あと若干独自解釈があります。
「さて、それじゃあやっちゃおうか、銀行強盗。」
「ん!ん!」
2の数字の青い目出し帽の上からでもわかるレベルで瞳を輝かせるシロコちゃん。
「うわー、ホントにやっちゃうんだ…………ていうか先生が言い出しっぺってどうなのよ。シロコ先輩が言い出すならともかく。」
「ハッハッ、前にも言ったけど、結局のところわたしは荒事になってくれた方が助かるのさ。色々面倒なこと考えなくてよくなるからね。なに、必要最低限の責任はこちらで取るとも。」
呆れ顔のセリカちゃんだが、彼女もシロコちゃんの被っているものと似たような赤色の目出し帽を被っていた。
そしてその目出し帽をわたしを除くその場にいる全員がかぶっていた。ヒフミちゃんも含めて。
「あのさヒフミちゃん、念の為もう一度聞くけど、ホントにいいのね?」
「まぁ悩みこそはしましたけど………皆さんには助けていただいた恩がありますので。」
厳密にいえばヒフミちゃんのかぶっているそれはさっきまで食べていたたい焼きの袋をそれっぽく穴をあけて5の数字を書いたすごく簡単なものだ。
爆風とか吹いてしまえばすぐ外れてしまうようなちゃちな作りだが、制服も特定されないようにシロコちゃんに頼んで擬装用の服を調達させたから、バレる可能性は高くはないだろう。
とはいえ、ヒフミちゃんは偶然とはいえ完全に無関係だ。できれば帰ってくれても良かったが…………ヒフミちゃんの好意を無下にするわけにはいかなかったのとホシノちゃんたちが受け入れるような様子を見せたことで堂々巡りになるだけだと思い、胸の内に抑えることにした。
「本当は先生の分も用意するべきだったんだろうけど、都合よくは手に入らなかった。ごめん。」
「気にしなくてもいいよ。正直わたしがついていっても割と足手まといになるかもだし。」
わたしの言葉にアビドスの面々の表情がそれはあり得ないというようなのを向けられているが、わたしがそう思ったのは主に二つ。
監視カメラとかのセキュリティを止めたとしても人の目線があることとわたし自身の身体能力がキヴォトスの子たちには及ばないことだ。
まぁ、前にも指摘されたがわたしの技は非常に目立つ。魔法なんておそらくランセレで呼び出されたの以外でこのキヴォトスではわたししか扱えない以上、どこかで魔法の存在がバレたとき、説明がつけられない現象はすべて自分と結び付けられかねない。ユウカちゃんからの警告を鑑みて、可能な限りのリスクは減らすべきだろう。
それと身体能力だが、実のところ魔法を取っ払ったわたしはただべらぼうに硬いだけの的だ。まぁ、それでいくつかの大会にはターゲット枠で出ているが………
それはさておき、少なくともわたしはシロコちゃんたちのような機敏な動きはできない。足が遅いのは時間が問われるこの状況では割と致命的になりかねない。
ゆえにわたしは今回はブラックマーケットからの脱出に徹する。具体的には追跡を振り切ったところでさっさとワープで離脱してしまう作戦だ。
「改めておさらいするけど、お目当ては集金確認の書類ね。それ以外、特に現金とかはなしだよ。」
「えっ!?それじゃあなんのために銀行を襲うのよ!?」
「向こうで取り扱っているのが基本後ろ暗いとはいえ今からやることは犯罪。そのお金でカイザーローンに払ったとしても向こうが善良な企業で通っている以上、ほぼほぼ自殺行為だと思うよ。もともとは自分たちのお金だろうし裏どりもしやすいだろうで向こうに正当性を与えかねない。最悪こっちがテロリスト扱いされてしまうかも。」
そうなってしまえばこっちの希望は本当に消え去ってしまう。テロリスト扱いされてしまえば、どこかで世間的に詳らかにする機会があったとしても勢いに影が差してしまう。
お金をふんだくる気のあったセリカちゃんには申し訳ないが、今回は自重してもらおう。
さて、あとはアロナちゃんに銀行のセキュリティをハッキングしてもらってと…………たぶんこっちの会話から察してはくれてるとおもうけど周りから怪しまれないようにするの大変だなぁ。
