MUGEN アーカイブ    作:わんたんめん

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魔女の一撃は大抵重い

 

燦々と煌めく太陽が砂漠の砂を照りつける。

反射光と直射日光、二つの光に汗のようなものを拭いながら視線の先に見えるカイザーコーポレーションの施設を見据える。

作戦は言ってしまえばただの炙り出しだ。

 

『それじゃあ始めちゃうわよー?準備はいいかしら、かわい子ちゃんたちー?』

 

「どうぞ、派手にやってほしい。でも加減はしっかりしてね?」

 

「もう、注文が多いったら』

 

そんなおよそ作戦が始まったとは思えない軽薄なやりとりだったが始まった攻撃は苛烈そのものだった。

何せ施設全体を包囲するように何本もの巨大な火柱が立ち上がった。

 

 

「あっつ…………!?」

 

『なんていう熱量…………あのような攻撃に巻き込まれたら一溜りもありません………!!』

 

アナザーナインにとってはなんとない攻撃。

それでも天を貫くような勢いで立ち上る炎にそれほど距離が離れていないこちらにまでその熱が飛んでくる。

 

「先生、炎が………!!」

 

アナザーナインによる火柱は彼女の意のままだ。

立ち上った火柱は傾き、その高さを活かして施設全体を一瞬にして炎の海に沈める。

 

「ッ…………!!」

 

建物、車輌、そしてそこにいるオートマタを焼き尽くす勢いの炎。

轟々と燃え盛り、まだ日が登ってそれほど時間が経っていないのに太陽を超える光に飲むような息遣いが耳に入る。

 

「せ、先生、こんなのもはや虐さ────」

 

「まぁ、はたから見るとその通りなんだけど面白いことに誰も死なないんだよねぇ。」

 

大炎上の光に照らされた蒼い顔のノノミちゃんにカラカラと笑いながらそう答えてやる。

初めは正気を疑う顔を見せていたノノミちゃんだったが程なくして炎に包まれたオータマタたちがバタバタと大騒ぎをして施設から出てきた。

 

「それじゃあ行こうか。」

 

「だ、大丈夫なのよね………?」

 

「んー…………ナイン、聞こえる?セリカちゃんが火の勢いが強すぎて怖いってさー。」

 

冷や汗を流しているセリカちゃんを見かねてまるで独り言のようにそう呟くと燃え盛っていた炎は一瞬で消失する。

目の前で起こっている超常にも等しい現象に一瞬面食らうアビドスの子たちだったが、少しでも巻き込まれれば重症は免れないであろう業火の中、建物や車輌の被害は甚大なれど、オートマタたちは傷一つない自身の状態に首を傾げながらもこちらを見つける。

お互い状態を確かめたあと、大方こちらを下手人と見たのだろうわらわらと銃を構えて隊列を成し、こちらへ向かってくる。

 

「…………ホントに大丈夫そうですね………何人かは動いていないようですけど………」

 

「あれはダメージに耐えきれなかったんだろうね。要はKOされたって認識でいいと思うよ。」

 

『そ、そうなんですか………結構優しい御方なんでしょうか。』

 

まぁみんなの、主に戦うのが大好きなバトルジャンキーども(某運び屋とかそのあたり)の本音を明け透けに言えば一度切りの勝負で終わらせるには勿体無いからだろうね!!

だからどんなド派手な見た目や技で即死させても第二ラウンドとかがあるんだろうね!!

ちなみに死ななかったり四肢が吹っ飛ばないだけで痛みとかは割とそのまんまだよ!!つまり死ぬほど痛いものは痛い!!

 

『───GM、気づいているかどうかとかはどっちでもいいのだけど、別方向から大砲ひきつれた連中がきているわよ?』

 

アヤネちゃんの言葉に内心乾いた笑みを浮かべているとアナザーナインからそんな忠告が入り、一旦進む足を止める。

次の瞬間施設から打って出てきたオータマタたちの集団に何かが降り注ぎ、さっきのアナザーナインの火柱より少し小ぶりなものが上がった。

 

「支援砲撃…………?」

 

