「ところでさ、アンタってホントに先生なの?」
「わたしにもよくわからん。」
「…………いや、そこは見栄でもいいから言っときなさいよ。」
学校に攻め込んできた不良たちは撃退できた。
元々慣れていたのと、わたしが弾薬とかの物資を持ってきたことで余裕のできたアビドスの生徒たちの前には割と烏合の衆だったようだ。
そのあとわたしは彼女らに廃校委員会の部室に案内されて説明を受けることになったが、そのうちの猫耳の女の子、黒見セリカちゃんの言葉にそう返すとジトっとした目線を向けられてしまう。
一応シャーレの身分証みたいなのはあるから問題はないとは思うが。
「セリカちゃん、ダメですよ?いくら私たちより小さく見えても先生は先生です☆」
「そりゃどうも。だけどそれはせめて子供扱いしてない状態で言って欲しいな。」
わたしが第一印象で決めた呼び名、ほんわか巨乳こと十六夜ノノミちゃんに後ろから抱きしめられた状態ではほんとに威厳も何もない。
…………いや、ホントに大きいなこの子。当たってる感触が半端ない。
制服の上からわかる時点で相当だとは思っていたけどさ、まさかここまでとは。
これはグローリアちゃん*1もかくやというレベルの大きさだ。
「ごめんなさい☆こんな可愛らしい人が来たのはセリカちゃんとアヤネちゃん以来だったので♪」
(それはそれとして………そこまで絶望的ってわけじゃなさそう?)
廃校委員会の面々の様子や顔つきを見てそんなことを思う。
雰囲気が悪くギスギスしている様子はない。なんなら関係性に問題はないと言い切れる。
手紙の様子からは結構深刻そうだったんだけどなぁ…………まぁ、取り敢えずもう少しこの子たちと交流を深めた方が良さそうだ。
(なんか警戒されてるみたいだし…………)
そう言って自分の視界から微妙に見えない位置にいる一人称おじさん、小鳥遊ホシノちゃんの方に意識を向ける。
時折あくびとかして眠たそうにこちらのことをまるで意に介していないようだけど、わたしがいつ変なことを起こしてもいいように、持っている銃をすぐに撃てる状態にしている。
落ち着かないが、突然部外者がやってきたとなればそういう風になるのも仕方ないか。
「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど。」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩………勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか………」
ホシノちゃんの冗談に苦笑いを浮かべるアヤネちゃんだがそれはその通りだ。
だが、ヘルメット団の不良たちは一体なんのために学校を襲うんだろうね。
ただ単純に暴れたいだけなのか。ならその余り溢れてる活力を別の方向に向ければいいのに、というのは恵まれた人間の考え方だろうね。
不良と言われている以上おそらく周囲からその生徒に対する評判も良くはないだろう。だけど生きている以上お金やら何やらは必要となると、やっぱりそれかなぁ。
あんまりキヴォトスに詳しくなったわけではないから確信を得ることはできないけど。
「あのヘルメット団とかいう不良の集まり、一度や二度とかいう頻度で来てるわけじゃないんでしょ?」
「倒しても倒しても時間が経てばまたやってくる。正直キリがない。」
わたしを挟んで会話するホシノちゃんとアヤネちゃんの話に乗っかるようにヘルメット団について聞いてみると、犬耳の生徒、砂狼シロコちゃんが憮然とした顔でそう言った。
どうやらかなりの回数を重ねられている様子。何回も襲撃できるってことはヘルメット団はかなりの規模の集団だろうし、どこか近くに前衛基地みたいのがあってもまぁ、おかしくはないかな。
「ご覧になった通り、我が校は現在危機に晒されています。そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません……」
(……………やっぱりだいぶ深刻そうなのに間違いはなさそうだ。)
アヤネちゃんの言葉にわたしはアビドスが崖っぷちに立たされていることを察する。
「ともかく間に合ったようでよかったよ。これからが本番ってやつなんだろうけどさ。」
「それは…………そう、ですね。」
一瞬言葉を詰まらせたアヤネちゃん。不良を倒すって問題だけならそういう反応にはならないとは思うが、やはり廃校の原因には別の理由がありそうだ。
「そういえば、一応少しは調べては来たんだけど。このアビドスって今ここにいる5人で全生徒なんだよね?」
そう言って聞いてみた質問に5人は難しい表情を見せながら頷いてくれた。
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして出て行った。学校がこの有様だから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに襲われている始末なの」
「現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど……」
「んー?あんまりそう否定的になることはないと思うよ。何回も襲撃できるくらい規模のある集団の攻撃を事実君たちは
「あ……うん。ありがとう、先生。」
「もー照れちゃって可愛いねシロコちゃん。中々レアな表情を引き出すなんて、先生も包容力あるよー。」
「包容力ならもう少し身長を増やしてから欲しいものだねぇ。」
「先生は褒め上手ですね。私も褒めてくれませんか?」
「いや、今そんな事してる場合じゃないでしょ!」
「そ、そうです! 今はカタカタヘルメット団のことを考えないと!」
ホシノちゃんの茶化しとも取れる言葉にそう返していると話が脱線しかけてアヤネちゃんが慌てたように軌道修正してくれる。
「まーまー。そう怒らないでよ。計画は既に練ってあるからさー。」
我に策ありといわんばかりのホシノちゃん。ただそれ言った時の他の4人からの反応はありえないものを見たかのようなものだったが。
まぁ、ともかく何か策があるなら聞いてみようじゃないか。
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー。」
あー、まぁ理にはかなっているか。
ホシノちゃんの言う通り向こうは今が一番消耗しているだろうし、逆にこっちはもってきた物資で体勢を万全に整えられる。
サイクル化しているなら想定外の状況に持ち込めるからこちらに有利に傾きやすいと。
「ちなみに前衛基地の場所はわかってるっていう前提でいいんだよね?」
「ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか。」
30キロかぁ、ここに初めてきた時も同じ距離移動させられたなぁ。
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし。」
「そ、それはそうですが……先生はよろしいんですか?」
ヘルメット団の基地は襲撃しに行くという方向で固まり始めたとき、アヤネちゃんが不安そうな目でこちらを見つめてくる。
確かに場所はわかってて個々の実力にも差があるとはいえ相手は集団。一旦待ったをかけたくなるのも当然の反応だろう。むしろストッパーがいると見守る立場としてはやりやすい。
「いいと思うよ。投じられた一石が何を起こすのかはわからないけど、やってみないとなにも進まないからね。」
MUGENのSSって割と需要あるんかねぇ…………まぁ、珍しいとは思うけど。