―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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3-2:「Fighter 〝HYPHEN〟」

 T-4は襲われるグルフィと襲う魔物達の飛び交う最中へと轟音を立てて飛び込み、その全ての視線を奪って見せた。

 

「誰も目がまん丸ですよ」

 

 後席の薬師寺が振り向き、それぞれの様子を遠目に見つつ、その心情を推察しながら発する。

 その最中にもT-4は旋回行動へと移行し、その機首を再びそれぞれが群れ飛び交う方向へと機首を向ける。

 

「なかなかに面白いが――こいつはコケ脅しだ」

 

 それに東が、言葉に反した少し苦い声色で返答を返す。

 先にも触れたが現在当T-4は非武装だ。直接モンスターの群れを排除する事は敵わず、今行っている事は混乱を誘っての時間稼ぎに過ぎない。

 再進入コースに入ったT-4は再びグルフィや飛龍達の間に突っ込み、ロール機動を行いモンスター達を脅かしながら、またそれを割って飛び抜ける。

 さらに先で旋回回頭。モンスター達を煽る様に三度目の突入を仕掛け、飛び抜けた。

 

「ッ――散開を視認。追撃と――待ち伏せに分かれられたな」

 

 飛び抜けた先で薬師寺は再び後方を視認観測。モンスター達の動きを見止め、それを舌打ちと合わせて口にし東へ知らせる。

 モンスター達は二手に分かれ、数騎がT-4を直接追撃。数騎がその速さに気付いてか、待ち伏せの布陣に入ったようであった。

 

「だろうな、これ以上正面から突っ込むのは危険か」

 

 モンスター達がこちらに応じて布陣を取った事を見止め、東はこれ以上の突入攪乱の策は危険と判断。再び180°回答する事はせず、緩やかな旋回行動に入り様子見に入る。

 

「注意があのデカい鷹から反らせたのはいいが、こっからどうするか――戦闘機隊の所要は?」

 

 状況を言葉にし、それから東は薬師寺にこちらに向けられた戦闘機隊の所要を尋ねる。

 

「発進の報は来るも、到着までは数分。それまで時間稼ぎが必要――待ったッ」

 

 それに答える薬師寺だったが。その伝える言葉を切って、彼が言葉を荒げたのはその瞬間であった。

 

「レーダーに影、北方からッ。なんだこれ――かなりの高速だ、見るに時速数百kmッ!」

 

 レーダースコープに落とした薬師寺の目が見たのは、北の方角より現れた新たな影。さらにそれは、動きからみるにあまりに速い速度で向かっていた。

 

「何ィ!?冗談だろ!新手か、ファンタジーのヤバいのでも出て来たかッ!?」

 

 薬師寺の伝えたそれに、東は驚き言葉を荒げ。それが新手の異世界の敵である可能性を懸念する。

 

「いや――違う。IFFに反応、識別フレンドッ」

 

 しかしさらに薬師寺は言葉を発する。それは機の敵味方識別装置が、新たな飛来するそれが味方である知らせの信号を送って来た事を知らせるもの。

 

「――ADTW TTW(飛行開発実験団、豊原臨時隊)――〝ASV-2〟だぁッ?」

 

 さらにその識別の詳細を読み上げ、しかし薬師寺は自身もその声を驚きに変える。

 

「おい、それまさか――」

 

 告げられたそれから、東はその正体に察する所があり。それを口に発しかける。

しかし――それを遮る様に。

 空を――いや空間を。次元、それに類する何かを切り裂かんまでの勢いを体現し。

 T-4の近く宙空、安全距離ギリギリの位置を何かが飛び抜けた。

 

「ッ――!」

 

 一瞬遅れ響き聞こえたのは、凄まじい轟音。それは間違いなくジェットエンジンが体現する、しかし東等のT-4とはまた別のもの。

 東はそれに少し顔を顰めつつ、それを辿り追う。

 

「マジか――」

 

 そして東等がその先に見たそれは――一つの飛行体。航空機。

 しかしその姿は東等のT-4と対比しても、あまりにも――異質。

 徹底的に計算され尽くした、尖り流れるボディ。その身より生やす大小いくつもの翼。そしてしかしその各所に記すは、東等のT-4と同じ日本国航空隊の所属を現す日の丸。

 

《――願う、応答願う。そちらのT-4へ、そちらを14空団1飛の所属機と識別している。こちらは飛行開発実験団、豊原臨時隊所属機――〝ヴォイス2、ホウフク〟――》

 

 そして東等の耳に飛び込み聞こえるは、その異質な機体からのものである飛び掛けと名乗りの通信音声。

 

