―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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2-14:「町の彼、巨大な彼」

 3分隊は交差路を確保し、一時的な固守に入った。

 交差路のど真ん中に、89式装甲戦闘車が乗り入れ鎮座。

 交差路の各方向には分隊各員が散開展開。さらに軽機関銃をY字路正面家屋の上階に上げて据える、選抜射手を配置する等して、簡易的な警戒陣地を整えた。

 

「――ニホン……」

「その国の、部隊……」

 

 ど真ん中で鎮座する89式装甲戦闘車の後部。その開かれた後部扉には、そこの縁に座り隊員から、脚の怪我の手当てを受けるサウセイ。そして傍には立ち会うジューダと、ティウ少年の姿がある。

 そして内のサウセイとジューダから、困惑し訝しむように言葉が零された。

 サウセイ達の前には、相対する峨奈や制刻の姿がある。

 サウセイの手当てに並行して彼等には、制刻等陸隊の正体、並びに目的等を、ちょうど説明された所であった。

 

「状況が状況です、すぐに全てを飲み込む事は難しいかと思います。ひとまずは、この町に害成す者では無い事をご理解いただければと」

 

 そんなサウセイやジューダに峨奈は補足と求める言葉を、その冷淡さを感じさせる顔色声色を務めて柔らかくして伝えた。

 

「サウセイさん、ジューダさん。お二人の存在は、町から脱出した子供達から伺っています」

「子供……!ウノイとイリか!?あいつら無事なのか!?」

 

 続け峨奈は、先に聞き伺えたサウセイ達の名前を確認するように発し、それから先に保護した子供達の存在に言及。それを聞き留めたサウセイとジューダは目を見開き、サウセイは尋ねる声を張り上げた。

 

「現在我々の方で保護しています。二人とも無事です」

 

 峨奈はそんな二人に向けて、落ち着かせるように返答を紡ぐ。それを聞いたサウセイとジューダは、そこで初めてそれぞれの顔に微かだが安堵の表情を見せた。

 

「でだ。今度は俺等からもあんた等の事を尋ねてぇ。ここまでから少なくとも、奪え殺せの側じゃあ無ぇんだろう?」

 

 そんな所へ発したのは制刻。制刻はジューダとサウセイをそれぞれ見て、変わらぬ不躾な色でそんな言葉を投げかけた。

 

「あ、あぁ……その通りだ――」

 

 制刻の問いかけには、サウセイが先に言葉を返し、そして続け紡ぎだした。

 まずサウセイは、予想通りこの愛平の町の住民であるとの事であった。この町では商いで生計を立てている身であるらしい。

 そしてサウセイの口から、ここまで目を引いていた存在。オークのジューダについてが説明された。ジューダは、この愛平の町より少し離れた所に居住地を構える、ある一つのオーク部族の者であるらしい。

 聞くに基本的にこの国、この地域では人間と魔物魔族との交流は、元より根付いた印象や昨今の情勢などの様々な理由から忌諱され、あまり活発ではないようである。しかしジューダの部族は多々ある魔物コミュニティの中でも穏健派であるらしく、そのことも助けてサウセイ等の一部の町の人間とは、あまり大っぴらにはできないが長く交流交易を行ってきたとの事であった。

 

「その話から予測するに、あんたと町を襲った連中は、別の括りなんだな?」

「あぁ、その通りだ。奴らと一括りにされるなど、心外でしかない」

 

 説明の途中で制刻が尋ねる言葉を割り入れジューダに向ける。それにジューダは肯定。そしてそれに、静かなしかし怒りの含まれた一言を付け加えた。

 続く説明を聞けば、この町を襲ったオーク始め魔物の軍勢は、ジューダの属する部族とはまた別の物である事。おそらく魔王軍に感化され賛同した過激派部族が集合し、群れを成したであろう物。魔王軍本体へ参加しようと行進中か、あるいは賛同の名目で暴れまわっている物が、今回町を襲ったのであろう事。等が語られた。

 

「よく言っても小規模な軍閥。はっきり言ってしまえば規模の大きい野盗だな」

「はた迷惑だな」

 

 その説明から、峨奈はそう形容する言葉を発し、続け制刻は白けた様子で一言呟く。

 そこからサウセイとジューダの説明は続く。

 その軍閥モドキの魔物の群れが、この愛平の町を襲った襲ったのが三日程前 との事であった。

 寄り合い所帯とはいえ肥大化し、さらには触手の魔物まで飼い慣らし伴っていた魔物の軍勢は、おせじにも大きくはない愛平の町にとっては、絶望的なまでの脅威であった。

 駐留騎士団は抵抗したが、魔物達の物量と驚異的な身体能力を前に、空しくも崩れ去り敗北。抵抗した騎士や町の男達は惨たらしく殺され見せしめとされ、それを目の当たりにした住民達は抗う意思を失い次々に降伏して行ったという。

 しかしそんな中で、サウセイ始め少数の人間は、抗い続ける事を訴えた。相手は魔物。降伏などしてもその先の保証は無い。最後までの抵抗を、そうでなくとも子供達を連れての脱出を提案した。

 だが、ほとんどの住民は魔物達の圧倒的な暴力と、見せつけられた惨劇を前に抗う意思を失っていた。そしてサウセイ達の訴えを聞き入れずに、魔物達からの温情という脆く儚い希望に賭け、軍門に下って行ったという。

 その住民達がどうなったかは、今のこの町の惨状。先に観測機から確認した、吐き気を催す程の光景に表れていた。

 一方で、一部抵抗を諦めなかったサウセイ等は、まだ無事であった子供達を連れ、地の利を生かして町の各所に潜み、脱出の機会を伺っていたのだと言う。

 

