SAO〜異界の仮面騎士〜   作:蒼龍ミヤイ

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第15話 怒りを込めて、そして……

 ダンジョン出口から勢いよく飛び出した俺たち。

 それを追うように三台のバイクがダンジョンから出てきた。

 全身黒いタイツ姿に猛毒を防ぐ為に用意された防毒マスクを被った三人の戦闘員がダンジョンを出た途端、バイクを乗り捨てて武器を構える。

 

「──コハルそこで待っててくれ」

「わ、私も!」

「頼むからここに居てくれ」

 

 そう強く頼むと彼女は、それ以上反論することは無くなった。苛立っているせいかコハルの前で力をセーブできる気がしない。

 これは、ケジメだ。

 コハル達を巻き込んでしまった弱い自分への怒り、残虐な殺戮を繰り返すショッカーへの怒りその全てを拳に込める。

 俺は、サイクロン号を降りて一人で戦闘員達と対峙する。

 地上で待っていたアスナとキリトがコハルの方へ近づき大丈夫だと言わんばかりの彼女の肩に手を添える。

 

「行くぞ、ショッカー!」

 

 叫びながら構えると彼らは、短剣や槍を手にして俺へ攻撃を仕掛ける。槍での突きや短剣を振り下ろすのを躱しながら腹部を殴る。

 全力で殴った一撃は、戦闘員の腹部を貫通する程の威力だ。

 現実なら即死レベルの威力。

 しかし、今の俺はそれに驚くことはしない、彼らの手に持っている武器を落とそうと手刀や蹴りで彼らの腕を攻撃するとまるで剣に斬られたかの様に綺麗に切断された。出血状態のデバフがかかり悲鳴をあげる戦闘員の顔面を最後に殴り彼らを戦闘不能にさせる。

 怪物のような力を思う存分振った。

 横倒れている戦闘員の防毒マスクを外すと彼らの顔を見ると強い吐き気が俺を襲った。

 

「──どうしたの!?」

「来るな!」

 

 心配して近くへ来ようとするコハルを俺は、声だけで制する。こんなに顔が変形した状態をコハル達には見せられない。もはや原型を保っていないくらいに垂れた皮膚や露出した骨や肉、以前蜘蛛男が失敗作と言ってたのはあながち間違いでは無い様だ。

 転生した時から仮面ライダーに変身できる様になっていた俺とは違い、彼らは改造人間へと至る為のチップをインストールするが適合に失敗となり歪な顔へと変化したのだ。ログアウトできないこの状況でこれだけ見た目が崩れれば、もう後戻りが出来ないだろう。

 せめてもの救いだと思い俺は彼らへとどめを刺す。ゆっくりと消える最中、彼らの顔はどこか安堵の表情をしてる様に見えた。

 そんな彼らへ黙祷を捧げようと目をつぶろうとした時、悪魔のような笑い声が響き渡る。

 声の方へ目線を向けるとそこには、さそり男が居た。

 

「仮面ライダー、次は必ず貴様を殺してやる! 貴様と関わりある人物も皆殺しだ!」

 

 高いところから見ていたさそり男は、そう言い残して姿を消した。

 手駒を失い分が悪いと思ったのだろう。今度は、どこへ居ても見つけて殺しに来そうな勢いだった。

 アイツが喋っているうちに転がっていた戦闘員の肉体は完全に消失してしまった。

 黙祷もまともに出来ず申し訳ない。

 

「──タカシ」

 

 静寂の中、コハルが隣へ来ると俺の名前を呼ぶ。

 皆殺しと言われ不安なのだろうかコハルの声はいつもより震えていた。それも当たり前か、知らない人から急に皆殺しと言われれば怖くなるのも無理はない。

 俺は、変身を解いてみんなの方へ向いた。

 

「一旦戻ろう、アルゴこのダンジョンを封鎖してくれ」

「それならお易い御用サ」

 

 気絶させたサチを回復させてから圏内まで送り届けて戻ってきたアルゴにそう頼むと彼女は快く引き受けて周知の為に各地を回ってくれた。こういった行動の速さにはいつも助かっている。

 残された俺達は、転移結晶を使いその場から圏内へと戻ることにした。

 

 

 

 ◇◇◇

「──じゃあ、私たちはここで」

 

 戻ってすぐアスナがキリトの腕を掴みながらそう言う。突然の彼女の行動に戸惑いながらキリトは、否定する。

 

「別にアスナと予定なんて……」

 

 言いかけた途端、アスナがキリトの足を思いっきり踏みつけた。痛っと口にするキリトに対してアスナが彼の耳ともで何かを囁いた。この夫婦的なやり取りに俺たちは、呆然としながら見てるとアスナは、キリトの腕を引っ張りながらその場を去る。

 

「──私たち、サチちゃんの様子を見に行くからコハルのことお願いね、タカシ君」

「ちょっと、アスナ!」

 

 去り行くアスナに声をかけるコハルだが、それを無視しながら先へ急ぐアスナ達。残されたコハルは、困った顔しながらこちらの様子を伺っていた。

 

「えっと……この後予定ある?」

 

 そう聞いてきたコハルは、少し申し訳なさそうにこちらを見つめていた。

 もちろん俺に予定はない。

 あるとすれば、さそり男との決戦に備えるぐらいだろうか。

 まぁやることとすれば英気を養うぐらいしかないが。

 

