「おや、来ないのかな?」
一歩一歩ゆっくりとした足取りで近づく。
向こうから見れば絶好の機会でしかないのに様子を見てみると戸惑っている感じを隠せてない。
……………なーんかヘイローのない人間が全く恐れを感じさせずに向かってきていることとは別でそうなっているようにも見えるけど。
「そっちから来ないなら─────」
わたしはワープをすると一気に彼女たちとの距離を詰める。
次に見えてきたのはちょうど集団のど真ん中。
割り込むように着地を通すと同時に集団全体の足元の空間にヒビを入れ、御神渡りの予備動作を入れる。
「ッ─────全員離れなさい!!」
いち早く反応したアルちゃんが全員にそう言った。
おー、反応が早くて偉い。でもそれに反応できたのは極々一部のようだ。
突然現れたわたしに大半は釘付けになってしまっている。
「が────」
範囲内にいた多くの傭兵たちを飛び出した氷柱で打ち上げる。
周囲の建物くらいの高さまで打ち上げられ、身動きがとりづらくなった彼女らをわたしは魔法陣を展開し、レーザーを発射する。
落下している状態でこれを受けると即死(気絶)する。まともに身動きできない彼女らにこれを防御することはできない。
光が弾けた様子と一瞬の呻き声を聞いたわたしは即座に目線を空から地上に移す。
「ああああああああああ!!!」
「ちょっ!?うら若き女の子がしちゃいけない顔してる!?」
わたしの出した氷柱を掻い潜るように突っ込んできた紫色の制服を着込んだ生徒に顔に思わずそう声を上げる。
目をカッ開いて大声出しながら突っ込んでくるのはもはやバーサーカーだよ!!
そんなわたしの気も知らず、その生徒はわたしを射程内に捉えたのか走りながらという不安定な状況でその銃口を正確にわたしに向ける。
(ただそんな速さじゃ─────)
「あっ!?」
銃口を正確に向けていたが、わたしの出した氷に足を滑らせ、反動であらぬ方向へ弾丸が飛んでいった。
(この子が持ってるの、散弾銃!?)
銃の知識に乏しいわたしは撃たれたところでようやく彼女の持っている銃の種類に考えが向く。
散弾銃、別名ショットガン。完全な近距離用の銃にわたしは渋い顔をする。ぶっちゃけ技中の無敵とかで凌げなくはないが、不規則に飛んでいく弾丸による不意の事故が怖い。
が────
(捕らえたッ!!)
二発目が撃たれる前に『岩戸隠れ』で拘束 、目の前の生徒の動きを止める。
突然のことに困惑した顔を見せているが、彼女は掴まれた。掴まれれば誰だって動きは止まる。ただそれだけの、簡単なことである。
「やられる前にやる。これウチの常識ねっと!!それとごめん!!」
身動きが取れない彼女にとってつけたような謝罪と思い切り力のこもった蹴りを入れ、『岩戸隠れ』の爆発とタイミングがかみ合ったその攻撃で彼女を大きな衝撃音と共に吹っ飛ばした。
その衝撃の強さは吹っ飛ばされた彼女が空き家に突っ込み、そこから土煙が立ち上っているレベルだが、多分大丈夫だろう。正直なんにもないただの蹴りだし。
それはともかく次に来るのは────
「な、なんなんだコイツ………バケモノかよ………!!」
かろうじて残っていた傭兵たちが氷をかき分けながら銃口をわたしに向ける。
バケモノとは失礼な。そんなこと言ってると天罰あげちゃうよ?
「よいしょっと」
何事もないように大きくジャンプし、射線から逃れると傭兵たちに向かって広範囲に大粒の雨のような技を放つ。
『大粒の涙雨 』 シンプルな飛び道具だが身動きのとりづらい傭兵たちには広範囲にわたる攻撃は致命的。
逃げることもままならない様子で雨の爆発に巻き込まれる。
わたしはそのまま着地しようとしたが────
「あ、なんかある。」
足元に赤く光っている物体が見えると落下の勢いを乗せて急降下。足元の氷を衝撃で蹴り砕く。勢いあまって地面の氷が全部砕けてしまったが、まぁさしたる問題はない。
(…………正直あんまり機械に関して知識薄いけど。これ地雷だよねぇ。)
浮き上がったものを地雷だと見たわたしは即座にそれらを『岩戸隠れ』で隔離しておく。どうやらわたしが浮き上がらせた時点で機械が作動していたようで、閉じ込めてから数秒で中で爆発が起きた。
「銃に手榴弾、戦車と来て今度は地雷かぁ……………物騒な世界だねぇ。」
改めてキヴォトスの世紀末感に苦笑いしながら向けられている視線から射線を予測、銃声と一緒に放たれた弾丸は避けたわたしの後ろの建物に穴を空ける。
(2人─────いや、3人?)
