―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》 作:えぴっくにごつ
吐き気を催す光景が繰り広げられていたその場に。衝撃崩壊音を轟かせて割り込んだそれ。
それはモンスター達が従えていたはずの、そしてその中でも最大級の触手モンスター。ミミズ型で、しかし数十mの長さに及ぶ体長と、数mの同幅を持つ巨大触手。
それが広場の南側、上級魔獣達の背後に位置していた家屋を倒壊、真っ二つに割って潰し壊して現れ。そこから伸びて魔物達の所まで、倒れた巨木のように沈み鎮座している。
突然のその光景に、固まる周囲の将軍級のモンスター達。
それをよそに、巨木のような触手は動きを見せ、その巨体をのっそりと持ち上げる。
「――……びぁっ……ぁ゜っ……ッ?」
その下から現れたもの。
それは上級魔族――潰された上級魔族の体だ。
地面に半分めり込み、四肢をあってはならない形で捻じ曲げ。半分地面にめり込み、白目を剥いて泡を吐いて、ピクピクと痙攣している。
まるで潰れた蛙だ。
「……ぁ゜っ……っ?」
「……ぴぁっ……っ?」
そしてその触手が落ちた同線上には、同じような形で、潰され地面に張り付き、ピクピクト痙攣する少年少女の体が見える。上級魔獣と同線上にいた二人は、触手の倒撃に仲良く巻き込まれたのだ。
「ハ……なぁッ!?」
「ダンナ!?なん……!?」
その現れた、モンスター達の頭領である上級魔獣の、見るも無残な格好に。突然の事態に呆けていた将軍級モンスター達はそれを理解し、そして狼狽の声を上げかける。
「――ビェッ」
「――ギュェッ」
しかし、それを阻むように将軍級のモンスター達を何かが襲い。将軍級モンスター達の内の数体が、妙な悲鳴を残してその場から掻き消えた。
モンスター達を襲ったのは、巨大で強烈な打撃。それは今まさに上級魔獣を潰した大型触手の巨体によるもの。
一度その巨体を持ち上げた大型触手は、そこからグアとその巨体をしならせ薙いで払い。その圧倒的図体と質量を持って、将軍級のモンスターを襲い殴り打ち、薙いで掻き攫ったのだ。
将軍級のモンスター達を掻き攫い、大型触手はそのまま先にある家並みにズドンと巨体をぶつけ叩き込み、攫った将軍級モンスター達を挟んで潰した。
――それが、この場の地獄の宴を、灰燼に帰す合図となった。
同時に広場の上空より、空気を掻き切るようなヒュゥゥ――という音が響き来る。
「――あ゛ぎょこっ!?」
「ヒギェッ!?」
ゴガン――と、広場の一点でなにかが落下し強くぶつかる音が上がったのは直後。同時に響いたのは、妙な悲鳴ともつかない音と、濁った悲鳴の二つ。
そこに見えるは女と指揮官級のオーク。それはオークに犯されながら媚び嬌声を上げ、己の旦那を蔑み快楽に溺れていた町の女。そしてそれを貫き犯していた指揮官級オーク。
悲鳴はそこから上がった物。見ればなんと、仰け反っていた女の顔面には大穴が開き、目が飛び出、顎が外れ歯飛び、鼻は影も見えない。いや穴は顔面に留まらない、女体は顔から喉、胴と果ては尻穴までをなにか太い物に貫通されたのか、潰し押し開けられた大穴をあけていた。女の人体はまるで竹輪のように、人の形としてあってはならない形状と成り果てていた。
そしてそんな女を跨らせていた指揮官級オークの、その股間を注視すれば。そこには太く黒い塊が落ちて突き刺さりめり込み、オークのご自慢の竿や玉を、股間周りごと潰していた。
――明かそう。女を貫通し、指揮官級オークの股間を潰したのは、120mm迫撃砲弾だ。飛来し広場へ落ちたそれが、見事に女と指揮官級オークを直撃貫通。潰し、面白いまでの有様へと変えたのだ。
ここまでがわずか一瞬、1秒に足るか程度の出来事。そして、落ちた120mm迫撃砲弾のその役割を考えれば、続き何が起きるかは最早説明も必要ないだろう。
瞬間――着弾した120mm迫撃砲弾が炸裂した。
竹輪状と成り果てた女と、指揮官級オークはその暴力を内から受ける形となり。最早悲鳴も無しに消し飛び、血肉の霧へと帰した。
「――ビェ」
「――ェァ」
そして炸裂の暴力を諸に浴びるは、その周りのモンスター達。そしてそれに犯されしかし媚びていた女達。さらにはその姿を見せつけられながら、絶望に捕らわれながら己を慰めていた町の男の並びを。
