―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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2-28:「鋼鉄の奏、音速の衝撃」

 ――町の上空を旋回飛行する、オープンアーム無人観測機。

 その胴体下下方カメラが見降ろし捉えるは、町の一角にあるY時分岐路。それは合流を果たした3、14分隊の混成小隊の進行方向に存在する、先とはまた別の二つ目の分岐路。

 カメラがそこに映し捉えるは、蠢き荒々しく動き回る多数の影――モンスター達。分岐路の各所には幾重にも荒々しく組まれたバリケード陣地が垣間見え、そこに潜み待ち構えるモンスター達が見える。

 さらに双方分岐路の先からは、町路を一杯に占める巨大な生物が。ライマクと呼ばれる巨大モンスターが複数体、またオーク達といったモンスター達を伴い隊列を組み、行進して来る様子が見えた。

 遥か上空から見ただけでも、それは脅威と判断するに十分すぎる光景であった。

 

《――オープンアームよりホロウストーム・イースト。こちらは敵性モンスターのさらなる増加を確認している》

 

 無人観測機のカメラが眼下にその光景を捉え続ける中、通信上に音声が上がり伝わる。

 それは遥か離れた草風の村に置かれる無人観測機の操縦室から、3、14分隊の合流した装甲小隊に向けて呼びかけ伝える物。

 

《マンモスに類似の巨大生物が4、いや5。それを中心とした中隊規模の敵性部隊が分岐路に、そちらにさらに向かっている――並びに、分岐路は非常に強固な陣地と化していると見止める。そちらでも確認の上、必要なら接触戦闘の回避を進言する》

 

 続け通信上に流れ伝わる知らせの、そして進言の言葉。それは観測した一帯に存在する敵が、脅威度の高いものと見止めて促す操縦室からそれ。

 同時にカメラはモンスター達の蠢く分岐路を外れ、伸びる町路を東へ辿り移動。その先に、町路上を散開展開して進む複数の人影。そしてそれに少し離れて続く鋼鉄の物体――装甲小隊の隊員等と、装甲車の車列を映し捉えた。

 

《――オープンアームへ、敵の陣地及び増援はこちらでも再度確認した。だが進行を停止はしない。すでに攻撃を受けて交戦状態に入りつつある、このままぶつかり処分排除にかかる》

 

 呼びかけ知らせる一連の言葉に対して、返し答える声が通信に上がる。それは峨奈の声だ。そして峨奈のその言葉は、しかし操縦室の進言を取り下げ、このまま脅威との戦闘に突入する旨を返し伝える。

 

《どうあれこれを回避、放置する事はできない。どうにか無力化する》

 

 付け加え通信に上がるは、端的で淡々とした、しかし叩きつけるまでに言い切る一言。

 

《――了解。調整はこちらからもしておく、各砲爆撃の要請は惜しむな》

 

 それを受け、操縦室側はそれ以上しつこく食い下がることはせず。そう促す言葉を送る。

 

《了。感謝する、オープンアーム》

《健闘を祈る。終ワリ――》

 

 最後に端的な言葉が交わされ、通信は終わる。

 そして無人観測機のカメラは装甲小隊を引き続き装甲小隊を追いかけ。苛烈な戦闘の様子を鮮明に捉えるべく、ズームアップする――

 

 

 

「――チィッ」

 

 町路上、町並みの中を。

制刻は舌打ちをしつつも、速い速度で駆け進んでいる。その後ろには同様に続き駆ける敢日、そしてGONGの姿。

 そしてその制刻等へと正面から飛び襲い、傍を掠めるいくつもの飛来物があった。それは矢、あるいは杭にまたは鉱石の針。いずれもが明確な害意を持って、その傍や真上を掠め飛び抜けて行く。

 

「そこだッ」

 

 制刻はその中を駆け抜けながら、後続の敢日等にむけて発し上げる。

 そしてすぐ先の右手にあった一軒の家屋の、その玄関扉に駆けこむと、問答無用にその扉を蹴破って、中へと踏み飛び込んだ。

 

「ッゥ――!」

 

