―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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1-15:「終結、そして」

 戦闘が終結してからおよそ一時間後。

 町の外では戦闘後処理が。町内でもわずかに立て籠る残敵の掃討が続いているが、部外者である制刻等は先んじて撤収。町に到着して始めに降り立った、神殿前の広場へと戻って来ていた。

 先に駐機していたUH-1Jはすでに修理調整を終えて飛び去り、今は制刻等を運んで来たV-107だけが駐機している。

 そしてその傍に、陸隊の保有する各車両とは様相の異なる、一台の乗用車が停まっていた。

 堅牢そうな外観が特徴的な、シルバーのSUV――三菱パジェロだ。

 これは他ならぬ敢日の愛車であり、彼は愛車のパジェロと一緒に、この異世界に飛ばされて来たのであった。

 今、そのラゲッジスペースに繋がる後部扉は開け放たれ、その前に制刻や敢日、鳳藤、GONGの立つ姿があった。

 

「また、色々持ち込んで来たな」

 

 制刻はパジェロの内部を覗きながら、呟く。

パジェロのラゲッジスペースから後席に駆けては、さまざま荷物や工具機械類が、ぎっしりと詰められ占められていた。

 

「あぁ。仕事帰りだったのもあるが、他にも色々一緒に飛ばされて来ててな」

 

 それに対して、敢日は内部の荷物を漁りながら答える。パジェロに積まれた荷物は全て、エンジニアである敢日の仕事道具であった。

 

「お前のハザードプロテクタもあるぞ。どうする、着替えるか?」

 

 敢日はラゲッジスペース内の一角に積まれている、何やら武骨で物々しい服を示して、制刻に尋ねる。

 それは、制刻がプライベート時の〝荒事〟の際に愛用している、ハザードプロテクタであった。

 

「いや、今はやめとこう。一応、今は陸隊に所属してる立場だからな」

 

 しかし制刻は、今の自身の立場を鑑み、敢日の発案を断った。

 

「……また、得体の知れない物ばかり……」

 

 そんなやり取りを交わす二人の背後では、鳳藤が訝しみそして若干呆れた様子で、得体の知れない荷物や工具機械類で占められた、パジェロの内部を覗き込んでいる。

 

「お、剱ちゃん。興味あるかい?」

 

 そんな様子の鳳藤に気付いた敢日は、視線を彼女へと移し、陽気な笑みを浮かべて言葉を掛けた。

 

「ッ……い、いえ……」

 

 しかし対する鳳藤は、敢日に対する苦手意識をその顔にあからさまに浮かべて、言葉を濁す様子を見せる。

 

「解放」

 

 そしてそこへ、両者を割って遠ざけるように、制刻が間に押し入った。

 

「っとぉ、自由」

 

 制刻のその行為に、敢日は少し驚きそして困ったような声を上げる。

 

「ッ……私は、外させてもらう」

 

 そして鳳藤は、何か逃げるようにその場を外し駆けて行った。

 

「――解放。ヤツには、あまり近づくな」

 

 去って行った鳳藤の姿を一瞥した後、制刻はその禍々しい顔に少し険しい色を浮かべて、敢日に向けてそんな忠告のような言葉を発する。

 

「お?どしたどしたぁ?剱ちゃんに近づかれて、嫉妬しちまったか?」

 

 そんな制刻に対して、敢日は揶揄う様にそんな言葉を紡ぐ。

 

「解放ッ。俺ぁ、マジメな話をしてんだ」

 

 しかし対する制刻は、その顔をより険しくし、そんな訴えるような言葉を敢日にぶつけた。

 

「――はぁ」

 

 制刻のその様子に、敢日はその様子を大きく変えた。

 彼は小さく溜息をつくと、先までの揶揄う様子の表情を、何か悲し気な物に変えて、制刻の眼を見つめ返す。

 

「――自由。お前、まだ剱ちゃんと〝拗れた〟ままなのか?」

 

 そしてそのままの表情で、そんな言葉を制刻に向けて発した。

 

「こっち来て最初見た時には、折り合いが付いたのかと思ったんだがなぁ……」

「仕事上、表面ツラを取り繕ってただけだ」

 

 続け発せられる、呟くような敢日の言葉。対する制刻は、それに端的に返す。

 

「なぁ、いい加減〝あの事〟は水に流そうぜ。ほら、〝俺〟は今もこうしてピンピンしてるだろ?」

 

 敢日は、制刻に対してそんな促す言葉を発し、続け自身の身を両腕を広げてアピールする動作をしてみせた。

 

「当然だ。オメェに取り返しのつかねぇ事が起きてたら、俺ぁとうに――鳳藤(ヤツ)を潰してる」

 

 しかしその投げかけに対して制刻は、険しい顔のまま、そんな物騒な言葉を吐いて見せた。

 

「お前……」

 

 そんな制刻の言葉に、敢日は悲しみ、困惑、呆れのない交ぜになった表情を作り、言葉を零す。

 

「とにかく、ヤツにあまり近づくな」

 

 制刻は敢日とそれ以上やり取りを続けるつもりは無いらしく、一言忠告の言葉だけを発すると、身を翻してパジェロの傍を離れて行く。

 

「……やれやれ――自由」

 

