―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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今回はパク――パロの雨霰です。


4-5:「トンチキ女幹部共殲滅装備 〝先任兵長〟」

 護衛艦かまくらの現在地より西方後方。少し距離を開けた位置に、また一隻の灰色の船――護衛艦の姿が在った。

 かまくらと比較して一回り小柄だが、それでもその全長は170m半ばを越える巨体であり。そして両舷にいっぱいまで張り出し占める、鋭角的な形状処理の巨大な艦橋構造物が特徴的。

 ミサイル護衛艦――イージス艦がその正体だ。

 ギリシャ神話の無敵の盾の名を冠する艦隊防空システム、イージス・システムを備える、艦隊――そして国の盾。

 

 そのイージス艦は詳細を、〝DDG-191 〟なにわと言った。

 

 〝なにわ型護衛艦〟の一番艦。

 同じくイージス・システム搭載艦である前級の〝まや型〟よりさらに発展した、最新鋭のミサイル護衛艦のその一番艦。その名は、明治の時代に生まれ日本最初の防護巡洋艦となった浪速から受け継ぐ。

 そのなにわもまた、転移現象により降り立った日本国海隊の護衛艦の一隻であった。

 

 

 今しがた迫っていたグルフィ鳥騎や飛竜竜騎、そして魔王軍竜兵達を墜とし屠ったミサイル群を放ったのは。この護衛艦なにわであった。

 その護衛艦なにわのブリッジに、

 

《キショいッ!!――終ワリ――ッ!》

 

 比類無きまでにドスを利かせ、そしてドストレートな不快を現した怒号が、劈くまでに響き渡った。

 それは護衛艦かまくらの都心からの通信越しのもの。そしてそれをもって通信は相手方より、一方的に切られ終えられた。

 そのそれに、ブリッジに配置していた海隊各隊員は驚き目を剥いている。

 

「――やれやれ、つれないね」

 

 しかしその中で、透る声でそして麗しいまでの口調で。そんな一言が上がりブリッジ内に響いた。

 声を辿り目を向ければ、ブリッジの中心部。そこに設けられる座席シートに、その声の主の姿が在った。

 そこに座すは――一人の美少年だ。

 正確には少年と青年の間と言った容姿の、美少青年。

 女と見紛う程の、童顔ながらも端麗な顔立ちに。男子としては控えめの身長体躯。その目尻の緩やかに釣り上がった眼目元は、見た物を魅了し狂わせんまでの宝石のよう。

 頬杖を付き細い足を組んで、優雅なまでの居ずまいでシートに座している。

 そんな、ミサイル護衛艦のブリッジという環境にはまるで似つかわしくない美少年は。しかし各隊員同様に海隊仕様の迷彩服と灰色の救命ジャケットを纏い。頬杖を付き細い足を組んで、優雅なまでの居ずまいでシートに座している。

 

 少年の名は――魅宮遠(みぐうおん) 黒音(くろね)

 いや、魅宮遠は少年ではない。

 その10代半ばとしか見えない容姿に反し、その実年齢はなんと50歳越え。そしてその正体は海隊の海将補にして、現在この海域で行われる作戦の指揮を預かる、戦闘群司令官だ。

 美麗で幼さすら感じる容姿からはとても信じられないが、それが現実で事実だ。

 

 

「ボク様の囁いた好意の言葉を、こうまでもストレートに叩き返されちゃうなんて」

 

 そんな美魔少年――ある種怪物の域の存在である魅宮遠は。また透る声でそんな一言を紡ぐ。

 今しがた魅宮遠が護衛艦かまくらの都心へ向けて送り紡いだ言葉。その戦闘スタイルを咎めながらも、同時に都心の媚びず我を貫く姿勢を評し、それに焦がれるまでの感情を送り届けたそれ。

 その囁かれた言葉通り。魅宮遠はその在り方こそ違えるものの、都心のスタイルに恋焦がれるまでの好感を抱いていた。

 しかしそれに都心より返されたのは、痛烈で衝撃的なまでの叩き返す言葉であった。

 

「まっ。そうでなくっちゃ、ボク様の心を動かしたりはしなかったけどね」

 

 だがそれを受けながらも魅宮遠は、ショックを受ける様子などはなく。まるでイタズラでも失敗したかのような怪しい笑みを浮かべて、そんな言葉を紡いだのであった。

 

「――まったく、酷い男だね」

 

 しかし。その魅宮遠の隣で別の、そして何か不愉快そうな声が上がる。

 魅宮遠の座すシートのすぐ左手隣。そこに立ち在るのは、一人の女の姿だ。

 170cmを優に越える、女としては高い身長。そして目を引くは、煌びやかな金髪の麗しいショートヘア。そしてその下に見えるは、きめ細やかな白い肌に彩られた、釣り目が特徴的な端麗な顔立ち。

 まるで王子様のような女がそこにいた。

 御伽話に出てくるようなまでの、護衛艦のブリッジに似つかわしくない女。しかし各隊員と同様に、海隊仕様の迷彩服に救命ジャケット姿だ。そして肩には一等海佐の階級章。それらがその王子様のような女もまた、海隊幹部である事を現している。

 

 明かせば、その王子様のような女はこの護衛艦なにわの艦長だ。

名は、湊邸(みなとやしき) エイヴァ。その容姿と名が示す通り、ハーフ――日本人とイギリス人の混血だ。

 

「武蔵め――キミの焦がれ送った言葉を一蹴に付すなど、看過できない暴虐だよ」

 

