MUGEN アーカイブ    作:わんたんめん

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早く出せればいいよなぁー、と思いつつもマジで筆が遅い自分を許してほしい


深夜のお誘い

 

「ククッ、顔を合わせる機会を頂けるとは光栄です。あなたとはこのように一度お話ししてみたかったのですよ。」

 

一度座り直し、そんなことを言ってきた黒服だが、わたしはそんな相手を少しばかり冷ややかな目で見つめていた。

それを知ってか知らずか、どちらかは定かではないが、黒服の彼はやってきたわたしを見て興奮しているような雰囲気で話を続ける。

 

「シッテムの箱の主、連邦捜査部『シャーレ』の先生。はじめは普遍的な大人がその役目を担うと思っていましたが………ククッ、蓋を開いてみれば小鳥遊ホシノやかの預言者デカグラマトンを遥かに凌駕する神秘…………これほどまでに興奮を覚えたのはいつぶりでしょうか。」

 

「はいはい、自分語りは結構。こっちだって暇じゃないのさ。ところで君は黒服さんでいいのかい?どう見ても本名ではなさそうだけど。というか、そういうのある?」

 

「………これは失礼。私のことはそれで構いません。その名前が気に入ったので。そしてあなたと同じキヴォトスの外部の者、ですがあなたとはまた違った領域の存在です。」

 

違う領域の存在…………まぁ、ウチにも色んな意味で違う領域の存在がいるから今に始まったことじゃないか。

はちゃめちゃもいいところな、混沌って言葉がもっとも似合うだろうし、ウチって。

 

「で?わざわざこっちの連絡しておいてまで会おうとした気概はなに?ビナーとのアレ見てたのなら今ここでギッタギタに転がされることくらい考えつきそうなものだけど?」

 

「………まずはっきりとさせておきましょう。私たちは、あなたと敵対するつもりはありません。」

 

おーん?どの口でそんなこと言ってるんだこのマネキン。まずはいっぺん即死受けてみるかー?

昨日のホシノちゃんの話の通りならコイツの下にいってるはずだけど、生徒を拉致っておきながら先生であるわたしに対して敵対するつもりはない?

目の先にいる黒服の言葉に思わず笑顔のまま表情を引きつらせる。

 

「…………私たちの計画において、一番の障害となるのはあなたであるというのが総意です。」

 

「うんうん、それで?」

 

明かりの少ない暗い部屋の中で煌々と輝く蒼白い光を見て、冷や汗でも流しているのか少しばかり上ずった声を挙げる。

うーん、ぱっとみ無機物のように見えるけど発汗機関とかあるのかな?

 

「私たち───ああ、そういえばそれについてもまだでしたね。私たちはゲマトリア、その名を拝借させてそう名乗らせてもらっています。」

 

さっきから妙に複数人称を使っていると思ったらどうやらこのマネキンもどきのような存在が他にもいるようだ。

ゲマトリア、カイザー理事がこぼしていたが、どうやら何かしらの研究をしている連中の集まりらしい。あと自分たちのことを不可解な存在と称していたが、確かにその通りだ。

顔面真っ黒でさらに目とかが光っているマネキンなんてウチ(mugen)ならともかく普通の人の形をしているのが多いキヴォトスでそう簡単にいてもらっても困る。

 

「そのような反応をされている以上、返答がどのようなものであるかは想像に難くないので一応ですが、ゲマトリア(私たち)と協力するつもりはありませんか?」

 

「わかっていながらそれを聞くなんてずいぶんと命知らずなんだね。」

 

その誘いにわたしは手のひらの光を増大させることをもって答えを返した。

当然だ。色々腑に落ちないところはあるけれど、今のわたしが先生としてここにいる以上、生徒にかかる火の粉は振り払うのが仕事だ。

まぁ、勉強とかはからっきしで現状だれかに教えるなんで無理だからそのうちカードで呼び出した頭のいいヤツから教えてもらおうとか思っているけど。

 

「───なるほど、どうやらあなたは私が思っている以上に人と近い存在のようです。」

 

「神は常に人と共にあるものさ。人がありとあらゆるモノや自然に見えないもの(神性)を見出し、崇め、信仰を有したからわたしはここにいる。なら、人と共に歩んで行こうとするのは当然のこと。それに────」

 

「借金だなんだってのは生徒には似つかわしくないし、それで生徒たちの笑顔が曇るって言うなら晴らしてあげるのが先生の役目ってやつでしょ?」

 

「ククッ………なるほど、神でありながら先生としての責務を熟すと。しかし、先生。お言葉ですが一つだけ………小鳥遊ホシノはすでにあなたの手からこぼれ落ちた。あの届け出を確認されていないですか?」

 

クツクツと笑い声を挙げる黒服。

まるで試すような物言いだが、その言葉にわたしは不適な笑みを浮かべる。

やっぱりそれ言ってくる?むしろちょうどいい。それじゃあ………付け焼き刃の知識からの一撃を受けるが良い。

 

「これのこと?確かに見たけどさぁ。困ったことに直後にカイザーからの襲撃あったせいでちゃんとした処理ができてなかったんだよねぇ。」

 

取り出した退部届を黒服に見せつけるようにしながら右下あたりの欄を指差した。

そこには顧問と銘打たれていると共に空欄として空いていた。顧問

つまるところ担当顧問としてのハンコが必要な部分。それを押してこそ、その書類は初めてそこに書かれている文面の効力を発揮する。

つまりそこがハンコの赤で染まっていないということは、まだホシノちゃんはアビドスの生徒だと言うことが逆説的に証明される。

 