炸裂は、その全てに一切合切の差別区別無く襲い。モンスターの、男や女の体を焼き、千切り、四散させて消し飛ばし。非道のモンスターを屠り、男や女を最低限の慈悲とでも言うように、死と消滅をもって解放した。
そして、飛来した砲弾はその一発に留まらない。
ほぼ同タイミングで広場の各所で同じ現象が発生。そこかしこで媚び喘いでいた町の女、あるいは腰を振るう事に夢中になっていたモンスターに落ち、その体を潰し叩き。そして炸裂により消し飛ばして血肉へと変え始める。
それ等は、町の外で配置した96式自走120mm迫撃砲。それに装甲小隊各分隊に付随する、各迫撃砲班の64式81mm迫撃砲から開始され撃ち込まれ始めた、砲撃によるもの。
それ等が広場の地獄の宴に、まったく異なる暴力で振り注ぎ乱入。下卑たお楽しみを奪い取るように、炸裂吹き飛ばし始めたのだ。
「な、ナんだッ!?何がおこ――」
また広場の南側。起こりだしたそれに狼狽し叫び上げているのは、一体の将軍級のオーク。
「――キュ゜ェッ!?」
しかし直後にまたも衝撃音がその背後で上がり、そして巨大な質量が将軍級オークを襲撃。将軍級オークは瞬間には巨大な何かに轢かれ押し潰され、おかしな悲鳴を漏らした。
将軍級オークは地面に圧され、潰されたトマトのようにその巨体から血を噴き出し撒き散らし、ピクピクと手足を動かし痙攣している。
その将軍級オークを踏み潰すは、異質な金属――キャタピラ。
その上に在るは、鋼鉄の怪物――93式装甲戦闘車。
家屋を倒壊させて押し進んできたそれが、壁を踏み倒して広場へと飛び出るように現れ。ちょうどそこに居た将軍級オークを見事に踏み潰したのだ。
「ワァァァッ、頭が!?」
「な、なん――」
突っ込み姿を現した93式装甲戦闘車に、近場に蠢いていたモンスター達が狼狽え騒ぎ出す。が、それすら最後まで認められることは無く。一か所で突然また爆炎が上がり、固まるモンスター達がまとめて巻き上げられ、千切り弾けた。
それは迫撃砲の砲撃とはまた別。93式装甲戦闘車の90㎜低圧砲の砲撃投射が成したものだ。93式装甲戦闘車は広場に踏み込むや否や、とりあえず一発と言うような様子で砲撃投射を一撃見舞ったのだ。
さらに別方、広場西側より。同様に家屋を破り踏み倒して別の装甲戦闘車が出現。第6分隊に付随していた73式装甲車だ。73式装甲車はそちらもまた踏み込んで来ると同時に、その場にいたモンスター達を何体か跳ね飛ばし。そして狼狽えるモンスター達に、搭載する各機関銃で掃射を開始、銃撃を浴びせ始めた。
「ヒッ――チクショウ、なんだよォ……!?」
93式装甲戦闘車の側に戻り、その近場。
そこでは突然の事態に、正体不明の怪物の襲撃に狼狽える一体のオークの姿が在る。
「……あ、おぉっ!」
しかしそのオークは、93式装甲戦闘車の背後に、別のしかし見慣れた大きな物体を見る。
それはいずれも十数mサイズのミミズ形状の大型触手獣。己達が使役従えている触手獣達。
「触手獣共か!早く、よくワかんねぇがソイツをやっちまって――!」
仲間、配下である触手獣の到着に喚起し、求める声を発し上げ掛けたオーク。しかし――
「――ぇ?」
そのオークに影が差す。見れば現れた触手獣は93式装甲戦闘車の傍を抜け、そしてオークに向かって倒れ、いやその巨体を振り下ろしている。
そして直後。オークは仲間と信じていたその巨体に潰され、床に血肉とシミとなった。
ほぼ死に体の将軍級オークの図体をキャタピラの下に轢き、すこし傾き停止している93式装甲戦闘車。
その横から。ヌオッと真横に現れ影を差したのは、大型の触手モンスター。それもさらに一体に留まらず、2、3、4体と93式装甲戦闘車の左右に、這い繰り出て来る。さらにその元、地上を這い進みワラワラと現れたのは、多数体の小~中型の触手モンスター。
そしてしかし、93式装甲戦闘車と敵性関係であるはずの触手モンスター達は、装甲戦闘車に襲い掛かる様子はまるで見せず、そのまま両脇を抜けて這い進み出て来る。おまけにそれは己から進んでという物ではなく。慌て、何かに怯え追い立てられてのような様子だ。
そしてそれらの触手モンスター達は一様に、砲撃襲撃で混乱下にある、仲間であるはずのモンスター達に襲い掛かり始めたのだ。
