―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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1-11:「Huge ConflictⅠ」

 城壁を離れた制刻、鐘霧等の5名と1機は、町の北西側より侵入した敵モンスターの一団と接触すべく、町内を進んでいた。

 家屋の並ぶ町路上を、雑把に隊伍を組んで、警戒しながら駆け進む制刻等。

 

「――ストップ」

 

 隊伍の先頭を進んでいた制刻が、片腕を掲げて後続に停止の号令を掛けたのは、その途中であった。

 

「どうした?」

 

 続いていた各員の内の鐘霧から、少し訝しむ様子での、停止の理由を尋ねる声が上がる。

 しかし制刻が言葉で返す前に、その回答は現象となって訪れた。

 ズシン――という重々しい音。そして地面より伝わり来た振動。

 制刻、鐘霧等各員は、それを聞くと同時に反射的に散会。周辺家屋建物の壁際に取り付き張り付く。あるいは路地に飛び込み隠れるなどし、身を守る態勢を取る。

そして各々の視線は、音の聞こえ来た方向。町路の現在地より先にある、十字路へと向く。

 音と振動は連続し、どんどんと大きくなる。そして――

 ヌォ――と。十字路の建物の影から、それ――巨大モンスター、ライマクの、巨大な体が姿を現した。

 現れたライマクは、ズシンと足音を立てて十字路の中心まで踏み出て、その全身を露にする。その背には二体程のオークの乗る姿があり、さらに連弩までもが搭載されている様子が見える。

 ライマクは明後日を向けていたその頭を鈍重な動きで動かし、制刻等の方を向いた。そしてライマクの眼は、制刻等を見つける。

 

「――ゴォオオオオオッ!!」

 

 そして、その大口が開口され、鈍く重々しい咆哮が、制刻等に向けて上げられた。

 

「ッ!」

「ぅッ!」

 

 ビリビリと響き襲い来たそれに、鐘霧や鳳藤は顔を顰め、僅かばかりだが怯む様子の声を零す。

 

「うっせぇヤツだ」

 

 制刻だけは、咆哮を浴びても気圧されるような様子はまったく見せず、淡々とそんな言葉を発する。

 咆哮を吐き出し終えたライマクは、頭に続け胴の向きを変える。そして、ドシンと制刻等に向けて、一歩を踏み出した。

 

「ッ!来るぞ!」

「おい、どうするんだ!?」

 

 ライマクの姿を前に鐘霧が発し上げ、そして鳳藤は制刻に向けて、問う声を張り上げる。

 

「言ったろ。ヤツをおちょくって、蹴っ躓かせる」

 

 対する制刻は、鳳藤の問う声に、淡々と返す。

 

「剱、こっから援護しろ。鐘霧二尉も、できりゃあ援護頼みます」

 

 続け、そんな要請の言葉を各々へ発する制刻。

 

「解放、GONG。行くぞ」

「お、おいッ!」

 

 そして制刻は敢日等に促すと、鐘霧の発した呼び止める声も聞かずに、迫るライマクを迎え撃つように、その場より駆け出した。

 

 

 

 制刻と敢日、そしてGONGは、身を少し低くしながら駆け、ライマクへと向かってゆく。

 その途中、駆ける制刻等の近場を、何かが飛び来て掠めた。

 

「っと!」

 

 それは矢であった。その飛来元は、ライマクの背に乗せられ据えられた連弩。そこから放たれたいくつもの矢が、制刻等の元へと降り注いだのだ。

 

「ウゼぇな」

 

 しかし制刻等は怯まず、路上を駆け続ける。

 襲い来、降り注ぐ矢撃の雨を掻い潜り、制刻等は程なくして、ライマクの元へと到達。

 

「ゴォオオッ!」

 

 足元へ踏み込んで来た制刻等に対して、ライマクは、正確にはその背に乗り操るオークが行動を起こした。御者のオークはライマクに繋がる手綱を引き、それに応じてライマクはその巨大な前脚を振り上げる。そしてすかさず、足元の制刻等を狙って、上げた前脚を振り下ろした。

 ドシン、と。音と煙を立てて踏み下ろされた前脚。しかしそれは空振りに終わった。

 制刻等は駆ける片手間に回避行動を行い、ライマクの踏み下ろしを悠々と回避して見せた。

 

「GONG、前脚をやれッ」

 

 制刻は後続のGONGにそんな指示を飛ばしながら、自身はライマクの身体の真下へと駆け込む。目指すは、ライマクの後ろ片足。

 

