MUGEN アーカイブ    作:わんたんめん

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かぁ〜ランセレしてぇ〜


嫌な予感ほどよく当たる

 

「ふぁ〜あ………あ、もう朝なのか。」

 

部屋に差し込んできた陽の光で目を覚ましながら固まった体をほぐすようにその場で伸びをしてみる。

セリカちゃんはまだ寝てるか、と思っていたが見ている間にモゾモゾと布団の中で身じろぎしだした。

 

「ん…………あれ?ここは────」

 

「おはようさん、よく眠れたかな、お姫様?」

 

目を覚ましたセリカちゃんにそう声をかけてやると少し時間をおいてから飛び起きるように上体を起こすセリカちゃん。

ああ、そんな勢いよく起きたら────

 

「ッ────」

 

案の定、ダメージが回復しきってないのかふらつくような様子を見せる。ああもう言わんこっちゃない。

体を再びベッドに沈めたセリカちゃんに寝ていた窓際から降り、彼女のベッドに駆け寄る。

 

「ダメだよ、高射砲なんか食らったことないけどホシノちゃんがまともに食らってると歩くのもきつくなるとか言ってたんだから今日は休んだ休んだ。」

 

一度ふらついたのにまた体を起こそうとするセリカちゃんを抑えてなだめようとする。

 

「でも、バイトとか────」

 

「紫関ラーメンの大将にはわたしから連絡しておいた。かなり心配していたからその状態で行ったとしても余計に彼の心配を増やすだけだよ。だからしっかり休んでから元気な姿を見せてあげて。」

 

「で、でも今は少しでも稼がないと────」

 

「それに関してもシャーレの連邦生徒会からの依頼をある程度アビドスに回してもらうことで補おうとしている。あっちは今てんやわんやだからね、依頼さえやってもらえればどの学校がやろうと気にしないみたい。」

 

セリカちゃんが頑張る理由をつぶすようにわたしは矢継ぎ早に言葉を並べる。

悪いけど今のセリカちゃんを頑張らせるわけにはいかない。

やがてセリカちゃんは力なくベッドに横たわった。

 

「…………今はゆっくりお休みして。逸る気持ちはわかるけど、それで動けなくなったらそれこそ元も子もないからね。いい?」

 

「………わかった。」

 

埋もれるように布団をかぶってしまったが、返答が返ってきたことに満足してわたしは保健室から出ようとする。

 

「────待って。そういえば言ってなかったことがあったわ。」

 

セリカちゃんに呼び止められた。振り向いてみるとそこには顔だけこちらに向けながらもどこか照れくさそうにしているセリカちゃんの姿があった。

 

「…………助けてくれて、ありがとう。正直アンタが来てなかったらあのままヘルメット団に攫われてた。だから、お礼は言ってあげるわ。その、あの時先生と一緒にいた赤セイバーっていう人にも。」

 

「…………認めてくれたようで何よりだよ。」

 

「んなっ………言っておくけど、このくらいでアビドスの役に立てたなんて思わないでよね!この借りはいつか必ず返すんだから!」

 

そう言ってワーワーニャーニャー言ってるセリカちゃんに生暖かい目線を送りつつ、わたしは保健室を後にする。

大丈夫、わたしもそのくらいで役に立てたとは思っていない。真にそう言えるようになるのは、アビドスの借金をどうにかしてからだ。

 

 

 

 

 

「─────もう!!皆さんちゃんと真面目にやってくださーいッ!!!!」

 

対策委員会の部室にアヤネちゃんの怒号と共に机を派手にひっくり返した音が響く。わたしはそれにびっくりして耳を塞いだが、表情では苦笑いを見せていた。

 

「おお、アヤネちゃんの必殺ちゃぶ台返し………これを見れるなんて先生はラッキーだねぇ。」

 

「見てしまったこと自体アンラッキーな気がするけど?」

 

隣であっけらかんとしているホシノちゃんは置いといて、アヤネちゃんがわたしたちで言うペナルティ*1踏んだみたいなキレ方をしていることについて説明しよう。

 

 

セリカちゃん誘拐未遂から数日、すっかり彼女の体調が回復したところを見計らって対策委員会の定例会議が行われた。

その会議にわたしも出席させてもらうことになったが、議題はもちろんアビドスの抱えた借金の返済についてだ。

指名手配やシャーレへの依頼を回してはいるがそれでも利息分が返済できるかどうかが瀬戸際だ。

肝心の借金そのものには一切手がつけられていない。それをどうにかしようと考えるための会議のはずなんだけど……………

 

一番手セリカちゃん、ネズミ講!(なお本人は騙された側)

二番手ホシノちゃん、他校のスクールバスジャック!

三番手シロコちゃん、銀行強盗!

四番手ノノミちゃん、スクールアイドル!