「う、ウわぁッ!?」
「な、なんデ触手共が――びゃッ!?」
仲間であるはずの触手達からのそれに、オークやオーガ達は狼狽の声を上げて一層の混乱意陥り。そして叩き退けられ、あるいは潰され始めた。
「――」
一方。将軍級オークを踏みつけ少し傾く93式装甲戦闘車の。その車長用キューポラからハッチを開け放って、車長の芹滝三曹が半身を現した。
攻撃の行動判断は砲手に一任したため、その瞬間にも砲塔が旋回し。90mm低圧砲が咆哮を上げ、その先でモンスター達が舞い上がる。
「ジャンカー2、展開しろッ!」
砲撃の衝撃を感じつつ、芹滝はヘッドセットに向けて発し上げる。
それに呼応し、93式装甲戦闘車の車体後部の乗降扉が勢いよく開け放たれる。そして乗車していた、浦澤三曹率いる第2分隊が飛び踏み出し、周辺への展開を開始した。
《――ホロウストーム・ウェストへ、こちらソブリンズ。そちらの目標地点への強襲を確認した、こちらは砲撃を停止する》
そこへ忙しくも間髪入れずに、芹滝のヘッドセットに通信が飛び込む。それは96式自走120mm迫撃砲の配置する、重迫撃砲陣地からのもの。
93式装甲戦闘車や73式装甲戦闘車、そして付随する第2分隊や第6分隊。それらの合流した正体が広場へたった今突入した事を無人観測機からの映像で確認し、それをもって迫撃砲による砲撃を停止する旨を送って来たものだ。
「止めるなッ、ソブリンズッ!」
しかしそれに対して、芹滝は荒げ発し返した。
「突入地点は脅威多大ッ、投射打撃が最優先だッ!構うな投射を続けろ、止めるんじゃないッ!」
続け捲し立てヘッドセットに発する芹滝。それは広場に未だ蠢くモンスター達を未排除の脅威と見止め、それを吹き飛ばすべく。自分等への被害の可能性を承知の上で、砲撃継続を要請する言葉。
《――了解、継続する。だがあまりに危険と見た時には、こちらの判断で停止するぞ》
芹滝の要請の言葉、その差し迫る色から。重迫撃砲陣地側はそれに再確認や異を唱えるなどの不要な言葉は返さず、端的に了解の旨を。そして一つ条件だけを付け加え返す。
「それでいい、頼むッ!」
《了、終わり》
通信を終える一言をヘッドセットより聞き、同時に芹滝は先の光景を見る。
見えるは仲間であるモンスター達を襲い始め、大中小の触手達の暴れる光景。
さらにはその中に各迫撃砲の砲撃が落ち。また新たにモンスター達や町の男女を炸裂で千切り、新たな肉片血霧を生み出す。もしくは一度落ちた場所に再度連続して炸裂、千切られたモンスター達や男女を念入りなまでに血肉の霧へと変えて散らかす光景だ。
それらの様子を一瞥し。その直後に芹滝は横方に気配動きを感じ、その視線を真横へと流す。
車上より眼下。地上を装甲戦闘車の後方より歩み出て来る、一人の隊員の姿がある。
長身のそれは、策頼のものであった。
歩み出て来た190を越える身長体躯は、2分隊に同行していた策頼のものだ。広場の苛烈な状況と反して、その歩みは悠々と優雅なまでである。
そしてその片手は何かを掴み引きずっている。引きずろ寄せられたのは、先に上級魔族を少年少女ごと叩き潰し。さらにはその身を暴走させて仲間であるモンスター達を襲っていた、巨大触手モンスターのその尾だ。
その数十m級の巨木のような巨体が、しかしその表面の肉を鷲掴みにされ、いとも容易く策頼に引きずり寄せられる。そして恐ろしい脅威であるはずの巨大触手モンスターは、だが引きずられながら何かその巨体をプルプルと震わせ、頭部分を力なく振るい揺らしている。触手モンスターのその様子は明らかに怯えていた、まるでこれから折檻でも待ち受けるペットのようだ。
「――」
そんな巨大触手モンスターを策頼は冷たく静かに一瞥。それからまた触手を掴み引っ張りつつ、数歩踏み進む。
その先に転がりあったのは、モンスター達の頭である上級魔族。その潰れ地面に張り付いた無様な姿だ。
「ぁ゜ッ……ぁ゛っ……」
全身の骨が折れ、手足は拉げ曲がりあってはならない方向を向き。しかしながらその屈強な体と生命力が、今にあっては半端な形となり災いし。即死も叶わずピクリピクリと痙攣。白目を剥いて獰猛なはずの口からは泡と涎と悲鳴にもならない音を漏らしている。
「ぉ……ぉっ?……ぴぽょッ!?」
その上級魔族の頭が、直後には圧され地面に沈み潰れた。
