──翌日。
俺たちは、トールバーナの中央部にある円形劇場へ向かっていた。
「──いよいよだね、なんだか不安になってきちゃった」
「怖い?」
不安げに話すコハルへ俺は質問する。朝を迎えてからやけに怖い表情をしていたコハル。ボスであるからか今までにない緊張感が隣にいて感じ取れた。
「怖いっていうか、前線に来ちゃったから私たち大丈夫かなって……ほら、戦闘とかも比べ物にならないくらい激化すると思うし」
「大丈夫、いざと言う時は俺が何とかするよ」
「──うん、タカシを信じてる」
俺は、コハルの言葉に頷いて答えるとそのまま円形劇場へと進む。
そこには、前線を走るプレイヤーの多くが集まっていた。劇場の舞台に立っている青髪の男性プレイヤーディアベルは、集まったプレイヤー達へ例を言ってから司会進行する。
「俺の名前は、ディアベル! 気持ち的にナイトやってます」
ジョークの混じった自己紹介に会場が和む。そう言った場の和ませ方を熟知している当たり俺たちより歳を重ねてそうな彼は、そのまま話し続けた。
「今日、俺たちのパーティが迷宮区の最上階でボス部屋を発見した」
誰もが聞きたかった情報を話すディアベル。それを聞き、周囲がざわつき始める。確か、チュートリアルの際に茅場が口にしてたフロアボスの居る部屋。そこを攻略しないと、上の階層へは行けない。
「俺たちはボスを倒し、第二層に到達してこのデスゲームもいつかきっとクリアできるってはじまりの街のみんなに伝えなくちゃならない! それが、今この場所にいる俺たち全員の義務なんだ! そうだろう、みんな!」
ディアベルの声に答えるように拍手や賛同の声があがり周囲が盛り上がる。周りの連中は、攻略する気満々のようだ。
よく見ると始まりの日以来、連絡の取れなかったキリトの姿もある。赤いローブを被ったプレイヤーの隣いるみたいだ。
「凄い活気だね」
「ようやくボスを倒せる権利を得たからね、みんなやる気がひしひしと伝わってくるよ」
俺たちがそう話していると、その喝采を切り裂くように独特な関西弁が劇場内に響き渡る。誰もが一斉に彼の方を見た。その容姿は、昨日俺たちが出会ったキバオウだった。
「あの人、昨日の」
「あぁ、キバオウだな」
キバオウは、勢いよくディアベルの居る壇上へ移動すると大柄な態度で話し始めた。
「わいは、キバオウってもんや
──ボスと戦う前に言わしてもらいたいことがある、この中に今まで死んでいった2000人のプレイヤーに詫び入れなあかん奴らが居るはずや!」
キバオウの声が劇場に響く。俺たちは少し前まで自分たちのことで精一杯だった為、既に犠牲者が2000人にも到達していることに驚いてしまう。そしてもう一つ引っかかる言葉、謝罪とはなんの事なのだろうか。俺とコハルは、壇上に居る二人に耳を傾ける。
「キバオウさん、君の言う奴らとはつまり……元ベータテスターの人たちのこと──かな?」
「決まってるやないか! ベータ上がりどもはなぁ、こんなクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよった
──それだけやない! 奴らは、狩場やボロいクエストを独り占めして自分らだけぽんぽん強うなって、この後もずーっと知らんぷりや
そいつらに土下座させて貯め込んだ金やアイテムを差し出してもらわな共同戦線なんて夢のまた夢や!」
キバオウの主張により会場の空気が一転し、誰もが壇上から目線を逸らす。
それもそうだ。彼が望んでいるのは、元ベータテスターから謝罪をさせて手持ちの有り金やアイテムを差し出せというのだ。
流石に度が過ぎている。俺は、奴に注意しに行こうとした時、後ろから伸びた手が肩に乗り俺を制止させる。
「──やめておいた方がいい、今出ると元ベータテスターだと勘違いされるヨ」
「アルゴ?」
