主従の間に芽生えてしまった歯止めの効かない愛情は光をも割断する   作:てりのとりやき

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「【(うてな)はまだ果てにあるよ、ローロ】」

 

 

 

 

 かつての言葉をメフトは思い出す。

 

『覚えておいて。

 ──いつか必ずお前を殺す。

 私じゃない。私が殺すのでは復讐にすらならない』

『…………』

『この子よ。この子が殺すの。お前が生かし、お前が歪めた、この子が……』

 

 あの時マギアニクス・ファウストが見せた憎悪の表情。歪んだ顔。何もかも鮮明に覚えていた。あの時──まだローロが三歳にも満たなかった頃。

 致命的な罪を、そうとは自覚していなかった当時のメフトは、かつてマギアニクス・ファウストが浮かべた表情の意味が分からなかった。

 あれから十四年が経ち、メフトは自身の罪の重さを失敗ばかり繰り返した生の中でようやく悟った。

 今なら分かる。

 何もかもに起点を置くなら、きっと……。

 

 

 

 剣戟が打ち鳴らされる。立て続けに鳴り響く快音にメフトの意識は前を向いた。

 

 

 

 ティアレスという女が命を賭けて100秒を守りきろうとしていた。背にした女二人のために。切り結ぶ剣の先で狂ったような笑みをする少女のために。

 アルという女が100秒かけて魔法を発動しようと魔力を放出していた。ローロの体に憑りついた母の執念を引きはがすために。

 自分だけが、何一つできないで彼女たちを眺める他なかった。

 

「……」

 

 どうやってもティアレスは劣勢だった。マギアの振るう剣は瞬間的な【強化】が連続して発生している。その速度域は極超音速だ。微量なローロ・ワンの魔力総量だったとしても叩き落される豪速の剣は、一振り一振りがティアレスの肉体を追い詰める。受け流すたびに、弾き返すたびに、彼女が発動する細胞レベルでの【強化】魔法は彼女の肉体を破壊していくのだから。

 一つの斬撃を弾くたびに、ティアレスの体のどこかしらが裂け、血が飛び散った。

 一つの刺突を躱すたびに、ティアレスの体のどこかしらが折れ、動きが鈍くなった。

 そして──振るい落とされた剣をティアレスが受け流した時、ついに。

 

「──」

「あは」

 

 ティアレスの右腕が、落ちた。

 現象として。物理的に、根元から。マギアの剣戟が切り落とした訳ではない。

 

「……!」

 

 耐久限界だ。細胞レベルでの不完全な【強化】魔法しか発動できない今のティアレスでは、いずれ肉体がその形状を維持できなくなってしまう。

 右腕ごと剣を落としたティアレスが目を見開く──奥歯まで噛み締める。

 そしてマギアの笑みは一段と濃くなり。

 この瞬間を待ちわびたかの如く大上段に振り上がるマギアの剣。優に超音速域にある斬撃を、既にティアレスは受け止める手段がない。彼女は左手が死んでいるのだ。剣を握るための手指がなかった。

 が、しかし。

 

「────」

 

 この程度で諦めるならば彼女は既に死んでいたはずだった。いまだ闘志を捨てていない眼で、ティアレスは即座に魔力糸を物質化させる。極めて短い時間流の中で、ティアレスが呼び寄せた剣の一本は、物質化された糸に、それを噛み締めた顎で引き寄せたティアレスの下へと飛び。

 剣が、その柄が、彼女の顎に納まり『がちり』と。

 ──マギアの剣は叩き落とされる。

 ──奥歯まで使って噛まれた剣がそれを受けた。  

 

「……!」

「──!」

 

 両腕が使い物にならなくとも戦闘意志を捨てない驚異的な本能にマギアが息を呑み、僅かに剣へ込めた力が緩む。その瞬間を見計らったかのようにティアレスが体を上げ、マギアを押しのけた。