突然の砲撃。しかも砲弾の着弾がカイザーPMCの施設近辺に集中していることから自分たちが標的ではないと思ったのかシロコちゃんがこっちに視線を向ける。

残念なことに今の砲撃は全くの無関係だ。正直アナザーナインいれば火力面は事足りると思ってたし、裏工作も便利屋の子たちに一任している。

じゃあどこの部隊かと思っていたが─────

 

『あれは……L118、トリニティの牽引式榴弾砲です!一体どうして……』

 

『あ、あう……わ、私です……』

 

思いの外下手人は早く名乗り出てくれた。

通信に割り込むように、ホログラムとして現れたのはブラックマーケットで世話になったヒフミちゃんだった。

────銀行強盗した時に使ってたたい焼きの袋を被っていたが。いや、保管してたのそれ。

 

「ん────???????」

 

『え、えっと、お、お久しぶりです…………じゃなくて!ファ、ファウストです!このL118は、トリニティの牽引式榴弾砲ですが……と、トリニティ総合学園とは一切関係ありません!射撃を担当している皆さんにも、そう伝えておきましたので!』

 

なんで紙袋を被った姿でいるのか理解できなかったから思考放棄しかけていたらヒフミちゃんは自身の名を出さなかった上にわざわざ母校であるトリニティとは無関係だと宣言した。

 

(ヒフミちゃんが個人的にやってるってこと?あの砲撃の規模で?)

 

砲撃が来る直前にアナザーナインが連中って言ってることからそれなりの人数でこっちに来てることは想像に難くない。

ただ………わたしの記憶が正しければヒフミちゃんはあくまで風紀委員会のヒナちゃんみたいに権力のない、普通の生徒のはず。

まぁツテをうまいこと使ってくれたと考えるのが一番しっくりだろうか。

 

(ん?ツテ?)

 

そういえばヒフミちゃんってトリニティの生徒会の誰かと仲がいいって言ってたような。ヒフミちゃん自身アビドスの現状について向こうの生徒会長に掛け合ってみるみたいなことを言ってたし、もしかしたらそれであそこまでの規模の部隊を動かせたのかも。

 

(まぁ、どうであれ助けてくれるのなら別に…………あとで何か面倒ごとにならなきゃいいけど。)

 

「邪魔はいなくなった。先へ進もう。それと通りすがりの君に感謝を。」

 

「うん、すごく助かった」

 

「はい!ありがとうございます、ファウストちゃん!」

 

『あはは……えっと、みなさん、が、頑張ってください!』

 

援護をくれたことに感謝を伝えるとヒフミちゃん、もといファウストは最後に激励を残して彼女との通信が途切れる。

そして広い広い施設の敷地に足を踏み入れるとアナザーナインや大砲部隊の攻撃から逃れた残存勢力がわらわらとやってくる。

とはいえその数は100はいない人数までいなくなっていたが。

 

『こっちに増援を仕向けてきたわ。まぁ、90秒で十分かしら。』

 

「はいはい、そっちはよろしくねー。」

 

時折入ってくるアナザーナインからの連絡にそう返す。

もっとも彼女の魔力由来による手法だから他の子たちには見えてない。

虚空向かってる話している様子は奇怪に見えるだろう。

 

『先生、前方から増援部隊が!』

 

アヤネちゃんからの報告通りに前方に視線を向けるとゾロゾロと再び残っていたオートマタたちが隊列を成して現れた。

さらに少ないながらに戦車やヘリ、そして二足歩行兵器ゴリアテも複数機いた。

 

「あー、これ戦力増やしたなー?」

 

困り果てたように露骨に肩をすくめたが実際面倒だ。

銃をもったオートマタ程度ならシロコちゃんたちの敵ではないが、兵器相手になってくると途端に有効打がなくなる。

トリニティのハスミちゃんが使った貫通力に優れた弾丸なら別だがあいにくとアビドスにそういうのはほとんどない。

 

「まぁ、だとしても────」

 

こちらに向けた砲塔、ミサイル発射管がそれぞれ火を吹く。

まともに食らえば大ダメージは必至、よしんば避けたとしても生半可なダメージは避けられない。

 

「障害にもならないかな。」

 

