「さぁてと、色々聞かせてもらおうじゃないの。」
場所はアビドスの体育館。
生徒が少なくなったことで半ば物置になっているこの施設だが、そこでわたしは足を組みながらステージに腰を掛けていた。
見下ろす視線の先には縄でふん縛った便利屋68の面々。
ちなみに服は彼女たちが着ているものは体操服の類に変わっているよ。
わたしの攻撃で水浸しになってしまったからね。風邪をひかれないためにもそうさせてもらった。
「いやー、先生ってばホントに強いねぇ。これならわたしがいなくなってもあとを任せられそうだよ。」
「冗談でもそんなこと言っちゃダメだよホシノちゃん。」
多分冗談と思われるホシノちゃんの言葉に苦言を呈すとうへぇーと曖昧な反応を見せる。
全く本心だかどうなんだか………
「あー、でもまずは君たちに謝らないとね。ごめんね、最後の方結構大人げないことしたと思う。」
「…………先生っていったい何者なの?ヘイローもないはずなのに、そんな能力を持っているなんて聞いたことない。」
超即死付きの全画面攻撃*1とかいうキヴォトス中では耐えられる人物はそうそういないと思っている超必殺を使ってしまったことを謝っているとカヨコちゃんからそんな質問が投げかけられる。
わたしはアヤネちゃんにホワイトボードを持ってきてもらうとステージから降り、ペンを握る。
「そうだね。まずはそれに答えようか。ぶっちゃけ君たちも気になってるでしょ?」
わたしがそうアビドスの子たちに聞くとおずおずとした様子で頷く五人。
「えーっと、まずはわたしがキヴォトスの人間でないことは察してるよね。わたしは元々キヴォトスじゃない、それこそ別世界のようなところから来た存在。それが摩訶不思議な力を使うシャーレの先生の正体さ。」
「えっ!?先生って別の世界からやってきたの!?」
アルちゃんがいい反応をしてくれる。いいね、そういうの見るとこちらとしても説明のやる気が上がる。
「で、わたしのいた世界はだいぶ血の気が多い奴らがいっぱいでね。そういう奴らのためによく大会が開かれるんだ。まぁ、いわゆる武闘大会みたいのだね。」
そう言いながらわたしはホワイトボードに大きく三角形を描き、その中に横線を引いていって簡単に区分けをする。
「で、その大会を開くにあたってわたしたちの間ではある程度強さの指標としてランクっていうのが設けられてる。まぁ、単純に上に行けば行くほど強い奴らがわんさかいるって認識でいいよ。」
わたしは下から順に並、強、凶、狂、神と分けた部分にそれぞれランクを当てはめていく。
「だいたいこんな感じかな。一応論外とか撃破挑戦とかもっとあるけど、今回は関係ないからいいや。」
「撃破挑戦………なんだかかっこいい響きね!!」
「あー………別に強いって意味じゃないからね?それ。どっちかっていうと的だよ。そのランク。」
どうやら琴線に引っかかったらしいアルちゃんの言葉にそう返すとショックのあまり白目に近い表情を浮かべてしまった。
「では、先生は一体どのランクに属しているんでしょう?」
ノノミちゃんに促されるようにわたしは簡単なランク表の横に矢印をつけた。
その範囲はだいたい狂ランクの真ん中くらいから、神ランクのてっぺんまで。
「わたしはだいたいこの範囲の大会に出ているよ。」
「か、神!?よくわからないけど、先生ってものすごく強いってことなの!?」
うーん、わたしはどっちかと言われれば耐久面でそう言われているような感じするけど…………そこを話し出すと余計に時間食うから割愛させてもらおう。
「まぁ、この神ランクは例え話とかではなく、神様クラスに強い奴らがいるってことさ。名実共に神様もいる訳だし。わたしとか。」
「か、かかかか神様だったんですかぁ!?」
「……………聞き違いじゃなかったのね。」
「おや、もしかしてなんとなく察しが着いてた?」
自分が神であると明かしてみたが思いのほかみんなの反応が薄い、というより神妙なそれに1人除いて(便利屋のショットガンの子。確かハルカちゃんって呼ばれていた)なっていることに首を傾げる。
まぁ、アルちゃんが言っていたように戦闘に入る直前仄めかしみたいのはしてたからわかる人にはわかるのかな。
「…………あなたも気づいていそうだけど?」
「んー、先生がシロコちゃんを怒った時の雰囲気がね。」
カヨコちゃんからそう指摘されたホシノちゃんがそう答える。