 しかしそこまでだった。

 両腕を失ったティアレスの剣戟はもはや勢いを失っており、数歩引いたマギアは即座に突き進む。──ティアレスの脇を避け、一直線にアルの下へと。

 

「──!」

 

 まだ50秒程度しか経っていない。アルは魔法発動に集中するため目を瞑っており、迫り来る殺意を認識はできても避けることなど到底無理で。

 メフトの眼前。

 マギアが、自身を害する者へと剣の切っ先を向け。

 刺突の構え。あと数歩で貫かれるアルの腹部。突進。

 ──時の流れは緩慢だった。

 足は……勝手に、動いていた。  

 

「────な」

「……っ!」

 

 腹部を貫通する異物。内臓も筋肉も神経も皮膚も肉も、何もかもが異常信号を激痛という形で発信する。一秒を、呼吸で満たすことさえ気が遠くなるほどの苦痛が思考を瞬時に埋め尽くした。 

 

「メフト……!」

 

 アルを庇う形で刺し貫かれたメフトへと、ティアレスが呻く。メフトは言葉を返す余裕すらなくしていたが、しかし、呆けた表情で固まっているマギアへと腕を伸ばすことは忘れなかった。

 自身の腹部を貫く剣を、その柄を握る少女の両手ごとメフトは掴んだ。明確な時間稼ぎだ。捨て身の行動の意味を理解したマギアが目を見開く。今度こそ笑みを消して怒りで顔を歪める──ローロの顔を。

 

「な──離しなさい、離せッ! 薄汚い悪魔が私に触れるな!」

 

 アルによる魔法発動まで残り何秒だろう。50秒? 40秒? 30秒? それとも……5秒さえ経っていないのかもしれない。

 痛みのなかで、時間は緩む。遅くなり続ける。血が零れ、意識が吹き飛びそうになり、強引に剣を引き抜こうとするマギアの動きで内臓をかき回されて強引に意識が戻る。その繰り返し。

 それでもメフトは両手に込めた力を決して弱めなかった。少女の手を包むように掴んで離さなかった。 

 

「いいえ……絶対に、絶対に……離さない……!」

 

 腹部を貫く痛み。

 苦しみ──その中で思考が光じみて瞬いた。

 

 

 わかっている。自分は死ぬべきだ。

 

 

 そんなことはローロがマギアニクス・ファウストの娘だと分かった時点で理解している。

 わかっていた。自分は死ぬべきだろう。

 いつか憎悪の終着点として討たれるべきなのだろう。

 わかっていたんだ。自分は死ぬべきだと。

 前を見ることが難しかった。過去への後悔と共に後ろ向きに前へと歩くことしか出来なかった。

『あの時、こうしていれば』。

『あの時ああすることができたなら』。

 そんな“もしも”ばかりを考えて、考えることしかできなかったからここにいる。まだ、マギアをまっすぐに見つめることは、恐ろしい。

 でも。

 アルが、

 ティアレスが、 

 ローロが──私を今ここに立たせている。

 

「生きるという事は……選択の、連続、で」

 

 口の中に血の味が混じりだしていた。痛みに呻き、全身を震わせ、明滅する視界の中で──それでもメフトはローロを見つめる。その奥に潜むマギアさえも見透かそうとする。 

 ……マギア。

 マギアニクス・ファウスト。

 

「私は……ずっと、ずっと間違え続けていて……!」

 

 だからあなたに憎まれるのも、 

 こうして殺されようとしているのも、

 きっときっと間違いではなくて──。

 

「それでも」

 

 ローロ・ワンの体を使って、その顔で、彼女の母が怒りを憎悪を殺意を燃やすのは間違っている。

 アルが言った通りだ。

 魔王を断罪すべきはマギアニクス・ファウストではない。 

 

「私を殺すのはマギア、あなたじゃない。

 あなたの娘が……私を、殺す……、でしょう?」

 

