MUGEN アーカイブ    作:わんたんめん

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風紀と氷焔と明かされた事実

 

『まったく…………なんであなたのようなのが先生なんですか…………』

 

「連邦生徒会長さんに言ってほしいな、それ。で?風紀委員会のNo.2だったっけ。そんな君がわざわざ出てきたってことは何か釈明みたいなのはあるのかな?」

 

『…………ハァ、そうですね。いつまでも言い争っているようでは進む話も進みませんし、まずこちらの落ち度であるのは真実です。』

 

チナツちゃんたちを制圧したあと、ホログラムを通して現れた風紀委員会のNo.2、天雨アコちゃんはわたしに睨むような視線を向けてきたあとにため息をついた。

 

『先ほどの愚行は、私の方から謝罪させていただきます』

 

「なっ、私は命令通りにやったんだけど!? アコちゃん!?」

 

『命令に「まずは無差別に発砲せよ」なんて言葉が含まれてましたか?』

 

「い、いや……状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入……戦術の基本通りにって……」

 

『ましてや他の学園自治区の付近なのだから、きちんとその辺りは注意するのが当然でしょう?』

 

アコちゃんの謝罪にイオリちゃんがギョッとした様子を見せたが、返しの言葉に声を詰まらせる。

うーん、多分事実はイオリちゃんが言ってる通りなんだろうけど…………今彼女、アビドス自治区の付近って言ったよね?おかしい、ここは元からアビドス自治区のはずだ。それなのにまるでそうじゃないかのような言い方…………まさかとは思うけど───

 

「…………黙殺したな。言い逃れ、というよりはあくまで責任を現場に押し付けることで風紀委員会全体の立場が悪くなるのを避けたか。」

 

「ふーん、そういうやり方ってありなんだ。」

 

Widerspruchの言葉を耳に入れつつ、様子を見ているとアコちゃんが不意にこちらに視線を戻した。

 

『失礼いたしました、シャーレの諏訪子先生。私達ゲヘナの風紀委員会はあくまで、私達の学園の校則違反をした方々を逮捕する為に来ました。こちらの不手際もありましたが、どうかそれについてもご理解の方をいただけることと幸いです。』

 

アコちゃんの謝罪にわたしは一旦帽子を被り直す。

 

「と言ってもなぁ…………なんでこの辺でドンパチやり始めたのさ。どういう認識でいたのか知らないけど、君たちが壊したのって善良な一般市民がいた建物なんだよね。便利屋の四人はたまたまそこに客として足を運んでいただけ。」

 

「えっ!?」

 

『それは…………ありえません!既にそこはカイザーによって立ち退き済みの区画のはずです!誰かがまだ住んでいるはずが…………!!』

 

「……………そういうことかぁ。」

 

驚く表情を見せるアコちゃんを始めとする風紀委員の面々。

それを見てやっと柴大将があんな顔を見せていた理由がわかった気がする。

おそらく今わたしたちがいる区画はアビドスのものではなく既にカイザーによって買い取られている。しかもここは今のアビドス校舎からそんなに離れていない。となると既に広範囲が向こうの手の内という可能性も否めない。

そして所有権が向こうにある以上、その上に存在する建物にもある程度干渉することができる。

柴大将が表情を曇らせたのも以前からその立ち退きの勧告が来ていて、それを受け入れてしまうことを決めたからか。

 

「金に飽き足らず…………どこまで貪り尽くす気だ………」

 

自分の心の内でふつふつと怒りのようなものが込み上げてくる。正直発散したいところだが、それを目の前の彼女たちにぶつけるのは筋違いだ。

とりあえず我慢我慢…………

 

「アヤネちゃん、返答はいらない。聞いてはいると思うから、後で土地の所有権について調べてみて。」

 

袂に入っている通話したままの携帯に帽子を直すふりをしてアヤネちゃんにそう伝える。

 

「わかった。どうやらお互いに認識の齟齬があるみたいだけど、それは置いておこうか。本題はそれじゃないからね。」

 

「アコ、アンタの目的は私達じゃないでしょ。」

 

わたしの隣に立ち並んだカヨコちゃんがホログラムの彼女にそう言い放った。

 

『…………はて?一体なんのことでしょう。事実私達はあなたたちを追ってここまで来たのですよ?』

 

