「あの、いったい桜花祭の何が気に食わないんでしょうか?」
やってきた商店街の会長、ニャン天丸にそう尋ねたシズコちゃん。
それに会長は人間らしく顎をさするような仕草をしながら首を横に張った。
「さぁね………ただ強いていえば、今回は大きく変わったことがあるだろう。」
「変わったこと、ですか?差し支えなければ教えていただいても?」
「ああ、昔からこの『百夜ノ春ノ桜花祭』の最後には伝統的に花火が打ち上げられていた。でも、今回は少し違うんだろう?新しい試みだとかどうかで。」
会長の言葉に反応したのかシズコちゃんの目線が客席からはあまり見えないバックヤードに向いた。
その視線を追っていくとそこにはパッと見ただけでもわかるくらい大きな機械が置いてあった。
あれだけの大きさだ。あれを使って何かしようっていうのならかなり大掛かりなことになるのは想像に難くない。
「…………はい。今回の桜花祭のために、特別に用意したものです。」
「花火大会………それにあの規模の機械………プロジェクションマッピング。いえ、どちらかといえばホログラムでしょうか。」
「ホログラムって…………あれでしょ、中身のない立像を投影する奴。」
「マイムさんの言う通りで、あのホログラム投影機は今回のお祭りのフィナーレのために、ミレニアムにお願いした特別な装置です。」
「花火を再現する、天気も煙も関係ない、スペシャルでナイスな機械だと聞きマシタ!」
「それはそれは…………一大イベントのフィナーレを飾るともなれば規模も相当なもののはずです。それを全てホログラムで賄うのであれば────」
「まぁ、結構な金がかかっているんだろうさ。」
機械にはそれほど造詣はないが、マイムと商店街の会長が言ったようにそのホログラムを出す機械に相当な資金が使われているのは察せられる。
とはいえ、流石にそんなちんけな理由で妨害に出ているのだとしたら一笑に付したいものだが。
「なんにせよ、何かが変わるということを誰しもが簡単に受け入れられるわけじゃない。」
「………おっしゃられていることはわかりますが、それはあなたもですか?」
「昔の話だ。」
マイムの質問にぶっきらぼうにそう返した会長。
どうやら会長も昔はお祭り運営委員会とは対立する立場にあったようだ。今は違うということは彼女らの熱意に絆された、と考えてもいいかもしれないけど……
「儂だって今更この話を蒸し返したいわけじゃない。ただ、気に食わんと思う奴らもいるだろうなって話だよ。学生がこんなに金を使って……ってな。」
「私たちも趣味や道楽だけでやってるわけじゃありません!全てはお祭り運営委員会の委員長として、桜花祭を素敵なものにするために!それだけは自信を持って言えます!」
「ハイ!お祭りというのは、毎年どんどん楽しくなっていくべきデス!」
桜花祭を確実に成功させたいという二人の表情は熱意にあふれていた。
いいねぇ、若い者のバイタリティにはときどき驚かされる。
………まぁ、年寄り臭いことを言ったところ、わたし自身も歳がいくつだがあやふやな部分があるが。10年と少しは確実なのだがなんとなしに数千年は生きていた覚えもある。まぁ、あまり関係のないことだ。
とりあえず今は相手を見定める必要がある。
「正直なところ、どう思う?あの会長さん。」
「ボク個人としては比較的怪しく見ています。もっともここにきて間もないので決めつけるのは時期尚早であることも理解していますが。」
「うーん、やっぱり?なんか胡散臭い気配を感じるんだよね。普通、閉店しているお店の中に挨拶もなしに入り込んでくる?」
「それだけお祭り運営委員会と交流があるんでしょうけど、少しばかり非常識には見えてしまいますね。それとも何か気がかりなことでも起きたのか。」
会長が帰ったあと、わたしはマイムと一緒に百夜堂の外で彼について話し合っていた。
どうにも違和感がぬぐえなかったから偶然とはいえそういう腹の探り合いの経験もあるマイムを誘ったがどうやら正解だったようだ。
あの会長はクロとみてよさそうだ。となると急に百夜堂に来たのは突然現れたわたしたちの偵察か。
さらに百夜堂にも何回か来たことがあるということはこっちの動きを見るために盗聴器やらが隠されてもおかしくはなかった。
結果論だったがそれも正解だったようだ。
「昔の話、と会長は言っていましたがそう簡単に人の意志は変わりません。年を重ねれば重ねるほど人は柔軟には物事を考えられなくなります。金が絡むのならなおのこと。」
「言い方悪いけど要は老害思考ってこと?」
「どちらかと言えば自らの利権にしがみつく錆び、でしょうか。ともかくあの魑魅一座が何者かの依頼で動いている以上あの会長を第一容疑者としてみたほうが賢明でしょう。」
マイムのさんざんな言いように思わず苦笑いを隠しきれない。
わたしはストレートな言い方をしたが、意外とこういうのはちょっとオブラートに包んだ言い方の方が結果的にひどくなる。