「――〝ASV〟――〝シリアル・ハイフン〟――ッ」

「〝F--〟だ――」

 

 それを聞きながら、東はその機体の通称を、薬師寺は正式名称を。零しながら視線で追いかけた――

 

 

 

「――どういうことだ」

 

 ――その異質な航空機、いや戦闘機のコックピットで。

 飛行開発実験団、豊原臨時隊のパイロット。最征(さいせい) 直進(ちょくしん)二等空尉は視線を走らせながら、淡々とした声で零した。

 業務である試験飛行に今操る機体に搭乗し、豊原基地を発したはずの彼は。しかしその最中で正体不明の閃光現象に遭遇巻き込まれ。気付けば見慣れた海も街並みも何も見当たらない、この未知の空へと機――〝F--〟と一緒に在った。

 

 

 ――〝F--〟。

 航空隊で開発された実験戦闘機。

 マルチロール性、ステルス性を度外視し、制空戦闘性能の極致を目指して作り出された制空戦闘機だ。

 ナンバリングはされずに番号の変わりにハイフンの記号が与えられるという異質な名称法則となっており。その事からシリアル・ハイフン、またはAir Superiority Vehicle(制空機)の頭文字を取りASVの通称で呼ばれる事もある。

 その性質上から正式採用の道は端から低く、所属する当隊でデータ収集機として運用されていた。

 

 

 その搭乗機と一緒にこのおかしな空へと現れた最征。

 状況はまったく不明、レーダー機器類に反応応答は無く。挙句は巨大な鳥やら龍やら蜂やらが飛び回っている光景を見つけ遭遇する始末。

 しかしその中にそれを掻き回すように飛ぶT-4を見つけ、同時にレーダーに捉え。それが所在を同じくする、豊原基地の第14航空団第1飛行隊所属機であると識別。それに呼びかけを試みた所であった。

 

「――14空団1飛所属機へ、繰り返す。こちらは豊原臨時隊所属のヴォイス2、ホウフク。この状況はどういうことだ、詳細をくれ」

《――ヴォイス2、ホウフクへッ。こちらは14空団1飛のブルース、こちらは現在、火力提供を必要とする状況にあるッ》

 

 再びの呼びかけに、ようやく返り来た相手方からの返答。しかし同時に寄こされた文言に、最征はその顔をさらに顰める事となった。

 

《そちらは火力投射が可能な状態態勢にあるか?こちらは特定の脅威対象に対応中、現地住民襲撃の現場に保護を必要と見止め介入中ッ。繰り返す、こちらは火力提供を必要とする状況にあるッ》

 

 しかしそんな最征の内心をよそにT-4から捲し立て寄こされるは、さらなるそんな説明と要請の言葉。

 

「ブルースへ、どういう事だ?脅威と保護とは、先に見える飛翔体群の事を言っているのか?」

 

 訝しみながらも、最征は先に雑把にだが見止めた飛翔体の群れを思い返し。再び問いかける言葉を返す。

 が――直後に。旋回態勢に移行させた機のコックピットから向けた視線が、その先の宙空にその光景が目に入った。

 飛龍や蜂型モンスターの攻撃に晒され傷つきながらも、その腹に抱いたゴンドラを庇い守る様な姿で飛ぶ大きな鷹が。数で圧倒的な引けを取りながらも、必死に戦い大型の鷹を護ろうとする小さな鷹と、それを操る騎手達が。

 

「――あぁ、なるほど」

 

 それを目に映し。最征はどこか気だるげで淡々として様子で言葉を零した。

それは、詳細こそ未だ不明瞭だが。この場で自らが遂行すべき行動は理解に至った上で、かつ一種の平常心を取り戻し、「やれやれ任務か」とでも表現するような声色。

 

《ヴォイス2、その通りだッ。それは民間人が脅威生物に襲撃を受けている現場になるッ。豊原管制から許可は下りている、可能であれば応援願うッ!》

 

 最征のそれを認め肯定するように、T-4から再びの説明と要請の言葉が来る。

 

「了――今確認した、掌握した。こちらは固定武装に限るが投射可能状態にある、これより開始する――ッ」

 

 それに答え伝え。そして最征はその手で掴む操縦桿を倒す。

 その操縦手の意思を受け取りF--は。機敏という言葉ですら生ぬるい程の速さで機体バンク、異質なまでの旋回行動を見せ。

 その機首で、飛び交う群れの方向を捉えた――

 

 

 