 敢日はため息混じりに呟くと、パジェロの後部扉を閉じて、制刻の後を追った。

 

 

 

 制刻等のやり取りが行われていた一方。

 神殿前広場の一角には、穂播や羽双。他、77戦闘団の隊員数名が、ルーレイ始め町の騎士団の騎士達と相対している姿があった。

 

「ホハリ閣下、ハネフタ殿。それに皆さん。あなた方のおかげで、この町は魔物の軍勢より救われました。あぁ、しかし……今の私達は、言葉でしかお礼申し上げる事ができません……」

 

 ルーレイは、ホハリ等に対して心苦しそうな声で、そんな言葉を紡ぐ。

 

「ルーレイさん、誤解なさらぬよう。我々は、あなた方に物品対価を求める目的で、事態に介入したわけではありません。己の正義に従い、行動したに過ぎません」

 

 しかし対する穂播は、変わらぬ荘厳な態度姿勢で、ルーレイに向けてそう言葉を返す。

 

「それに。まだ終わりではありません」

 

 そして穂播は続け、ルーレイに向けてそんな言葉を紡いだ。

 穂播はそれから隣に立つ羽双に目配せを送る。それを受けた羽双は、手にしていたタブレット端末を操りつつ、穂播の言葉を引き継ぐ。

 

「生き残った住民の方々の、治療、他各種支援には、まだ時間が掛かります。それに――現れたモンスターの軍団の出どころも突き止めなければ。北方へ、偵察隊を組んで発出します」

 

 羽双は、戦闘団の取るべきこれからの動きを、口にして説明して見せる。

 

「まさか……皆さん、この町にまだお力を貸していただけると申すのですか……!」

 

 穂播や羽双の言葉を聞き、その言葉の意味する所を理解したルーレイは、驚きの様子を作って言葉を返す。

 

「当然です。介入した以上、半端な状況のまま引き上げる事は出来ません。それに、モンスターの軍勢の存在は我々にとっても脅威だ。その脅威が去ったと断定するには、まだ早すぎる。我々は、さらなる行動を起こさなければならない」

 

 そのルーレイの言葉を穂播は肯定。そしてさらに説明の言葉を並べた。

 

「――そういう訳だ。河義三曹」

 

 ルーレイに対する説明回答を終えた穂播は、それから横へと視線を向け、発する。穂播の視線の先には、端でその場に同席し、それまでのやり取りを聞いていた、河義の姿があった。

 

「我々は、まだこの地を離れる事は出来ない。君達の元への合流は、まだしばらく先になるだろう。その旨を君達の指揮官、代表者に伝えて欲しい」

 

 穂播は河義にそう伝え、彼に知らせの言葉を託す。

 

「了解しました、穂播一佐。お預かりし、確実にお伝えします」

 

 河義はそれを受け取り、言葉を返した。

 

「――っと、丁度いいトコかな?」

 

 両者が言葉を交わし終えた所で、別方よりそんな別の声が聞こえ、場に割り込んだ。穂播磨や河義が声の聞こえた方向に目を向ければ、先よりこちらに歩んで来る敢日、そして制刻の姿が見えた。

 

「失礼、一佐さん。一緒に、〝あの件〟を伝えないとと思って」

 

 内の敢日は、会話に割り込んだ事を詫びると同時に、そんな言葉を穂播に向けて発する。

 

「あの件?」

 

 それに、河義が疑問の色を浮かべて言葉を返す。

 

「もちろんだ。今から伝えるつもりだった。――河義三曹。我々は現在、敢日さんの他にもう一人、日本国民の民間人を保護している。帰る前に一度、後方の仮設駐屯地に寄って、その人を一緒に連れて行って欲しい」

 

 その疑問には、穂播が答えた。

 穂播は河義に向き直ると、そんな説明の言葉を紡いで見せた。

 

「もう一人の……民間人ですか?」

 

 その説明の言葉に、しかし河義は少しの驚きの、一層の怪訝な色をその顔に浮かべて返す。

 

「そうだ。敢日さん同様に、転移に巻き込まれた人だ。そちらには、航空基地が丸ごと転移して来ていると聞く。そちらの方が安全で、何かと利便も良いだろう」

 

 そんな河義に穂播は続き説明し、そして付け加えた。

 

「お守りを、こっちに押し付けようってか」

 

 そんな所へ、端から皮肉気な言葉が飛び来る。その主は、他でもない制刻であった。

 

「制刻!」

 

 制刻のその礼節も何も無い言葉態度に、河義が咎める言葉を発し上げる。さらに穂播も、鋭い眼差しで制刻を睨む。

 しかし制刻はどこ吹く風だ。

 

「そう言うなよ、自由。そのもう一人ってのが、俺等にも無関係じゃないんだ」

 

 そんな両者の間へ、敢日が宥めるようなジェスチャーを取りながら間に入る。そして同時に、そんな言葉を紡ぐ。

 

「何より――剱ちゃんには、どうしても合わせておかなくちゃならない人でな」

 

 そして敢日は、先んじてこの場に合流し、端で待機していた鳳藤の姿を見つけて見止め、そう発して見せる。

 

「え……私に?」

 

 唐突に自身の名前を上げられ、さらには予期せぬ話を投げられ、鳳藤は若干の驚きの様子で言葉を零した。

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