 

これはアヤネちゃんがキレるのもやむなし。真面目さのカケラもない。いや、本人たちは至って真面目なんだろうけどさ。

というかシロコちゃん、いつぞやかに聞いたわたしのワープが銀行強盗で使えそうって言ったの聞き違いじゃなかったのね。

まぁ手段としては最終手段くらいには入れるけど。

 

「うーん、どうしよっか。」

 

目の前でアヤネちゃんにお説教されている提案者たちを眺めながら思案に耽る。

とりあえず挙げられた提案は全部先生権限で否決しておくとして、アヤネちゃんを宥めないと会議が回るどころか崩壊しそうだ。

ここは気分転換にご飯でも食べに行こっか。

 

 

「そういうわけで柴関ラーメンよろしく。」

 

「いや、どうしてそこで私のバイト先なのよ…………まぁ、なんでもいいけど。」

 

アヤネちゃんのご機嫌取りのために夕方再び柴関ラーメンに足を運ぶ。

先にバイトで来ていたセリカちゃんの疑問は置いておいてわたしたちは席に着き、各々が食べたいラーメンを注文する。ちなみにわたしは今回は味噌ラーメンにしたよ。

 

「いやあー悪かったってばアヤネちゃーんラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」

 

わーい、今回わたしが奢らなくて済みそうだ。

 

「あ、先生は自分の分はちゃんと払ってね。生徒に奢られる先生とか絵面が悪いよぉ?」

 

…………どうやらわたしの浅はかな考えが見透かされていたらしい。やるじゃないか。ぐぬぬ。

それはさておき他のみんなはホシノちゃんの奢りらしいのだが、膨れ面を見せているアヤネちゃんをあの手この手でご機嫌取りしている。具体的にどうしてると言うと───

 

「はい、お口拭いて。はい、よくできましたねー☆」

 

「赤ちゃんじゃありません!」

 

ノノミちゃんにまるで赤子のように扱われたり────

 

「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」

 

「ふぁい」

 

シロコちゃんに餌付けされていた。

それでいいのかななんて思っていたが、どうやらアヤネちゃんの怒りも鎮静化に向かっているようで仏頂面も幾分マシにはなってきている。

これなら大丈夫かななんて思っているとラーメン屋の扉を開く音が聞こえ、反射的にそっちの方に視線を向ける。

 

「…………ツノ?」

 

入ってきたのは4人。そして皆揃いも揃って見たことない制服を着ていた。

うち2人、マントを羽織った生徒と白と黒の二色の髪色をした生徒にはツノが生えていた。

そういえばハスミちゃんにはすごく大きい翼があった。それとおんなじ類だろうか。

おそらくグループで行動していると思われるが、リーダーは────おそらく高級そうなマントを羽織った紅毛の生徒だろう。

 

「四名様ですか?お席にご案内しますね。」

「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫」

「一杯だけ……?でも……どうせならごゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いてる席も多いですし」

「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。」

 

応対に向かったセリカちゃんとのやりとりを耳に挟みながらラーメンを啜る。

やってきた4人の注文の仕方を不思議そうにするセリカちゃん。

4人なのに一杯ねぇ、まさかお金がないのかな。

 

「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金がなくてすみません!!」

 

そう思っていると向こうから答えを出してくれた。

あれま、それは大変だねぇ。身なりは小綺麗だから金使いの荒い人のせいで財布がすかんぴんと考えるのが筋かなぁ。

その後も少しセリカちゃんとのやりとりを遠巻きに見ていたが、若干一名ネガティブ思考が強い子がいてあまりの卑屈さにセリカちゃんも引き気味だったが、お金がないことを自虐したところで目の色が変わったように小銭をかき集めてきてくれたことに感謝する言葉を挙げると厨房の方へ駆け足気味に走り去っていった。

 

「野暮かもしれないけどとりあえず席に着いたら?店からしたら暖簾くくればみんなお客さんなんだからさ。」

 

「え、ええ、そうね。いつまでも入り口を塞いでいたらお店の人に迷惑だものね。」

 

去っていったセリカちゃんを見て呆然としている4人にそう声をかけるとリーダー格っぽい生徒の声で席に着いた。

やっぱり彼女がリーダーで間違いなさそうだ。

 

「ねぇねぇホシノちゃん、あの子たちってどこの学校の生徒さん?」

 

隣に座っていたホシノちゃんに今入店してきた生徒たちのことを聞いてみる。

 

「うーん、少なくとも2人はゲヘナだと思うよ。あそこの生徒は大抵ああいうツノが生えているからね。」

 

「少なくともここら辺の生徒じゃないってこと?」

 

「まぁ、そうなるね。一体何用で来たんだろうねぇ。」

 

ゲヘナっていう学校があるのか…………そういえばユウカちゃんたちに会った時思えば彼女たちの学校を聞いてなかったな。書類仕事に追われてその後も聞けず終いだったし……………

とりあえず聞き耳を立てつつもラーメンを啜る。なんだかホシノちゃんの言葉聞いてから嫌な予感がした。

話の内容的にはなんらかの目的でお金を使い込んだ『アルちゃん』の話題だった。雰囲気的にはあのマントを羽織っていた生徒で相違なさそう。

ただ、どうにもそのお金を使い込んだ理由が今度の襲撃任務の人員確保のためらしい。

なんだか漠然としたものがだんだんと確信に近づいてきちゃった。

 

「今回のターゲットは、ヘルメット団みたいなザコみたいには扱えないってことには同意する。でも全財産をはたいて人を雇わなきゃいけないほど、アビドスは危険な連中なの?」

 

あー……………うわー…………やっぱりかぁー…………

わたしは当たってほしくない予感が見事的中してしまったことに思わず心の中で空を仰いだ。

 

*1
相手が特定の攻撃や行動を取った時にそれに反応して性能が上昇したり、反撃したりする。

ペナルティの対象になる例としてはフライング、回復、ゲージ(必殺技を撃つために必要なエネルギー)消しなど

なお、ひどいやつはダメージを長時間喰らってないだけでキレる理不尽をしてくる。

まぁ、mugenだから仕方ない

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