「成程な。――で、その中に、あんたはどっから割り入ったんだ?」

 

 そこまでの説明に一言呟いた制刻は、そこからジューダの方を向いて発する。ジューダ側の行動経緯の説明を要請する物だ。

 

「あぁ――」

 

 そこからサウセイに代わり、ジューダが言葉を紡ぎ始める。

 ジューダが異変に気付いたのは昨日。その日、ジューダの部族の居住地へ取引に訪れる予定であったサウセイが、約束の時間になっても到着しなかった事を切っ掛けとしたそうだ。

 同時にジューダの直感は嫌な気配を訴えた。そして単身、愛平の町の様子を伺いに来てみれば、町はすでに惨劇の最中にあったと言う。

 聞く所によれば、町には一部の者だけが知る、内外を結ぶ抜け道があるそうだ。それを利用して、ジューダはサウセイの無事を信じ、夜を待ち町に侵入。皮肉にも同種の町を襲ったオーク達に紛れる事で町内を捜索でき、結果奇跡的に子供達を連れて身を潜めていたサウセイと発見合流したとの事であった。

 そしてジューダとサウセイは、本日今朝方に子供達を脱出させる策を決行。しかしその際にオーク始め魔物達に見つかってしまった。辛うじて子供達のうち二人を逃がしたが、そこで分断されて、さらにサウセイが負傷。ジューダ等は町内を逃走、追われる形になったという事であった。

 

「なぁる程な」

 

 そこまでを聞き、制刻が呟く。

 そこから先は制刻等陸隊側も掌握している通りであった。逃がした子供達にも追手が付けられてしまったが、丁度そこに現れた制刻等がそれを保護。

 そして町内を逃走の果てに囲まれてしまったサウセイとジューダの元へ、分隊が踏み込んできたという分けであった。

 

「ありがとうございます――我々は町の安全化に並行して、子供達からの申し出からあなた方を探していました。差し支えなければ、これより町から脱出していただきたく思います」

 

 サウセイ達から一通りの状況情報を聞くことができた峨奈は、それに礼を述べ、それから彼らに町からの脱出を要請する。

 

「いや、ちょっと待ってくれるか……っ」

 

 しかしサウセイから、それに異を唱える言葉が上がった。

 

「町の人間の大半は捕まってしまったが、まだ俺達の知り合いがどこかに身を潜めているかもしれないんだ」

「彼らを、放ってはおけない」

 

 サウセイが異の理由を説明し、続いてジューダが発する。

 彼等は、まだ町内に残された無事な人々の事を考え、それを残して自分等だけが脱出する事に抵抗を抱いているようだ。

 

「成程、分かりました。我々は引き続き町の安全化を行いますので、並行してその人たちの捜索も、我々で引き受けます」

 

 その事を受けた峨奈は、サウセイ達に向けて、残されたその他の人々の捜索を引き受ける旨を発する。

 

「ですのでご心配なく。皆さんは、町より避難を――」

「いや。ちょいタンマ」

 

 そして改めて、町からの避難を要請する言葉を紡ごうとした峨奈。しかしそこへ、唐突に制止を掛ける声が割り込んだ。

 その声の主は、他でもない制刻だ。

 

「制刻予勤?」

 

 唐突に、そして意図せず挟まれた言葉に、峨奈は疑問と訝しむ色の言葉を零す。

 

「そっちのデカいあんた。良ければ、一緒に来てもらえねぇか?」

 

 そんな峨奈に関わず、制刻はそう言葉を発する。その言葉の向けられた先は、オークのジューダだ。

 

「私か?」

 

 指名を受けたジューダは、少し驚きながら返す。

 

「町の案内が欲しい。それに、あんたは別のコミュニティとはいえ、デカブツ達と同種のなんだろ?アドバイスなり、色々聞きてぇからな」

 

 制刻はジューダを指名した理由を並べ告げ、最後に「何より、あんた自身タフそうだからな」と付け加えた。

 

「制刻予謹、勝手なことを――」

 

 峨奈は、その制刻の独断を咎める言葉を発しかける。

 

「――いや。構わない」

 

 しかしそれを遮るように、ジューダは受け入れる一言を紡いだ。

 

「よろしいんですか?」

「どちらにせよ、私はまだ町から引く気は無かった。――それに正直、まだあなた等の事を少し不可解に思っている。よければ、どう動くのか見させて欲しい」

 

 尋ねた峨奈の言葉に、ジューダは同行を受け入れる理由を紡いで見せた。

 

「とりあえず、当面の利害は一致してるようだな」

 

 ジューダの並べた言葉に、制刻はそんな言葉で返して見せる。

 

「――分かりました。では、ジューダさんには同行をお願いします。しかしサウセイさんとティウ君には、町の外に退避してもらいます。いいですか?」

 

 ジューダ当人の意思の確認が取れた峨奈は、彼の同行を承認。同時に、サウセイとティウには避難してもらう旨を告げ、再度尋ねる言葉を両社に紡ぐ。

 

「問題ない」

「すまない、面倒を掛ける……」

 

 ジューダとサウセイはそれぞれ了承旨を返答。

 峨奈等はそれを受け、サウセイ達の移送のための手配に取り掛かろうとする。

 

《――アルマジロ1-1より周辺ユニットへッ。応援を求むッ――》

 

 しかし。無線機や各員のインカムより、切羽詰まった声が響いたのはその時であった。

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