「それじゃあ、気を付けてね!」
「お仕事、上手くいきますように!」
「あははっ!了解!あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!」
わたしたちの後に入ってきた予想ゲヘナの生徒の四人を見送るセリカちゃんとノノミちゃん。
それにリーダー格らしきマントを羽織った生徒が悪意を全く感じさせない朗らかな表情でアビドスのみんなの将来を祈ってくれる。
あれはどうみてもこっちのことに気づいていないね。取り巻きのうち二人は気づいてそうだったけど。
「…………悪い子じゃないっぽいんだよねぇ。なんなら善人ってよんでも差し支えなさそうな。」
「うへぇー、でもあの子たちが来るってことがわかっている以上こっちも相応にやるしかないよねぇ?先生。」
「ま、それはそう。今回は運がなかったってことでご帰宅してもらわないとね。」
ホシノちゃんの言葉にわたしは帽子を深くかぶりなおしながらそう返す。
とはいえ、まずは色々調べないとね。
「えっと、前回先生がもってきてくださった高射砲を調べた結果、現在では使用が禁止されているタイプであることが判明しました。」
次の日の朝、みんなが登校し、対策委員会の部室に集まったところで前回わたしがヘルメット団からもってきた高射砲を調べてくれたいたアヤネちゃんから報告が挙げられた。
使用が禁止…………ってことはヘルメット団は自分たちが手に入れることができないはずの武器を持っている。
それはつまり────
「やっぱりあの子たちには後ろ盾がある。統率が取れてないわりに装備がよかったのはそういうことだね。」
とはいえいったい何が目的なんだろうね、その後ろ盾の人たち。
土地が広いとはいえアビドスの地域は絶賛砂漠化ではっきりいってまともに使える状態ではない。
それにもかかわらずヘルメット団とか昨日あった四人組────便利屋68とかいう武力まで使って対策委員会のみんなを追い出そうとしている。
そうするまでの価値が────わたしの知らない何かがここにはあるってことなのかな?
「校舎より南15km地点付近で大規模な兵力を確認!」
そんなことを考えながらしばらく時間が経つとドローンを使って周辺地域の警戒をしていたアヤネちゃんが緊迫した声を出す。
それに引き寄せられるように彼女のドローンから送られる映像を見てみると、アビドスの校舎に向かって進軍する武装集団が映る。
人数はざっと見積もってもわたしが初めてアビドスに来た時の襲撃よりも多い。
そしてそこには紫関ラーメンで会った便利屋68の四人の姿もあった。
「あれ?周りにいる人たちヘルメット団じゃないっぽい?」
ふと気になった疑問を口に出す。相当な人数を率いているものだからてっきりヘルメット団と協力してるかと思ったが、彼女たちの周りにいるのは武装こそしているが、ヘルメットのようなものは確認できなかった。
「はい、傭兵みたいですね。多分、日雇いの傭兵かと」
「へえー、傭兵かあ。結構高いはずだけど」
…………そういえば彼女たち、金欠状態って言っていたっけ。その傭兵たちを調達するために大金はたいたからそうなったということか。
「とりあえず、迎撃に出るしかないね。枚数不利はいつも通りとして、大丈夫そう?」
「まぁいつものことだからもう気にしないけど、前みたいに先生の知り合い呼べないの?」
みんなに確認をとっているとセリカちゃんからそんなことを聞かれた。
あー、まぁ呼んでもいいんだけど…………
微妙な顔をしながらみんなの反応を伺うと期待されているような表情を向けられる。
「………呼ぶのはいいけど、あんまり頼りっきりはよくないと思うよ?いつまでもわたしがここに居られるわけじゃないからね。」
「あ………そっか。それは、そうだった。ごめん先生。」
「いや、気にしなくていいよ。まぁでも頼りたくなる気持ちはわからないわけでもない。というわけでホシノちゃんはどう思う?」
「んへぇー?そこでおじさんに振るの?うーん…………」
突然話題を振られたことにホシノちゃんは驚きながらもいつも見せている眠たそうな顔で考えていた。
「確か大人のカード使えば先生の知り合いを呼べるって言っていたけどさ、それって何人でも呼べるの?」
「一回で1人だね。時間をかければそれなりの人数は呼べると思う。」
「先生の方からわかるデメリットって何かある?」
「うーん、わたしには特にないけど誰が選ばれるかは完全にランダム。」
「…………まるで運試しみたいですね。面白そう、と言ってしまえば身も蓋もないんでしょうけど。」
「そうだね。そして運を試すってことは必ずハズレがあるってことさ。」
「え!?出てきてくれない場合もあるんですか!?」
「いや、この場合のハズレは暴れられるとわたしですら止められない可能性があるのが出てくること。」
アヤネちゃんの驚きにそう返しておく。
そうなの、このランセレにはわたしですら倒すであろう輩が何人もいる。並大抵の攻撃なら耐えられるわたしだがもちろん耐えられない攻撃も存在する。
より正確に言うとその属性を持った攻撃を振られ続けるとだが、それは混線と隔離だ。
どういうものかと言われると、正直説明に窮する。*1
まぁ、その攻撃が飛んできたら大抵やられると思っておくのがちょうどいい。
で、その輩だが例えば────「蒼」と「音」の二つかな。ランセレが始まるとわたしたちにはよく見慣れた抽選が始まるが、ご丁寧にそこに映る画面は隠されていた。どこかの大会でも見たランセレに選ばれるまで正体がわからないというシステムだが、代わりにヒントのような文字があった。