 罪に対する罰が下るのは今ここではない。

 どれだけ後ろ向きな理由であっても、ただその一つの意志だけで、メフトはまだ立てる。まだ痛みに耐えられる。

 

「──返して、もらうわ。私の……私達のローロを!」

「離しなさい! 離せメフト──ッ!」

「ずっと……疑問だったんだよ」

 

 マギアの絶叫に被せる形で、右腕を喪失したティアレスがゆっくりと立ち上がった。全身から血を流し、意思の通らない左手を自重で揺らすだけの女は、湿ったものが混じる荒い吐息のまま、マギアを睨む。

 

「なぜ【質量転換(マスコンバート)】を貴様は使用しないんだってな」

 

 ローロ・ワンという、極めて少ない魔力総量の持ち主にマギアは寄生している。必然としてマギアは極端に少量の魔力総量を扱うほかなく、だからこそ大々的な魔法を扱えなかった。【対消滅反応】による環境支配状態で広域高火力魔法を扱えば、メフト共々三人は瞬殺されていたはずだった。

 しかしマギアはそれを行わなかった。この事実を端的にティアレスは言い表す。

 

「貴様は、ローロの肉体を【質量転換】で代償にしてまで私達を殺すつもりがなかった……!」

 

 何故か! 

 

「メフトを本気にさせるつもりがなかったんだな……! その女にメルツェルを捨てられては、貴様は一瞬で敗北する! だから徹底的に苦しめて苦しめて半殺しにするつもりだった!」

「……!」

「その驕りが、その嗜虐性が敗因だ! マギアニクス・ファウスト──!」

 

 言葉と共に、ティアレスが駆ける。再度引き寄せた剣を噛み締め、最後の力を振り絞って。   

 剣を決して手放そうとしないメフト。背後からは限界を超えて尚戦う意志を示すティアレス。そして彼女達が阻む先で、残る二十秒を切ったアルの魔法──。

 

「チッ!」

 

 メフトの頑固さを恨む目つきをしたマギアが、微量の魔力を放出する。【強化】を用いてメフトの拘束を脱するつもりだ。現状魔法を使えないメフトでは、【強化】による強引な動きを止める手段がない。それでも彼女を止めるため更に力を籠めようとして──。

 

「──ローロ、おまえまで私を拒むの……?」

 

 マギアの呆然とした言葉に、一切の魔力放出がされない事実に、メフトは息を呑むことしかできなかった。

 

「ロー……ロ……」

 

 少女の頬を滑り落ちる涙があった。どれだけ歪んだ表情を強いられていても、震え、震え続け、すべてを拒絶する肉体だけがあった。

 

「私の娘だというのに親の言うことも聞けない、愚図が────ッ!!!!」

 

 そんな少女の肉体を、それでも憎悪によって鞭打つ女が吼え。

 魔力が放、

 

 

 

 その肩に触れる血まみれの手がひとつ。

 

 

 

 ティアレスだった。もはや一切の力を込めることなど叶わない左手がローロの肩に置かれていた。少女を抱きとめるう動きで、そっと左腕が回されていた。たったそれだけの事だというのに、ローロ・ワンの肉体からは魔力放出が止まっていた。

 

「もういいローロ。もう帰ろう。こんなことで君が苦しむなんて間違ってる」 

「なんで……どうして魔力放出ができないの!?」

「──【母親の憎しみに】」

 

 そして柔らかな言葉が空間に鳴り響く。マギアが咄嗟の反応で顔を跳ね上げ見やる先。

 空の青さも突き抜けるほどに濃い青をした双眸が──青緑の瞳に静謐さを湛えたアルが、ついにマギアへと一歩を進む。

 不可視の魔力が徐々に徐々に形を作っていく。

 

「【母親の憎しみにローロが衝き動かされる必要なんかどこにもないよ】」

「共に生きよう。共に笑おう。共に帰ろう! 四人で必ず! だから帰ってこい、くるんだ……!!」

 