「要は君たちはフライングをしたのさ。現状書類が効果を発揮していない以上、あの子はまだアビドスの生徒だよ。」

 

「………そう来られましたか。先生である以上、生徒の去就にはあなたのサインが必要であると。なるほど、学校の生徒、そして先生、中々に厄介な概念ですね。」

 

わたしの突き出した退部届の不備に黒服は感心したような声を挙げていた。

いつの間にか冷静さを取り戻したのか言葉にどこか余裕のようなものを感じるのがいささか癪に障るがあのマネキンには聞き出しておかなければならないことがある。

 

「………君たちの目的は一体なに?子供をだまして、多額の借金を貸し付けて、あまつさえそれを利用するなんて。はっきり言って趣味が悪い。」

 

「趣味が悪い、ですか。それが悪であるというのであればおっしゃる通りです。それを否定はしません。あなたもわかっているはずです。小鳥遊ホシノの持つ神秘、それもキヴォトス最高のものを。もっとも純然たる神である先生と比べれば、さしたるものかもしれませんが。」

 

神秘ねぇ………ときどきキヴォトスの子供たちと戦っているときにわたしと似たようなものを感じるとは思っていたけどまさかその通りだったのか。

黒服の言う通り、ホシノちゃんがもっているそれがひときわ強いのもわかっていた。この前会ったヒナちゃんも相当なものだったが、それでも彼女の方が上回っているだろう。

そして黒服は───ゲマトリアはホシノちゃんを利用してナニカしようとしている。大方彼女の持つ神秘、身体、果ては命までも。

 

「………その神秘に目を付けてどうするつもり?」

 

一応確認ついでに聞いてみる。

 

「私たちは観察者であり探究者であり研究者です。目指しているのはこのキヴォトスの真理と秘儀、それらを解明することです。」

 

返ってきた回答をあまりにも、思わずため息が出てしまいそうな呆れたものだった。

 

「………やっぱり君は生徒の敵だよ。それでもって悪い大人だ。子供から希望を搾取する典型的な。」

 

それが確認できたわたしは踵を返した。

行き先はもちろんこの明かりの少ない部屋の扉だ。

 

「おや、一体どちらへ?」

 

「帰る。実を言うとホシノちゃんの居場所はもうわかっているのさ。誘いに乗ったのはカイザーの裏にいるっぽい君たちの正体を知りたかったから。」

 

ついでにホシノちゃんを連れて行った場所がアビドスの旧本校舎だと言ってあげると黒服は少し黙ったあとに残念そうにため息を吐いた。

 

「私個人としてはもう少し貴方を話をしたかったのですがね。」

 

「今のわたしは暇じゃないのさ。待たせている子がいるからね。」

 

「…………最後に一つだけ質問を宜しいでしょうか?」

 

扉の取手に手をかけたその時、不意に黒服がそんなことを言ってきた。

暇じゃないって言ったばかりなのにと思ったが、一つだけならまぁいいかと思いその声に振り返る。

 

「『無名の司祭』について、先生はご存知でしょうか?」

 

ふむ、司祭とな?司祭という言葉に馴染みはないが言葉自体は確か宗教に関係するものだ。神父と同意義だった気がするが。

それにしても無名とは一体どういうことだろうか。単に名無しであるというわけじゃあるまいし。

いや、神に帰依する司祭だと言うのなら、名無しなのはそいつらが信仰している神々だろうか。

 

「いや?というか、それ何かの厄ネタ?」

 

「厄ネタ…………となりそう、というのが正解でしょうか。身も蓋もない言い方をしてしまいましたが。」

 

「ええ…………まぁ何がきてもぶっ潰すだけだけどさぁ。」

 

黒服の言葉に正直めんどくさそうにしているとふとその黒服がまるでキョトンとした様子で見つめているのに気づく。

 

「────やはり、貴方は興味深い反応を見せてくれますね。」

 

何事かと思ったがどうやら黒服の琴線に触れたのかクツクツと笑い始める黒服。

わたしとしては至極当たり前の感覚(相手になるなら全力で潰す)で言っただけなんだけどなぁ。

 

「何かあれば必ず一報をお入れします。わたし個人の考えになりますが、彼らの跳梁を許すのは本意ではありませんので。」

 

どうやらかなりの好印象を与えてしまったようだ。まぁ、キテレツな見た目の知り合いはすでに多いから、そうなってしまったことを後悔することはしないが。

 

「…………どうであれ、荒事なら大歓迎さ。あと君が言った、わたしを敵にしたくないという言葉、二言はないね?」

 

暗い部屋の中に指同士を打ち鳴らす乾いた音が響く。

次の瞬間、黒服の身を『岩戸隠れ』が包み込み、彼を宙に浮かす。

 

「ッ──こ、これは───」

 

「わたしが持ってる技の一つさ。一応本来ならそこから爆発させるまでが一連なんだけど、今回はしないであげる。」

 

突然の攻撃に黒服はその光る片目を見開いたようだが、わたしが『岩戸隠れ』を切るように指でなぞり、解除してやる。

 

「おお、なんと───今のが先生の持つ神秘による技………!!」

 

「やっぱりいっぺん食らってみる?」

 

脅しのつもりだったのだがどこか目を光らせて興奮しているようにも見える黒服にわたしは青筋を浮かべながらそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 




ちなみにちょいちょいキャラを増やしていたらおおよそ110キャラになってました(白目)
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