確かにそんなこともしたね。あれで直感的に感じたのかな。理性ではなく本能的に。
「あ、これ基本内緒ね。わたしって身なりは子供だから相手が油断してくれてると助かるからね。」
「えー!?言っておいてからそれは反則よぉ!?」
「そうだそうだー♪」
縛られてるアルちゃんとムツキちゃんから抗議の声が上がるが、悪ノリしているだけだねムツキちゃん。隠す気がないくらいにニマニマ笑ってるよ。
「ふぅ…………ちなみに聞きたいことを聞いたらわたしたちをどうする気?」
「え?普通に解放するけど?」
わたしの言葉に聞いてきたカヨコちゃんが驚いた反応を見せた。
「……………わたしたちがあなたのことを依頼主に報告する可能性もあるのに?」
「君たちの依頼主がどういう人物なのかは知らないけど、君は突然神様がいたって他人から聞かされて信じる?」
「…………ううん、信じないかな。」
「まぁそうだよね。世辞辛いけど、神様なんてそんなものさ。実際に見てみない限りはね。シスターとか神父とかそっち系の人間なら見に来るかもだけど。」
というかそういう人たちっているのかなぁ。
え?いるの?トリニティのシスターフッド?敬虔だねぇ、おおかたまだ子供だろうに。
……………シスターでも銃って同じように携帯してるのかな。
「さてと話を戻そっか。わたしが個人的に聞いておきたいのは色々あるけど、まずカタカタヘルメット団の子たちってどうしたの?傭兵雇うより彼女らと共闘した方が安上がりだったと思うけど。」
わたしの質問にアルちゃんは得意げな表情でだんまりを通す。
初めの方で依頼主の詳細は企業秘密とか言っていたから不義理を通さないためのものだろう。
便利屋って言ってるけど彼女が社長を自称しているように要は会社。そうである以上お互いの信頼のためにはそうするのが定石だろう。
とはいえ今生殺与奪の権利を握っているのがこちらだということに目をつぶればの話だが。
「……………ちなみに話さなかったら?」
わたしが意味深の表情でいることに何か感じたのかカヨコちゃんが確認するように聞いてきた。
「干してある君たちの服をもっかいびちゃびちゃにする。キヴォトスの人たちって耐久力あるから肉体的より精神的な方が良いかなって思ってね。最悪サイズが縮むかもね。」
「ちょっとぉ!?あのマント、わたしの一張羅なのよ!?」
「…………確かに割とそうされる方が意外とキツいかもしれない。」
わたしの発した言葉にアルちゃんの得意げな表情が固まり、一転して焦っているそれに変わる。
まぁそうならざるを得ないだろうね。だって彼女らほぼ一文無しっぽいし。今回の仕事に失敗した上に着れる服もなくなればそりゃひどいことになる。具体的には仕事にだいぶ支障が出る。仕事でも服装って大事だからね。依頼しに来たのにその相手がヘンテコな服装だったらまず正気かどうかを疑うものだ。我ながら結構あくどい。
「さてさて、このままだと変質者集団が出来上がるね?」
「せ、先生………言ってることが鬼以外の何物でもない………」
やだなー、他所様をどこぞの鬼巫女*2みたいにいうなんて。彼女なら相手をボロキレレベルでぼっこぼこにするだろうからこれでも優しい方よ。
「何、心配はしなくてもいいよ。わたしもそこまで鬼じゃないからね。答えてくれたら君たちの服には手出ししないことも約束するよ。流石に体操着で帰らせるのは忍びないからね。」
「……………一ついいかしら。」
む、何やらアルちゃんの雰囲気が変わった。さっきまで見せていた様子から一変して貫禄のある顔つきになった。
「その質問には答えるわ。でもそれ以上は依頼主との契約がある以上、いくら言われようとも口は割れないわ。それと返してもらうものだけど、わたし以外のみんなの服にしてちょうだい。」
「……………それだと君が笑いものにされるかもよ?」
「社長であるわたしならいくらでも。でもそれ以外の従業員の3人が笑われるのはわたしが許さないわ。」
アルちゃんの言葉に思わず目を見開いて驚いてしまう。
まっすぐとこちらを見る瞳には一切の恐れもない。
子供でありながらここまで貫禄ある雰囲気を見せつけられるのか。
「わかった。と言っても答えてくれたら普通に取っていって構わなかったんだけどねぇ。質とかに入れるにしても知り合いからぶんどったようなものはちょっと……………」
気まずそうに視線を逸らしながらアビドスのみんなの方を向くとわたしと同じ意見なのが無言で頷く彼女たちの様子があった。