―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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2-8:「Armored PlatoonⅡ」

 93式装甲戦闘車の90㎜低圧砲より撃ち出された、多目的榴弾の第一射。

 それはオーク達の成す横隊陣形の端に飛び込み、炸裂。

 黒煙を上げ、そしてそこに居たオーク達を、まとめて巻き上げ、千切り散らかした。

 

《着弾。効果確認》

「了解、確認。再装填しろ、弾種引き続き多目的榴弾」

 

 砲手の上道からの報告の声が、芹滝の耳に届く。芹滝自身もオーク達が吹き飛んだ様子を肉眼で見止めてそれに返し、加えて再装填の指示を送る。

 

「――各車、前進開始ッ」

 

 そして続け、芹滝はインカムで各車に向けた指示を発する。

 それを合図に、4両の装甲車輛は一斉にエンジン音を唸らせる。そしてキャタピラを鳴らし始め、前進を開始。

先より迫る恐ろしいオークの集団に向けて、その巨体を持っての押し上げを開始した。

 

《エンブリー、投射開始する》

《ハルボベイ、開始》

 

 押し上げの開始と同時に、各車からの火力投射が開始される。

 89式装甲戦闘車からは、90口径35㎜機関砲KDEが。

 76式装甲戦闘車からは、車上ターレットリングに搭載された、30㎜リヴォルヴァーカノンが。

 それぞれ咆哮を上げる。

 そしてそれぞれから吐き出された各種機関砲弾は、オーク達の元へ飛び込み、無数の小爆発を上げ、横隊を成していたオーク達を千切り吹き飛ばした。

 

「静別(しずべつ)、右手に行け。ヤツ等の側面に回れ」

《了》

 

 一方、芹滝はドライバーに、方向変更を指示。

 

「アンヴィルゲートは右手に回る、少し距離を取る。エンブリー、当車に続け」

 

 さらに芹滝は、インカムにて髄菩等の乗る89式装甲戦闘車へ、自分等への随伴を指示する。

 

《チッ――了解》

 

 髄菩からは、隠す気のまるで無い舌打ちと合わせて、了解の返答が寄越される。

 

「ハルボベイ、そのまま正面。ヤツ等の頭を押さえろ。オニキスポイントは左手に回れ」

 

 芹滝は続けて、76式装甲戦闘車と、73式装甲車にそれぞれ指示を送る。

 

《了》

《オニキスポイント、了解》

 

 指示が反映され、各装甲車は散会しそれぞれの動きを開始した。

 芹滝等を乗せる93式装甲戦闘車と、続く髄菩の89式装甲戦闘車は、進路を右手へ変更。オーク達の側面を取る事を狙い、速度を少し上げキャタピラを鳴らす。

 

《車長、次弾装填完了ッ》

 

 その最中、砲手の上道より芹滝に報告の声が上がる。自動装填装置が、90㎜低圧砲に次弾の装填を完了させたのだ。

 

「目標、今度は集団の向かって左端。照準完了次第撃て」

 

 それに答え、芹滝はインカムを口元に寄せながら、二射目の目標を指示。

 指示はすぐさま反映され、砲塔が旋回。90㎜低圧砲が俯角を取り、砲口が再びオーク達を睨む。

 

《――発射ッ》

 

 砲手の上道からの、発射を告げる声。

 同時に、砲より咆哮が上がった。

 一瞬遅れ、下がった駐退復座機が鈍い衝撃を伝える。

 響く、ヒュゥ――という風を切る音。砲弾が、目標に向けて飛ぶ音。

 そして視線の先――オーク達の横隊向かって左端で、爆煙が。そしてオーク達の身体が舞い上がった。

 

 

 髄菩等の乗る89式装甲戦闘車は、93式装甲戦闘車に続きながら、戦闘行動を行っている。速度を微速に落とした車体上では、砲塔がオーク達に向いて旋回し、備わる35㎜機関砲が、ランダムに咆哮を上げている。

 

「ッ――」

 