 制刻に続き、敢日が突っ込む勢いで出入り口を潜り飛び込み。最後にGONGが玄関周りの壁を破り壊しつつ、その巨体を飛び込ませた。

 屋内へと飛び込んだ制刻等は、すかさず壁際や窓際にカバー配置。制刻は先のGONGの突入でやや壊れた壁に背を預けつつ、玄関口より外を伺う。

 最初に見えたのは町路を挟んで向こう側にある、また一軒の八百屋らしき建物。その店先に並ぶ商品の野菜果実を並べる台箱に、今まさに3分隊付随の機関銃班の隊員等が、滑り込んできてカバー。

 そしてすかさず担当する火器であるFN MAGを突き出し、台箱を利用して据え。唸らせ射撃行動を開始する姿を見せた。

 制刻はその撃ち出された銃火線の方向を追い、視線を町路の先へと向ける。その先に見えたのは、二股に割れるY時構造の分岐路――そしてそこに構えられる、強固な『障害』であった。

 

 

 Y時分岐路の中心、突点に建造され見えるのは、一般的な家屋では無く、石造りの強固な砦であった。これは元はと言えばこの町の騎士団の物であり、万が一外壁が破られ町内へ進入を許した際に、二次防衛の拠点となるべく築かれたもの。制刻等や隊にも、ジューダよりその事は説明されていた。

 しかしそのはずの砦は、その期待された役割を果たす事無く、今や町同様モンスター達に支配されていた。

砦内にはモンスター達が蠢き籠り、砦周りや両脇の町路上にも、付随して砦の防御を強化するための、バリケードや陣地類の構築された姿が見える。各所には長弩や連弩類もいくつも設置されて火点の役割を担い、その砦を中心とした一帯は、まるで小規模ながらも要塞といった様相を成していたのだ。

 

 

「愉快じゃねぇな」

 

 制刻は玄関口から少しだけ視線を出して、先に見える砦と周りの様子を見止めながら。同時に変わらず飛び来て近くを掠める矢撃類の気配を感じながら、それぞれに対する思うところを淡々と零す。

 

「厄介なモンを構えてくれたッ!」

 

 隣、窓際でカバーする敢日からはそんな荒げた言葉が発され届く。同時に敢日を窓から突き出し、ブラインド射撃で釘弾を先に向けてばら撒いている。

 敢日のそれを聞き見てから、制刻は再び外へ視線を向ける。

 今度視線を向けた町路の反対側、少し後ろには、路地にカバーする峨奈の姿が微かに見えた。近場周辺には散開展開して同様にカバーし、確固射撃戦闘行動を行う隊員各員。その中で峨奈は前方の砦を睨む様子を見せつつ、片腕を翳し流す動作を見せている。

 直後――その峨奈の姿が、ヌッと現れた巨大な何かに阻まれ隠れ、見えなくなる。

 ギャラギャラと響く金属音と、鈍い唸り声を上げて現れたのは、他でもない89式装甲戦闘車の巨体。峨奈の指示を受けて進み出て来たのだ。

 89式装甲戦闘車は飛び来る矢撃や杭や鉱石を、その装甲で弾き退けながら進み。制刻等の真横を通過、その少し先で停車。すでに仰角を取って照準していたその35mm機関砲を唸らせ、砲火を前方の砦へと叩き込み始めた。

 注ぎ込まれた機関砲弾は、砦の一角に飛び込み炸裂。その周りの弓眼を沈黙させる。

 加えて89式装甲戦闘車の背後には、84mm無反動砲装備の対戦車班が随伴しており。その対戦車班が撃ち放った多目的榴弾が、Y字路状に張り巡らされたバリケード陣地の一角に飛び込み、炸裂して潜むモンスターごと巻き上げ消し飛ばした。

 しかし、砦周りからの攻撃の飛来が収まりを見せる様子は無い。変わらぬ多数の矢撃、魔法による火玉や鉱石の針が飛び来て周囲を掠め、装甲戦闘車の装甲を叩く。

 その上さらに、分岐路の一方。向かって右手の先からドシンドシンと足音を立てて現れたのは、先に無人観測機が存在を知らせて来たマンモス型の巨大モンスター、ライマク。敵のバリケードの向こうより現れたそれは、見えた次にはその背に乗せ備えたカタパルトを投射。飛び襲い来たのは大きな火岩、それが89式装甲戦闘車の斜め後方の家屋に直撃し、焼いて破壊。飛び散った火の粉や家屋の破片が、直下近場に展開していた隊員等に降り注ぎ掠めた。

 

《ッ――エンブリー、マンモスモドキに優先して対応しろッ》

 

