「…………お、ついたかな?」
どこかなつかしいと感じる、わたしにとって馴染みのある匂いに閉じていた目を開ける。
それなりの時間、乗っていた乗り物に揺られ窓の外に目を向けると、そこには無数の桜が咲き、その花びらが色と匂いを運ぶ吹雪を作り出している学校だった。
「これは……圧倒されますね。これほど可憐で雄大な景色、向こうでもそうお目にかかれることはないでしょう。」
起きていたのか今回ランセレに呼び出され、同行することになったマイムも外の光景に目を輝かせて見入っている。
一面に広がる桜と桜吹雪はもちろんだが、もう一つ目を奪われるものがあった。
それは桜が咲き誇っている施設エリアから離れた場所にそびえ立つ一本の巨木。
巨木といったが、その木はそう表現するにはあまにも言葉が負けていた。
なにせまだ距離が離れているはずなのにその木一つだけ天を貫くような高さだったからだ。
「…………あの大木、ユグドラシルとか名前付いてないよね?」
「確かにあれほどのものであればそんな名前もありそうですが………かの神話の世界樹の頂が目に見えるところにはさすがにないでしょう。」
思わずそんな期待に近い言葉が出たが、マイムの言う通りその可能性は低いだろう。
何せ今回やってきた学園の名前は『百鬼夜行連合学園』
すれ違う生徒の恰好は巫女服や和服を改造したもの、立ち並ぶ建物には暖簾や提灯、果ては最初から見えていた桜の木々。
明らかに和風チックな学園だったからだ。
「いやー………しかし、このキヴォトスに召喚されてから薄々感じていたんですが、銃を持っていない生徒がほとんど見かけませんね。」
「そうなんだよねぇ。何せ銃を持っていない生徒より裸で歩き回っている生徒の方が多いらしいよ?」
「………それはある意味世紀末じみているような。」
「実際物盗りとかも多いからいうならきれいな世紀末ってとこだろうね。いや、きれいな世紀末ってどういうこと。」
飛び出た言葉の矛盾にセルフでツッコミを入れながら百鬼夜行の自治区内を進む。
すれ違う生徒たちから時より奇異なものを見るような目線を感じるが、やっぱり銃を持っていないというのが異常に見えるのだろう。
マイムもそれを感じているのかどこか落ち着かない様子だった。
まぁ、それはそれとして百鬼夜行の風景は目の癒しであることに変わりないから楽しませてもらうが。
「そういえば今回の依頼主、お祭り運営委員会のみなさんのいる
それなりの時間を歩いたからか額に雫を浮かべ、確認ついでにそう聞いてきたマイムにわたしは携帯の画面を起こした。
そこに写った一枚のポスター。『百夜ノ春ノ桜花祭』と大きく記されたその祭りが今回わたしたちがやってきた理由だ。
まぁ、詳細はその百夜堂についてから話すとして───うん、距離的にあと少し歩けば着きそうだ。
「あ、危ないです─────!!!!」
なーんて思っていた矢先に何やら事件性のありそうな声が後ろから聞こえてくる。
何事かと思っていたが、声が聞こえたのとほとんど同タイミングで背中に誰かがぶつかってきたような感覚が来た。
幸いハイパーアーマーが働いていたからわたしは身じろぎ一つなかったが弾き飛ばされたのか背後できゃん!?という可愛らしい声と尻餅をついた音が聞こえた。
「おや…………」
興味深そうな声を隣にいたマイムが上げる。
それもそのはず。完全に気を抜いていた自覚はあったが、実際ダメージにもなっていない。だが、今ぶつかってきた相手はわたしに気取られずに攻撃を当ててきたのだ。
というかハイパーアーマーで防いだってことはアロナちゃん寝てたな?
まぁ、そんな余談はともかく相手は相当なすばしっこさを持っているようだ。
そう思いながら振り向くとそこにはぶつけた鼻先をさすっているもふもふのしっぽと獣耳*1を生やした生徒がそこにいた。
格好はセーラー服の上に和服を羽織っているところから見てここの百鬼夜行の生徒で間違いはなさそうだ。
「いったた…………」
「ごめんね、大丈夫?」
ぶつかってきた生徒にそう声をかけると彼女は思った通りの素早い身のこなしで何事もないように立ち上がった。
「い、いえ!!これでもイズナは鍛えていますので!!えっと、そちらにお怪我はありませんか!?」
「1ドットも減ってないから大丈夫だよ。それより君、もしかしなくても追われてる感じ?」
「1ドット………?」
自分をイズナと名乗った生徒が来た方向を見ると巫女服のような服を来た3人組が通りに入ってきたところで辺りを見回している。
明らかに焦っていた様子だった彼女がいることから追われる立場であろうことは想像に難くない。
それにここの通りは人通りも多いとはいえまぁまぁ開けた場所だ。見つかるのも時間の問題だろう。
「見つけた!ミモリ先輩、あっち!!」
ほーら、やっぱり。追っていたイズナちゃんのことを見つけた3人組かこっちに向かってくる。
─────ちょっと待って2人くらい格好がやばいのがいる。一瞬目を疑ったがそれが現実であると認めた途端に戦慄に近い感覚を覚える。
端的に言うと胸がデカい。着ている制服に対して合ってない。片方は背はわたしとそう変わらないがぶら下げているものは凶悪で胸がパツパツだし、隣のなんだか眠たそうに目を擦っている子は下手なことをするとラッキースケベもかくやなボタン飛ばしが敢行されそうなレベルでパッツパツだ。
残り1人が正反対なお清楚雰囲気醸し出しているのも相まって非常に目立つし目に毒だ。
ちょっと!!巫女服を着ているんだから清楚でいるべきでしょう!?いや、確かにうちにも巫女服着てて胸がまろびでそうな連中*2いるけどさぁ!!それをもってしてもなにあのハレンチ!!教えはどうなってんだ教えは!!