「そろそろ始めるよー、準備の方は大丈夫そう?」
『こちらピンクー、いつでもいいよー。』
『ん、ブルーも同じく』
『グリーンもOKです☆はじめての銀行強盗、がんばちゃいます!』
『レッド……で、いいのよね?とにかく用意はできてるわ。』
一応本名で呼び合うわけにもいかないため各々がかぶっている覆面の色をコードネームにしたが、よくよく考えてみたらこのやり方だと一個問題が起きてしまうことに今気づいた。
「………ヒフミちゃん、どうしようか?」
『どうしたらいいんでしょう……?』
そう、ヒフミちゃんのコードネームである。同じ色で決めてもいいけどその場合はブラウンとかになるのかな、袋の色的に。
『じゃあこれからヒフミちゃんは「ファウスト」で!よろしくリーダー!』
あらら、何か妙案はないかと考えていたらホシノちゃんが勝手に決められちゃったよ。しかもまるで関連のなさそうなの単語になってるよ。まぁ、ホシノちゃんが彼女のことをリーダーと称した通り、関連性がなさそうなワードを選ぶことでその人がリーダーっぽく見せられるのかもしれないが。
『え、えええッ!?わたしがリーダーなんですか!?』
「んー、ほかにいい名前も思い浮かばないし、いいんじゃない?ちょうど悪っぽいし。」
『そ、そんなぁ!?』
悲鳴を上げるヒフミちゃんを他所にアロナちゃんに建物内の電気を落とす合図を出す。すでに彼女からシステムの掌握が終わったことを聞いている。あとはわたしの指示一つで銀行全体がパニックになる。
『………ねぇ、先生一つ聞きたいんだけどさ。さっき先生が呼び出してくれた人ってホントに大丈夫なの?』
ふと、ホシノちゃんからそんな質問が飛んできた。いつも気の抜けた声と雰囲気な彼女だあ、時折見せる警戒心から本当の彼女の気質がそうではないことを察していた。
その気質がおそらく形となって今の質問が出たのだろう。
「大丈夫、彼はわたしの知り合いの中でも随一の絶望を見せ続けてきた男さ。人々はひとえに彼のことをずっとこう称えてきた。ラスボスってね。」
『………うへぇ、ラスボスなんてそんな大げさなことを。ホントに期待していいのかなぁ。』
「それは、ぜひ彼の戦いぶりをみてご堪能していただこうか。」
その言葉と共にわたしはアロナちゃんに停電の指示を飛ばし、作戦開始の合図を告げる。
さぁ、パーティーの始まりとしゃれ込もう!
『な、何ごとですか!?停電!?』
『ぱ、パソコンの電源も落ちてるじゃないか!』
停電と同時に監視カメラの主導権を奪い、管理している部屋と隔離し、状況の把握を困難にさせる。
停電の影響で中の様子は真っ暗だが、アロナちゃんが暗くても映像が見れるように補正をかけてくれているため、画面越しでも様子を見ることができる。
突然のことで銀行は予想通りパニックに陥ったのか慌てているのが見える。それと同時に入口が爆発と共に吹き飛ばされ、突入したシロコちゃんたちの銃撃で敬語のマーケットガードを一掃する。
『全員その場で伏せて!持っている武器も捨てて!』
『言うことを聞かないと痛い目にあいますよ☆』
『お、お願いしますから伏せてくださいね……ケガしちゃいけないので』
『ぎ、銀行強盗!?』
銀行に再び電気が灯り、現れたのは覆面を被った強盗団。ブラックマーケットでも相当な規模を持っているその城を襲撃に来るとは露にも思っていなかった様子を銀行員たちが見せる。
そして監視カメラから見えるシロコちゃんたちの様子を見守っているとどこかで聞いた気がする声が耳に入る。
『先生、どうやら銀行の中に便利屋の人たちがいるみたいです。』
アロナちゃんからの報告に監視カメラの映像に目を凝らしてみるとあの特徴的なマントを羽織っているアルちゃんの姿があった。
なんでこんなところにいるんだろう…………まぁ、彼女たち金欠だったみたいだし、お金でも借りに来たのかな………
それはともかく彼女の様子からこちらと敵対する意思はなさそうだし、無視しても大丈夫そうだ。
