なお彼女のランク()
「カイザーコーポレーションの理事ねぇ。わたしはGM諏訪子だよ。連邦生徒会のシャーレで先生をやってる。」
「貴様がか?例のゲマトリアから先生そのもののことを聞いてはいたが、まさか生徒とさほど変わらぬ身なりをした子供とはな。」
やってきた図体のデカいロボット、もといカイザー理事にわたしがシャーレであることを言うと意外そうな声で露骨に驚いた様子を見せた。
コイツ………わかってたけどわたしが生徒と変わらない姿だからって侮っているな。
明らかに挑発とかそこらへんのものが混じった声をしていた。
(だけど…………ゲマトリアって一体なに?)
聞き慣れない単語だ。ゲマトリア………あいにく言語には明るくないからどういう意味なのかはわからないが、聞いた感じは個人名というよりはどこかの組織っぽい。
「────まぁいい。それとわたしは正確に言えばカイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ、現在はカイザーPMCの代表取締役も務めている。」
はいはい、権力マウントどーもどーも。
全く、勘に障るロボットだなぁ。自己顕示欲が尋常じゃなく大きいようだ。現になんか勝ち誇ってるのか威張っているような態度にも見えるし。
「そんな事はどうでも良い、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人って事で良い?」
「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私達をずっと苦しませて来た犯人があんたって事なんでしょ!?あんたのせいで私達は……アビドスはッ!」
「わぁー!?待って待って!!」
内心ため息を吐いていたところに恨み節を言い放つシロコちゃんとセリカちゃんに思わず肝を冷やす。
ちょっとー!?お相手さんどうみてもなんか裏があるんだろうけど君たちお金借りてる立場ーーーー!!!
「せ、先生…………でも!!」
「気持ちはよーく分かる!!だけど感情的になるのはダメ!!面倒事が増えるだけだから!!」
割り込むように理事との間に立って2人を宥めるがその表情は深刻なまでに歪んでいた。
まさに爆発寸前という様子だが、ここで感情に任せて仕掛けるのは相手に正当性を与えるだけだ。
(もう少しあのロボットから話を聞き出したいからとりあえず、今は抑えて!!必ず後で痛い目には合わせるから!!)
「ッ…………うううう!!!」
理事に聞こえない声で2人に言い聞かせたところでようやく落ち着いてくれた。
安堵のため息を吐きたいところだったが、今度は自身を後ろの方から拍手のような手を鳴らす音が。
めんどくさい雰囲気に一瞬辟易としたような苦い表情を浮かべてしまったが、すぐに笑顔を取り繕いながら振り向くと、拍手のしていたのは案の定カイザー理事だった。
「賢い選択だ。ククッ…………存外に立場と言うのをわかっているではないか。」
嘲笑うかのような理事の言葉に苛立ちを覚える。
が、ここで動いてしまっては結局は同じこと。
「しかし、勝手に私有地へと侵入した身分の上で最初に出て来る言葉がソレか。善良なる我がPMC職員たちを攻撃しなかったのはいい。だが、口の利き方には気を付けた方が賢明だ。ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。まず君たちは今、企業の私有地に対し不法侵入しているのだということを理解するべきだ。」
「一応言っておくけど、先に攻撃してきたのはそっちだからね?」
「正当防衛さ、何せ見知らぬ人物が家に無断で入り込んで来た様なものだからな、強盗や盗人が相手なら、君達とてそうするだろう?」
言い返してみたもののカイザー理事はまるでどこ吹く風といった様子で正当防衛を主張してきた。
まぁ、確かにここら辺も書類上はカイザーコーポレーションのものになっている以上それを掲げてくるのは当然か。
「じゃあ聞かせてもらえるかはわからないけど一つ。わたしも土地の値段とかに明るいわけではないけど、それでもここら辺の土地が高くないのはわかる。当然こんな砂漠だ、使い道もほとんどない。なのに君たちはこの砂漠地帯をわざわざ長い年月かけてまで買い取った。それはその時間とお金をかけるだけのものがあるからだろうけど、それはいったい何?」
「………いいだろう。教えてやるとしよう。私たちはアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探しているのだ。」