 忌々し気な口を鳴らす音が通信上に聞こえ、続き聞こえたのは峨奈から89式装甲戦闘車への指示要請の声。その指示か上がるか早いか、89式装甲戦闘車の砲塔砲口はすでに現れたライマクへと向き。そして再び35mm機関砲が咆哮を上げた。

 投射され注ぎ込まれた機関砲弾は、ライマクのその図体を直撃。その貫通と炸裂が、ライマクの巨体を削ぎ弾く。さらに機関砲は仰俯角を変えて、縫い付けるようにしつこく機関砲弾を注ぎ込み。程なくしてライマクはその太く大きな脚を折り、ドシャリと地面へ崩れ沈む姿を見せた。

 

《――エンブリーより各ユニットヘッド、敵後続にさらにマンモスモドキを視認してる。複数体》

 

 しかし間髪入れずに、通信上に89式装甲戦闘車車長の髄菩の声で、各分隊長クラスに当てた報告が上がる。それが示す通り、先の双方分岐の向こうからはそれぞれ、さらなるライマクが隊伍を組んで迫る姿が見えた。

 

《敵火点陣地も強固、当隊だけでの対処は非効率かと。はっきり言います、弾の消費が無駄に嵩む》

 

 続け上がる、不躾な色での髄菩の進言。

 現在、ライマクを相手取り始めた髄菩等の89式装甲戦闘車に変わり。続き少し離れて位置する76式装甲戦闘車が、30mmリヴォルヴァーカノンを髄菩等の真上を越えて投射。敵火点である砦からの攻撃を、それをもって封じている。

 おそらく厄介な現状に加えてそれを鬱陶しく思っての、不愉快そうな声色でのそれだ。

 

《エンブリー、髄菩陸士長、皆まで言うな。こちらでも掌握している、すでに火力投射の要請を進めている》

 

 それに返し答えるは、峨奈からの少し宥めるような色での言葉。そんな所へ再び火岩の攻撃が飛来し、また別の家屋を直撃する。

 

《ッ――航空投射誘導員がそちらへ行くぞ》

 

 それを忌々し気に思っての小さな舌打ちが交じり。続け、知らせる一言が紡がれ通信上に上がる。

 同時に。町路上後方の76式装甲戦闘車の側面より、一人の隊員が駆け出て来る姿が見えた。その隊員の姿格好は、周りに展開する陸隊各員のそれとは趣を異にする。濃い目のグレー色を基調として細かい四角形で迷彩を表現する、いわゆるデジタル迷彩と呼ばれる柄を描く、日本国航空隊で採用される作業服を着用する姿。

 姿から航空隊隊員である事を示すその隊員は、航空機からの火力投射――爆撃等を地上より誘導する航空投射誘導員だ。航空火力の投射の場面を想定し、航空隊より分遣され装甲小隊に随伴していたのであった。

 その誘導員は、機関砲や機関銃の激しい火力が飛ぶ元を駆け。89式装甲戦闘車の背後に駆け込み、配置する様子を見せる。

 

《――チューナーよりヘヴィメタル。目標を指定する、マークしそちらに表示する》

 

 そして通信上に、その誘導員の声が上がる。伝える相手は、上空を飛行する二機のF-1戦闘機。

 

《――了解、こちらは上空で準備態勢に付いている。急降下爆撃でやる、受け取り次第開始する》

 

 それに返される来るは、二番機の維崎の声での返答。

それを聞き確認するが早いか、誘導員の隊員は手にしていたカメラ状の誘導マーカー機器を構え。先の分岐路ど真ん中の砦を捉える。

 

《――マーク》

 

 そして、通信上に一言上がる知らせの声。

 一帯には変わらず、火器火砲や敵方の攻撃の音が交錯し響くが――微かな〝それ〟が届き聞こえたのは、その時だ。

 風のように聞こえたそれは、その直後には空気を切るようなそれと、唸るようなそれへと変わる。

 さらに一瞬後に。それは裂くような、轟くようなそれへと変貌し。

 砦、分岐路の真上上空に、地上へ切っ先を向ける飛行体が姿を見せる。それは、急降下を仕掛けるF-1戦闘機に他ならない。

 F-1戦闘機は、続く瞬間には手が届くのではないかと思える高度まで降下飛来。まさにギリギリの高さでその機体を急激に引き起こし――劈き裂くような異音と、轟音をこれみよがしに響き上げ。分岐路を、さらに装甲小隊の真上を掠めるような低高度で通過。

