―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》 作:えぴっくにごつ
それを暴力で洗って裁きます。
愛平の町の一角にある、ある一軒の家屋。そこは町に住まうある若い夫婦が暮らす家であった。
夫は町の騎士団の将来を期待された騎士、それを支える美しい若妻。羨まれる理想の夫婦であった。
しかしそんな夫婦にも、侵略の魔の手は伸びた。
町の陥落と共に、若い夫婦も魔物達の軍門に降り、虜囚の身となった。
そして夫婦は、魔物達の慰み物。甚振り楽しむための玩具として、魔物達のまえに差し出された。
夫婦は魔物に捕らわれ囲われる中でも、互いの愛を確かめ合い誓い合った。しかし……
「あぁっ……オーク様、オーク様ぁっ」
夫婦の住まい。その夫婦の営みの場であった寝室で、嬌声でオークの名の呼びながら、体を激しく動かす妻の姿がある。
そしてそれを囲い犯すは、町の支配者となったオーク達。オーク達は下卑た笑みで、ご自慢のモノを妻に突き込み突きつけている。
「ェぁ……ぁ……」
そんな光景から反れ、寝室の隅。そこには触手獣に拘束され締め上げられ、白目を剥き涎を垂らす騎士の夫の体があった。虫の息の様子で、しかし微かに残る意識で。夫は愛する妻が犯され、そしてオークに媚びる姿を見せつけられている。
そして寝室の各所には、ニヤニヤと下卑た笑みでその光景を眺め。それを肴に酒などを嗜むオーク達の姿が在った。
この残酷な光景は、魔物達の催しであった。
町を侵略する際に、騎士団の抵抗により魔物達もいくらかの被害を出していた。
今この場で行われているのは、その腹癒せ。そして晴れて町の支配者となった魔物達が、その支配欲、加虐心を満たすための出し物だった。
その犠牲として夫婦は引き出され、そしてこの残酷な舞台の玩具と成り果てたのであった。
「あぁっ、凄いぃっ……孕むぅ、オーク様の子を孕みますぅ……!」
誓い合ったはずの愛は、最早欠片も残っておらず。
妻は虫の息の夫には見向きもせずに、己を犯すオークに媚びる言葉を上げながら、腰をくねらせている。
その夫婦にとっては絶望だが。魔物達にとっては愉快でたまらない光景に、オーク達は下品に笑い、その娯楽を堪能していた。
が――その残酷な催しは、唐突なお開きを迎えた――突然の暴力と死によって。
「――ァぴぇッ」
媚びる嬌声を上げていた妻から、転じておかしな悲鳴のような一声が上がったのはその瞬間。
「――ハ?」
「エ?」
同時に、妻を囲い犯していた数体のオーク達は、素っ頓狂な声を上げる。オーク達がその一瞬で感じたのは、複数の何かが飛び抜けるような感覚。
いや、それは大事では無かった。
彼等にとっての問題は、目の前に見える物。
犯し楽しんでいたはずの、妻の顎より上が無い――爆ぜ弾けている。
いやそれだけではない、無いのはそればかりではない。
妻を囲っていた一体のオークの首。また一体のオークの両腕。果ては妻を串刺しにしていたはずの、オークのご自慢のモノが妻の下半身ごと。
その全てが大穴を開けたように、落ちあるいは欠損、損失。いずれのオークの身をも、掻き削ぎ赤黒い臓物を露出させている。
「ェ……ァ……ヒッ――」
そして、一体のオークがその凄惨な事態を最初に理解し。その獰猛な口から悲鳴を上げ掛ける。
――だがそれは、瞬間聞こえ届いた異質な唸り声に。そして、衝撃と質量の暴力の襲来に、掻き描き消された。
「――ギャぁッ!」
「ビゲッ!?」
「ギュケッ!?」
家屋の寝室の壁が盛大に破壊され踏み倒され、あまりにも巨大な何かが突っ込み踏み込み襲来。
明かしてしまおう、それは89式装甲戦闘車の巨体。
壁を体当たりで破り踏み込んできた装甲戦闘車が、オーク達を、並びにすでにミンチと成り果てていた妻だった物を。ゲギャッ、と強く拉げる音を上げて容赦なく跳ね飛ばして。あるいはキャタピラに巻き込み引き潰したのだ。
また明かせば、先のオーク達が爆ぜた理由は、装甲戦闘車からの機関砲投射によるもの。
――そして、間髪入れずにその備える機関砲が、また室内に向けて遠慮なく方向を上げた。
「――キャっ」
「ピュェッ」
唸り、旋回しての薙ぎ撃ちを開始した機関砲は、体当たりで宙に浮いていたオーク達の身をまず紙切れの如く千切り四散させ。
「ナん――ピョゥ!?」
「ビュッ!?」
さらに、残酷な凌辱の光景を肴に、囲い楽しんでいた室内のオーク達を、端から浚えミンチと変えてゆく。
「ぁ゜っ」
果てに。触手獣に締め上げられていた夫を、触手獣ごと弾き四散させ。命と引き換えに絶望より解き放った。