そのかろうじて見えた中でやばいって感じたのがその2つかな。まぁ…………この2つが最上位筆頭って訳じゃないけど、そのほかはまだ話が通じる人たちだとは思ってる。
「え、この前の赤セイバーって人は全然マシってこと?あの人も相当な力持ってそうな雰囲気あったのに!?」
「なんなら彼女と戦って勝ったことあるよ、わたし。*2」
「ふーん…………まぁ、とりあえずやめておいた方がいいかなー、おじさん的には。少なくとも闇雲に呼び出しちゃうのはね。こっちで制御が効かせられない可能性が万が一にでもあるのならそれ引いた時が悲惨だからね。」
やっぱり君大分賢明だね。そう、ぶっちゃけ引いた時が悲惨極まりないからね。赤セイバーの時はお試し感覚がほとんどだったけど………
「ま、君たちならこの程度の障害を乗り越えるのに造作もいらないだろうし。」
「ん、中々言ってくれるね先生。」
「おそらく向こうの本領が発揮されてるのは傭兵を片付けてからだろうね。それまでは君たちのいつも通りで迎撃していこう。」
……………でも向こうがあの人数で来るのなら─────
「いや、少しでも楽な方がいいのかな?」
「あら………やっぱり先生の言う通り、ラーメン屋で会った人たちですね………」
向かってくる集団を迎撃するために学校の正門に移動する。
みんな武器を構えて警戒していたが、姿を現した集団の後方にいた便利屋の面々を見つける。
「ぐぐぐっ…………!!」
で、その便利屋のリーダーであるマントを羽織っていた生徒、陸八魔アルはメチャクチャ渋い表情でこちらを見ている。
一時一飯を共にした程度のわずかな時間の馴れ合いだったが、それだけで彼女にはアビドスに対する情ができてしまっているようだ。
やっぱりあの子善人だよ。事前に調べた限りだとゲヘナの地域では相当な悪名を轟かせているようだけど、とてもじゃないがそんな悪逆非道を行うような気質には見えなかった。
「なんだかすごーく険しい顔してるようなら、こちらとしては周り右をして帰ってもらえると非常に助かるんだけど?」
「ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」
「あははは、その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ。」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす。」
セリカちゃんと一緒に言葉で退かせてみることを試みるが、曲がりなりにプロ意識のようなものがあるのか周りにいた2人───確か名前はムツキちゃんとカヨコちゃんだったか──から軽くいなされてしまう。
「仕事は仕事ってわけか。そこまでの意識があるのならわたしからは何も言わないよ。こちらとしても嫌々戦われるのも後味悪いからね。」
「へー、もう勝った気でいるんだ?」
「勝った気と言うか…………あ、その前に少し聞いておきたいことがあったんだ。」
「誰の差し金?」
わたしの言葉に乗っかるようにシロコちゃんがアサルトライフルを構え、便利屋の4人に銃口を向ける。
「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ?」
「……答えるわけないか。力づくで口を割らせる。」
向けられた銃口にいつの間にか調子を取り戻したのか、アルちゃんは得意げな表情でそれを突っぱねる。
シロコちゃんもわかっていたようだが、やはりそう簡単に黒幕のことを教えてはくれないようだ。
アルちゃんは手を空高く掲げ、傭兵たちに指示を下す様子を見せる。
その内容は当然────
「総員────攻撃!!」
彼女の手が振り下ろされると同時に周囲にいた傭兵たちが攻撃を開始する。
耳をつんざく破裂音が響き渡るが、その攻撃にホシノちゃんたちは守るのではなくその場から飛びのいた。
『ッ!?』
撃った者たち全員の目が見開かれる。
それもそのはず。だって彼女たちが飛びのくとその先に居るのはわたしただ一人。
しかもわたしにはヘイローがない。つまり他人からはわたしはただの人間と思われているわけだ。まぁ、隠し通せているかどうかは少し疑問だが。
「────君たちって神の存在とか、感じたことある?」
「な、なななな────」
目の前で起きた出来事に思わず唖然とする。
突然飛びのいたアビドスの連中とその先に居たヘイローを持たない人間が棒立ちでいたことに一瞬思考が真っ青になった瞬間、空から光が降りそそぎ、当たってしまうはずだった弾丸が全て焼き払われてしまった。
傭兵たちも経験したことがない現象に動揺が隠せていない様子だ。
「まさかとは思うけど、アイツってあのシャーレの先生だとかはないよね?」
隣にいたカヨコが額から冷や汗のようなものを流しながらそんなことを言った。
「アルちゃん、アイツやっばいよ。風紀委員長とかと戦ったときも似たような感覚あったけど今回はそれどころじゃない。」
いつもは必ず余裕のある様子を見せているはずのムツキでさえもそれをまるで感じさせない険しい顔を浮かべる。
ハルカに至っては完全に覚悟が決まったような顔でただじっと前を無言で見据えている。
「………いや~、アヤネちゃん、とんでもない人呼んじゃったよこれ。」
「生徒にだけ前張らせちゃ先生の名折れだよ。ここはわたしに任せてもらおうかな。あ、観戦するならご自由に。大会気分で気楽にしていいよ?」
その人間────いや、あれは本当に人間なのだろうか。そういえば弾丸を焼き払う直前、何って言っていた?
「さて、
ちなみに今回のカラー自体は11Pくらい(狂上限くらいだったと思う)