「さてと………一仕事、行ってみようか。」
準備体操をするように両腕を組んで真上に延ばす。
関節同士が小気味のいい音を鳴らしているのを聴きながら前を見据えると白い大蛇のような巨大ロボット、ビナーとか呼んでいた奴が見える。
こちらを警戒しているのか現れたところから様子を伺うように動かず、時折り咆哮のようなものをあげている。
「先生、本当にアレを相手にするの?」
「んー?まぁ、それが条件だしねぇ。」
聞いてきたシロコちゃんにそう返す。
あの確認の後、理事は深刻そうな顔をしていたが、生を取った。
内容はデカグラマトンと呼ばれるあのロボット、ビナーの撃退。
報酬はアビドスの抱える借金のおよそ半分の四億。
というか報酬に関してはそうさせた。最初は三億とか言ってたけどこんな施設作れるんだからもっと出せるよねって
ちなみにちゃんとしなかったら会社を機能不全にさせるっておまけもつけた。
具体的に言うとカイザーコーポレーションの本社にカチコミかけて従業員全員を即KOした上で会社の機械とかを全部水没させて完膚なきまでに潰すってね。
「とはいえ色々考えないとなぁ。借金半分はなんとか出来そうとはいえ利子のせいで借金そのものが減らせなかったら意味ないし。」
うーん、何かいい手段はないものかなぁ。このだだっ広い砂漠を使うしかなさそうだけどそもそもそれをするにはカイザーから買い取らないといけないし…………
後何より生徒の数が大問題。5人しかいないとなると早急に生徒の数を増やす必要がある。ただ単に増やすだけならそこらへんのヘルメット団をシャーレの権限使って入れるって手法もあるけど…………
「一朝一夕なことじゃないしなぁ…………どうしよ。」
「先生。私たちもいくらでも手伝いますけど………いいんですか?」
「心配してくれてありがと。でも大丈夫。要は追い返せばいいわけだからね。あと持ってきた弾丸の量でアレの体力削り切るのは無理だと思う。普通にやるにはかなり念入りな準備がいる相手だろうしね。」
心配そうな顔を見せるノノミちゃんにわたしは笑みを浮かべて言葉を返す。
ノノミちゃんは地平線に見えるビナーの巨体を見た後に表情を暗くして俯いた。
「先生の言う通り。あの巨体が相手じゃ自分たちの身を守るだけで手一杯。」
『それはそうですけど……………』
「何から何まで先生に任せっぱなしじゃ………!!」
いいんだよ。それでさ。
わたしは軽い笑みを見せながらセリカちゃんの頭を撫でた。
「ちょぉ!?い、いきなり何するのよ!?」
「────本来君たちのような歳の学生はまだまだ大人からの庇護を受けておくべきなんだ。金銭的にも精神的にもさ。」
「それにわたしにとって子供は未来へと続くバトン───言ってしまえば宝物なのさ。キヴォトスの大人たちはなまじ多いから認識していないけど、子供たちがいないと何も明日に繋ぐことは出来ない。技術とか財産とか、果ては国とか信仰とか。君たちは
だから、任せてよ。あんな大人とデカブツから君たちの宝物を守らせて。
その言葉を残し、わたしはワープで施設から離れ、ビナーと対峙する。
「遠くから見てた時点でわかっていたけどデッカ…………蛇みたいな図体だから砂漠にはまだまだたくさん埋まっているんだろうなぁ。」
まだそれなりの距離がはなれているのにだけなのにもう見上げる必要が出てくる大きさに思わず声が出てしまう。
やっぱりあの子達5人だけにやらせる相手じゃないねこれ。図体だけで相当な難易度がありそうだ。
っていうか蛇の頭の上にヘイローのような円環がある。
え、まさかの生徒…………そんなわけないか。一応このキヴォトスの空にもそれっぽいものがあるからそれと同タイプなのかもしれない。
『───────!!!』
わたしが突然現れたことにビナーは驚いたように威嚇の咆哮をあげる。
その咆哮は砂漠の砂を巻き上げ、大気を震わせるまでに至るものだった。
一体何を恐れているのやら。まぁ仕方ないか。どうにも向こうはわたしが神であることを察しているっぽいし。
その咆哮の圧に気圧されることなくわたしは被り直すように帽子のツバに手を添える。
「─────ラウンド1と行こうか。」
