『……銀行からの追手、来ませんね〜』
銀行強盗の後、使われていない高架の上を爆走するシロコちゃんたち。
アヤネちゃんのドローンの映像とシッテムの箱をリンクさせてもらうことでわたしも移動している彼女たちの様子を見れるようにした。
ただ一同の表情はあんな派手に事件を起こしたのに銀行からの追手が全くないことに困惑している様子だ。
「言ったでしょ?彼なら大丈夫だってさ。」
『はい、先生の言う通りです。追手と見られる戦力はゴリアテなどマーケットガード、多数確認していますが、その全てが銀行付近から離れていません。』
だろうね、遠目から見てたがたかだか大きいロボット一台出してきた程度で彼を止められるはずない。
それに相性も悪い。彼に過剰なダメージになる武装は御法度だ。まぁ、からくりがわかったところでだが。
『ほ、ホントにあのおじいちゃんが1人で止めちゃってるわけ!?』
『うへぇー…………先生、あの人ってどっちかと言うと暗殺とかのそっち系のタイプの人だよね?』
驚いているセリカちゃんをよそに彼のことを言い当ててくる。
やっぱりそれを見抜いてくるか。流石だねぇ、ホシノちゃん。
『先生、あの人は一体誰?只者じゃないってことだけはわかったけど。』
そうだね、一応強盗の直前に説明のための顔合わせはあったとはいえ彼について話した方がいいか。
「ホシノちゃんの言うとおりだよ。彼はカード暗殺術『カーネフェル』の使い手。」
『か、カードを使った暗殺術、ですか…………!?』
まるで想像がつかないといった様子の一同。うーん、割とうちだとメジャーな方なんだけどなぁ。そんなに驚くことかな。
「そして数あるその使い手たちの中でも彼は唯一、『神』の名前を冠する者。」
そんな使い手が何人もいるんだ、とかいうセリカちゃんの声が聞こえたが気にしない。
「彼の名は──────ゴッドワルド」
「
老人───ゴッドワルドが放った一枚のトランプが回転しながら空を漂う。
目の前で起こる異常な現象にマーケットガードたちは一瞬動きが固まるが、比較的不詳の事態にはなれているのかすぐに意識を戻す。
「
しかしその瞬間、老人は1人のマーケットガードの背後に回り込んでいた。
「な─────」
「
それに気づき、振り向くと同時にトリガーを引こうとしたが、それよりも早くカードが切られ、マーケットガードは点滅しているような赤い光に包まれながら大きく吹っ飛ばされる。
「こ、コイツ………トランプなんざふざけたもんでどうやって戦ってんだ!?」
「どのみち相手は1人だ囲んでやっちまえ!!」
『お、おい!?我々の任務は強盗団の────』
「
ゴリアテのパイロットの静止も届かず、目の前の敵の排除に思考が塗り固まるマーケットガードたち。
自身を取り囲み始める彼女らを冷ややかな目で見据えながらゴッドワルドは手にしたカードを投げつける。
投げつけられた2枚のカードはその素材がどこにでもある紙であるにも関わらず、まっすぐな軌道で風を切り裂き、マーケットガードたちが持っていた銃を切断する。
同時に中の弾丸が暴発。派手な破裂音を響かせながら辺りに銃弾をばら撒く。
「ふっ!」
銃弾が飛び交う中、ゴッドワルドはおよそ老人とは思えない軽快な動きで距離を詰める。標的は不幸にも暴発した銃弾を喰らい、のけぞってしまった1人。
その1人をすれ違いざまに切り付け、
ただ、どうやっても1人ずつ仕留めるのが限界と見たのか彼の間合いから離れた位置にいたマーケットガードたちが構えるが、別方向から飛んできた
『くっ…………好き勝手を…………!!』
次々と倒れ伏していくマーケットガードたちを見て、内心毒付いたゴリアテのパイロット。
これ以上の損耗は逃げた強盗団を追えなくなると判断し、ついにその巨体を起こし、両腕部のガトリング砲を向ける。
重厚な駆動音を響かせながら向けられるその銃口はノノミの持つそれよりも遥かに巨大。その威力も計り知れないだろう。
「ほぅ…………味方諸共ですか。」
自身に向けて放たれた銃弾を回転しながらのステップで巧みに躱しているゴッドワルドにゴリアテのガトリングが火を吹く。
「手札は揃った─────では、ショーダウンだ。」
ゴッドワルドは手にしていたトランプをばら撒くように落とす。
ヒラヒラと風に舞うトランプ。その数字は10・J・Q・K、そして
そのペアが暗示するは「最強」
「
『ウワァァァッ!?!?』
『ッ!?』
ゴリアテのパイロットは自分の目の前で起こった光景が理解できなかった。