カイザー理事のその言葉にわたしを驚きで少しだけ目を見開いた。
いや、冗談半分で宝さがしかなって思ってはいたけどいざその言葉が出てくると面を食らってしまう。
資源とかならまだ十分に理解できるが………宝物とはねぇ。
嘘ついてる感じもしないし多分マジで探しているんだろうね。
「そんなでまかせ、信じるわけないでしょ!」
「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない。この兵力は、私たちの自治区を武力で占拠するため。違う?」
うーん…………まぁ買取済みとはいえ自治区内だしシロコちゃんが言った武力制圧のためっていう風に考えられるけど……
わたしは取り囲んでいるオートマタたちや施設を見た。
「…………流石に過剰じゃない?っていうかこんな戦力あったらわたしが来るよりずっと前にやられてると思うよ?」
カイザーコーポレーションの目的がアビドスの土地だというのはわかっている。
そしてざっと見た感じ戦えるオートマタだけでも数百はくだらない。それとたくさんの装甲車に戦車。全校生徒五人だけの学校に向かわせたらいくら彼女たちが戦い慣れしているとはいえ敗北は火を見るより明らか。
即死耐性がないヤツが即死技持ちに当たってしまったときのお察しムードのそれと同じだ。見ていた一同が「知ってた」とか「まぁ、そうなるな」のコメントを残すだろう。
「ふん、全く持ってその通りだ。数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち。数百トンもの火薬に弾薬。たった五人しかいない学校のために、これほどの用意をするなど、あまりにも非効率的。1%の利益すら産むはずがない。」
やっぱりそうだよねぇ。となるとこの戦力は何か別な存在に対して、例えば──────
「あくまでこれは、どこかの集団に宝探しを妨害された時のためのもの。ただそれだけだ、君たちのために用意したものではない。」
やっぱりそこらへんだろうね。だけどそれも非効率的だ。わざわざこの施設を襲撃しにくる奴はほとんどいない。だけどそれはその宝物とやらのことを知っていなければの話だ。
……………カイザー理事はどこかの集団って言ったけどそれは違う。
おそらく、彼が脅威と見ているものはわたしが砂漠の奥地に入り始めた時からなんとなく感じている
「───もう、十分かな。」
「先生?」
不意に言葉を漏らしたわたしにアビドスのみんなの視線が向いた。
正体はわからないが、どうやら向こうはわたしに興味があるようだ。
なら、存分に利用させてもらおう。
「………一体何のつもりかね?わかっているとは思うが、君たち程度、いつでも、どうとでもできるのだよ。」
「そうだね。君たち大人が権力をふるえば、子供である生徒たちには勝ち目はない。だけどね、君たちは知っているかはどうかはどっちでもいいけど、はるか昔人々は権力の上に立つ存在を恐れ、敬い、崇めてきた。」
わたしの中にある
上限を上げるたびにわたしが纏っている青白い光が強くなり、周囲のオートマタたちが慄いたように一歩後ずさった。
服装も紫がかった和装から透き通るような白へと変わっていく。
「この感覚あの時の…………まさか先生、本気で戦うつもり?」
「な、なんだ……!!貴様は一体なんなんだ!?」
「君の質問に答える気はないよ。ただ、君たちは運がなかったね。このキヴォトスに来たのがわたしじゃない、それこそ先生と呼ばれるような一般的な大人だったらこの場は君たちの意のままだっただろうさ。」
だけどもう、この場を支配しているのは
にこやかな笑みを、見る人が見ればたぶん震え上がるようなタイプのものを浮かべながらわたしはゆっくりと手を上げる。
「な、何をするつもりだ!!我々に危害を加えることが何を意味するのかわかっているのか!?今すぐにアビドスの借金を───」
カイザー理事が通信端末のようなものを出したその瞬間、彼の機械の体を頭を残してすべて凍てつかせた。
もしかしなくても借金上げようとしたね?そんな悠長なことさせるわけないでしょ。
「んなッ───ば、バカな───」
砂漠という環境で凍りついた理事に施設のオートマタは一瞬視線を釘付けにしたが、すぐに攻撃されたと判断してこちらに銃を向けた。
けどもう遅いね。うちじゃ
「それっと」
わたしはとても気の抜けたような声質で上げた両手をクロスさせながら振り下ろすと施設全体を飲み込むように白い斬撃が飛んだ。