飛んでくる砲弾やミサイルを即座にその空間ごとまとめて凍てつかせる。

凍結によりそれらの動きが完全に止まったことを確認。

少し力を込め、巨大な氷塊となったそれを浮き上がらせる。

物々しい音と共に浮かんだそれにオートマタたちは呆然としたりその場でへたり込んだりと反応がさまざま。

中には威勢のいいことに元凶である自分に対し攻撃をしてくる者もいたが、それらはアロナちゃんのバリアやアビドスの子たちが迅速に制圧する。

 

「それっ!!お返しするよ!!」

 

そして悠々と高く浮き上がらせた氷塊を思い切りゴリアテたちに向けて叩きつけた。

凄まじい地響きのあと、中のミサイルと砲弾がまとめて起爆し、追撃の花火が上がる。

 

「さて、どんどん行こうか!!」

 

わたしの声にアビドスのみんなが無言で頷き、施設内を猛進していく。

銃弾やミサイルが飛べば、お返しにレーザーや光弾、そして同じ銃弾、それでいて明確に意思と気迫が込められたものが飛び交う。

さらに────

 

「クフフ、泣きっ面に蜂ってこういうこと?」

 

「えっと………ホントにいいのよね!?もう割と勝負は決しているような気がしないでもないのだけど!?」

 

「まぁ、先生からはそれで依頼されているし………いいんじゃない?」

 

「あ、アル様と先生の邪魔になりそうなので………し、しんでください!!」

 

便利屋68の面々が十八番の爆弾など携えて参戦。

突出気味なハルカちゃんを援護しながらになるがなりふり構わない彼女の戦闘スタイルは周りの援護が重なれば凄まじい貫徹力を生み出す。

そこにアルちゃんの狙撃能力、ムツキちゃんの爆弾による妨害、カヨコちゃんの冷静な観察眼。

 

それらが組み合わさった便利屋68の力は確かに若干烏合の衆感のあった風紀委員会では太刀打ちできないと思わせるには十分であった。

 

 

 

「さて、こっちもぼちぼち始めましょうか。」

 

退屈そうに小さくあくびをしながら魔女は眼前の敵を見据える。

小手調べ程度で出した火柱だったがその程度でもそれなりの数を仕留めたらしい。

 

「敵は1人だ!!撃て撃て!!」

 

隊長格と思しきオートマタの号令でアナザーナインに向けて一斉射が浴びせられるがアナザーナインは避ける素振りすら見せなかった。まるでその必要すらないというように。

実際それらは全て事実となってオートマタたちの目の前に結果として現れる。

彼女の羽織るマントがアナザーナインの体を覆うと衣類とは思えない強度で弾丸全てを弾いてしまった。

 

「…………退屈ねぇ。」

 

漆黒に染まった瞳が細められるとオートマタたちの真上に魔法陣が敷かれる。

数は四本。しかし、それら一つ一つの範囲が広大で、それだけの数でやってきた部隊全てがその下に置かれる。

 

「ネイビープレッシャー………潰れなさい。」

 

瞬間、魔法陣からおどろおどろしい見た目をした筋骨隆々で真っ黒な腕がオートマタたちに振り下ろされる。

アナザーナインが振るう悪魔の腕が凄まじい衝撃を産む。オータマタたちは悲鳴と共に吹っ飛ばされ、そこには巨大なクレーターが出来上がっていた。

 

「全く………あなたたちも不運ね。」

 

クスクスと妖しげな笑みを浮かべながら魔女は次の攻撃を始める。

ゆったりとした挙動だが、オートマタたちはすでに始めの火柱と先ほどの悪魔の腕で理解した。

こいつには、天地がびっくり返っても勝てない。

 

「散りなさい。」

 

魔女の手のひらの上に火球が産み出される。

小さいものだったが、アナザーナインが魔力を注ぎ込むと小さかった火球はみるみる大きくなり、空に輝く太陽は遥かにしのぐ煌々と輝く業火球と化した。

 

「カーディナルノヴァ」

 

そして魔女の手から火球が放された。

堕ちてくる太陽の光に照らされながら、オートマタたちは呆然と、一方的にその輝きと熱に飲み込まれていった。

 

「やっぱりGMと合流しようかしら。そっちの方が面白いわね。」

 

膨大な熱量にガラスの海となった砂漠を前にしても魔女の目は未だつまらなそうだった。

 

 




アナザーナインなんていうmugenの中でも指折りのやばいのが出た時点で消化試合なんだよなぁ
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