1人でショッカーと戦うことを決めてから2ヶ月が経過した。
普段は、アルゴの用意してもらった第1層の圏外にある山々の中にある隠れ小屋に籠りながら生活をしている。
蜘蛛男との戦い以降、ショッカーによるものと見られる殺人などの動きは特にない日々が続いていた。あの日の選択を早とちり過ぎたかなと考える時もあるくらい世界は平和だ。
アルゴによると、コハルはキリトとアスナと共に攻略に励んでいるらしい。最初は、落ち込んでいたコハルも最前線の剣士として活躍しているみたいで少し安心していた。
きっと彼女は、これからも強くなるだろう。
「──さて、行くか」
今日は、気晴らしに近くのモンスターを狩ろうと決めていたのでそこへ向けて出発する。人気のない山々にあるこの小屋は、通常なら見落としても攻略には問題ないエリアであるから先を急ぐ彼らからの目を欺けるにはもってこいだ。
道中サイクロン号を変形させ仮面ライダーに変身しながら狩場へ進み俺は、モンスターを次々と殴りながら倒していく。多少、レベルを上げながらしばらく時間が経過した。最初のようにすぐレベルが上がることがなくなり1つのレベルに必要な経験値が多く必要になってくるとレベリングにも時間がかかる。
まるで流れ作業のように感じた。
「これじゃ、俺がモンスターだな」
俺に挑み敗れていくモンスター達が次々と消えていく。昔は、そこにコハルとの会話やほかの攻略組とのやり取りなどがあったがそれを全て失うということは、ここまで空虚な心になるとは思っていなかった。
「──辛いな、この生活」
そう呟いた時、アルゴから連絡が入る。要件は、ショッカーの件で得た情報があるからすぐ来て欲しいということだった。俺は、変身を解除してサイクロン号に乗りはじまりの街へと向かう。
「──来たナ」
はじまりの街に入るとコハルや顔見知りにバレないようにフードで顔を覆いながら待ち合わせしてた人気のない場所へ行く。
「またせたか?」
「いや、今来たところダ」
そう言いながらアルゴは、早速本題である最近上の階層で起きている事件について話してくれた。どうやら最前線の階層でプレイヤー同士が圏外で殺し合いをしてる事件が発生してるみたいだ。
「──プレイヤー同士が殺しあってる!?」
「これを見てくれヨ」
アルゴは、そう言うと記録結晶を取りだして映像を見せてくれた。映像には数人のプレイヤーが剣をこちらに向けている姿が映っている。その後、プレイヤー達による戦闘が始まると映像が乱れ途絶えてしまう。
「──既に十数人が死んでル プレイヤー殺しの共通点は、赤く光る目……ショッカーの仕業じゃないカ?」
「何かで操られているってことか──よし、俺も前線へ行くよ!」
「サンキュー、助かるヨ」
そう言って俺は、アルゴと一緒に最前線の攻略組がいる階層へとむかうのだった。
◇◇◇
最前線の第5層に到着した。
この階層のデザインテーマは、遺跡。
そう呼ばれるに相応しいくらい薄暗く不気味な空気が流れている。辺りを見回すとオバケに弱いプレイヤーがプルプル震えているのが見えた。
「これは、人を選ぶな」
「この薄暗さだからPK自体も多いんだガ、今回は異常ダナ」
「とにかく先に進もう」
俺は、そう言いながら先に進む。ここには、地下のダンジョンがいくつもありダンジョン数は、今までの階層より多い様だ。俺は、少しこの階層を歩きながら進むが情報屋として有名なアルゴの元へ攻略組が情報欲しさに次々と集まってくると彼女を囲み身動きが取れなくなる。
「──すまない、先に行っててくれるカ?」
「あぁ、分かった」
俺は、そう言うと一人で捜索を開始する。ダンジョンをソロで攻略しながらPKに狙われるのを待っているのだが、奴らは一向に現れる気配がない。ここではないと区切りをつけて次のダンジョンへ向かおうとした時、人の悲鳴が聞こえた。
俺は、急ぎ声の方へ向けて走り出す。ダンジョンから離れた所で倒れ込んでいるプレイヤーの姿が三人ほど見えた。彼らは、俺が見た事ある人物たちだ。
「──大丈夫か?」
「たす……けて──タカシ」
麻痺と盲目により視界と体の自由が奪われて倒れていたのは、攻略組として前線にて活動していたコハルとキリト、アスナだった。俺の声を聞いてコハルが反射的に俺の名前をか細く言うのが聞こえた。
「何故、ライダーがここに!?」
目の前には、操られているであろうPKプレイヤーとその奥に白衣の男が立っていた。アルゴの情報通りだ。
「──お前がやったのか?」
「いかにも私が作ったアバターの身動きを操ることが出来る電子ウイルスだよ、彼らに私が作った麻痺と盲目になるデバフ交換付きの武器を渡して代わりにPKしてもらっているのさ」
「人の身動きを操って人を殺させるなんて……下劣なことを」
そう言いながら俺は、白衣の男の顔を注視すると豚鼻のような独特な鼻を持つ彼は、白衣を脱ぎ捨てその姿を顕にする。
「──私の名は、コウモリ男! この世界で科学を極めし者だ」
「科学を極めし者だと……ふざけるな! お前みたいなやつを悪魔って呼ぶんだよ!」
俺は、そう叫ぶ。
