―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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2-22:「Heavy Metal」

「――あぁ、やだやだ。この古臭い機体にまた押し込められるなんてな」

 

 上空へ飛来した、2機のF-1戦闘機。

 内の二機目、二番機。その窮屈なコックピット内で、そんな白けそして不愉快そうな言葉が紡がれ響く。

 その声の主は、航空隊所属の空曹長――維崎(いさき)

 彼は、この異世界への初期段階の転移現象で転移した、航空隊のCH-47J輸送ヘリコプターの副機長を務めていた隊員だ。

 しかしその彼は今。F-1戦闘機の操縦席に収まり、その操縦桿を操り機を飛ばしていた。

 

 

 転移の第二段階では豊原基地の飛行場施設と一緒に、多種複数の航空機が転移してきていた。今この異世界の空を飛ぶ、二機のF-1戦闘機もその一部だ。

 しかし、その多種複数の航空機に対して。それを操るパイロット事態が若干少ないという事が、後の人員点呼掌握で明らかとなったのだ。

 特に人数が限られたのが、戦闘機のパイロット。

 せっかく飛ばせる機体と、それを可能とするだけの装備物資設備が転移して来たというのに、肝心のパイロットが揃えられないというのは、非常に歯がゆい状況であった。

 

 

 その解決策の一つとして白羽の矢が立てられたのが、維崎であった。

 

 

 彼は元々戦闘機パイロットの志願、候補者であり、高等訓練課程でF-1戦闘機の原型機であるT-2改の搭乗経験を有した。

 いくつかの訳あって当時はその道を外され、ヘリコプターのパイロットへと転換する事となった維崎であったが。この異世界においての隊の都合、なりふり構っていられない現状が、幸か不幸か転じ。

 ご丁寧にまた基地と一緒に転移してきていた操縦シュミレーターで、突貫、付け焼刃の再訓練を受けた後――維崎はF-1戦闘機を駆り、この異世界の空を飛ぶ事になったのであった。

 

「おまけに飛ばされた先は、この気分の悪い状況だ」

 

 その維崎はもう一言呟き。緩やかな旋回行動を取り、少し傾く機体の上で。顔を横に向け、キャノピー越しに眼下の町へと視線を降ろす。

 見えるは、痛々しいまでの崩壊の様子を露にする、町の全形。

 さらに同時に。コックピットの操縦系の片端に埋め込まれた小さなモニターには、無人観測機が送って来た町のズーム映像が映され。地上で起こる気分の良くない残酷な光景の数々を、映像で表し伝えていた。

 

《――ヤロウぁ、外道の屑どもがァッ――ふざけやがってェァ――!》

 

 そんな維崎の耳が直後。パイロットヘルメット内臓の無線機から、自分とは毛色のまったく異なる別の声を聞く。それは憤り吐き捨てるような色のそれ。

 その声を聞いた維崎は、視線を前方へ向けて機体の進行方向を見る。

 その先にあるは、維崎の乗り操るF-1戦闘機より少し距離を取り先行、緩やかな旋回行動を取る尖るシルエット。もう一機のF-1戦闘機、飛来した二機編隊の一番機の姿がそこにあった

 

 

 今しがたの声は、その一番機に乗り操るパイロット。航空隊の二等空尉――推噴(すいぶき)、その彼が主であった。

 

 

《デカブツのトンマどもォ――目にもの見せてやらァッ》

 

 続けまた聞こえ届く推噴の声。声量こそ静かだが、その芯には明確な憤りの圧と威がふんだんに込められている。

 推噴は、眼下の町で行われているモンスター達による非道に、煮えたぎるまでの怒りを覚えていたのだ。

 

「落ち着いたらどうだ?ブチ切れて暴れても、けっ躓くのがオチだぞ」

 

 そんな届き聞こえた声の主である推噴に、維崎はまた白け気だるげな声色で、そんな忠告のような言葉を紡ぎ送る。

 今のこの場で、階級は幹部である推噴の方が上であり、実際今はこの二機編隊の長でもある。しかし維崎の今の言葉は、そんな事など微塵も意に掛けない不躾なそれだ。

 一番機の推噴は、言動通りの感覚派で激情家の問題児であったが。

 維崎は維崎でまた、怖い物知らずのきらいがある別種の問題隊員であった。

 そして、この異世界の空で急遽相棒となった推噴に対して、維崎は遠慮や忖度は無用で無意味と早々に判別。無遠慮な態度姿勢を取ることに、早くも憚ることは微塵も無くなっていた。

 

《ほざけェァッ!アレをぶっ飛ばす以外にどうするってェ?あァんッ?》

 

 対して推噴から寄こされたのは、最早脅しているかのようなドスの利かされた声。

 

「〝ヘヴィメタル2、シェンカー〟からホロウストーム・コマンド。続く地上への投射に入る、目標の指定をくれ」

 

 しかし維崎にあっては、そんな推噴の声を無視し。地上の野戦指揮所に向けて自機のコールサインを告げ、続く地上攻撃のための目標指定の要請を送る。

 

《了解、ヘヴィメタル2。そちらのHUDと画像に表示する》

 

 野戦指揮所からは応答対応の返事がすぐに寄こされ。そして操縦席のHUDには次なる目標へと導くマーカーが浮かび、操縦系のモニターにも同様にマーカーや進入ルートのラインが表示された。

 