「特にないかな?」

「ほんと! じゃあ少しお出かけしようよ!」

 

 嬉しそうに俺の腕へ飛びつくコハル。逃がさないかのように俺の腕を絡めて抱きしめる。

 やばい、顔が熱い。

 何が原因で顔に熱を帯びてしまったかは言わないでおこう。

 容姿は、出会った頃と変わらないのに久々に会ったコハルは、何故か凄く可愛く見えた。

 原因は、身につけてる衣服が可愛いものになったからか、それともこんなにも積極的になったからか。

 

「顔赤いけど大丈夫?」

 

 そんなことを考えているとコハルに心配されてしまう。慌てて大丈夫と彼女に伝えると俺の腕を引っ張りながらコハルは、転移門の方へと向かうのだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 転移門を使い俺とコハルは、第4層の主街区へと来ていた。水の都であるこの街は、イタリアン系の料理などが美味しいと有名だ。

 

「ここにタカシと来たかったんだ!」

 

 すっかり有頂天になっているコハルは、周囲の視線など気にせずに歩みを止めることは無い。途中、有名な店などを口頭で説明してくれる。キリトとアスナが紹介してくれたんだと俺に教えてくれる。

 1人の間、寂しい頃もあっただろうに。

 彼女は、そこから立ち上がり今やアスナを支える優秀な補佐である。

 

「あれ……副団長補佐じゃねぇか?」

「本当だ!?」

「隣の男見たことねぇ顔だ、何者だ?」

 

 こういった周囲の声など今の彼女には聞こえてこないのだろう。少し前まで恥じらいのある女の子だったのに知らない間に大人になってしまったと思い知らさせる。

 しかし、いつまでも有頂天でいられても困る。俺は、コハルを現実へ戻すように声をかける。

 

「コハル、そろそろ腕を離してくれないか?」

「嫌だ」

「え!?」

 

 まさかの返答に驚いてしまう俺、すると歩みを止めてコハルは、更に俺の腕を抱きしめる。あまりの強さにそろそろダメージが入るのではないかと不安になるくらい力強い。

 

「お、おい……痛いんだけど」

「そう言ってまたどこかへ行っちゃうじゃんか」

「何でそうなる……」

 

 しばらく沈黙となってしまう。このままでは俺の腕がジ・エンドになってしまう。それだけは避けなければならない。

 

「──わかった 降参! お詫びに何か奢るから」

「ほんと! やったー! じゃああそこへ行こう!」

 

 飛び跳ねながら喜ぶコハルを見て流石に今日ぐらいは彼女の言うことを聞く事にした。

 店に入ると入口やカウンター辺りは、仲良さげな男女が席を埋めている状態だった。

 奥へ入れるのだろうかと不安になる。

 NPCである女性店員が入店した俺らを見て声をかける。

 

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

「二人です」

「ご案内しますのでこちらへどうぞ」

 

 そう言われ俺たちは、奥にある間仕切りによって仕切られた個室へと案内された。入口と違い静かな空間が広がるそこに俺たちは腰を下ろした。

 

「──高級感があるね」

 

 周囲を見渡しながらコハルは、そう言う。確かに入口の方で見てたのとは違う空間だが、メニューは一緒のようだ。メニュー表を開くとコハルが見えやすい様に向けて話を続ける。

 

「何飲む?」

「そうだね……じゃあこれ」

 

 メニューを選んでいると顔が一気に赤くなったコハルは、照れながら指さした。それを読むと俺の心臓は一気に跳ね上がった。

 なんと、カップル限定メニューを選択したのだ。要は、大きなコップに入ったジュースをハートの形をしたストローでシェアする物だ。

 なんか色々まずいと思って俺は、メニューを隠す。

 

「──コハル、これがいいの?」

「うん、ダメ?」

 

 やめてくれ、そんな上目遣いされたら何も言えなくなるではないか。コハルは数日のうちにあざとくもなってしまったのかと不安になるのだった。

 こんなのは飲めないと思った矢先、コハルが店員を呼び勝手にカップル限定ドリンクを頼んでしまった。俺は、止めさせようとしたのだが言うことを聞かないコハル。

 仕舞いには、お互い照れながら近距離でストローを口に加えると言う事態になってしまった。

 恥ずかしさからか、しばらく無言の空間が二人を襲うのだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 恥ずかしかった。

 そう考えながらお金を支払い店から出るとすっかり日も傾いていた。

 コハルも恥ずかしさを感じているのか、店を出ても頬が赤く染っていた。慣れないことをしたせいか、ドシッと疲労感が襲ってくる。

 

「──少し疲れたな?」

「そう……だね」

 

 会話が続かない。

 このままコハルを自宅まで送れば良いのか何をすればいいか分からなくなってしまう。もう少し女性との交流をしていればこの場面でも紳士に立ち回れるのだが。

 

「ねぇ、タカシ」

 

 帰路へ向かいながら歩んでいるとコハルが俺の袖を掴む。恥じらいながらも大胆な行動をする彼女を見て心臓の鼓動が更に加速する。

 今にも破裂しそうなくらいだ。

 

「──もうちょっと一緒にいたい」

「え!?」

 

 今日のコハルは、すごく積極的だ。

 一体、彼女にどんな心境で行動しているのか知りもせず、俺は彼女に流されるまま俺は、コハルを部屋に招くことになった。

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