋上が起こりそうですもんね。正直ヘディンさんやアレンさんとかと闘わされたら負けるかもです」
「そういうこと。長くても一ヶ月の辛抱だから、お願いね。口調とか佇まいについては後で指導するわ」
「お願いします」
「それで、貴方がやりたいことって一体何なのかしら?」
興味ありげに此方を見つめてくるフレイヤ様。
ただ、俺の中でやりたいことなんて決まってる。
というか、オタクにも色々な派閥はあるとはいえ、大凡の人間は賛同してくれるだろう!
「本で見た人と、めっちゃ喋りたいです!」
「ふふ、それしかないわよね。貴方からすれば、おとぎ話の世界に入ったようなものだもの。……いいわ、けれど、あくまでオッタルの威厳を崩さない範囲でお願いね?」
「勿論!憧れの人たちに迷惑をかけることなんてしませんよ!」
「うふふ、お互い今後一生無い機会ですもの。楽しみましょう?……ヘイズも協力、お願いね?」
「フレイヤ様がそう仰るなら、どんな拷問を受けたとしても決して他言しないことを誓います。……貴方も、気をつけてくださいねー?」
「勿論!任せてくださいよ!」
固い約束をアピールするように俺はぐっ、と拳を握りめた。
それを見た女性陣2人が、肩をぷるぷると震わせ始める。
なんだなんだ?と不思議がっていると、とうとう爆発したように2人は噴き出してしまった。
「うふふ、あ、あはははは!オッタルの姿でそれは、勘弁して頂戴!反則、反則だわ!」
「あっははは!いつも『うむ』とか『あぁ』しか言わない団長でそれは、ちょっとヤバいです!あー、いつも
確かに筋骨隆々の三十代大男がやるには、ちょっとファンキーすぎたかもしれん。
オッタル、すまん。
でもフレイヤ様が幸せなら、OKです!
ってお前なら言ってくれるだろ?
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時は流れ、フレイヤのオッタル真似事試験合格3日後
「おい剣姫。俺と腕相撲しろ」
「……え?」
原作キャラと、積極的に介入したいオタクが交差する時――物語は始まる!
多分