「準備は良さそう?」
「ええ!もちろんよ!!」
わたしの確認にアルちゃんが威勢よくそう答える。
他の3人もやる気が満ち溢れているようでそこにはさっきまで見せていた焦りは少しも感じられない。
「そっちもよろしくね。」
「フッ、任せてくれ。呼ばれた以上はそれ相応の働きはすることは約束しよう。」
爆発の粉塵で隠れて見えないがその先にいる彼女からの返答もくるとわたしたちは一歩前へ躍り出る。
さて、多分煙からは出たと思うし、向こうからもこっちの姿が見えると思うけど……………おっと、帽子にススがついてる。
『……ちょ、ちょっと待ってください。イオリ。便利屋68側に民間人が映りました。確認中ですので、お待ちください。』
おっ、チナツちゃんが気づいたようだ。まぁ、わたしって帽子がトレードマークみたいな感じがあるから遠目からじゃわからないか。
わたしはススを払った帽子を見て満足気にすると被り直した。
『…………なんだあの帽子?目玉みたいなのがついてるへんな帽子だな。』
へぇ、言ってくれるじゃないか。それウチの変なTシャツ着てる地球意思様*1の前で言うと文字通りの天罰もんだからね?
『まさか………シャーレの諏訪子先生!?』
『ん? シャーレ?なんだそれ?』
「あーあー、警告ー警告ー。そこの風紀委員会、今すぐに武装解除して投降されたしー。」
『せ、先生!?この回線は風紀委員会の………!!?』
遊び半分でチナツちゃんの通信機にそう呼びかけてみると鳩が豆鉄砲を喰らったかのような反応が返ってくる。
「チナツちゃん久しぶりー。せっかく会ったんだからお話しをと洒落込みたいところだけど、できれば帰ってくれないかなー。君たちがどういう認識でいるのかわかんないけどここ他校の自治区だよ?」
『それは…………先生の後ろにいる便利屋の4人を引き渡してもらえれば我々としての目的が達成されますので…………』
「うーん、じゃあダメかなぁ。自治区内での犯罪集団の取り扱いはその自治区の生徒会に一任されてるからねー。ここにいる以上管轄はアビドスにあるってことだ。」
「え!?先生、まさか私たちのこと突き出したりしないわよね………!?」
隣で聞いてたアルちゃんが白目を剥いた表情で聞いてくるが、そんなことはしないと示すようにわたしは手を横に振りながらチナツちゃんを問い詰める。
「だから、君たちがやってきたのって、ホントに便利屋が目的なの?」
『…………………』
わたしの質問にチナツちゃんは何も答えない。
顔を見られない以上決めつけることはできないが知っているのか、そうでないのか。
『そんなの、どっちだっていいだろう。私たちは便利屋を捕まえるために来たんだ。シャーレだかなんだかは知らないが、もし邪魔するなら、部外者とはいえ問答無用でまとめて叩きのめす。』
『え!?ちょ、ちょっとイオリ、待って───』
チナツちゃんと一緒にいたイオリちゃんとやらがどうやら彼女の静止を振り切ったらしい。
治安悪いなぁ………チナツちゃんが不憫………
『あの…………できれば、また、後でお話を…………』
「あーまぁ、今度一緒にご飯でもどう?」
そんな気の抜けたやりとりがあったが、切り替えるように一度大きく息をついた。
ちらりと上に目を向ければ、青い空に浮かぶ黒い点。それと遅れて聞こえてくるような砲撃音。さっき紫関ラーメンを全壊させた迫撃砲の二射目か。
「出鼻はこっちで挫く。君たちは銃のレンジまでとにかく前へ!」
わたしがそう指示をすると同時に駆け出す便利屋の四人。現状ではこっちが撃たれっぱなしだ。それをどうにかする必要がある。
「わたしの迎撃と同時に迫撃砲の制圧をよろしく!」
「中々様になっているような指揮をする!」
煙幕の中にいる彼女の言葉にまさかぁ、とおどけた返事をしながら魔法陣を起動。撃ち放たれたレーザーは音速を超えているっぽい砲弾を寸分なく撃ち貫き、アビドスの空に花火ができあがる。
『───空中で撃ち落とされたぁ!?』
ハッキングしたままの通信にイオリちゃんの驚愕したような声が聞こえてくる。
どうやら砲弾が撃墜されたことに対してのようだが、正直もっとこういう芸当が得意な人間を知っている。
紛れもない本職の軍人、それも三次元の戦場を生き抜いてきたあのエースたちなら朝飯前だろう。
話が逸れてしまったが、では来てくれた彼女の名を呼ぶとしよう。
「さぁ、出番だよ!!Widerspruch !!」
「ああ、任せておけ。我が氷焔が見せる矛盾の剣技、しかと刮目するがいい!!」
瞬間、私たちの背後で立ち昇っていた煙が凍り付いた。
突然のことに対面の風紀委員会たちがその光景に釘付けとなり、整然としていた足を止める。
そして彼女たちは見た。凍てついた氷柱の中に見える、正反対の───燃え盛るような紅蓮の炎を。
「ハァッ!!!」
氷柱を突き破り、小柄な人影が飛翔する。見てくれは年端もいかない幼い少女だが、彼女の背中にあるまるで炎そのものを内包したような真紅の氷の翼が彼女を人とかけ離れた存在であることを指し示す。
かつて彼女は周りと比べて力が強いだけのどこにでもいる妖精だった。
近場の湖でカエルを凍らせ、友人との遊戯、その中でも親友と言っても差し支えなかった妖精とのいつまでも続くと思っていた毎日。