老人がトランプを放ったと思った次の瞬間、老人の目の前でトランプで円を描き、周囲にいたマーケットガードたちを薙ぎ倒していた。
パイロットの思考が困惑と恐怖で染め上げられる。種明かしをすれば彼はガトリングの弾を弾き飛ばし、それに自身の即死を乗せただけだが、そこに至るまでの経験はパイロットにはなかった。
「『カーネフェル』、ご堪能いただけたかな?」
『く、来るなぁッ!!?』
マーケットガードたちは全滅し、目の前の怪物とのタイマン。完全に恐怖に飲み込まれたパイロットは金切り声にも近い絶叫と共にゴリアテ頭部のキャノン砲を発射、着弾と同時に凄まじい爆発音と衝撃波を生み出す。
『ハァ…………ハァ…………やった、んだよな。』
噴き上げる爆煙を見ながらそう言葉を漏らす。
あの老人は異様に強かったが、ヘイローもない以上ただの人間だ。キャノン砲をまともに喰らえば跡形も残らないだろう。
「───どうやら引き際を見誤ったようですね。」
爆煙の中から聞こえるはずのない男の声が聞こえた。咄嗟に操縦桿を握り直すが、それよりも先に爆煙から出てきた黒い手に掴まれ、そのまま勢いよくビルに叩きつけられる。
(あ、ありえない!?ゴリアテの巨体をそんな簡単に引き摺るなんて!?)
無理矢理叩きつけられたことで肺の中の空気が吐き出され、意識が暗転しかけるが、かろうじて持ち直す。
しかし、戻ってきた視界が捉えたのはゴリアテの眼前で見せつけるようにトランプを構えたゴッドワルドの姿が。
「見せてあげよう─────」
「カーネフェルの真髄を!!」
ゴリアテに向かってトランプを投擲する。なんの変哲のない紙のトランプだが、投げられたそれはゴリアテの装甲をまるで紙切れのように易々と切り付ける。
やたら無闇に見えるそれだが、当たるたびにゴリアテに痛々しい傷を残し、四肢がもぎ取っていく。
「では、さようなら」
計52枚のトランプの嵐。四肢を削ぎ落とされ、ズタボロとなったゴリアテにゴッドワルドはトドメとして一枚のカードを送った。
その絵柄は鎌を持った死神、ワイルドカード『JOKER』
死神の鎌はコックピットのガラスを紙切れのように切り裂き、その先にいたパイロットの額に刺さり、ゴリアテは完全に沈黙した。
そして周囲に漂う沈黙。一瞬吹いた風に何枚かのカードが舞い上がり、破壊されたゴリアテに張り付いた。
「おやおや、デッドマンズハンドとは運のない。」
黒のエースと8のツーペア。死人が持っていたというハンドにゴッドワルドは帽子を被りながら最後に相手の運のなさを思うのだった。
「さて、この一介の老木に何か御用かな?お嬢さん。」
「──────」
ゴッドワルドが振り向いた先、銀行の入り口前に呆然とした立ち尽くしたアルがいた。
「お嬢さん?」
「か──────」
ゴッドワルドがもう一度声をかけるとプルプルと体を震わせながら何かを言いかける。
「カッコいい────!!!!」
「ふむ、カッコいい、ですか。」
何を言い出すかと思えば自身を称賛する声と瞳を文字通り輝かせているような嬉々とした表情に思わず微妙な顔を浮かべるゴッドワルド。
「あの、名前、教えてもらえないかしら!?さっきの強盗団もアウトローの極みだったけど、あなたのそのハードボイルドな立ち振る舞い、そしてあのスタイリッシュなカード捌き!!まさに私が目指す姿そのものだわ!!どうしたらそのハードボイルドな雰囲気に慣れるのかしら!!」
「称賛の言葉はありがたいが………お嬢さん、私の持つ技の元は人を殺めるためのもの。おいそれとそのような言葉を送られるにはふさわしくない。」
「うぇ!?ひ、人を………そ、それは、そう、よね。気を悪くさせたのならごめんなさい。でも────」
「そう焦る必要はない。お嬢さんにそのつもりがなかったのは理解の上。強いて言うなら、私の心構えのようなものです。」
失礼をしたと思い、オロオロしだすアルを宥め、帽子を被り直すゴッドワルド。
「さて、改めてお嬢さん、ハードボイルドというものに憧れを持っているようですがそもそもそれはあくまでその人間の生き方を指すもの。無論、その人間個人を形容する意味があることを知ってはいますが、決してなるものではありません。どちらかといえばなってしまう、というのが正しい認識でしょう。」
「なるほど、つまり周りからの目線がその人を評価づけるということね!」
「…………お嬢さんが目指しているものがどのような姿なのかは存じ上げませんが、私を見て理想と重ねたと言うのであれば、信頼を大事にすべきでしょう。」