その言葉を合図としたようにビナーの胴体から垂直に昇る無数の白い線が出される。
その白線の一つ一つの先端にはミサイルがあり、それがわたしに向かって発射されていた。
『ミサイルの多数発射を確認───先生!!』
シッテムの箱から届くアロナちゃんの報告。
わたしはその場で地団駄を踏むような勢いで地面を足踏み、生み出した青白い亀裂から分厚い聳え立つような大きさの氷の壁を作り出す。
季節外れ、というには些か暑すぎる砂漠環境で出したため、溶けた水が光を乱反射させていたが、わたしという小さい的を標的にしたミサイルは巨大な氷の壁に阻まれ、その衝撃、爆発がわたしに届くことはない。
「アロナちゃん、今のミサイルの出所は?」
『もう特定済みです!ホログラムに反映させます!』
とはいえ撃ち出されたミサイルの数が多い。まともに喰らうとそれなりに体力を減らされそうだ。
久々に聞いたアロナちゃんの報告と同期するように投影されたビナーのホログラムにミサイルの発射管が点滅して表示される。
それを確認するとわたしはワープで移動。空中だが狙い撃てる場所に出ると魔法陣を起動し、レーザーを放つ。
放たれたレーザーは塞がれていた蓋ごと貫き、中のミサイルが誘爆したのか大爆発を起こす。
『!!!?!!!?』
「お、効果ありか。正直有効打が出た時点で帰って欲しいけど────」
そう行かないかー
一箇所ミサイルの発射口潰した程度では引く気がないのかビナーはミサイルの弾幕量を増やしつつ地面に潜り出す。
当然避けるがちょっとミサイルとは別の問題が。
「うわ、巨体が動くから砂漠の砂が巻き上げられて────」
ビナーが砂に潜るとその質量の大きさから砂が舞い上がり、一時的な砂嵐となって視界を遮られる。
「面倒なことをするねぇ!」
砂嵐に見舞われ、うへぇーっとした表情を浮かべてしまう。
ビナーの頭部分を見失うが、相手が移動していると思われる地響きがその居場所を教えてくれる。
一際大きい振動がちょうど自分の真下で止まったのを確認したその瞬間、わたしはワープで移動。ついでに砂嵐の範囲から逃れる。
案の定ビナーは地面からの強襲を狙っていたのか直前までいた場所から天をつくような勢いで飛び出してきた。
「一丁前に即死コンボを狙ってくるとはね!!」
地面からの強襲を回避したら間髪入れずにレーザーによる追撃を入れる。
ミサイル発射口を優先的に狙っているからか、ビナーの動体からは何ヶ所も煙と炎が上がり始めていた。
(だいぶダメージは入っていると思うけど────)
そんな風に思っていた矢先、ビナーの瞳と思われる部分が一瞬だけ赤く光った。
「んっ!?」
なんてことはないように見えたその光だが、狙われたような感覚があったため、咄嗟に回避行動を取った。
それが正しかったのか次の瞬間、目の前の視界が爆ぜるような光に包まれた。
「まためんどくさい攻撃を…………!!」
思わず舌打ちのような出しながら追撃を警戒する。ダメージ的には喰らっても全然問題なさそうだが、あれを絶え度なく撃たれるのは面倒の方がはるかに勝る。
と思って身構えていたが、飛んでくるのはミサイルだけでさっきの目が赤く光ってからの爆発は飛んでこなかった。
「…………さっきの攻撃バカスカ撃ってればだいぶやりづらくなるんだけどなぁ」
いや、どっちかといえばそういう避けづらかったり避けられない攻撃をアーマーとか耐性とか無敵でゴリ押すこっちが異常なのかなぁ。
まぁ、それはさておき明らかに飛んでくるミサイルの量が増えてる。
激しい爆発が周囲の砂漠の砂を巻きあげ、悪かった視界がさらに悪化していく。
もはや砂嵐の渦中だ。結界を展開し続けているから先頭に影響はないけど不慮の被弾には警戒しないといけない。
『先生!ミサイルの直撃を受けても私のバリアで防御はできます!ですが過度な被弾はさけてください!』
「限度があるってことね。わかったよ。」
アロナちゃんの警告にそう返しながら耳を澄ませる。幸い自然現象による砂嵐ではないから激しい風の音はないが、聞こえてくるのは無数の噴射音。
十中八九ミサイルのエンジン音だろう。
「当たっては、やれないかな!」
腕を振るい、『天目一箇』でミサイルをすべて撃ち落とす。