しかし、唐突に迎えた故郷の破滅。ただ1人、その破滅から生還してしまった彼女は失意の底に沈んだ。押し寄せる絶望に潰されそうになった時、その先で彼女は
「
Widerspruchが自身で生み出した冷気を纏い始める。冷気は塊ととなって凍り、Widerspruchを核とした一羽の巨大な鳥と化す。
「行くぞ、異境の者たちよ!我が必殺の一つ、受けきれるものなら見事、成し遂げるがいい!!」
翼を力強く羽ばたかせながらWiderspruchは空を飛翔する。明らかに前衛であるイオリちゃんたちを無視をして迫撃砲の方へ向かうつもりだ。
「ッ………やらせない!!」
「まぁ、やらせないのはこっちも同じなんだよねぇ。」
彼女の目論見に気づいたのかそれとも単純に目についたから叩き落そうとする短絡的なものか。
ともかく空を飛ぶWiderspruchを止めようとしたイオリちゃんの前にワープし、足止めをする。
「い、いつの間に………!?」
「あれ?チナツちゃんから聞いてないの?それはそれで好都合だけど。」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!死んでください!!」
突然現れたわたしに驚いている彼女に一緒にワープしてきたハルカちゃんのショットガンがわたしの後ろから炸裂する。
「ぐぅぅ………くっそぉ!!なんなんだ、お前!!」
「イオリ!先生はワープができます!あの人と戦う以上、安全な場所はないと考えてください!!」
「は、ハァ!?反則じゃないのかそんなの!?」
近距離からショットガンを食らったがやはりキヴォトスの人たちの間ではまだ当たり前の範疇なのか、大きくのけぞりながらも忠告してきたチナツちゃんに反応する余裕を見せてくる。
「うう、ごめんなさいごめんなさい。一発で仕留められませんでしたぁ…………」
「気にしない気にしない。仰け反ってくれているのなら削れてるってことさ。このままどんどん行こっか。」
「は、はい…………!!」
「あ、ちょっと待て!!」
わたしがワープすることを察知したのかイオリちゃんが持っていた狙撃銃で撃ってきたがそれより先にわたしはハルカちゃんと一緒に再びワープをし、2人の前から移動する。
『な!?コイツいつの間に───わぁ!?』
『ぎゃん!?』
『ま、待って!落ち着け!こんなところで撃ったら同士討ち───イタイッ!?』
『ほ、報告します!便利屋の1人が突然現れてはショットガンを撃ったら即離脱する行為を繰り返して小隊が混乱状態───で、出たぁ!?』
「こ、こんな………くそ、ほとんど1人に振り回されているようなものじゃないか………!!」
「それに、先生お一人でも戦車を相手取れるレベルの実力を持っています。始めから、行ってはいけない戦闘だったんです。」
「いやー、大勝大勝。意外とどうにかなるものだね。」
「こちらは少しばかり不完全燃焼気味だがな。揃いも揃って一度小突けば崩れるばかりで…………張り合いがない。いや、耐久があって死人が出づらいというのは個人としてはありがたいのだが。」
「超能力者みたいな奴を相手にして冷静でいられる方が難しいって…………」
しばらく戦闘を行ったが、趨勢はこちらに傾いた。頭数は多い向こうの風紀委員会の生徒だったが、便利屋の面々には実力が遠く及ばないのかわたしとハルカちゃんの神出鬼没な戦法で総崩れを起こされると彼女たちの敵ではなかった。
Widerspruchも迫撃砲の部隊の方を強襲したあといくらか戦闘を行ったようだが、ほとんど一方的だったのか不満げだ。
「先生、無力化したのはいいけどこの後どうするの?」
「うーん、結局君たちってホントに便利屋目的で来たの?」
『それは私から答えさせていただきます』
カヨコちゃんにそう答えていると突然ホログラムが投影され、1人の女生徒が姿を見せる。
ホログラムとして映っているためわかりにくいが多分水色の髪にバインダーを携えた少女。
それを見たカヨコちゃんが渋い表情で彼女を浮かべたからあまり会いたくない人物なのは確か。
「……………誰?」
「天雨アコ………行政官で風紀委員会のNo2。」
ほう、これはまたご大層な立場の生徒が出てきたこと。
まぁそれはそれとして、わたしは彼女を見た瞬間に思ったことを口にした。
「立場がある人間にしてはえらい扇情的な恰好してるね。横乳丸出しで首元にベルまでつけちゃってまぁ…………そういう趣味なの?」
『んなぁ!?い、いきなり初対面に向けて言うセリフなんですかそれ!!』
「まぁ…………娼婦かなにかかとは思ったが違うのか。」
わたしの後ろでWiderspruchが周りに聞こえない声量で言っている。
わたしの発言に便利屋は唖然とし、対してチナツちゃんたちは顔を青くしてわたしと目の前の彼女の顔を行ったり来たりしていた。
「…………そういえばどこかの大会で水着で戦っている奴がいなかったか?」
「あぁ…………Sexy Dinamiteゆうかりん*2のこと?」
『よくわかりませんが、とりあえずそんなイロモノが確定しているような存在と一緒にしないでくれます!?』
…………やっぱゆくぜつがだいぶ気に入ってんやろなぁ
だってメガテンの登場演出みて使われてたBGMのサークルCD買いに行ったもん