 魔物達は、襲撃した人間の領地より逃げ出した一部に希少価値を見止め。それを追い分派した一隊であった。

 それを率いる事を任された、屈強だが若手のオーガは思った。

 それは簡単な役割であるはずでだったのだ。

 人間達の護衛はわずか、主目標は領主の子供と仕える人間達だけを乗せた、鈍重な大型グルフィ。

格好の獲物以外のなんでもない。

 ――しかしどうだ。

 その一方的な物となるはずであった狩りの場に突如として割って入って来たのは、正体不明の異質な飛行物体等。

 突然現れたそれ等は、咆哮を、轟音をけたたましく上げ。羽ばたく姿も見せないおかしな飛び方で、そして信じがたい速さで。こちらを掻き回し妨害、いや攪乱して来るではないか。

 狩りを邪魔されたばかりか、唐突な異様な事態に浮足立つ配下達。

 それにオーガは忌々しく思い、命ずる声を張り上げた。『臆するな、狼狽えるな。たかだか得体の知れないヤツ等が二体増えた所で何ができる』、と。速さで追いつけないのならば待ち伏せ、ノコノコ飛び込んで来た所を刈り取ってやればいい。

 荒げ発せられた命じる声に、魔物達は慌てそれぞれの乗する騎獣、騎蟲を操り宙空で陣形を形作ってゆく。

 それを見、そしてまた先の宙空を見るオーガ。

 その先に見えるは、後より現れた。多数の翼をその身に生やし、特に異質な飛び方を見せる飛行体。それがその切っ先をこちらへ向ける姿。

 その姿に、不覚にもどこか不気味さを覚えてしまいながらも。オーガは荒げ命ずる声を上げ、配下達と共に得物を突き出し待ち構える。『安易にもこちらの懐へ突っ込んできた時が、貴様の最期だ』。そんな言葉を脳裏に浮かべ、牙を剥き出し獰猛な笑みを浮かべて――

 

 

 ――それはしかし、瞬いた一間の次に。儚く、実らぬ企みと掻き消えた。

 

 

 圧倒的な力が、貫通と炸裂が――オーガを、魔物達を貫き食らったのは瞬間。

 襲ったのは打たれ千切られるような暴力。それが魔物達の体を紙切れのように弾き、散らし、宙空で咲き乱れる朱の華へと変えた。

 遅れ魔物達の耳に届くは、重くしかし響く唸りの声。それは、その暴力が音より早く訪れた事を示した。

 跨り操る騎龍共々、その体を血の肉の欠片飛沫へと変え。オーガは宙へと打ち跳ねられ、落葉のように地へと引かれる。

 天を仰ぐオーガの眼が次に映したのは。轟音を轟かせ、空を切り裂き飛び抜けた異質な飛行体の身姿。

 その大空の支配者の身姿が、オーガの意識に残った最後の光景であった――

 

 

 

 ――最征の操るF--は、異質なまでの機動でバンク旋回。群れ飛ぶモンスター達へ機首を向け、ヘッドオン。HUDに表示されるレティクル(照準環)に標的を捉え、搭載固定武装に繋がる操縦桿のトリガーを引いた。

 ――操縦者のその意思に答えたのは、機が固定武装として搭載装備する得物――〝83式30mm機関砲〟。

 国産の30mm口径リヴォルヴァーカノン。凶悪を体現したその得物は、最征の意思を受け取り咆哮を上げた。

 吐き出された30mm機関砲弾の火線。それは宙空で配置布陣し待ち構えていたモンスター達を、まるで攫え食らうように貫き弾いて散らかした。そして宙空で血肉の花火飛沫と化したモンスター達へ、F--はそのまま突っ込み。その衝撃と圧をもって、冒涜の域のそれで巻き散らかし蹴散らして飛び抜ける。

 幸か不幸かその最初の一撃を逃れたモンスター達は、慌て狼狽えながらも振り向き、あるいは騎龍騎蟲を回答させてそれを追おうとした。

 しかし、何という事か。

 まさに今飛び抜け去ったはずの脅威――F--は、その先で回頭を終えて、その機首を再びモンスター達へと向けていた。

 その動きは最早〝旋回〟のそれを越えた、まるでくるりと滑り反すような〝反転回頭〟の域。閃光の如き速度で飛び抜けた先で、わずか一瞬の間でなぜそこまでの機動行動が可能なのか。

 モンスター達が脳裏に微かに浮かべたその疑問に答える事も無く。その驚異は再び83式30mm機関砲を唸らせ、モンスター達を攫い喰らった。

 再び宙に散り咲く血肉の華。

 それを尻目にそして蹴散らし飛び抜け、F--は急角度のピッチアップから上昇行動を開始。インメルマンターンと呼ばれる、本来は主としてすれ違った敵機を反転追撃するマニューバを行い、モンスター達の真上を取る。