「私達を捕まえるっていうのはあくまで建前。温泉開発部とか、そこら辺の連中なら理解できなくもなかったけど、たった4人に向かわせる戦力にしては明らかに別の勢力との戦闘を考えてる。じゃないとこんな過剰な大人数を率いて他校の自治区にまで出張ってくるには理由としては弱すぎる。」

 

ん?どうやらカヨコちゃんはわたしにはわかっていなかった風紀委員会の、というよりこの状況だとアコちゃんの目的を見抜いているようだ。ホントは彼女自身を問い詰めるつもりだったけど一旦はカヨコちゃんに任せておこう。

 

「そしてこんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない。仮にそれがアビドスだったとしても向こうの頭数はたった5人。ほとんど私達と変わらない以上、それも違う。ならアンタが狙いそうな勢力が残っているとすれば、それはただ一つ。シャーレのGM諏訪子先生、最初から先生を狙ってここまで来たんだ。」

 

「……………え?わたし?」

 

思わず自分で自分を指差してしまう。

一体何が目的で?というかわたしはたまたまアヤネちゃんからの手紙見つけてここに来ただけなんだけど………

 

「………まださほどこちらへ来てから日数が経っていないだろうに、えらく気に入られているな。」

 

「こら、Widerspruch。コメントに困ること言わないでよ。君の我が友呼ぶぞ?」

 

「それこそ止さないか。ここいら一帯を我が友の鮮血で満たすつもりか。そもそも適当にランセレをしてもっと手に負えないのが来たらどうするつもりだ。」

 

『ふふっ、なるほど。……ああ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れてました。のんきに雑談なんてしている場合ではありませんでしたか……いえ、それ以前に大分のんきな会話をしていらっしゃるようでしたけど。』

 

意地の悪い笑みを浮かべてくるWiderspruchに釘を刺している会話をのんきだと言われてしまった。

なんだとぅ……ウチの界隈、ひどい奴は本当にひどいんだからな………

 

「狙われているっていうのにあの余裕っぷり………やっぱり先生も生粋のアウトローね!」

 

「今そういう会話してる雰囲気じゃないと思うんだけどなぁ………ま、いっか。」

 

『ホントに気が抜ける………まぁ、構いませんが。』

 

アコちゃんがそういうと無力化したイオリちゃんたちとは別の部隊が現れ、わたしたちを包囲するように陣形を敷き始める。

さっきより数は格段と多い。2倍、いや四方から現れたから単純計算4倍はあるのかな。

 

『うーん……少々やりすぎかとも思いましたが……シャーレを相手にするのですから、これくらいあっても困らないでしょうし……。まあ、大は小を兼ねると言いますからね☆』

 

「包囲ごと片付けたつもりだったけど……二重だったか……」

 

『はい、そうです。それにしても、流石カヨコさんですね。先ほどのお話は正解です。……いえ、得点としては半分くらいでしょうか? 確かに私は、シャーレと衝突するという最悪のシチュエーションも想定していました。』

 

完全に囲まれたわたしたちに余裕綽々と言った態度を見せるアコちゃん。さてどうしたものか………正直ひっくり返すのは簡単だけどもう少し調子に乗らせておこうかな。

 

「ところでさ、なんでわたしなんかを狙うの。君たちの不都合になりそうなことができるほどキヴォトスに来てからまだ日は浅いよ?」

 

『そうですね………仕方ありません。事の次第をお話ししましょう。……きっかけは、ティーパーティーでした。もちろんご存知ですよね、ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会のことです。』

 

まぁ、知ってる。割と最近の方だけど………それはそれとして敵対関係なんて穏やかじゃない言葉を使う。

三大学校のうち二つが険悪だなんて、絶対後々大問題になりかねない雰囲気がひしひしと感じる。

 

『そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている……と。そんな話が、うちの情報部から上がってきまして。そこでチナツさんの報告書を確認したところ、端的に言えば連邦生徒会長が残した超法規的な権限を有した正体不明の組織、しかもそれを率いているのがどこの誰かすらわからない人間だなんて、怪しい以外の何者でもないでしょうか?』

 

あー、まぁ…………それはそうだね。

突然あらゆるものを無視して行動できる存在なんてのが出てきたらみんな警戒するね。

 

