「おつかれー、どうだった?銀行強盗。」
「ん、大満足。でもごめん。先生に言われたのに持ってきちゃった。」
合流ポイントでシロコちゃんたちと合流し、ひとまずの成功を祝う。
ていうかシロコちゃん、まだ目出し帽被ってるんだけど…………
「シロコちゃーん?いくらしっくりくるからってそろそろ外したらー?それはそれで目立つよー?」
ホシノちゃんからそう指摘され、今気づいたかのように目出し帽を外した。
どうやら今の今まで気づいてなかったようだ。それだけ夢中になっていたということだろうか。
「ま、過ぎたことはしょうがないさ。とりあえず書類は取ってきたんでしょ?」
シロコちゃんからもらった鞄を開けると目的の書類のほかに大量の現金がこれでもかと敷き詰められていた。
「おお、これは凄い。さすが一流企業、とは言ったものかね。」
「これで借金も返せたら結構楽になるのに…………」
「ま、楽になるのは事実だろうね。このお金を利息に丸々回せば君たちが稼いできた分を全部借金に充てがうことができるわけだ。でもこれがなくなったらどうする?まだ銀行でも襲う?」
「え、そ、それは……………」
「ん、私はいくらでも大歓迎。」
「話の腰を折らないの…………要はこんなことは今回こっきりにしたいって話さ。先生として呼ばれてしまっている以上、生徒が犯罪に手を染めるのはあまり頂けないからね。」
シロコちゃんに茶々を入れられてしまったがそういうことだ。やる前に責任は取ると言ったものの、それにかこつけて何度も同じことをやられるのは正直困る。
どんなことにも限度があるからね。それに、こういうのは一度ハマると際限がなくなる。
ブラックマーケットで会った不良たちがその典型だ。誰かを攫って金銭要求なんて普通の倫理観を持ってたらやらない。だけど彼女たちはさも当然の選択だと言うようにヒフミちゃんをターゲットにしようとした。
おそらくそういう犯罪行為を繰り返してきたのだろう。だから次第に忌避感が消え失せ、それが当たり前となってしまった。
「うんうん、おじさんも先生と同じ意見だねぇ。可愛い後輩がそうなっちゃうのはいやだなー。というか手段を選ばなければノノミちゃんのゴールドカードを頼っていたはず。」
「……………もしかしなくてもノノミちゃんって結構いいところのお嬢様?」
「あはは…………まぁ、そんな話題は置いておいて、実際一度はそうしようとは提案したんですけど、ホシノ先輩に反対されてしまって………」
「というか、ホシノ先輩なら先生が言い出さなくても元々反対するだろうとは思ってた。」
「さすがシロコちゃん。私のこと、わかってるねー。」
「ホシノ先輩まで……………わかった。みんながそこまで言うのならやめておくわ。実際、私もそこまで犯罪を繰り返したいわけじゃないし。」
ホシノちゃんやシロコちゃんが奪った金を充てがうことに反対する意思を示すと、セリカちゃんも引き下がる様子を見せてくれる。
「ごめんね、借金を少しでも返したいセリカちゃんの気持ちはわかるけど、手段を選ばずにやるやり方はヘルメット団や君たちをアビドスから追い出そうとする連中と同じになってしまう。悪い事はどこまで行っても悪い事なのさ。」
さて、あとはこのお金をどうしようかな…………適当に消し飛ばそうかな。
とりあえず書類を引っこ抜いてっと……………
『待ってください!何者かがそちらへ接近しています!』
「追手のマーケットガード!?」
『いえ、敵意はないみたいですけど…………調べますね。』
「…………とりあえずみんな目出し帽被り直してて。」
アヤネちゃんからの報告に思わず首を傾げる。
追ってきているのに敵意がないとはね。となるとゴッドワルドはその人間を害がないから見逃したのかな?