「さて、それじゃあどうしようか。敵も見つけたとはいえまた権力者の手合いだ。アビドスのときよりは楽だろうけど尻尾をつかむ必要があるのは変わらない。」
「そうですねぇ………やはりボクたち2人で魑魅一座をあらかた捕まえてしまうのが一番手早いでしょうけど。」
「やっぱりそこはね?生徒たちに手が余る相手ならともかく、基本的には手助けがメインさ。過干渉は彼女たちの成長する機会を奪ってしまう。」
「先生である以上、それが一番でしょう。先生は答えへ導く者であり、解答者ではありませんから。ああ、そういえば諏訪子さんが戦っている間に少し調べていたんですが、イズナさんを追っていた三人組、覚えていますよね?」
「あの奇抜な巫女服集団のこと?」
覚えていますかと聞かれればそれははいだ。あんなインパクトのある衣装、他所ではなかなか類をみないだろう。
「おそらく委員会とは別で一連の襲撃をどうにかしようとしている勢力はあります。イズナさんを追っていたのは彼女が唯一顔が割れていたからでしょう。」
そういってマイムは一枚のメモを取り出した。そこには周りへの聞き込みでもしていたのかさまざまなことが書かれてあったが、それらをまとめるように矢印で線が引かれた先に強調するような書き方で『修行部』の名前があった。
「彼女たちはどうやら一種の自警団のようです。確実を保証できませんが、雇われであるイズナさんを追っていた以上同じ目的の可能性は高いはずです。足を運ぶ価値はあると思います……恰好はともかく。」
最後の言葉にマイムは遠い目で視線をそらしたがともかく、彼女の言う通り目的が同じであるのなら行ってみる価値はあるだろう。
協力を取り付けられるかもしれない。そう思って修行部に会いに行ってみることをシズコちゃんに提案してみたのだが、どうやら修行部のとんちき具合はあの服装だけに留まらなかった。
「しゅ、修行部ですか?………修行部かぁ。」
「な、何か問題でもありましたか?すみません、ボク達はここに来てから日が浅いので………」
「………問題は、まぁあるといえばあったりします。いえ、別に修行部の実力を疑っているわけではないのですが。」
とても渋い顔を浮かべたシズコちゃんに慌てるマイムを見てそうではないと言いながらさらに渋い顔を深めた。
「先生、それとマイムさん、いいですか?お二人は百鬼夜行に来られるのは初めてだそうなので教えますけど、この学園で何かトラブルが起こった時に相談する相手として主に二つあります。実質的な生徒会の『陰陽部』と『百花繚乱紛争調停委員会』、この二つです。」
言われてみればそうだ。一発目がほとんど風前の灯火なアビドスだったから抜けていたが本来なら生徒会があらかたの諍いに対応や協議をしなければならない。
それに後者もだいぶ仰々しく長ったらしい名前だが聞いた限りだと争いごと専門の対応部署のような雰囲気を感じなくもない。
ただ話をしていたシズコちゃんの微妙な表情から察していたが、残念なことに百花繚乱は今現在全員が不在。そして肝心の陰陽部の方はどうかというとどうにも話を持ち込んでものらりくらりと話題をそらされてしまいきちんとした対応をしてくれないそうだ。
「………些か目に余るような怠慢ですが、何か事情のようなものがあるんでしょうか。とにかく頼りにすることは難しいと。」
「はい。で、お二人の言う修行部は、端的にいえば毎回修行のためと言いながら、色々とよく分からない活動をしてる部活です。例えば、修行の一環として寝ながらジグソーパズルをやる人とか、素敵なレディーになるためと言いながら、何故か街のチンピラたちを退治してる人とか、大和撫子としての嗜みとか言って、読心術を使える部員もいるとか……」
歯切れも悪いからどういうことかと思っていたところに飛び出てきた支離滅裂な行動の羅列にわたしたち二人の思考はそこで固まってしまった。
いや、理想と行動の一つ一つは理解できるのだがどうしてそれらが組み合わさっているのかがまるで理解できない。
「………どうする?なんだかHIGE*1とまではいかなくてもそれなりにカオスな連中っぽいんだけど。」
「……百聞は一見に如かず、です。とりあえず行ってみましょう。」
「行ってみまショウとは……どこへなんでショウ?」
「まぁ、そこらでさんざん騒ぎ起こしてる魑魅一座のとこだろうね。犬も歩けば棒に当たる、とまではいかないけど、今はトラブルあるところに修行部の姿ありってことさ。」
乾いた表情でマイムを見ていたが、険しい顔のまま少ししたあとにそう結論付け、百夜堂の周辺にいるであろう魑魅一座の掃討に打って出るのだった。
製作者はしげふらいど氏
とりあえず試合が始まると演出等々でしちゃかめっちゃかになる。そして気づけば補完計画撃って自爆したりする。なんなら開幕で自爆したりする。でも自爆を取り上げると彼は神中位まで行く。やることなすことがとにかく派手。それがHIGEである。
ちなみに嫁さんがいる。
最近のきぼぜつは編集技術が素晴らしい御方が多くてええのう……