「それに……ター坊は、ヤツに目をつけられているから尚更ナ」
「どういうこと?」
俺は、後ろにいたアルゴに話を詳しく聞く。どうやら昨日の一件が絡んでいるらしい。
「ター坊のレアアイテムの情報をよこせって昨日、オレっちの所へ来たんだヨ」
「そうか、昨日絡んできた後に……と言うかアルゴ、俺がレアアイテムを持ってること知ってたのか?」
「まぁナ、出現条件とかは分からなかったけド、ター坊がレアアイテムを持っているのは、だいぶ前から知ってたヨ──そして、それは今後の攻略に影響を及ぼすこともナ」
「アルゴさん……そこまで」
情報収集の凄さにコハルも驚いてしまう。アルゴは、SAOにて情報屋として活動しており一級品の収集力に頼ろうと多くの人がアルゴへ情報の問い合わせをする。
「発言いいか?」
一方、舞台の方ではディアベルとキバオウの間に入る大男の姿があった。低い声にスキンヘッドは、初見で見ると腰が引けるくらいインパクトが強い。しかし、大男はキバオウに比べて冷静のようで本を片手に話し始めた。
「俺は、エギルだ──キバオウさん、あんたこれ知ってるか?」
「ガイドブックやないか」
「そうだ、これを配布してるのは元テスター達だ、これにはモンスターの情報などが載っているつまり、情報は誰でも手に入れられたんだなのに、沢山のプレイヤーが死んでいったそれを踏まえてどうボスに挑むべきなのかそれがこの会議で議論されると思っていたんだがな」
「エギルさんの言う通り、今は前を見るべき時だ、みんなそれぞれ思うことはあるが今は第一層を突破するために力を貸してほしい」
居ずらくなったのかキバオウは、「──フン」と言って自分の座っていた席へ座り直す。それ見てエギルも舞台から席の方へ戻り攻略会議は、予定通り行われた。
「──最後にボス戦へ向けて何人かでパーティを組んでくれ」
ボスの特性など一通りの説明が終わった時、ディアベルはそう言うと顔見知りな人達が次々とパーティを組んでいく。前線にて交流のない俺たちは、周囲を見て組める人を探す。
「──やぁ、タカシ」
「キリト!? それにそちらは?」
困っている俺たちの所へキリトが話しかけてくれた。俺が隣に居る人へ尋ねるも返事がない。少し微妙な間が空くがキリトが説明してくれた。
「──俺たち、ボス戦のみの臨時パーティを組んだんだ、もし良かったら俺たちと組まないか?」
「いいの?」
俺は、思わずキリトに聞いてしまった。始まりのあの日、俺たちと別れてしまった事に少し後悔があったのだろうか。キリトは少し顔を曇らせながら言った。
「あぁ、昔のよしみというかあの日置いて行ってしまったことへの謝罪も含めてどうかな?」
「嬉しいです、こちらこそよろしくお願いします!」
コハルが快く了承して俺たちは、メニューを操作しパーティを組んだ。その時、パーティメンバーの名前が表示されそこにコハルやキリトの他にアスナと書かれているのを見つけた。きっと、赤ローブの人の名前なのだろう。しかし、どこか人と深く関わりたくない彼女は、「じゃあ、私はこれで」と言って姿を消してしまう。
「すまない、悪いヤツじゃないとは思うんだけど……」
「良いって、それより彼女の所へ行ってきなよ」
「ありがとう、じゃあまた」
キリトに行くように促した俺たちは、また二人になる。すると、ディアベルが俺たちへと話しかけてきた。
「──君たちは、パーティ決まったかい?」
「あんたは、さっきの──」
「ディアベルだ、ところで君に話があるんだ」
「──俺に?」
「あぁ、俺と二人でそこまで来てくれないか?」
「──分かった」
俺は、そう言ってコハルと一旦別れディアベルと二人で少し離れた所へ移動することになった。
いかがだったでしょうか。
ディアベルに呼び出されたタカシ。果たして彼の口から何を言われるのか!?
楽しんで読んでもらえれば幸いです!