「びっ───くりしたぁ…………」
炸裂した衝撃音でキーンと鳴っている耳と立ち昇る爆煙で確保できない視界をどうにかしながら巻き込まれたであろう大将たちの安否を確認する。
幸い爆煙が晴れてきたからかすぐに起き上がってくるみんなの様子を確認できた。
よかった、わたしが咄嗟に魔法陣を天井付近に展開させたから突然のことに戸惑っているようだが大丈夫そうだ。
しかし────
「…………見誤ったか。」
歯噛みするような顔を浮かべながら
暖かい照明を照らしていたお店の天井がさっきの砲撃らしき爆発で物の見事に吹き飛んでいる。
しかもヘルメット団のものより破壊力が桁違いだったのか、わたしが立っている周辺や床はアロナちゃんのバリアで無事でも壁とかも崩れていたりと酷い有様。店にとって生命線であるキッチンも全損とは言わないが調理器具は床一面にぶちまかれ、スープの入っていた鍋が転がっていた。
建物の損壊具合としては全壊、ほぼそれに近い有様だった。
「アロナちゃん、今の砲撃は?」
『3キロ地点に中隊規模の…………えっと、ざっくり100後半の生徒の集団があります。所属は先ほどの砲撃が50mm迫撃砲であること鑑みて、ゲヘナ学園の風紀委員会です。』
「ゲヘナって確か……………」
気持ちを切り替えるようにアロナちゃんに砲撃位置の確認をさせる。
返ってきた答えはゲヘナ学園の風紀委員会。
確か、アルちゃんがいるところの学校だね。
そこで彼女たちは指名手配されていたはず…………え、ちょっと待って。
まさか彼女たちを追ってここまでやってきたの!?わざわざアビドス自治区まで!?
っていうかそもそも個人的ならともかく組織が大々的に他の学校の自治区に入ってくるのってほぼほぼ侵犯行為じゃなかったっけ!?
「大将!ちょっと面倒くさいことになってきた!どこかに避難できる場所はある!?」
「近くにシェルターがあるが…………先生は?」
「少し問いたださないといけないことがある。だから、行って。ここは
「先生の責任じゃねぇさ。守ろうとしてくれただけでもありがたいもんだ。」
そう言って店長は崩れかけた店内から足早と避難していった。
自分の店が破壊されたというのに狼狽した様子を見せない足取りは逞しいものだ。
そんな時
『先生!大変です!柴関ラーメンで爆発が────』
「うん、知ってる。ちょうど現場にいるからね。お店はだいぶ壊されてしまったけど大将は無事でもう避難してくれてるから心配しなくていいよ。」
電話の相手であるアヤネちゃんにそう矢継ぎ早に伝えると突然の情報に少し戸惑ったようだったがすぐに安心したような息遣いが聞こえてくる。
「ただ今回は相手が大問題。どうやらゲヘナの風紀委員会が実行犯みたいなんだ。」
『げ、ゲヘナの風紀委員会ですか!?どうしてアビドス自治区に!?』
アヤネちゃんの反応からゲヘナが事前に自治区内に入ることをアビドスに申告していた訳ではなそうだ。
とりあえずわたしは便利屋と一緒にいることと、可能性の一つとして指名手配されている彼女たちを追ってきたのかもしれないということを伝える。
『なるほど…………わかりました。しかし、このままでは私たちが向かったところで外交問題になりかねません。明らかに侵犯行為ではありますが…………』
「うん、最悪力にモノを言わされかねない。風紀と銘打ってはいるからそんなに過激な行動には移らないと思う。だけど到着しても指示があるまでは一旦静観を決め込んで欲しい。火蓋を切るとしても判断が早すぎる。」
『それは…………いえ、先生はかなりお強いので大丈夫でしょう。了解しました。ですがこちらでも一つ問題が…………ホシノ先輩と連絡がつかないんです。』
「なんだって?」
ホシノちゃんと連絡がつかないとな?