彼がしくじるとは思えないし、多分そういうことだろう。
「え!?でもそれじゃあ先生が…………!!」
「言ったでしょ?責任は取るって。ほらさっさと被った被った。私はともかく君たちの顔が割れる方が不味いから。」
『あれは……べ、便利屋のアルさん!?』
悲鳴のような声を挙げるヒフミちゃんにそう促しているとアヤネちゃんが追ってきている相手がアルちゃんであることを知らせる。
んー、やっぱりあの子はマント羽織っているから恰好がわかりやすい。遠目からでもわかるレベルてヒイコラヒイコラと息が上がっているね。
「ハァ、ハァ…………や、やっぱり先生だったのね…………!!」
「おや、よくわかったね。一応私自身は現場に顔を見せていないんだけど。」
「ええ、そうでしょう………ってそうじゃなくて、先生!!あんなハードボイルドな方と知り合いなら紹介してくれてもいいんじゃないのかしら!?」
「知り合いなのはそうだけど、彼が出てくれるかは完全にランセレの気分だしなぁ。」
どうやらゴッドワルドの雰囲気とかが気に入ってしまったらしい。意外とおじさま趣味………いや、違うか。単純にかっこいいのが好きなのだろう。
「ランセレ…………?まぁ、さっきの彼もそうだけど、先生も隅に置けないわね。まさか人知れず暗躍する部隊を配下にしているなんて。」
「ん?んー………………そうでしょ?」
どうにも勘違いしている様子なアルちゃんの言葉に思わず首を傾げたが、みんなのことがバレてないのならそれはそれで好都合だと思い、それに乗っかることにした。
「さっきのあなたたちの銀行の襲撃、見せてもらったわ……。ブラックマーケットの銀行をものの五分で攻略して見事に撤収……稀に見るアウトローっぷりだったわ。」
あー……アルちゃんの人となりがわかった気がする。悪いことに脳を焼かれてる根が善良な子だ。
ちらりとみんなの様子を見てみるが、揃って目出し帽から見える目は微妙なものを浮かべている。
アルちゃんが見せる純粋な称賛の目線が向けられる理由がわからないのだろう。
「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことができるなんて……感動的というか。わ、私も頑張るわ! 法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」
銀行強盗というめったに見られない悪いことを目の当たりにしたことで興奮が収まらない様子のアルちゃん。
何やら所信表明のようなことをしてくれちゃっているが、どうやって切り上げようか。
「そ、そういうことだから……な、名前を教えて!」
「な、名前……?」
「その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょ?正式な名称じゃなくてもいいから……私が今日の雄姿を心に深く刻んでおけるように!」
「うへぇ……先生、どうしようっか?」
「うーん、正直どっちでもいいから任せるよ。」
「……はいっ!おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」
とりあえず満足したら引き下がってくれると判断してホシノちゃんにそう答えたが、直後のノノミちゃんが挙げた大きな声になんとなく嫌な予感を感じ取る。
「私たちは、人呼んで……覆面水着団!」
「うっわ…………」
思わず後悔してしまった。あまりにも変質者としか捉えられないその名称にわたしはたまらず天を仰ぎ、表情を隠すように帽子を顔の上に乗せる。
いやいや、流石のアルちゃんもそんな奇抜な名前はひいちゃうって。というかどこから出てきたの水着要素。
「……覆面水着団!? や、ヤバい……!! 超クール!! カッコ良すぎるわ!」
「嘘でしょ………」
なんでそんな感想が出るのかなぁ………
アルちゃんの反応に帽子で隠した表情の下で遠い目を浮かべる。
困った。どっちでもいいと言った手前、止めることもままならない。
そのあとも悪ノリのようなものが続き、わたしの配下ということになってしまった覆面水着団は正装がスクール水着で普段はアイドル、夜には悪人を倒す正義の怪盗に変身するとかいうHIGE*1とおんなじレベルのトンチキ集団が出来上がってしまった。
「……何してるの、あの子たち……」
「わー、アルちゃんドはまりしちゃってるじゃん。特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」
半ば激流に身を任せてどうかしているように呆然としていると後から追ってきていたのかカヨコちゃんたちの姿が目に入る。
あ、そうだ。
「…………アルちゃん、これ上げるよ。君たちの方が必要でしょ?」
そういって処分しようとしたバッグをアルちゃんの手元にワープさせる。
よし、これでいいや。やっぱりお金は使って経済回すのが一番だよ。
「せ、先生!?これは一体───」
突然の贈り物に動揺している間にわたしは覆面水着団の面々を伴ってワープでその場をあとにした。
「いや~、やっぱり先生のそれって便利だねぇ。」
「ほ、ホントに一瞬でブラックマーケットから脱出を……先生っていったい……」
ワープを使ってブラックマーケットからアビドス高校の前まで転移したが、初めてのワープにヒフミちゃんはびっくりしている様子だ。
「魔法が使えるだけの先生さ。ま、それはそれとしてさっさと書類確認するよ。よかったらヒフミちゃんももらってく?一応君たちの生徒会が目を光らせてる連中の不正の一端が見れると思うけど。」
さてさて、一体どんな真っ黒なことが書かれているのか………まぁ、わたし書類仕事に慣れていないから基本アヤネちゃんが見ることになるだろうけどね!!
カオスの権化
たいていコイツが出てくる試合は画面がよくわからなくなる。ちなみにこんなだが嫁さん持ちらしい。
嫁もおなじくらいのカオスだが。