「確認した――ほれ、目標が寄こされたぞ」

 

 それを確認しその旨を野戦指揮所に送り。それから維崎は投げやりな声色で、前方を飛ぶ推噴に促す言葉を送る。

 

《ハァッ!いいじゃねェかァ――ヘヴィメタル1、ヘイワードォァ。行くぞオラァッ!》

 

 維崎からの促す声を受け取ったであろう推噴は、今度は無線越しにそんな荒々しくも滾るような声を寄こす。

 かと思うや否や。前方を飛ぶ推噴のF-1戦闘機は、いち早く次の火力投射への進入ルートに入るためであろう。より速度を上げ、維崎の二番機を引き離す様子を見せた。

 

「アタマ撃滅の相手は疲れる」

 

 そんな推噴の声と様子に。一方の維崎は歯に衣着せぬ物言いで、億劫そうに紡ぎ発し。

 それから推噴の一番機とはまた別に自分のペースで。火力投射への進入コースに機体を乗せるべく、操縦桿始め各操縦系を操り機体を加速旋回させた。

 

 

 

 場所は、町の中央より少し東寄りを、南北に縦断する町路――先に峨奈率いる第3分隊が担当していたブロックへ。

 現在はその町路上を、その役割を第3分隊より引継ぎ分離した3名と1機――他ならぬ制。そして敢日にGONGと、新たに加わったオークのジューダが歩み進んでいた。

 

「――あれは……ッ!?」

 

 内のジューダは、驚愕の様子で上空を見上げている。

 その視線の先に在るは、高速で上空を翔ける飛行体――F-1戦闘機。

 今は一番機と思しき一機が先行し旋回の軌道を描き。少し距離を放して二番機が続き、追って旋回に入る隊形行動を見せている。

 ジューダの驚愕はむろんの事、突如として轟音を響かせ町の上空に姿を現した、異様で正体不明の飛行物体を目撃してのものであった。

 

「大丈夫だ、心配無ぇ。ありゃぁ、俺等の身内だ」

 

 そんなジューダに掛けられる、独特な重低音での説明の言葉。その主は制刻だ。

 ジューダの少し先に立ち、紡ぎつつ同様に上空のF-1戦闘機隊を見上げ追っている。

 

「身内……あれも君等の味方だと?」

「あぁ。この町が予想よりも面倒事になってたからな、応援に寄こされたらしい」

 

 ジューダは視線を降ろし制刻を見て、少し戸惑う色で言葉を返す。それに制刻はまた答え、補足の言葉をさらに紡ぐ。F-1戦闘機が出撃し飛来した理由経緯については、制刻等にも今しがた野戦指揮所より通信連絡が寄こされ、説明された矢先であった。

 

「――ッ」

 

 そんな制刻とジューダの一方。敢日は、その視線を二名とは別方へと向けて、顔には難しい色を作っている。

 その敢日が流す視線が見止めるは、町の各所より上がる煙。そして、町の各方より聞こえ来るは爆音や銃撃音が絶え間なく響き届いている。それ等は、少し前の自走迫撃砲のからの砲撃に始まり、各隊の多種の重軽火器が唸り。そして極めつけはF-1戦闘機の航空爆撃が生み出し、今も響き上げ続けるもの。

 もしかすれば。いや事前に聞いていた忠告から高確度で、町や住民を巻き込む事も厭わぬ姿勢で始められたであろうそれ等に。

 敢日は難しい心情を作り、それを顔に険しい色で表していたのだ。

 

「見物してばかりも居られねぇ。俺等も、行程を進めるとしよう」

 

 しかしそこへ、制刻の促す言葉が寄こされる。

 

「あ、あぁ」

「……オーケー」

 

 それにジューダはまだ戸惑い残る色で。敢日は少し浮かない様子で、了解の言葉をそれぞれ返す。

 そして3名と1機は進行行動を再開。また町路を北に向かって歩み進み始めた。

 

 

 

「――ッ。止まってくれッ」

 

 ジューダが唐突に制止の声を上げたのは。それから少し町路を歩み進んだ所であった。

 

「どうした?」

 

 振り向きジューダに尋ねる制刻。そのジューダは、少し難しくも何かに気付いた様子で、周囲へ視線を向けている。

 周囲の地形環境は、それまでまっすぐ進んでいた町路が、西方へくの字90度の曲がり角を描いている。

 

「愛芽通り……この辺りに、フケンの住居があるはずだッ――」

 

 ジューダはその一帯の一か所にある、その町路通りの名称を現す看板を見止めながら。そんな言葉を零す。

 続けジューダから述べられた補足説明によれば。

 その人物は先に保護回収したサウセイ同様、密かにジューダの一族との交流を持つ人物。そして抵抗を諦めずに子供達を連れて、町のどこかに身を潜めているはずの一人であるとの事だ。

 その人物の住居が、ジューダが当人から聞いた記憶によれば、この近辺であるとの事であった。

 

「成程」

「そりゃぁ、チト調べとくべきだな……ッ」

 

 ジューダの説明に、制刻は零し。続け敢日は、住居を調べ捜索する必要がある事を言葉にする。

 

「んじゃ、ちょいとお邪魔するか」

 

 そして制刻はまた発し。時間も惜しいと行動をに映る。

 3名と1機は近場の家屋の一件の、その玄関口より進入突入。周辺家屋の捜索行動を開始した。

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