ミサイルの爆風が砂塵を吹き飛ばし、一時的に視界がクリアになったが、ビナーは大口を開けて待ち構えていた。
「あ、もしかして大技の雰囲気?」
『ビナーの口部にエネルギーの収縮を確認!これは───ビーム砲!?』
ビナーの口にエネルギーがチャージされるようなエフェクトと共に中の機械が動き出し、人ひとりは余裕で飲み込める太さのビームが放たれる。
砂漠の砂はそのビームの持つ膨大な熱量で一瞬にして融かされ、ガラス片へと変わり果てる。
まともに食らえば、頑丈なキヴォトスの子たちでも命はないと思わせるほどのものだ。
だが、それが相手にしたのは生徒にあらず、極東の島国にかつて存在した正真正銘の神
そして土着神の頂点───その全盛
「───少しはいい攻撃を持っているじゃないか!!」
ビナーのビームを見たわたしは戦闘の高揚感からか不敵な笑みを浮かべると『ニライカナイ』を放つ。
わたしを中心にしてドーム状に広がっていく超必殺技とビームがぶつかり合い、激しい衝撃と稲光のような光を周辺にまき散らす。
「私、夢でも見ているの………?」
目の前で繰り広げられる
他の四人も口には出さないが似たような心境だろう。
ビナーの胴体から放たれる無数のミサイルが織りなす衝撃と爆発は長らく戦いに身を置いてきたアビドスの生徒たちにとっても顔を蒼くするレベルだ。
闘う直前にGM諏訪子が言っていたふつうはもっと準備を整えてから戦う相手という評価に嘘偽りはなかった。
「ここからじゃ距離が遠くて先生の状況が確認できない。あのビナーっていう蛇が攻撃してるってことはまだ戦っているんだろうけど。」
「それに今手伝いに入ったところで先生の足手まといにすらなりえません………」
『先生が戦っている地帯は今のビームの影響できわめて危険な熱量を放っています。どのみち今接近するのは勧められません。』
申し訳なさそうな顔を浮かべるノノミの視線の先ではGM諏訪子の『ニライカナイ』とビナーのビームがぶつかり合い、周辺を地獄に変えていた。
白亜の大蛇が放つビームは砂をガラスに変えうるほどの熱量。そのビームを彼女の『ニライカナイ』は真っ向から押しとどめる。
ビームははじかれ、周囲へ飛び散り、辺り一帯を灼熱の業火が包み始めていた。
その中で炎とは真逆の青空を思わせるような透き通った青の光を放つ彼女のニライカナイはとても幻想的に見えた。
「…………なんというか、綺麗だよね。先生ってさ。」
「ホシノ先輩?」
「──────ううん、なんでもない。とりあえずおじさんたちは待つしかないよ。先生……あの神様が任せてっていったんだから。」
「──────まだまだぁ!!」
力を込めて一気に技の出力を上げる。お遊びに付き合うのはここまでだ。
ビームを押し戻されたビナーは『ニライカナイ』の範囲に巻き込まれ、その衝撃と内包された即死や各種キラーの嵐にのみこまれる。
流石にかなりの巨体だから吹き飛ばしたりは出来ないと思うが、その分技に曝されている間は牙を向き続けるだろう。
『──────』
技が終わるとそこには白い装甲にひびが入り、いろんなところから炎を噴き上げているビナーがいた。
少しの間こちらを見ていたが、やがてボロボロになったビナーがうめき声のような轟音と共にゆっくりと倒れ、地面に倒れ伏す。
倒れたときの衝撃で砂が舞い上がり、帽子を深くかぶりながら警戒をしていたが、ビナーは動かなかったし、頭頂部で光っていたヘイローも消えていた。
「───これにて終了でございます、ってね」
倒れたビナーを背にして手のひらを上に向けながら肩をすくめる。
倒しちゃったけどまぁいっか。
いやー、それなりに時間かかっちゃったなぁー。攻撃性能高い奴ならもっと早く仕留められるだろうね。
さて、それじゃあ戻ろっか。
ちなみに倒したはずのビナーだけど、後で来たらいなくなっていた。
まぁあの巨体だし頭しかダメージ与えてないから自己修復機能とかあったならそのうち動けるだろうと思って特に気にしたりはしなかったけど。
デカグラマトンだって本編だとかなりの災害なんです!!
ただそれ以上にmugenの奴らが災害どころか天変地異が当たり前なんですぅ!!