 それは青い円環だった。

 それは赤い円環だった。

 それは黄色をした円環だった。

 

「は、なせッ──!」

「いいえ絶対に離さない! 痛みが唯一あなたがローロに与えられる愛情だというなら、私は二度とこの手を離さない──!」

「【愛情がローロをこうまで苦しめたとしても】【あなたを好きだと言った言葉に嘘偽りはなかった】」

 

 積層し、輻輳し、次々に色彩を変えていく円環がローロ・ワンの肉体を包んでいた。一切の理論化が不可能な、しかし明らかな魔法発動の前兆にマギアが言葉にならない咆哮を上げる。

 だが、メフトの両手が。

 背後からティアレスの腕が。

 ──そしてアルが、ローロ・ワンの肩を優しく抱き寄せ。

 

「【(うてな)はまだ果てにあるよ、ローロ】」

 

 虹色の積層円環がひと際強い光を放ち。

 直後、ローロ・ワンの左手薬指が消失──不可視の魔力へと分解され、瞬時に少女の肉体へと溶けていった。

 

「────!!!!」

 

 少女の喉を潰すほどの絶叫と共に、ローロ・ワンの後頭部に紫色をした積層円環が顕現する。【MOS】の物理的顕現──それを、アルはすぐさま掴む(・・)

 そして一切の躊躇いを見せずに引きはがした。

 

「ぁ────………………」

 

 紫色をした円環が、アルの手の動きに従いローロの後頭部から離れていく。羽毛のような身軽さでアルの手からも離れ、虚空へと解き放たれる。

 同時にローロ・ワンの体から一切の殺意が失せた。表情から険しさが消え、眠っているかのように目を閉じた。その意味を、真正面から少女を見つめていたメフトが一番に悟る。  

 

「ローロ!」

 

 声と共に両手を離し少女を抱きとめる動きと、糸が切れたようにローロが倒れ込むのはほぼ同時だった。

 ローロ・ワンの手が剣を離し、メフトは自身の腹部に突き刺さったままの剣を気にせずローロを抱きしめる。……自身により深く剣が突き刺さっていくのも構うことなく。

 晴天の下。

 血まみれの女が、腹部に剣を残したままの女が。心を確かに砕かれた女が。

 誰もが大事な存在を──愛しい少女を抱きしめ。 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「………………娘の肉体を使えば、メフトも苦しみながら死ねると思ったのに」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 それは明確な発声だった。

 物理的現象として発生した、女の声だった。妙齢の女がするような……艶やかで余裕に満ちた響き──。

 

「まあいいわ。ちゃあんとアルちゃんは仕事をしてくれたもの」

 

 アルが。

 ティアレスが。

 メフトが。

 誰もが声の主へと顔を上げ、言葉を失っていた。

 ──青き空より、重力を無視した軽やかさで、ゆっくりと降り立つ女がいた。

 

「【MOS】はねえ、娘の肉体に固着しすぎていて分離させることができなかったのよね」

「そ、んな……」

「あハっ。もしかして私がローロの身体に寄生しないと維持できない魔法とでも思ってた?」

 

 最適解を選んだつもりだった。アルもティアレスも、ローロを救うにはそれしかないと。

 だというのに──。

 

「疑問に思う余地さえなかったでしょ? うんうん、だってこうなるようアルちゃんの脳を弄ったのは私だもの」

 

 その髪は長く、豊かな銀色。日に透けて輝く眩い白銀。

 その肌は珠のように美しい白。誰もが羨む肌艶。

 その瞳は淡い紫色。蕩けるように輝き、見る者を吸い込むような宝玉。 

 

「それに、アルちゃんは私を殺せないように出来てるし」

「――」

 

 成長期はとうに過ぎ、その四肢は長く、その肢体には程よい肉つきがあって。

 ──美しい、女が居た。

 ローロがそのまま大人になったかのような絶世の美女が、嫣然と笑いながら地に立った。 

 