「よし、あのハレンチ集団に捕まるとなにされるかわからないから君を助けてあげよう!!」
「は、はいぃ!?」
突然のことにお口をあんぐりと開ける彼女だが有無を言わさない様子でマイムごとワープ。
百夜堂のことも考え、通りからあまり離れていない路地に移動する。
「いやぁー………服装もとんでもな人もいるんですねぇ。世界って広い………」
ワープしたあと途方に暮れたような目で自分のまな板に近い胸をさするマイム。
いや、あれはどうみても相手が悪いと思うから気にしなくていいと思うよ。
「あ、あの………イズナを助けてくれてありがとうございます……ですが、あなた方は一体………身なりからして生徒ではないみたいですが………」
「連邦捜査部のシャーレって知ってる?わたしはそこで先生なんてやってる諏訪子って言うんだ。」
「ボクは───その手伝いに駆り出されたマイムと言います。」
マイムが話を合わせてくれた。正直助かる。
ここで元いた世界の話をするのも億劫になるからね。
そしてイズナちゃんはシャーレの名前を聞くとどこか引っ掛かるものがあったのか唸るように首を傾げていた。
「シャーレ、それに先生…………ああ!!イズナ、聞いたことがあります!!シャーレにはどんな問題でも嵐のように解決してしまうすごい人がいるって!!」
「ん…………嵐?」
イズナちゃんの言葉に首を傾げているとどうやら最近シャーレに対する噂が広まっており、どうやらどんな問題も嵐のように破壊しまくって解決してしまうなんていうものらしい。
まぁ、実際そういうのばかりをやってた自覚はあった。スランピアとかいう廃遊園地で謎に動くマスコット的なのを破壊したり、カイテンジャーとかいう寿司狂い集団の鎮圧、果ては廃棄された工場で四角いロボットを粉々にしたりしていたが。
「諏訪子さん、どうにも聞いていると彼女から物騒な話題しか出てこないんですけど………先生とは普通は生徒に対して勉強とかを教えるものでは?」
「……………いや、わかるわけないじゃん。この間まで勉強とかからっきしだったんだよ?」
「……………これはしばらくボクがシャーレに常駐した方が良さそうですね。先生なのに教養がないようでは示しがつきませんし。」
「え」
マイムの言葉に動揺のあまり目線をあっちこっちへ忙しなくさせてしまう。
だって、ただでさえ書類仕事で死にそうになっている上にそこにお勉強の時間なんざ組み込まれてしまったらいくらなんでも過労死待ったなしだ。
いや、神様という種族に過労死の概念があるかはわからないがとりあえず嫌だ。
「いや、そっちの仕事とかあるし、別にいいよ、うん。だって大変でしょう?お貴族様の業務って。」
「ボクがいない程度で業務が滞るなんてことがあったらいざというとき大変ですからね。とっくの昔にそういう体制は整えています。でないとおいそれと大会にも出られませんから。」
「あー………そう………まぁ、それもそうかぁ」
「あ、あわわ………先生がなんだか物理的に萎れていっているような………イズナは何かの忍術にかかってしまったのでしょうか!?」
遠い目をしながらちっぽけな抵抗をしてみたが、やはりというかなんというか。あまりにも儚いものだった。
感想とか気軽くれるとすっごい嬉しい。作者のモチベがあがる。
一口キャラ解説
マイム・ハイドロリック・ソーサレス
交差氏製作
交差氏による魔理沙改変
新章第五回ラスボスとして有名なガンドロイド・ルイスの製作者でもある。
東方原作だと魔理沙は水属性が一番適している設定にちなんで水魔法に特化した魔理沙がコンセプトとのこと。
技も水のレーザーや一定時間地面に姿を隠すダイビングや雨乞いなど水が絡んだものも多いが、雨乞いからの派生で雷を落とすことも可能。
さらに交差氏の制作キャラに共通することだがペネトレイト持ちで高カラーになると設定次第で隔離まで解禁される。
ちなみに一人称はボク。イメージCVは新機動戦記ガンダムWのカトル・ラバーバ・ウィナーとのこと。