「――どらぁッ」

 

 ライマクの後ろ脚へのリーチまで踏み込んだ制刻。瞬間、制刻はライマクの後ろ脚目がけて、蹴りを放った。

 ――ズドン、と。半端でない衝撃音と、同時に肉や骨が拉げる嫌な音が響く。

 見れば、制刻の放った蹴りがライマクの後ろ脚に入り、ライマク後ろ脚は、見事に折り崩されていた。

 

「ブォォォォッ!!」

 

 時間差でその衝撃と痛覚がライマクを襲ったのだろう、ライマクから悲鳴であろう鳴き声が上がる。しかしそれをかき消すように、再びの衝撃音が響いた。

 見ればGONGが、制刻に習うようにライマクの前脚にアームを叩き込み、ライマクの前脚を折り崩していた。

 

「ブォォォ――!」

 

 前後の片足を折り崩され、バランスを失ったライマクの巨体は、ぐらりと崩れる。その背の上では、御者と連弩射手のオークが狼狽える様子を見せる。

 一方の制刻等は、倒れ来るライマクの巨体に巻き込まれないよう、すかさず各方へ退避する。

 そしてライマクは倒れ、大きな音と振動を上げ、砂埃を巻き上げて、その巨体を路上へと投げ出し沈めた。

 

「うまくいった」

 

 転倒し沈んだライマクの姿に、制刻は退避先でそんな言葉を発する。

 しかしそれに気を抜くことは無く、制刻はすぐさま続く行動に移った。

 

 

 

「ぅおオ……」

 

 路上。転倒したライマクの巨体のすぐ傍には、その背より投げ出され落ちたオーク達の姿がある。未だ正確な状況を把握できていない様子のオーク達は、投げ出され痛む体をなんとか起こそうとしている。

 

「――ごぅ!?」

 

 しかし、内の片方のオークの身に、突如鈍い痛みが走る。そしてオークの視界はぐるりと動き、オークは自身の意に反して仰向きにされる。

 

「ナ――!?」

 

 突然の事態に驚くオーク。そのオークの眼が次に見たのは――自分達以上に禍々しい容姿の存在。その存在が振り上げる、片足。

 

「――ギェぅッ?」

 

 それが、そのオークの見た最後の光景となった。

 禍々しい存在――制刻の振り下ろした戦闘靴を履く脚が、オークの頭部に命中。オークはその首を思い切り捻り折られ、グキリ――という気持ちの悪い音が響く。それがオークの絶命を知らせる音となり、オークはその身体より力を失い、路上へと沈んだ。

 

「な――コイツッ!」

 

 それを目の当たりにした、もう一体のオークが動きを見せる。オークは痛む体を鞭打ち起こし、身に着けていた手斧を抜く。そして今しがた屠られた相方の仇を討つべく、目の前の禍々しい存在に向けて、手斧を振り上げ襲い掛かろうとした。

 

「――ごッ!?」

 

 しかし突如、オークの視界は何かに阻まれ奪われた。

オークの頭部は、何か大きな手に掴まれていた。それは、GONGの大きなアームハンドであった。GONGが制刻に襲い掛かろうとしたオークを、そのアームで捕まえたのだ。

GONGのアームにより、頭部を丸ごと掴まれ持ち上げられ、オークの身体は宙に浮かぶ。

 

「ご……!ごぁ……!」

 

 オークは身体をがむしゃらに動かし暴れ、抵抗する。しかしオークの胴もGONGのもう片方のアームに掴まれ抑えられ、動きを封じられてしまう。

 

「放セ……やべ――こきゅッ」

 

 そして次の瞬間、オークの口よりそんな乾いた悲鳴のような音が零れた。

 見ればオークは、GONGのアームにより胴を捻じられていた。そして首と胴の向きが、あってはならない方向を、それぞれ向いていた。

 GONGはオークの絶命を認識すると、捻り屠ったオークの身体を放して落とす。そして無残な姿となったオークの死体が、地面にぐたりと沈んだ。

 二体のオークを無力化した制刻等。

 しかし、やるべき事はまだ終わっていない。制刻等の横では、地面に倒れながらも咆哮を上げ、身を捩り暴れるライマクの巨体が未だにあった。

 

「よくやったGONG」

 

 制刻はGONGの行動を評しながらも、行動を続ける。

 

「解放」

 