『
ニライカナイとかと比べるとちょっと印象の薄い技だがれっきとしたわたしの超必殺だ。もちろん全画面で範囲は施設全体にしてある。
当たり前だがこの場にいる全員が即死耐性がないことは確認済みなため、技が収まるとさっきまで騒がしかったオートマタたちが一体残らずすべて倒れ伏していた。
もちろん、戦車といった車輌の搭乗員や施設の中にいた戦力も全部ね。
途中で通報とかされたら面倒だし。
「こ、こんなことが………あ、あれだけの兵力が……こんなガキ一人に………」
「文字通り、世界が違うのさ。いくら数揃えてもあんなのわたしの知り合いじゃほとんど秒殺だよ。」
さて、と話題を切り替えるようにわざとらしく身動きの取れなくなった理事に近寄ると短い悲鳴を上げて、顔を全力で背ける。
急転直下とはまさにこんな感じか。まぁ、盤石だと思ってた土台が一切合切消え失せたんだし、その元凶が目の前にいればそうもなるか。
「さっきまでの威勢はどこへいったのかな?子ども扱いしていたヤツに全部ひっくり返されてどんな気持ち?」
見上げる必要がある位置まで近寄ったところで煽ってみたが、カイザー理事は半狂乱しているのか譫言を呟くばかりで会話もままならない様子だ。凍り付いた影響で何か機械の体に悪影響でも出ているのかな。
正直どうでもいいが、彼には正気に戻ってもらわないと。決断を迫られるときがすぐそばまできている。
「ホシノちゃーん、一発入れていいよ。あ、でも壊さないでね。あくまで気つけをいれる感じで。」
「う、うへぇ!?なんでこんな状況で!?」
「もしかしたらカイザーに恩を売って借金減らせると思うから。」
『えええええッ!?!?』
アビドスのみんなが驚きの顔を浮かべたその瞬間、地響きのような振動が起こる。
「な、なに!?地震!?」
「思ったより動くの早いなぁ。ホシノちゃん、彼を起こしてあげて。」
ホシノちゃんは微妙な顔を浮かべてたけど、持っていたショットガンの銃床で理事の頭を叩いた。なんか結構鈍い音がした気がする。
「もしかしなくても結構力入れた?」
「なんのこと?おじさん知らないなぁ。まぁ加減とかよく知らないからそういうことで。」
「はっ!?わたしは一体なにを────いや、それよりもなんだこの揺れは!?まさか!?」
ちゃっかりしてるねぇ。
それはさておき、わたしは痛みを与えられたことで意識を取り戻した理事の前に立つ。
「き、貴様!!まさかアレを呼び寄せたのか!?」
「おお、話が早い。質問に応えるとわたしは全くの無関係だけどこの揺れの正体を知っているなら教えてもらおうかな。」
揺れが続いている間に理事を問い詰めていたが、突然一際大きな音と共に地平線のあたりで空高く砂漠の砂が打ち上げられていた。
遠目からみても柱のように見えるから相当高く、そして大きいものがそこにいるのがわかる。
やがて打ち上げられた砂が落ちてくると、その中にいた白い大蛇と思しきデカブツが姿を見せた。
「先生、あれはビナーだよ。都市伝説くらいにしか思ってなかったけど、ホントにいたんだ。」
「なんだかあと何体かは別のタイプがいそうな名前だねぇ。で?合ってるの?」
ホシノちゃんの顔つきからいつもの余裕が消え失せた。
まぁあの巨体だ。蛇のような体躯をしているから全長はもっと大きいだろう。戦うとなればまずそのサイズ差で苦戦は免れないだろう。
あの白い大蛇は『ビナー』というらしいが、ホシノちゃんの感じから詳しいことは知らないと判断し、理事に聞いてみることにした。
「用意していた兵力も元々はあのデカグラマトン用に取り揃えたものだったのだ!!それを貴様が!!どう責任取ってくれるのだ!?」
凍りついたまま悲鳴のような声でそう追及してくる理事。
「どうって…………ここ君たちが買った土地なんでしょ?いい大人が子供に泣きつくなんて、みっともない。」
「なっ!?そうなったのは貴様が────」
「でも…………ああいうのを止めるお約束に誰かをイケニエに捧げるってのがあるね。ちょうどここにおあつらえ向きなのがいるし、それでいいなら遠慮なくやるけど?」
要は
そう。今の君は蛇に睨まれたカエルさん。生殺与奪の権利を奪われた敗北者。所詮権力なんて圧倒的な理不尽の前には脆く儚いものだ。
「さて、君はどうする?残された選択肢は主に二つだよ。ここで惨たらしく蹂躙されて死ぬか、みっともなく生を望むか。」
やっぱり感想くれるとウレシイ……ウレシイ……
余談
今回は12p