どうにも朝はノノミちゃんと一緒にいたらしいが、その後オフだと行ってどこかへ向かったっきり連絡がつかないらしい。
「わかった。とりあえずホシノちゃん抜きの前提で行動して。最悪そのまま戦闘に入ることも頭に入れておいて。あの子がいつも前衛張ってたから余計にこちらは脆いはずだろうから戦う時は注意も忘れずに。」
最後にアヤネちゃんに形態の通話を入れたままにしておくことをお願いし、袂に入れなおす。
「便利屋のみんなは!?大丈夫!?」
「え、ええ………先生が防いでくれてたからちょっとススに塗れた程度………」
「どうやらさっきの砲撃、君たちのところの風紀委員会のものらしいんだけど何かそうさせるだけのことを最近しでかした?」
起き上がったアルちゃんたちに特にこれといったケガはない。
が、わたしがそう聞いてみると途端に便利屋四人の表情が険しいものに変わる。
「え!?風紀委員会が!?」
「ここまで追ってくるなんて………早く隠れないと!」
「うーん、とりあえずそんなことはしてないとだけは。そもそも他校の自治区まで出張ってくるなんて相当な理由がないとやらないと思うよ。」
「ぜ、全員吹き飛ばせばいいんですね!!」
「相当な理由ねぇ………」
顔を蒼くしながらもガンギマリな表情しているハルカちゃんを置いておいて、とりあえず便利屋が目的ではなさそうと判断し、ムツキちゃんが言った相当な理由を考えようとしたが、情報が少ない。
とりあえずこのままだと第二射が飛んでくるかもしれないし、これ以上大将のお店が破壊される前に打って出た方が良いかもしれない。アロナちゃんにも先んじて通信を盗み聞きさせておこう。
『はい!!任せてください!!』
ホログラム状態で笑顔を浮かべてシッテムの箱に戻ってから十数秒。
再び出てきたと共に盗み聞きを成立させてきたことを報告してくれる。
『ターゲット、命中しました』
『よし。歩兵、第2小隊まで突入』
『……イオリ、便利屋が反抗してきた場合はどうします?』
『どうするも何も、捕まえるために来てるんだ。公務の執行を妨害する輩は全員敵だ』
『ならば、おとなしくしていてもらいたいものですね……しかしアビドスへこちらの事情を説明するのが先かと……』
『説明? 必要か、それ?』
うーん?聞こえてきた声に聞き覚えが………チナツちゃんかこれ。あと誰かと一緒にいるみたいだけどとりあえずどうやら風紀委員会は完全に便利屋を目標にしているみたい。でもなぁ、他校の自治区は言い換えれば他国の領土。彼女らのやっていることは自国の指名手配犯が他の国に逃げたからその国に軍隊送っているのと大差ない。
要は理由にしては弱いのだ。それにしてもいくらアビドスの勢力が雀の涙とはいえ他国は他国。連絡もなしに突然自分たちの領土に侵攻してきたとなればたまったものではない。
正当性ではこちらに利がある。だけど、なーんか嫌な予感がするんだよねぇ。
脳裏に浮かぶのは柴大将が見せていた表情。もしかしたら事態は既にわたしが思っているより取り返しのつかないところまで進んでいるのかもしれない。
「便利屋のみんなも避難する感じ?なら煙幕に紛れ込める今の内が一番だと思うよ。」
「待って、先生。まさか残る気?」
「そりゃあね。個人ならまだしも他校の自治区に堂々と組織でやってくるなんて相当な大事だからね。その真意を探るためにも彼女らを問い質す必要がある。それにこれは私情だけど、知り合いの店を壊されて実はちょっと腹が立っているんだ。その落とし前、とまでは言わないけどすこーしバチを食らわせてやろうかなって。」
「…………風紀委員会にはヒナ、空崎ヒナが、いや、先生くらいの実力なら大丈夫なのかな……」
「誰だかは知らないけど、やられっぱなしは性に合わないからね。」
「───そう!!それよ!!」
残ろうとするわたしに戸惑う表情をカヨコちゃんが見せていると、突然アルちゃんの声が響く。
思わず驚いて彼女の方を見ると、風紀委員会が来たと聞いた途端に白目をむいていた顔が急に目覚めたようにイキイキとした表情を見せていた。
「やられっぱなしじゃ性に合わないのよ!!口座を凍結されたり、仕事の途中で邪魔をされたり、挙句の果てにお気に入りのお店まで破壊されて、こんな扱いをされていつまでも我慢できるはずがないのよ!!あの生意気な風紀委員会に一発くらいいれてやらないと気が済まないわ!!」
「えっと、とりあえず手伝ってくれるってことでいいのかな?」
「ええ、もちろんよ…………で、でも申し訳ないけどヒナが来たら撤退させて……流石にアイツは無理……」
「締まらないなぁ………まぁ、いいか。助かるよ。」
コロコロと表情が切り替わるアルちゃんに苦笑いを浮かべながらわたしは便利屋と作戦内容を確認する。
目的は風紀委員会の無力化。できることならアビドスのみんなが来る前に事態を進めておきたいけど………
ここは便利屋の子たちと───もう一手打っておこうか。
「さて、便利屋のみんな。一つギャンブルに興じる気はある?」
「へ?ギャンブル?」
アルちゃんの反応を他所にわたしはカードを取り出す。
その瞬間、わたしの背後に巨大なポートレートが現れ、電子音と共にルーレットが回り始める。
「君たち、ゴッドワルドに会ったでしょ?彼は元々わたしがいた世界にいた一人でね。このカードを使うとこんな感じにルーレットが始まって、選ばれた一人がここに召喚される。誰が来ても戦力になるのは間違いないけど、ちょっとはずれがあるのが難点でね。」
「………ちょっと急展開でついていけないけど、外れると?」
「この場にいるもれなく全員が臨死体験に近いものを受けるだろうね。他ならないわたしも。基本わたしより強いし、そのはずれの奴ら。」
「えー?面白そうだけどちょっと博打がすぎない?どうするよアルちゃん?」
「…………もしかしたらこの前の彼みたいな人にも会えるってことよね?」
「まぁ、ゴッドワルドのほかにも何人か思い浮かぶよ。彼らが選ばれるかはわからないけど。」
「………ええ、引かせてもらおうじゃない!」
アルちゃんの答えにカヨコちゃんは頭を抱え、ムツキちゃんは完全に面白がっているように笑い、ハルカちゃんは崇拝に近い雰囲気で見つめる。
そんな三者三様の反応の中、わたしはランセレを止めた。
さてリドミリドミっと……………最近リドミを片手間に書くことが多くなってきた………