しかし、コウモリ男は、ヒヒヒと笑いながら両腕にある羽を動かして宙を浮くとゲームバランスを無視した奴の体は、高度制限なく俺の跳躍では、届かないところまで飛ぶと飛行を続ける。
「ライダーよ、君の能力は蜘蛛男の時に得た戦闘データを元に研究済みだよ 一飛びの跳躍で最大15メートル程度、ここまで届くかな?」
そう言いながらコウモリ男は、高いところから俺を見下しながらその場から逃げようとする。逃がさない──そう思いながら俺はサイクロン号を呼ぼうとする。
しかし行かせないと言わんばかりにPKプレイヤー達が俺の前に立ち塞がる。
「操られているだけだの彼らを手にかけれるかな? ライダー!」
「──なんて卑怯な」
彼らは、武器を手に俺に襲いかかる。多少攻撃ダメージを受けながらも彼らの体を掴み投げ倒すも彼らの武器に付与されているデバフ効果が発動する。
「殺せ、仮面ライダーを殺せ!」
上空で笑いながらコウモリ男が言う。彼の人を嘲笑う姿に怒りが収まらない。俺は、彼の指示に従い再び間合いを詰めてくるプレイヤー達に我慢出来ず、その場で振り上げた拳を地面に叩きつけると地形を変形させて彼らの体勢を崩すとその場から跳躍して彼らから離れるとサイクロン号に乗る。
常人の体を身動きを封じる麻痺は、俺にとっては少し痺れている程度で力も入る。また、盲目に関しては、視界を奪われているが複眼の間にあるOシグナルがコウモリ男をキャッチしている。サイクロン号を自動走行に切り替えコウモリ男を追いかける。
「──しつこい奴だ」
「逃がさない!」
ある程度、追いかけてからデバフの効果が切れて体の動きや視界が元に戻ると自動走行から元の上体で切り替えた俺は、サイクロン号を跳躍させて一気に30メートルぐらいの高さまで飛ぶ。
「──何!? 貴様、そんなことも出来るのか!?」
「──終わりだ!」
そう叫びながら俺は、サイクロン号を土台にしてジャンプする。一気にコウモリ男より高い位置へと飛ぶ。
「──ライダーキック!」
技名を叫びながらコウモリ男目掛けてライダーキックを放つと彼ごと勢いよく着地する。その際凄まじい地響きと共に衝撃波が周囲を襲う。
普段より高い位置からによるライダーキックの威力は、普段の数倍の威力を誇っていた。そのせいか、コウモリ男の腹部を貫通させる。ゆっくりと貫通した足を退かすとコウモリ男は、ポリゴン片となり散っていく。
コウモリ男が消えても込み上げた怒りは収まらない……。
彼が手をかけるように仕向けたプレイヤー達が正常に戻っても残された影響は、想像がつかないだろう。
「──終わったのカ、ター坊」
「あぁ、終わったよ後はよろしくアルゴ」
そう言って俺は、サイクロン号に乗りその場を去るのだった。
◇◇◇
──大丈夫か。
視界が奪われて目の前にいる人が誰か分からなかったコハルは、PKプレイヤーにより命を奪われそうになる。その際に別のプレイヤーから声をかけられた時、何故か行方不明になっていたタカシの声を感じたコハルは、思わず彼の名を口にしていた。
「──コハルっち大丈夫か?」
少しして麻痺や盲目のデバフが消えて体の自由や視界が元に戻ると少し離れた所に地面を削ったかのような大きなクレーターや縄で縛られているPKプレイヤーの姿があった。目の前には、アルゴの姿や同じデバフから元に戻ったキリトやアスナの姿があった。
「私は、大丈夫です──この人達は?」
「この間話してた麻痺などのデバフを使ってPKをする集団だヨ」
「──違う! 俺たちは操られていただけなんだ! 信じてくれ!」
アルゴの声に一人のプレイヤーが否定する。この姿にコハルは、違和感を覚えた。
「──とにかく、話は後で聞くからナ」
「勘弁してくれ! 監獄エリアは嫌だ!!」
「本当に操られていたんだ! 俺たちの意思じゃないんだよ!!」
そういう声が響く中、アルゴは無情にも彼らに監獄エリアへ設定されている回廊結晶を取り出すと少し同情しながらも死んで行った者たちへの手向けとして彼らを監獄エリアへと転移させた。
「コハルちゃん! 大丈夫?」
全てが終わりほっと一息を吐くコハル。それを見てアスナが彼女へ抱きつく。死への恐怖からかアスナの体が少し震えているのがわかった。
「──二人とも大丈夫か?」
「私は大丈夫です! アスナ、私は大丈夫だよ」
「うん、でも怖かったよね……」
本音を吐露するアスナ。普段あれだけ凛としてる彼女がここまで弱る所を見るとあれから時間が経過して自分たちの事を信頼してくれたのだと分かり嬉しくなるとコハルは、アスナを抱きしめる。
「うん、怖かったけど彼が助けてくれたから」
「彼? ここに居たのはアルゴだけど……」
コハルの言葉にキリトが首を傾げる。静かに泣き出すアスナの頭を撫でながらコハルは、タカシが以前残してくれた記録結晶の動画で言っていた、人には言えない彼だけの戦いがこれなんだと思いながら空を眺める。
どんなに遠く離れていても彼──仮面ライダーは、来てくれるそう確信しながらコハルは、呟いた。
「きっと貴方だよね──ありがとう、タカシ」