 制刻は敢日に声を飛ばす。そして手榴弾を二発程繰り出すと、それを解放に向けて投げ放した。

 

「オーライ」

 

 投げ寄越された手榴弾を受け取る敢日。

 その彼のすぐ傍では、横倒しになったライマクが、その大口をかっぴらいて咆哮を上げ、その頭を捩ってもがいていた。

 敢日はそんなライマクの様子を、顔を顰めながら一瞥。その片手間に、手榴弾のピンを引き抜く。

 

「ほら、うまいぞ」

 

 そして敢日はそんな軽口と共に、かっぴらかれたライマクの口内、その喉奥めがけて、二発の手榴弾を纏めて放り込んだ。

 同時に、制刻、敢日等は身を翻してライマクの傍より退避。距離を取る。

 ――ボゴォ、と。

 直後にライマクの体内より鈍い音が響き、そしてライマクの巨体が微かに跳ね、膨らんだ。

 

「――グボォォォォォォッ!」

 

 そして、ライマクより咆哮――いや、絶叫が上がった。

 ライマクの体内、腹に落ちた手榴弾が爆発し、ライマクを体内より破り引き裂いたのだ。

 

「ゴォォ――ブォォ――!!」

 

 体内よりの激痛に、ライマクは今まで以上に身を捩り、暴れ狂う様子を見せる。

 

「ゴォォ……」

 

 しかしやがて力尽きたのか、絶叫は徐々に小さくなる。そしてやがて、ライマクはその頭をドシンと地面に垂れて沈め、動かなくなった。

 

「――うまくいったな」

「あぁ」

 

 退避しライマクを遠巻きに見ていた制刻や敢日は、動かなくなったライマクの巨体に近づき、その無力化を確認。言葉を交わす。

 

「制刻ッ」

 

 ライマクの巨体を観察していた制刻等へ、背後より声が掛かる。

 見れば、鐘霧や鳳藤等のこちらへ駆け寄ってくる姿があった。

 

「鐘霧二尉。とりあえずデカブツ一体、蹴っ飛ばしました」

「まったく――どこまで無茶苦茶なんだ貴様はッ」

 

 淡々と状況成果を報告する言葉を紡いだ制刻。それに対して鐘霧は、呆れと困惑の混じった様子の、渋い表情で言葉を返す。

 

「――いやぁぁぁぁぁ!」

 

 その時であった。

 その場へ割り込むように、微かに悲鳴のような物が聞こえき、各々の耳に届いたのは。

 

「今のは――!」

 

 聞こえ来たそれに、鳳藤が声を上げる。

 悲鳴の発生源は、先に見えるライマクの現れた十字路の、一方向からと思われた。

 制刻等は十字路上へと駆け出て、そこから各方へ延びる町路の先へと、それぞれ観察の視線を向ける。

 

「ッ――あれだッ!」

 

 内の朱真から、声が上がった。

 彼は視線と銃口で十字路から延びる一本の町路の先を示し、各員それを追う。

 その先に見えたのは、現在地よりさらに先にある別の十字路上。そこにはまた一体のライマクと、それに随伴する多数のオークの姿があった。

 しかし確認できたのは、それだけに留まらなかった。

 

「あれは――!」

 

 敢日が真っ先にそれに気づき、エアライフルを繰り出し構えて装着されたスコープを覗き、先のオークの群れの様子を確認する。

 そのオークの群れの中。そこに見えたのは、一人の若い娘と、一人の子供。

 姿から、おそらく町の住民。そして娘と子供は、オーク達に囲われその身を捕まえられている。先の悲鳴の主が彼女達からである事。そして状況が悪しきものである事は、疑う余地もなかった。

 

「逃げ遅れた住民か!?」

 

 同様に93式5.56mm小銃の照準器を覗き、その様子を観察していた鳳藤が、焦った様子で声を上げる。

 

「また分かりやすい状況だなッ」

 

 そして敢日が、どこか皮肉気な口調でそんな言葉を発する。

 

「ここに来て要救助対象か……狙えるか!?」

 

 鐘霧は苦々しく発し、そして各員へ狙撃が可能かを尋ねる。

 

「いや、突っ込んだ方が早い」

 

 しかしそこへ、そんな淡々とした言葉が割り込まれた。

 

「何?――お、おい!」

「解放、GONG。第2ラウンドだ」

 

 声の主は制刻。そして鐘霧が気付いた時には、制刻はその場より駆けだし飛び出していた。

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