 

 

 

「マギアが……受肉、した……」

 

 

 

 

 

 ローロ・ワンという極めて少量の魔力総量しか持ちえない肉体から解き放たれた、魔法創造型魔法【マギアニクス・ファウスト】が──生前の美しい姿をそのまま再構築していた。

 誰しもの驚愕を無視して、女は心地よさそうに目を瞑る。

 そして。

 

「うん、こういう感じよね、魔力放出って」

 

 世界の全てを満たすほどの魔力がマギアの全身から吹き荒れた。

 それは星の全域を覆う魔力量。それ以上は、メフト以外の誰にも総量が把握できない領域にある魔力放出であり。

 つまりは。

 

「無限の──魔力総量──」

 

 魔王とまで呼ばれた女を世に生み出し。創り。

 その異次元的才能から自身以外のあらゆる魔法の発動を許さず。

 更にはメフトと同等の無限の魔力さえ獲得した、まさしく魔なる神が。  

 “魔神”マギアニクス・ファウストが、究極の魔力量をもって一つの魔法を展開する。持ち上げた片手の先に、それは凄まじい光量として顕現した。

 

「【縮退耀星(ブレスレス)】」

 

 マギアの片手に生まれた光は、熱を伴っていた。強大な質量の発生だった。

 輻射熱と莫大な質量によって生まれる重力を用いて、星系すべてに祝福を齎すもの。

 小さな(・・・)恒星(・・)が──メフトへと差し向けられ。

 射出を。 

 

「さあ、溶けて消えなさ「【質量転換(マスコンバート)】、頭髪二分の一(サクリファイス)血液800ml(サクリファイス)右手二指(サクリファイス)左足三指(サクリファイス)軟肋骨二本(サクリファイス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 左腕(サクリファイス)

 消化0.000000001秒(カウントセット)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔力放出開始」

 

 ──光に限りなく近いその一時、ローロ・ワンが放出した魔力量は星というスケールを超えていた。

 それは瞬く間に星系全域を覆い尽くした。

 それは物理法則を無視して銀河系全域へ膨張した。

 それは凡そ理外の法則に基づいて銀河団全域にまで及んだ。

 そしてローロ・ワンの放出した魔力量は直径1億光年に至った。

 つまりは、超銀河団級の魔力放出である。

 時という概念は定められた順序に従い、正しく進行していく。

 

 

 

 0.0000000001秒。

 ローロ・ワンは【シナプス代替魔法】を超銀河団級の魔力によって爆増。

 

 

 0.0000000002秒。

 ローロ・ワンの思考は頭蓋から溢れ、超知能が発現。

 

 

 0.0000000008秒。

 ローロ・ワンはメフトの腹部から剣を引き抜き、同時に物質構造を変換。

 剣の形をした、【終末魔法第四被展開体“理外無効(ミリトゥム・オーバーロード)”】が世に顕現し。

 

 

 0.0000000009秒。

 ローロ・ワンは、母の下へと歩いた(・・・)

 

 

 0.00000000095秒。

 そして、ローロ・ワンは。

 光でさえ14.5cmしか進めないというのに。

 時の(・・)狭間(・・)にて(・・)11(・・)mを(・・)歩き(・・)──

 

 

 0.00000000096秒。

 剣を。

 

 

 0.00000000097秒。

 唯一の腕を。 

 

 

 0.00000000098秒。

 親指と人差し指と中指しかない右手を。

 

 

 0.00000000099秒。

 天へと振り上げ。

 同時に踏み込む右足。捻る半身。

 

 

 

 

 

 

 それは本当に滑らかな剣の軌跡。

 

 

 

 

 

 

 

 0.0000000001秒。

 ────自らの母を、少女は叩き切った。

 

 

 

 

私は、それらすべてを観測している。

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