 そして――

 

 

 ――大きな、無数の爆炎が。

 巻き上がったそれ等が――砦を。分岐路一帯に築かれた陣地を、迫る巨大なライマク達を包み込んだ。

 

 

「ッォ――!」

「っとォ」

 

 先で上がった盛大な爆炎。そして伝わる衝撃。

 それ等は、F-1戦闘機が急降下から投下し叩き込んだ、多数発のMK.82航空爆弾が作り出したもの。急降下爆撃が体現したそれ等に、制刻や敢日も身を隠しつつ、それぞれの反応を見せる。

 しかし衝撃は、その一撃に留まらない。

 さらに続け、砦の真上より切り裂く音が聞こえ届き。上空直上には二機目のF-1戦闘機がモンスター達へ向けて急降下襲来。

 F-1戦闘機の二番機は先の衝撃を再現するかのように。劈く轟音を響かせ、急激な引き起こしで砦、そして装甲小隊の真上低高度を通過。

 直後――まだ一撃目の爆炎も晴れぬ分岐路が、再び多数の爆炎に包まれた――

 

「――ッゥー」

 

 衝撃を凌ぎ。

 カバーから視線を出して先の様子を見た敢日は、爆炎巻き上がる分岐路一帯の光景を目に、口を鳴らす。

 それは爆撃投射の比類なき威力に感嘆しつつも、容赦ないまでに町の一角を吹き飛ばしたそれに、同時に若干の難しい感情を覚えるそれだ。

 

「インパクト満点だな」

 

 一方の制刻は、そんな驚きを表現するような一言を。反して特段驚きの色は見えない淡々とした口調で零す。

 

《――どォ゛らァッ!ン゛なモンだァッ!?ヨォッ!?》

 

 そんな所へ。荒々しいという表現でも足りないようなドスの聞いた声が、通信上に上がり聞こえる。F-1戦闘機隊、ヘヴィメタル飛行隊の一番機パイロットである、推噴のものだ。どうにも爆撃投射の効力を聞き尋ねるそれ。

 

《ヘヴィメタルよりチューナー、効果確認をくれ》

 

 そんな推噴の声を翻訳するように。いささか呆れの混じった端的な声で、二番機の維崎から尋ね要請する言葉が改めて寄こされた。

 

《チューナーよりヘヴィメタル、こちらでは直撃を確認してる。お見事。詳細の効果は陸隊装甲小隊がこれより踏み込み確認の手筈、そちらの指揮官に渡す》

 

 問いかけには誘導員の答える声が上がり、少なくとも航空爆弾は見事に目標へと投下された旨を回答。そして通信の優先権を陸隊装甲小隊指揮官へと渡す。

 

《――ホロウストーム・イーストよりヘヴィメタル、感謝する。効果詳細はこれより進入の上、確認する。しかし敵は強固で未知だ、我々の想像の上を行く。さらなる投射要請に備えてもらいたい》

 

 渡された先で上がった声は峨奈のもの。その声でまずは投射に対する感謝を示し、しかし続けてまだ油断ならぬ旨を、そして引き続きの求める言葉を送る。

 

《ヘヴィメタルよりホロウストーム・イースト、その旨了解。態勢取り直し、再進入に備える》

《願います》

《ヘヴィメタル、終ワリ》

 

 それに対してはまた、二番機の維崎から了承了解の返事が返される。そしてそれをもって効果確認、及び再調整の通信は終えられた。

 制刻等が通信上のそれを聞き、そのやり取りの片方であった峨奈の方へ眼をやれば。後方路地の近くで隣り合う峨奈と鷹幅が何か一言二言交わし、そして峨奈がまた腕を翳し流す指示の動作を、周りへ促す姿が見えた。

 それを合図に装甲小隊は全身行動を再開。町の先に停車していた89式装甲戦闘車が走行を再開、先頭を行き、随伴分隊の各員が散開し位置取り続く。そしてまた続き、後続の76式装甲戦闘車が制刻等の横を通過。

 

「んじゃ、行くとしようぜ」

「あぁ――」

 

 そして制刻等も、促しもしくはそれに答え。町路へと踏み出て、未だ爆煙の立ち込める分岐路に向かって歩みを進めた。

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