 そしてモンスター達の頭上より、今度はまたほぼ直角のピッチダウン機動で急降下を開始。そして眼下真下に捉えたモンスター達へ、30mm機関砲弾の雨を降り注がせ浴びせた。

 

 

 ――魅せるそれは、最早恐怖の域の異質な機動飛行。

 ――唸り吐き出すそれは、死を確約する火力砲火。

 

 

 追いかけ追いすがる事など論外、相手に体を捩る事すら認めぬそれ。一方的に、音すら聞かせず命を喰らうそれ。

 それ等は、恐ろしさを冠するはずであったモンスター達からその称号を奪い取り。か弱いまでの喰らわれる獲物へと陥れた。

 

 

 ――そしてその場は、その空は。

 異質と、最凶の名を欲しいままにする支配者に――F--の元に征された――

 

 

 

 グルフィ達を襲っていたモンスターの一群は。

 F--による戦闘行動により。その驚異的な機動飛行と備える火砲火力の前に、赤子の手を捻るよりも容易いまでに喰らわれ屠られ。その全てが地へと墜ちる末路を辿った。

 

「――とんでもねぇな」

 

 旋回するT-4上よりその様子光景を観測、というよりほぼ目を持って行かれただ眺めていた東は。最早呆れに近い色で一言を零した。

 

「空中機動戦闘性能だけをただただ要求し。他の全てを度外視した機体、その極致か――」

 

 同様の色の口調で、薬師寺も言葉を零す。

 その存在を元より知る各々からしても、F--の体現し見せたそれは驚愕を越えるそれに値するものであった。

 

「はぁっ。要請したとは言え、いいトコ全部持ってかれちまった」

 

 続け、少し溜息まじりにそんなぼやく声を零す東。

 

《――ヴォイス2、ホウフクよりブルース。指定を受けた脅威対象は全て撃墜、排除を認めた》

 

 そんな所へ通信に上がり聞こえた声、それはその驚愕の当事者当人であるF--。その主である最征のもの。

 驚異的な光景を見せたその当人よりの声は、しかし反してどこか淡々として業務的だ。

 東等がT-4のコックピットより視線を上げればそこより少し高い高度に、戦闘機動行動を収めて緩やかな旋回行動を見せるF--の機体が見えた。

 

《続けての指定があるなら寄こしてくれ。これで一段落ならば、今一度現状を要求したい――〝ここ〟はどこで、一体何が起こったのか》

 

 そのF--の最征から寄こされるは、指示の要請と。そして改めての確認、回答を要求する言葉。

 

「ヴォイス2、こちらでも確認した。脅威対象はこれで全てのようだ」

 

 その問いかけに、東はまず排除すべき敵がこれで全て無力化された旨を伝える。

 

「全て教えるよ、何が起こっているのか。だが長くなる話だ、まずは機を、君の脚を地に着ける事が優先だ。方位210に飛んでくれ、そこに飛行場――豊原基地がある」

 

 そして続け、一言を紡ぎ。それから今優先して最征に取って欲しい行動を、そして向かい帰る場所を伝える。

 

《豊原基地ッ――了解、210だな》

 

 伝えられたそれに。自らが帰するべき場所、基地が在る事に、最征からは少し驚いたのだろう気配が通信越しにも伝わりくる。

 しかし同時に。多くを尋ねるべきは機を地上に降ろしてからである事を理解したのだろう、最征は今それ以上疑問を続け寄こす事はせず、端的な了解の返事だけを寄こした。

 

「先に向かってくれ。こちらは、〝あちらさん〟も案内しなきゃならん」

 

 東はその最征に向けて、また促す言葉を。そして続けそう伝える言葉を紡ぎ送る。

 

《了――任せる、後で会おう》

 

 それにまた端的な返事が返り。

 そして上空のF--は、緩やかな旋回飛行からまた機敏なバンク行動を見せ。指定された方位へ進路を取り、先んじて飛び去っていった。

 

「――さてと」

 

 それを見送った後、東は視線を降ろし別方へ向け。

 その先の宙空で戸惑い迷うように呼ぶ、グルフィ達を見止めて一言を零した。

 

 

 

「――ぁ」

 

 大型グルフィの抱き下げるゴンドラの内部で。

 窓に柔らかく控えめに両手を突き、そしてその先を見つめていたシュクエは小さく声を零した。

 最初に現れた飛行体に続け、突然割り入る様に現れた。異質をまさに体現したような、多数の翼を持つ飛行体。それは驚くべきことに、シュクエ達を襲っていた魔物達の群れを。まさに一瞬の後にまた正体不明の力で蹴散らし葬って見せたのだ。その動きは恐ろしいまでに、これまで見たことも無いような、機敏という言葉でも生ぬるい姿であった。