こちらに銃口を向けているカヨコちゃんとムツキちゃんを尻目に復活したのか突っ込んだ住宅の瓦礫を吹っ飛ばしながらショットガンの子が出てくる。
(うーん、やっぱり即死技当てないとダメかなぁ。)
そうは言ってもわたしの持ってるのって落下中なら即死のビーム以外だとゲージ技しかない…………
というか気づけば社長のアルちゃんの姿が見えなくなっている。そういえばあの子が持っていた銃どんなのだったけ?結構長めだった気がするんだけど。
うーん………あ、対策委員会のみんながだいぶ不安そうな顔挙げてる。このまま時間ばっかりかけてると痺れを切らして突っ込んできそうだ。
(任せたと言った手前、無様なところはみせられない、か。)
「タイムオーバーかぁ……………」
『?』
不意に呟いた自分の言葉に3人は揃って警戒しながらも不思議そうな顔で見合わせてる。
「あ、こっちの話。気にしなくていいよ。」
わたしは手のひらサイズの水の塊を出現させるとそれを両手で柏手を打つように音を立てて挟み込む。
当然挟み込まれた塊は弾け、あたりに水しぶきが飛ぶがそんなのはお構いなし。
本命は────挟んだ両の手に残されたわずかな水。
その残された水に圧力をかける。極限まで高められたそれは、金属すらも切断しうる刃となる。
「さぁて、まだまだギア上げていくよぉ!!」
その圧力を開放。合わせた両手の先からか細い糸のような水が猛烈な勢いで発射される。
「ッ………!?!?」
狙いはカヨコちゃん。昼間であるために透明な水の糸はかなり見えづらいはずだが、機敏に反応した彼女は被害を服を切断される程度に収める。
見よう見まねもいいところの技だが、威力はまぁまぁ出てたようで標的を見失った水は建物一軒を楽々と切断していた。
「デタラメすぎる………!!」
「このくらいでヒイコラ言うようなら
態勢を崩した彼女にワープで距離を詰め、諸手でたたきつけにかかる。おそらく回避をとりづらい今の姿勢だともらったとか思っていたけど、視界の端に銃を向けられているのを見つけ、追撃を中断。
そして放たれる炸裂音。おそらく撃ってきたのは立ち位置的にショットガンの子。
わたしは技発動中の無敵で凌ごうとするが、それより先にアロナちゃんが張ったバリアがすべての弾丸を遮断する。
『もーう!!前に出張る先生なんて聞いたことがありませーん!!!』
アロナちゃんの悲鳴に近い説教を心中で軽く流し、バリアとかペネトレイトは便利だなぁと思いつつ距離をとる。
「そーれっと!!」
払うように『洩矢の光輪』を放つ。わたしが手を払えば二つ現れ、回転しながら飛んでいく光輪。
それらは建物の外壁で反射しながら3人に向かって飛んでいく。
「これはおまけ!!」
さらに畳みかけるように帽子を外すと中から半透明の光の玉『付喪神』が飛び出し、わたしたちのいる路地を埋め尽くし始める。
「ちょ、これはマズイって!!」
「こ、こんな数、捌ききれない…………!!」
「ッ……………!!」
ほぼ無限に増え続ける飛び道具に三人は銃弾で墜としていくが、一個壊すのに数発はかかっている以上、生成の速さはこっちが上だ。
締まらないけどこのまま押し切る────と思っていたら突然強烈な炸裂音が響いた。
「いッ!?」
予期していなかった状況に反射的に耳を塞いでしまう。
ちょ…………銃ってこんなド派手な音鳴るものなの!?
「社長!!」
便利屋の誰かがはちきれんあまりの声で叫ぶ。
わたしがたまらず耳を塞いだことで作っていた弾幕にもわずかだが穴が開く。
そして開けた空間のその先に、視線がぶつかり合うように何かに反射した光が目に入る。
「────外さないわ。」
────狙撃銃!!彼女が持ってたのはそれか!!
彼女がトリガーを引くと同時に放たれる弾丸。
ワープで避けてもいいが、彼女の放った弾丸には妙な気配があった。
明らかに変な力が乗っかっている。神であるわたしと似たような神秘的なナニかが。
「アロナちゃん、もっかいバリア張って!!」
『わかりました!!』
直観的に避けることは許されないと判断。アロナちゃんのバリアと魔法陣の二段重ねで防御にかかる。
そして弾丸がわたしの出した方陣とぶつかり、大きな衝突音をあたりにまき散らしながらどこかへ飛んでいく。
そして────
(やっぱり!!何か魔法陣にくっついてる!?)
着弾した魔法陣に仄かに残る赤い光。その光は少し間をおいてから一層光を強め、その場で爆発。
「せ、先生ッ!?」
悲鳴に近い声が聞こえてくるが、わたし自体は全くの無問題だ。爆煙に包まれていて姿を見せることはできないが、彼女が狙撃する瞬間、わたしは彼女の姿を捉えた。
ならば既に、そこはわたしの攻撃の射程圏内だ。
「────ニライカナイ」
水色の紋章が浮かび上がると同時に爆煙もろとも吹き飛ばす光の奔流が彼女たちを飲み込んだ。
というか戦える先生だと大抵アロナバリア展開して突っ込めばヨシッってなるからまぁまぁ無法だなあのバリア。
まぁ、先生も先生なんだけど。見えない内部シールド削らないと倒されないし。