『監視カメラの資格、警備員の動向、銀行内の構造、すべて頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと。』
銀行員に詰め寄って持っていたバッグに集金確認の記録を入れるように要求するシロコちゃん。
その銀行員は慌てふためいた様子でこちらの要求通りバッグに詰めてくれているが────
(ありゃありゃ、あれどう見て現金まで一緒に詰めてくれちゃっているよ。)
助かりたいあまりの行動なのか、その銀行員はこちらの要求に反し、余計なものまで詰めている。
シロコちゃんもどうしたらいいのか迷っているのかちらちらと監視カメラの方に視線を向けている。
「最悪現金は捨てればいい話だからブルーはその銀行員が変なモノを入れないか注意して。」
『ん、了解』
シロコちゃんにそう指示して彼女たちの行動を見守る。さて、外部への警報システムもダウンさせているけどそれも時間の問題かなぁ。
『色々と余計なのはあるけど……とりあえず確保した。』
シロコちゃんのその報告と共にさっそうと逃走を開始する覆面強盗団。
さて、わたしも合流と脱出のために動くとするか。
「じゃ、悪いけど脱出のための露払いをお願いね。」
「や、奴らを捕らえろ!マーケットガードにも通報!一人も逃がすな!!」
シロコたちが去ったあとの銀行は阿鼻叫喚の嵐となっていた。遅れてなりだすけたたましい警報の音、ガチャガチャと金属がぶつかり合うような音を立てながら走っていくオートマタ、地響きを感じるほどの巨体の二足歩行兵器『ゴリアテ』
いささか五人ぽっちの強盗団相手には過剰とも思えるような戦力にほかの客はおびえた様子でその状況を見つめる。動じていないのは便利屋の面々くらいだろう。それでも目の前で送り込まれる戦力に渋い顔を浮かべていたが。
「……………」
そしてその戦力に物怖じする雰囲気を見せない人間が一人。
人知れず銀行の椅子に腰かけていた彼は立ち上がるとゆったりとした足取りで出入口に足を運ぶ。
(え!?だ、誰!?あ、あんな如何にもなハードボイルドのおじいさんいたかしら!?)
身なりは高価そうな黒いスーツに身を包んだ長身で白髪の老紳士。
しかし密かにアウトローというものに憧れているアルはその老人の放つオーラに圧倒に近い感覚を覚えていた。
静かに、それでいて堂々とした足取りにアルは既に心奪われていた。
自動ドアを潜り、銀行の外へと出た老人。
外では慌ただしい様子でマーケットガードたちが追撃の準備をしているが、出てきた老人に気づく様子はない。
「…………全く、この程度ですか。」
「ん?おいそこのジジイ、何見ていやがる撃たれたくなかったさっさと中に戻りな。」
気づいた一人がそう警告するが老人はかけている赤い丸眼鏡を上げるしぐさをするだけで一向に聞き入れる様子がない。
「おい!!聞いているのか!?見世物じゃないんだぞ!!」
「気にしないでくれたまえ、ただ権力に胡坐を搔いて足元を掬われているのを笑っていただけなのでね。」
「…………は?」
突然の襲撃、そしてこの後予想される上からの叱責で苛立ちが頂点に達していた彼女の沸点は非常に浅かった。
半ば反射的に手にした銃を構え、そのまま引き金を引いた。
本当はヘイローがないとかそもそも
「やれやれ…………あまり女子供を相手にしたくないのだがね。」
「な、なんだコイツ!?まさかさっき奴らの仲間か!?」
老人の横で仲間が倒れたことに動揺を隠せないマーケットガードたち。それもそのはず、倒れた彼女はその体が血のような深紅に染まっている。ついぞ見ないはずの死の色。それにマーケットガードたちは一瞬で恐怖に支配される。
「あいにくとさっきの強盗のことは欠片も………だが君たちを止める事を頼まれたのでね。」
周囲が銃を構えたのを見て老人も自身の武器を構える。懐から取り出したのはハートやダイヤ、四種類のスートが刻まれた52枚のトランプ。
ランセレで彼が出た瞬間アルちゃんの好みだよなってなった