「──蝙蝠男は死んだか」
「仮面ライダーとやら只者では無いな……」
「こちらの戦力増やしつつ、仮面ライダーには気をつけよと伝えなければならぬ」
現実世界。
ショッカー本部の一室にてそんな会話が繰り広げられていた。彼らは、SAOの世界において改造人間を増やし世界征服を企む悪の秘密結社である。
仮想世界において優秀な改造人間を作ることや脳を弄って人間兵器の実験場として暗躍している彼らは、現実世界でも先に肉体を改造した改造人間も存在する。
「──さそり男を使い、毒殺でライダーを殺すか?」
「それもそうだな、さそり男を向かわせよう」
研究室に籠り日夜猛毒の開発を進めていたさそり男。彼の手により突然死を遂げた者は決して少なくない。
「──さそり男様、上からの命令で例の仮想世界に行き、仮面ライダーを殺せと」
「上が熱心に研究してるあの世界か……良いだろう、俺の猛毒が効くか楽しみだ」
そう言いながらさそり男は、SAOへダイブする準備を始めた。
ショッカーは、集めたナーヴギアを研究改良することによって改造人間になるために必要なインストール用チップをアイテムとしてのオブジェクト化やログアウト可能など出来るようにしていた。
人を人ならざる者へ変えれる彼らの科学力があればそういったことも可能なのか。
もしくは、フルダイブ技術について誰かがショッカーへ情報提供しているのか。
それらのどちらが正しいかは定かでは無いが、彼らがあの世界で良からぬ事を企てているのは確かなようだ。
◇◇◇
「──毒殺PK?」
「そうなんだヨ、毒を作ることが出来るのはター坊も知ってるダロ?」
アルゴに呼ばれ第1層からここ第11層にあるタフト主街区へと来ていた。
蝙蝠男が現れて人を操ったPK事件が起きてから数ヶ月が経過しており季節がめぐり春になった頃だ。あれ以降ショッカーに大きな動きがなく昼間は、フードで顔を隠しながら上の階層にてレベリングをしつつ夜は、出来損ないと呼ばれていた戦闘員を倒す生活していた。
データでできてるはずの世界だが何故かショッカーの改造人間を殺す際は、肉を断つ生々しい感覚が脳裏にこびりついて消えない。
「──確か、PK集団で流行ってるスキルだろ?」
「そうダ──でも最近ゲームバランス無視の猛毒によるPKが多くてナ」
「ゲームバランス無視の猛毒か」
そう呟き少し考え込むがどうもきな臭い感じがする。猛毒と言えば、自然界には、かなり強力な毒を持っている生物も存在する。あのチップには、他生命体の遺伝子情報を取り込んでアバターを変化させる効果を持つだったか。それだけではなく蝙蝠男のような自身の性能がこの世界でも問題なく使えるか研究する例もある。
「──猛毒を持つ改造人間が現れた、アルゴが言いたいのはそういう事か」
「その通りダ、この件についてター坊にも調べて欲しいんだヨ」
「そういう事か、わかった今回は別行動ってことか」
「すまないナ、よろしく頼むヨ」
ベータテストの頃と仕様が違ったりと上へ進むにつれて情報が大事になってきている中、本業である情報屋として情報集めに多忙の日々を送るアルゴ。
その少ない隙間で今起きているPK事件が怪しいと思える彼女の勘は、ショッカーの動きを追っている俺も助かっている。だが協力できない歯痒さからか悔しそうな表情をするアルゴ。俺はそんな表情をする彼女に任せろと告げてその場を後にすることにした。
「──さて、どうするか」
ぼそっと呟きながら天を仰いだ。アルゴから情報を得たとはいえ、まだ分からないことばかりだ。それに毒殺するPKプレイヤーがこの階層に来ているかも不明な中、探すのに一苦労かかりそうだ。
「あれ、タカシじゃないか?」
不意に声をかけられ振り返るとそこには、キリトがアスナやコハル以外の人たちと歩いているではないか。唐突だったので驚くもキリトのHPの所にギルドマークがついていた。
「──キリト、それって……」
「あぁ、ギルドに入ったんだ月夜の黒猫団だ」
「へぇ、キリトがギルドね……」
一人プレイ主義と思っていたキリトがギルドに入るとは、驚きはしたがそれだけこの世界の難易度が上がっているということなのだろう。
「キリトの知り合い?」
「あぁ、俺はタカシだ 今はソロで活動してる」
「もし良かったら君もウチに入らないか?」