見れば上級魔族のその体の上に乗り立った策頼が、戦闘靴を履く脚で上級魔族の頭を踏みつけていた。沈められた上級魔族からは悲鳴ともつかない音がまた上がる。そんな踏みつけた上級魔族をくだらない物とも言うように一度見降ろし、それから策頼はその少し先の地面に視線を向ける。
そこにまた転がり張り付くは、モンスター達の慰み物となっていた、冒険者の少年少女――だった物。
どちらも今や巨大触手にその体を圧され、全身の骨を砕かれ四肢を放り出し、臓物を体中からはみ出させ。頭部顔面は両眼を飛び出し脳漿をぶちまけ砕け散っている。
上級魔族と違い、二人は即死であった。
想い人を裏切り蔑み、憎きモンスターに媚び落ちた少女と。想い人に裏切られ、絶望に落ちた少年は。仲良くその命と引き換えに、地獄の宴の見世物から、絶望の底から解放されたのであった。
「呆れたモンだ」
その少年と少女の末路の様を。上級魔族を踏みつけつつ、冷酷なまでの眼で見降ろしていた策頼に、端より声が掛かる。視線を声を辿り向ければ、斜め先のそこに2分隊指揮官の。今は策頼もその指揮を受ける浦澤三曹の姿が在った。
今の声の主である浦澤の視線は、周囲に警戒の意識を保ちつつも、上級魔族から少年少女達の様を流し見る。今の言葉は、欲望の飼い犬なまでにそれに愚直なモンスター達に。そしてそんなモンスター達に抵抗を諦め降り媚びに行った少年少女、そして町の住民に対して。その一連の愚行を容赦なく断ずるものであった。
その背後、先の周囲では第2分隊の各員が展開、戦闘行動を行っている。
と言っても各迫撃砲の砲撃と。その中で己達も炸裂に体を傷つけられながらも、それ以上の何かに怯え追い立てられるような色で、仲間であったオークやオーガを襲う大中小多数の触手モンスターにより。
広場はひっくり返され、モンスター達は残らず阿鼻叫喚に叩き落とされている。
第2分隊各員は、その中を瀕死、這う這うの体で逃れて来たモンスターを迎え討ち。無慈悲に屠るだけで良かった。
ちなみに零れ話だが。上級魔族や、裏切り媚び堕ちた少女の死体には、戦闘靴の足跡がいくつか付いて見える。これは展開する最中の第2分隊隊員の内の数名に、「なんか踏んだか?」程度の感覚で踏みつけ飛び越えられた結果であった。
「――行け」
一転してモンスター達にとっての地獄と化した広場を一瞥し。
そして策頼は、静かに冷たく発すると同時に。傍に引きずり待たせていた巨大触手モンスターの尾を、抓るように踏みつけた。
それまで怯えるように振るえ悶えていた巨大触手モンスターは、それを受けその大きな頭をしかしビクリと跳ね上げた。まるで「ピイッ」とでも悲鳴が聞こえてきそうな姿。
そして巨大触手モンスターは、またまるで折檻を恐れるペットのように。その雄々しい程の巨体を、しかし台無しにするまでの惨めな恐れ狼狽っぷりで。その巨体を跳ね這わせ、先の阿鼻叫喚の混乱下に飛び込み加わって行き、その巨体を薙いでオークやオーガ達を払い打って襲い始めた。
「有用だが、同時に驚愕だな」
そんな光景に、浦澤はそれを一瞥してから策頼を見る。
巨大触手モンスターに始まり、多種多数の触手達が一様に仲間であるモンスター達を襲い出したのは。ここまでも見て来た、策頼の保有する、彼の身に発現した、触手モンスターに影響を与える特殊効果体質によるもの。
触手モンスター達は第2分隊の進行の最中に襲い掛かって来たものであったが、策頼の前に、触手達は残らずその体に異常をきたし苦しみ悶え。その本能を揺さぶられ恐怖を植え付けられ、策頼を支配者と思い知り降った。
そしてその彼が告げた命を受け、追い立てられるように仲間であるモンスター達を襲うに至ったのであった。
さらに今や、広場に蠢いていた触手モンスター達にもそれは伝播。またオークやオーガを襲いだし、あるいは触手同士で同士討ちを始めていた。
浦澤の言葉は、策頼のそれを評し、同時に驚くもの。
その策頼当人は、その言葉には別段返さず。
触手が暴れ。迫撃砲の砲撃が落ち、さらには93式装甲戦闘車や73式装甲車が成す十字銃火砲火が飛び込み炸裂の上がる。広場のモンスター達にとっての阿鼻叫喚を一瞥し。
そして片手間感覚で、上級魔獣の頭を踏む脚に力をギュリと込め。上級魔獣の頭を一掃地面に沈めて圧した。