89式装甲戦闘車は、機関砲の掃射でその一室内を浚え終え。唸り声を鳴り止ませる。
よくよく見れば、その装甲戦闘車の車体の上。前面の傾斜装甲の上に寝そべるように乗る何かが見える。
それは白目を剥き泡を吹き、虫の息の一体のオーク。
否。さらによく観察すれば、その下にそのオークの首根っこを掴む別の存在がある。
3分隊分隊長の、峨奈だ。
峨奈は装甲戦闘車の車体上に仰向けに寝そべる様に乗り、そして捕縛したものである死に体のオークを肉の盾とし、家屋の破片類を凌ぐ姿を見せている。
この家屋への突入案を企てたのは、峨奈自身。
そして彼は突入後に即応するため、自らデザントの真似事を実行するに至ったのであった。
「っと」
峨奈は、虫の息のオークを肉盾として構えたまま、車上より器用にするりと降り立つ。
「ぅぁ……ビャッ!?」
そして直後に響くは重い発砲音、そして近場を這いつくばっていたオークの断末魔。
見れば峨奈の片手には、突き出し向けられたM870MCSショットガン。峨奈は間髪入れずに、まだ息の残るオークの一体を撃ち抜き屠ったのであった。
「ギャッ」
「ひギッ!?」
峨奈はまだ息のあるオーク達を的確に見つけては、ショットガンでその頭を、あるいは股間を撃ち抜き、屠ってゆく。
「た、タスけ……ギェぅッ!」
さらに、這いつくばり逃走しようとしていたオークの背に、食らいつくように銃火の線が撃ち込まれた。
それにあっては峨奈ではなく、その背後。
89式装甲戦闘車の車長キューポラ上に半身を出し、93式5.56mm小銃を構える髄菩の姿が在る。そのフルオート射撃がオークをまた屠ったのだ。
「――チッ」
その髄菩は小銃の銃身を跳ね上げながら、またも胸糞悪い光景に出くわした事に、舌打ちを討つ。
その眼下では、装甲戦闘車の突入に続いて踏み込んできた3分隊の隊員らが、クリアリングに掛かってゆく姿が見える。
しかしすでに、その家屋の一室内にまともに動く敵は残っていなかった。
「ふぅむ」
その中で、峨奈はすでに用済みとなった肉盾のオークを、放っぽり捨ててショットガンで撃ち抜き始末し。それから零しつつ、室内に観察の視線を流す。
峨奈が見止めるは、肌色でオークの亡骸と辛うじて分別できる、この住居の夫婦の肉片。
抵抗を諦め、魔物に媚びに行った妻の末路。少なくとも絶望からは解き放たれた夫の果て。
実はこの家屋での残酷な催しは、先行した分隊の偵察が目撃して報告を上げており。峨奈も事前に知る所であった。
「かわいそうに」
魔物達の残酷な宴の生贄となった夫婦に、峨奈はそんな言葉を零す。
しかし言葉に反して峨奈のその声色と表情は、あまりに飄々としており。それが本心からではなく、体面上発せられた言葉である事は明らかであった。
「……ごっ――ギュぅッ!?」
そして、一応の手向けとでも言うつもりか。峨奈は、傍を這い密かに逃げようとしていたオークの頭を踏みつけ沈めると。その股間をまたショットガンで撃ち抜き、そのオークをオスとして終わらせた。
「――ハァ」
そんな様子を、砲塔キューポラ上より見下ろしていた髄菩は。すでに嫌悪感を一々感じるのも億劫だと言う様子で、溜息を吐く。
《――近隣の分隊、もしくは車輛ユニット。こちらはエピック、応答願う――ッ!》
そんな所へ、身に着けるヘッドセットや車載無線から、張り上げられた声が響いたのはその時であった。
《こっちは規模のデカい、強力な敵の陣地と遭遇し交戦中。応援が必要だ、急行願うッ!》
その声は敢日の物、寄こされたのは応援要請の通信。どうやら困難な状況に直面したらしい。
「峨奈三曹」
それを聞き、髄菩は眼下の峨奈に声を降ろす。
「あぁ――エピック、こちらはジャンカー3ヘッド。要請を受信した、こちらから向かう。少しの間踏ん張れ」
峨奈は髄菩の呼びかけに端的に答え、そして自身のヘッドセットに向けて呼びかける言葉を。そして自分等で応援に向かう旨を、紡ぎ送る。
《頼む!エピック、終ワリ!》
それに無線の向こうの敢日は荒々しく端的に返し。そして向こうより通信を終えた。
「――さて、行こうか」
通信を終え、峨奈は3分隊各員や、髄菩に向けて促す声を発する。
それを受け、3分隊各員は近場のドアを破り。一室を抜け出て行く。
「――藩童、出せ」
そして、髄菩はどこかウンザリした様子で操縦手の藩童に告げ、停車していた装甲戦闘車も行動を再開。
一室の床に散らばる家屋の破片、家具の破片、そしてオーク達だった肉片等。全てを踏み潰し蹴散らして、並び隔たる家屋の壁を全て破り踏み倒して。要請に応えるべく増援へと向かった。