「そうだな、お試しパーティならいいよ!」
ギルドリーダーであるケイタに誘われた俺は、キリトとも話したかったからお試しでギルドメンバーたちと交流することにした。
ケイタからパーティ申請が届き俺は、メニューを操作してパーティに加入すると早速レベル上げようと話になり俺たちは、第20層へ移動となった。
◇◇◇
「──タカシ、スイッチ!」
「オッケー!」
キリトに声をかけられ前後入れ替えると俺は、カマキリ型のモンスターを殴り飛ばす。勿論、変身はしていない。体術ソードスキル《閃打》を使ったのだ。少し火力が足りないかなと思いながらギルドメンバーのメイス使いであるテツオに声をかける。
「──テツオ、ラスト頼む!」
「任せろ!」
勢いよくテツオがメイスを振り下ろしてカマキリ型のモンスターにとどめを刺すとモンスターが消滅してテツオのレベルが上がりましたと言う内容のシステムメッセージが出る。それを見て他のメンバーも一緒に喜ぶ。
「タカシ、少し来てくれ」
俺は、キリトに声をかけられ彼の後を追いながら月夜の黒猫団から少し離れた所へ移動した。
「──タカシ、コハルに会わなくて良いのか?」
「もう俺の事嫌いになってるよ」
「そんなことないと思うよ、コハル今は血盟騎士団の副団長補佐として最前線で活躍してる」
「活躍は、アルゴから聞いてるよ」
「なら──」
なら会ってやれ。そう言いたげなキリト。第1層の時から半年程度の月日が流れ仮面ライダーの噂は、次第に悪くなっている。第1層時は、意気揚々としていた仮面ライダーが第2層以降姿を消した。
逃げた卑怯者──仮面ライダーそれが彼らが俺に名付けた皮肉込めた俺のあだ名だ。
「仮面ライダーは逃げた卑怯者──そんな状態で今や巨大ギルドの血盟騎士団副団長補佐様の横に立つことは出来ない」
「タカシ……」
「それに、俺は一人で戦わなきゃいけない理由があるんだ」
悲しみを乗り越えて前へ進むコハル。
アルゴから彼女の活躍を耳にするとその際に引け目を感じる。それにショッカーのこともある前の蝙蝠男の時は偶然に被害を受けてしまう。誰であろうとショッカーの犠牲者にはなって欲しくない。そう思えば思うほど、コハルや親しい人達を巻き込みたくないと思ってしまう。
そんなことを改めて考えていると聞いてはいけないことを聞いてしまったと思ったのかキリトが申し訳なく謝ってきた。
「そうか、深く聞いてすまない」
「キリトは悪くないさ……悪いのは全部俺だ」
「おーい!キリト、タカシ、みんな呼んでるよ!」
ギルドメンバーの中で唯一女性プレイヤーであるサチが俺たちを呼びに来てくれた。俺たちは、気まずさが残る中、話を切り上げてギルドメンバーと合流する。戻ると、ケイタが少し興奮しながら話しかけてくれた。
「タカシの体術スキル凄いよ!この世界を拳で生きる人初めて見たよ」
「まぁ俺は特別だから」
「これで、前衛が4人になるから戦いやすいよな!」
メイス使いのケイタがそういう。今回の戦闘にてアタッカーを務めたのは、俺とキリト、ケイタの3人だ。一人足りないと思いメンバーを見回すと先に俺らを呼びに来たサチの装備は、片手剣と盾を持っていた。
「4人目ってサチ?」
俺の問いにサチは、少し困った表情をしながら首を縦に振る。どうしてそんな困った顔をしているのか聞こうとした時、思っていることを察したケイタが代わりに説明してくれる。
「元々、キリトが入る前、前衛に変更しようって話をしてたんだが、モンスターが怖いらしく中々……な」
「ちょっと、恥ずかしいから勝手に言わないでよ!」
ケイタに顔を赤くしながら言うサチだが、前衛にとってモンスターへの恐怖心は、死に繋がるぐらい問題視するべき点だ。このままでは、このギルドで死人が出る事態になる可能性もある。
「怖いなら無理にやる必要はない」
思わずそう口にした。今までにないくらいはっきりとした意見にあたりは静まり返ってしまう。ケイタは、俺にどうしてと質問する。
「どうしてそう思うの?」
「俺とキリトが入った時点で前衛が3人になった、それにサチの性格からすると片手剣じゃなく距離の取れる槍の方がいいかもしれない」
ケイタは、確かにと呟き俺の意見に納得してくれたらしく後日、サチの件に関してはしっかり本人と話し合って決めていきたいと言う意見でまとまった。