『シャーレの構成員と思われるあなたはそれ以前にチナツさんの報告書にもありませんでした。それはつまり結果論ですが、シャーレにはとても危険な不確定要素を孕んでいるということ。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません。』

 

Widerspruchに視線を向けながらそういうアコちゃんにぐうの音も出ない。思わずその妖精に微妙な目線を向けたが、彼女本人も理解できてないわけではないのか渋い表情を浮かべているが何も言わなかった。

しかし…………今さっき条約とかって言ってたよね。

 

『ですからせめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で……といった形で。』

 

あ、これ聞いちゃいけない奴だ。

絶対機密事項とかそういうのに分類されているであろうことを話しちゃってるよあの子。………意外とポンコツの香りが漂い始めたな。

まぁそれはそれとしてどうやら余計なことをされたくないがために庇護という名前の監視下に置きたいらしい。

そもそも囲い込んだ時点でその条約に影響が出始めるだろうと考えてしまうのは違うのかな。

 

 

「んー………まぁともかくどちらにせよその両方ともお断りかなー。便利屋の彼女達に関してはそもそもここはアビドス自治区。要は他校のテリトリーってことだから、その処遇を決めるのはアビドス廃校対策委員会にあるはずだよ。」

 

『…………一応忠告しておきますが───先生、あなたはテロリストを庇い立てているのですよ?』

 

「他校の自治区まで来て他人の住居破壊。かたや依頼でこちらにやってきた仕事人。ひとえにテロリストと評されるのは一体どっちだろうね?」

 

『ッ………………そうですか、ええそうですか!』

 

お、どうやらわたしが遠回しにテロリスト呼ばわりしたことにキレたようだ。

無力化しているイオリちゃんたちはともかく後からやってきた風紀委員会の面々の空気がアコちゃんの苛立ちに呼応しているように悪くなる。

 

『本当は穏便に済ませたかったのですが……ふふ、やっぱりこういう展開になりますか。ええ、仕方ありませんね!!』

 

「…………よかったじゃん、まだ退屈しないで済みそうだよ?」

 

「抜かせ!焚き付けたくせによく言う!まったく!!」

 

キレ気味のアコちゃんの声と共に風紀委員の軍勢が銃を向けてくる。

明確な戦闘の意思に便利屋の四人も銃を構えたが、彼女たちより先にWiderspruchの左手が輝いた。

 

「遅い!氷忌凍樹(ひょうきとうじゅ)!!」

 

冷気を纏った左手を勢いよく地面にたたきつけた。

すると彼女の冷気が地面を伝わり、銃を構えた風紀委員を足元から生み出した氷柱に閉じ込める。

 

「すぐに融かす!!だがしばらく眠っているがいい!!」

 

身動きの取れなくなった風紀委員たちを右手から生成した炎剣で一閃。熱で溶かされた氷が一気に水蒸気となり、爆発とともに風紀委員たちを吹き飛ばす。

 

「我が力、この程度と侮ってくれるなよ?」

 

「…………さて、まだ行けそう?」

 

「ええ!もちろんよ!あの子のおかげでわたしたちもまだまだ余裕よ!!」

 

先陣を切ったWiderspruchを後目にアルちゃんたちの調子を確認。よし、全然大丈夫そうだ。

 

「───ラウンド2と洒落込もうか。」

 

その瞬間、別方向から爆発とともに混乱が風紀委員会を包み込む。

 

『ッ───まさか!?』

 

「ん、先生。加勢に来たよ。」

 

「よっっっくもアタシのバイト先をつぶしてくれたわねぇ!!覚悟しなさい!!」

 

「これ以上の好き勝手は許しませんよ~☆」

 

現れるアビドス廃校対策委員会。

だけどその中にホシノちゃんの姿はなかった。

 

 




素人キャラ解説

Widerspruch

熄 癈人氏製

禍霊夢を筆頭に数多くの人気キャラの製作者である熄 癈人、通称オキ氏によるチルノ改変

設定では幻想郷の破滅を目の当たりにし、無力感から一念発起。
猛者たちとの修行を経て炎を操るに至る。
ちなみに⑨ではなくだいぶ賢い。

余談だが今回出てきた『我が友』とは大妖精のことを指してはいる。
彼女を大妖精と呼んでいいかは、ほかならぬWiderspruchのみぞ知る、という話にはなってしまうが。
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