 一種、恐ろしいまでのそれ。しかしシュクエはその姿に、同時にどこか見惚れてしまっていた。

 その異質な飛行体が今。またその独特な動きを見せて切っ先を変え、そしてシュクエ達の頭上より飛び去っていった。

 

「あれは……」

「こんな事が……」

 

 シュクエの背後や隣からも、驚愕、いや呆気に取られたような声が聞こえる。

 それはシュクエの肩を後ろより抱いて、シュクエを引き続き庇う侍女。そして隣の窓から外を見る女執事のそれぞれの声。

 彼女達も、それに護衛兵達といったこの場の全員が。今しがたの光景に目を奪われていたのだ。

 

「……あっ」

 

 そんな所へ、しかしシュクエはまた別の光景存在に気付き声を上げる。

 見ればシュクエ達を乗せる大型グルフィの横方。そこに最初に現れた飛行体が、大型グルフィと進行方向を同じくして並び飛んでいた。

 その先の異質な飛行体とはまた異なり、流れる造形ながらも同時に丸みを帯びるその飛行体。その体の要所に記された、赤い丸が目を引く。

そしてその先端部に見えるガラスらしき覆いの内、御者席、いや飛行体の体内なのか。ともかくそこには飛行体を操っているらしき、縦に並び座す者等の姿が見えた。

 最初はその者等のまるで昆虫のような頭部に、またあれらも魔物の類かと身構えたが。その正面覆いが次には上げられ、それが甲冑なのか被り物である事が判明し、そしてその元には己達と同じ人の顔が覗き露になった。

 その者等の内の後ろに座す者が、その手で何か合図を形作りこちらへと見せ送って来る。それは明らかに、こちらに向けて追従を。ないしこれよりの進路を示し促す動きであった。

 

「自分等に続けと言っているのか……」

 

 シュクエ以外の皆もそれをすぐに察し。それを代表するように女執事が声を上げる。

 しかし、確かに危機を救われたものの相手の正体も知れない。それに素直に従うことに、それぞれの不安や懸念もまた大きかった。

 

「ううん、行こう」

 

 だが、次にシュクエがそう一言を発する。

 

「シュクエ様?」

「彼等はボク達を助けてくれた。今は、その彼等が差し述べてくれた手を信じるしかないと思う」

 

 続け、女執事や侍女に向けてそう言葉を紡ぐシュクエ。それは現れた彼等を信じると同時に、賭け覚悟を決めるもの。

 可憐だが幼いシュクエのその顔には、しかしその色が作られていた。

 

「……分かりました――彼等に続くんだっ!」

 

 仕えるシュクエの決断のその言葉を受け、女執事はそれを承諾。大型グルフィの騎鳥師に向けた声を発し上げる。

 

 

 そして一行は、その飛行体――T-4の導きの元に、南へと進路を向けた――




ぼっくんが考えた最強で最凶の国産制空戦闘機だぞオルァ。
名称はかっこよさよりも異質さを優先したんだぞ。
ぼくのだぞ。


□〝F--〟

F-3とは別で実験開発が行われた国産の航空優勢戦闘機。

設計番号が与えられずに、公式文書上では番号部がハイフンで記され、F--という表記になっている。
制空戦闘任務を主眼に設計開発された制空機である事から、開発関係者及び航空隊からはASV(Air Superiority Vehicle)、もしくは設計番号が未設定である事からF-U(Undecided)と呼称された。
存在が公にされてからはエフユー他、シリアル・ハイフン等と言う名前で呼ばれた。

F-3がマルチロール機として開発、採用配備されたのに対して、前述の通りF--は制空戦闘機としての面を非常に重視して開発された機体であった。
正式採用はされず実験機に留まり、飛行開発実験団で2機がテスト、データ収集機として運用されている。

固定武装として、
1号機(ASV-1)はGAU-22/A 25mmガトリング砲を、
2号機(ASV-2)は83式30mm機関砲(リヴォルヴァーカノン)を搭載装備。

他、
04式空対空誘導弾AAM-5(短距離)
99式空対空誘導弾AAM-4(中距離)
20式空対空誘導弾AAM-6(中距離)
等を搭載対空火器とする他、限定的ではあるがMk.82JDAM等の爆装も可能。


外観、全形はなんか前進翼とかカナード翼とか下方カナード翼とにかく翼全部乗せくらいの大分漠然としたイメージしかしてないぞ。

次話からは海隊の海での戦いを描く予定だよ。
ミサイル護衛艦とか出すよ。
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