「…………それは信頼されるということなの?依頼を完遂したりとか。」
「信頼する、の両方です。依頼をする・されるの関係であろうと、そこに信頼がなければその関係を続けるべきではありません。」
「ッ………………」
ゴッドワルドの言葉に心当たりがあるのか苦虫をを噛み潰したような表情を浮かべるアル。
そもそも彼女がわざわざ犯罪の温床でもあるブラックマーケットの闇銀行に足を運んだのもその心当たりにあった。
彼女たち便利屋68にアビドスの襲撃とカタカタヘルメット団の制圧を依頼してきたのはカイザーコーポレーションだ。
大手からの依頼に自身の目指す先への大きな躍進になるといつもよりかなり奮発して万全の準備をしたが、目の前に立ちはだかった
それに関しては彼女自身はあまり気にしてはいない。向こうも必死なのだから抗ってきて当然。
まぁ、その後に金欠だったのを見透かされて数日分くらいのご飯をいただいたことに関しては彼女自身のプライド的によろしくなかったが。
ただ、依頼が完遂されないことはカイザーコーポレーション側からすればよろしくない。
事実、あの襲撃の後、カイザーコーポレーションから電話があり、次の襲撃計画についての詳細を聞いてきた。
アル自身、なぜカイザーコーポレーションがアビドスのことに躍起なっているのか理解はしていない。どんな依頼でさえ、明日の生活すら自分たちは怪しいのだから熟さなければ生活できない。
しかしそのためにさらに金を浪費するようでは本末転倒。戦いの中で目の前の老人が言っていた引き際、というのも考えなければならないのかもしれない。
何より、自身のせいで慕ってくれている社員たちを路頭に迷わすのは社長として絶対に避けなくてはならないことだ。
「さて、長話が過ぎたかな。先ほどの強盗を追うのか分かりませんが、お嬢さんもここを離れた方がいいでしょう。いらぬ誤解を解くことほど時間を浪費するものはありませんからね。」
それだけアルに言うと踵を返し、その場から立ち去り始めるゴッドワルド。
足取りは悠々としたものだが、さっきの戦いぶりを見れば、遅れを取ることは万に一つもないだろう。
「おっと、私としたことが。そういえば名前を聞かれていましたね。あまり知れ渡るのはよくはありませんが…………ランセレに選ばせている以上、そうそう愛されなければ再びこのキヴォトスに現れることはない、と思っておきましょうか。」
「私の名前はゴッドワルド。ただのしがない隠居人ですよ。ではお嬢さん、ごきげんよう。」
アルに帽子を軽く取って挨拶をしたゴッドワルドはまるで役目を終えたというように姿を消した。
「ゴッドワルド…………確か先生も神って言っていたけど…………まさかあの人と同じくらいの強さを持っていたのかしら…………」
神の名が入っていることに合点が言ったような様子で周囲を見渡すアル。
そこにあるのは赤黒い光に包まれて倒れ伏しているマーケットガードたち。
まるで血に塗れているような光景はまさに死屍累々というのが正しいか。
「社長、さっきの人はもしかして…………」
立ち尽くしているアルにカヨコたちが駆け寄る。
アル、彼女たちが来たことに気づくと体裁を整えるように一度大きく息をついた。
「ええ、おそらく先生の知り合いだと思うわ。でも、まさか先生があの強盗団と一緒にあんなハードボイルドな用心棒を従えているなんて…………」
「…………アルちゃん、もしかしてさっき強盗団の人たち、わからなかったの?」
「?…………なんのことかしら………ともかく今から急いでさっきの強盗団を追うわよ!」
ムツキの質問に首を傾げるアルだったが、まるで時間が惜しいというように逃げた強盗団の後を追うために走り出した。
「……………」
「……………」
そんな彼女を見て、カヨコとムツキはお互いの顔を見合わせたが、それぞれ呆れたように肩をすくめたり、面白いものを見つけたかのような笑みを浮かべるのだった。
素人キャラ解説
ゴッドワルド
SAWSARA氏製
きぼぜつではもはや常連と言っても過言ではないKOFのオズワルド改変
即死はもちろんのこと、相手のフライングを許さないどころかフライング誘発とかいうことをしてくるらしい。
耐性面でもダメキャン、即死耐性を持っているため、もし相対した時は適度に落としてダメージをリセットしよう。
希望はもちろん、絶望ですら瞬殺していく姿はまさにラスボス。
出場大会
とっても多い(小並感)