 その砲塔上、車長用キューポラで胸より上までを出し、指揮及び周辺掌握に当たる髄菩。その傍を、時折火矢が掠め飛んで行き、あるいは装甲を火矢が叩く音がその耳に届く。

 装甲車各車からの強力で容赦ない火力投射を前に、小隊規模であったオーク達は、あっという間にその7~8割方を瓦解させた。しかし残る個体の中にはわずかにだが、抵抗を試み攻撃を放ってくるオークが、まだあった。

 

「薩来。敵の左端、奥側窪地。まだ抵抗して来る、黙らせろ」

 

 その飛来する抵抗攻撃を不快に思いながら、髄菩はインカムで、砲手務める薩来に指示を送る。

 

《フフフ――悪いヤツ――》

 

 そんな呼びかけた薩来より了解の言葉代わりに返って来たのは、何か不気味な呟き声。

 そして同時に35㎜機関砲が火を噴き、髄菩が指示した箇所に機関砲弾を叩き込み、その場に居たオーク数体をミンチへと変えた。

 

《フフ――千切れた――》

 

 そしてインカム越しに聞こえ来たのは、薩来の再びの不気味な呟き。

 

「――チッ」

 

 状況。

 相対するモンスター。

 不気味な同乗者。

 自信を取り巻く状況の全てを、呪い忌々しく思い、髄菩は舌打ちを打つ。

 

《オニキスポイントよりアンヴィルゲート。ヤツ等が逃げ出した、残敵が逃走を開始》

 

 そんな所へ無線上に聞こえた言葉。73式装甲車から93式装甲戦闘車に向けられた物。

 先を見てみればその言葉通り、オーク達の内の僅かな生き残りが、逃走を開始していた。

 

《逃がすと都合が悪いな――回り込み、阻害する》

 

 それに対して、93式装甲戦闘車の芹滝から発せられたのは、それに回り込み捕獲を試みる旨の言葉。

 

《当車でやる、エンブリー続け。他は援護を》

 

 そして寄越されたのは、髄菩に対する再びの要請。

 

「――チッ、エンブリー了解。――藩童、だと」

 

 続く面倒に、髄菩は何度目かも知れぬ舌打ちを打ち、要請に返す。

 そして操縦手の藩童に促し、装甲戦闘車を前進させた。

 

 

 

「ひ、ヒィィ……ッ!」

「ば、バケモノだ……」

 

 生き残り、しかし無傷な者は居ないオーク達は、身を翻し逃走を図る。

 しかしその彼等の行く先に、回り込んで来た93式装甲戦闘車と、89式装甲戦闘車の巨体が立ちはだかった。

 そしてそれぞれの搭載火器が俯角を取り、砲口がオーク達を睨む。

 

「うわ、ワァァッ!?」

 

 自分達を謎の力で、容赦なく屠った異質な怪物。それに退路を断たれたオーク達は、最早抗う気力も無いようで、ただ狼狽える様子を見せる。

 

《その場で止まりなさい。武器を捨て、投降しなさい》

 

 そんなオーク達に、異質な音声で投降を促す言葉が浴びせられる。

 装甲戦闘車上で拡声器を持つ、芹滝の声だ。

 しかし恐怖で混乱し、言葉を聞き入れる余裕すら無いのか、オーク達はひどく狼狽えるばかり。挙句、明後日の方向へ逃げ出そうとする個体も見える。周りはすでに包囲されていると言うのに。

 

「――ヒィッ!?」

 

 そんな逃走を図ろうとしたオークの内の一体が、しかし途端、悲鳴を上げ動きを止めた。そのオークの足元で何かが爆ぜ、殺意の籠った気配がオークを襲ったからだ。

 オークの足元を襲ったのは、小銃による銃撃。

 見ればオークの先に、93式5.56mm小銃を構えてオークに向ける、隊員――54普連第2中隊、第2分隊分隊長の、浦沢(うらさわ)三曹の姿があった。

 さらに周辺に視線を向ければ、浦沢含め7名の隊員が、生き残りのオーク達を囲んでいる。

 彼等は、93式装甲戦闘車に搭乗同伴していた第2分隊。

 装甲戦闘車より今しがた降車展開し、オーク達を捕縛すべく取り囲んだのであった。

 

「逃げるな、動くな」

 

 浦澤は警告の言葉を端的に発し、そして片手でジェスチャーを見せて促しながら、オークに少し速足で近寄る。

 

「ッ……舐めるなッ、野郎ォ!」

 

 オークのそのリーチに入った浦澤向けて、オークが手にしていた得物である斧を振り上げたのは、その瞬間であった。

 体格で勝るオークは、浦澤相手に白兵ならば抵抗の余地があると踏み、その行動に出たのだ。

 が――直後にオークの振り下ろされたオークの得物は、しかし虚しく空を切った。

 見れば、浦澤はその身を器用に捻り、オークの斧を回避していた。

 

「ハ――い゛!」

 

 呆けた声を零したオーク。しかしその声は直後に濁った声に変わる。

 オークは自身の膝裏に鈍痛を覚え、そしてその太い脚を崩して膝を地面に着いた。

 その背後には、オークの膝裏に自身の戦闘靴裏を叩き込んだ、浦澤の姿。

 浦澤は、オークの斧を回避した後に、連続動作でくるりとオークの背後に回り込み、そしてオークの膝を踏み抜いて、その巨体を崩して見せたのだ。

 

「ガァッ!?」

 

 さらに立て続けに、今度はオークは首に鈍痛を覚える。

 見れば、浦澤がオークの後ろ首に、小銃のストックを叩き込んでいた。

 その脳を揺さぶられて、オークは失神。その巨体をバタンと地面に沈める。

 

「面倒をかけるな」

 

 気を失い地面に沈んだオークに、浦澤は端的に一言言葉を浴びせた。

 

《もう一度言う。武器を捨て投降しなさい》

 

 そんな一連の様子を見ていたのだろう。背後の93式装甲戦闘車の車上から、再び芹滝の呼びかけの言葉が響く。

 

「ぁ……ぁ……」

「ぅぅ……」

 

 一連の光景から、状況を理解し、オーク達はようやく抵抗の余地が無い事を理解。ボトリ、ボトリとそれぞれの得物を落とし捨てる姿を見せる。

 そしてオーク達は、隊員の手により拘束されていく。

 

「やれやれ」

 

 その様子を車上砲塔上から眼下に見ながら、芹滝は一言呟いた。

 

 

 

 装甲小隊の被害は、73式中型トラック、及びトラックが搭載していた装備の一部が軽く損傷した程度に留まり、幸い行動に支障は無かった。

 そして、先にオーク達が潜んでいた木立を分隊が調べた所、そこには破損した馬車や馬の亡骸。そして、旅人や行商人の思しき人間の死体が、隠されていた。

 拘束したオーク達に聴取を行った所、オーク達はこの先にある、装甲小隊の目的地でもある愛平の町を拠点とし、そこから出て来たらしい。

 そしてこの場で罠を張り待ち伏せ、通りがかるしかし愛平の町には立ち寄らない旅人や商人を、襲っていたとの事であった。オーク達は愛平の町を中心に、そんな活動をあちこちで行っているという。

 

「いよいよ、放置は出来ないな……ッ」

 

 89式装甲戦闘車の傍で主要陸曹が集い、その中で、小柄童顔でまるで少年のような顔立ち容姿の男性隊員。この装甲小隊の指揮を任されている、鷹幅二曹が言葉を紡ぐ。

 

「その町、本丸には、こんなモンスターがギッチリって事か」

 

 続け浦澤が、周辺に散らばるオークの死骸。そして端の方で、膝を着かされ並ばされているオーク達の姿を見て、発する。

 

「脅威度は、非常に高いと見る。まずは向こう――制刻等との、合流を急ごう」

 

 それに答えるように鷹幅は発し、続けこれからの行動行程を紡ぐ。

 

「各員、各分隊、乗車――ッ」

 

 そして鷹幅の透る声で、再乗車。行程再開の指示が発せられる。

 

「――面倒が」

 

 その言葉を、傍らの89式装甲戦闘車上で聞いた髄菩。彼は乗車してゆく各隊員を一瞥し、そして忌々しそうに吐きながら、キューポラを潜って車内へと降りて行った。

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