 合わせて説明すれば湊邸は、護衛艦かまくら艦長の都心とは幹部候補生学校の同期で、互いを見知った間柄であった。

 その湊邸は、額に片手指先を当てて「嘆かわしい」とでも表現するような仕草を見せながら。また不愉快そうに言葉を紡ぐ。

 

「ふふん」

 

 しかしそんな湊邸の言葉を横に聞きながらも、当のその一蹴を受けた魅宮遠はと言えば。その愛らしい美少年顔を何かまた悪戯っぽく、「悪くない」とでも言う様な様子に形作っている。

 

「フゥっ。だけどもキミは、そんな荒れ猛る様が好みと言うのだろう?」

 

 そんな魅宮遠に向けて、湊邸は今度は憂う様な言葉を向ける。

 

「――妬けてしまうよ」

 

 かと思った直後だ。

 湊邸は動いたかと思うと、その片腕を大胆なまでに魅宮遠の座すシートの背もたれに回し。上体を傾けてその麗しい顔を、魅宮遠の前へと急接近させた。

 表現すれば、まるで〝壁ドン〟に似たそれ。

 

「そのキミの瞳を、焦がれる心を――無理やりにでも僕に向けさせたくなるよ」

 

 そして湊邸はその麗しい顔に、相手を蕩けさせるまでの魅惑の甘い顔を作り。しかし同時にその瞳の奥には、獲物は逃がしはしないと言うような獰猛さを宿して。

 魅宮遠の耳元で、ハスキーなしかし甘い声色で。そんな言葉を囁いた。

 湊邸は、麗しく可憐なまでの魅宮遠に惚れこみ。そして狙う女であったのだ。

 

「――おっとぉ。退()きな、王子サマ」

 

 しかし。

 そこへそんな。高く美麗で、しかし反した獰猛な言葉遣いでの声が飛び来た。

 視線を辿れば、そこにあったのは海隊の迷彩服に身を包む、また別の女の姿があった。

 また湊邸に引けと取らぬ、170㎝を優に越える女としては高い身長。茶色掛かった黒髪はセミショートに保たれその毛先をふわりと広げている。そしてその髪に飾られるは端麗な顔立ち。キリリと釣り上がった目尻の眼が、雄々しさと麗しさを両立して醸し出している。

 迷彩服の肩章には二等海佐の階級章。女は路氏(みちうじ) (りょう)と言い、この護衛艦なにわの副艦長だ。

 しかしその副艦長である道氏から、艦長で上官であるはずの湊邸へ発されたのは。敬意など気に掛ける様子の無い、挑発的で挑戦的なまでの言葉。

 そして路氏は魅宮遠の右手隣へと踏み込み近づくと、その左片腕をまるで躊躇ない様子で美少年の首後ろへと回し肩を掴む。かと思った直後、なんと空いている右片方の腕の人差し指を、魅宮遠の顎へと当ててクイと微かに持ち上げたのだ。

 いわゆる〝顎クイ〟。

 

「コイツは俺様のモンだ」

 

 そしてまた挑戦的なまでの言葉を湊邸に叩きつけると、魅宮遠の顔を横より覗き込んで。美麗ながらも隠す事のない荒々しいまでの肉食獣のような顔で見つめ、そして魅宮遠の所有権を主張。

 お手本のような俺様ムーヴだ。

 

「――あらあら、子ネズミが二匹も沸いているわ」

 

 しかしさらに、そこへ今度は氷のように冷たい声が聞こえ来る。

 魅宮遠達の背後を見れば、座席シートの背後にはいつの間にそこに立ったのか、また別の女の姿が在った。

 身長は湊邸や道氏よりは控えめだがスレンダーで、しかしながらも豊かであるべき部分ははっきりと主張。美麗な長い黒髪を靡かせ、その前髪の元には耽美ながらも妖しい眼が覗く。

 海隊迷彩服の肩章には三等海佐の階級章。その正体は護衛艦なにわの砲雷長、名を御堂院(みどういん) 玲逢(れいあ)と言った。

 その砲雷長御堂院は、魅宮遠の座すシートの背後に歩み立ったかと思うと。湊邸や道氏がシートや魅宮遠の肩に回していた腕を静かに掴み、しかし有無を言わさぬ様子で退けて払った。

 

「この子は私の可愛い愛玩品。胡散臭く誑かし、汚れた手で触れるのはやめて下さる?」

 

 そして御堂院は高慢を絵に描いたような、まさに女王様と言ったような色と言葉遣いで両者に告げ。同時に魅宮遠を愛玩品と現しながら、その腕を彼の首から胸元へと愛おしそうな大事にするような動きで回す。

 

 この二人の女、路氏と御堂院もまた。可憐で魅惑の美魔少年である魅宮遠に惚れこみ、狙う女達であったのだ。

 

「あァん?」

 

 その女三人の内から、俺様系女の路氏が、己の手を退け高慢を見せた女王様のような御堂院に睨みを利かせる。

 

「吠えてんじゃねぇぞイキり女、俺様の所有物を盗ろうってかぁ?」

 

 そして御堂院に向けてすごみを利かせた声を発する。

 

「不愉快だね」

 

 さらにそこへ、端から湊邸の気分を害した声が飛び来る。そして湊邸は、御堂院が愛しい少年に添えた手を掴み返し退ける。

 

「〝姫〟にも等しい彼を物扱いなど……飢え涎を垂らす獣共には反吐が出るよッ」

 

 そしてまた言葉を紡ぎながら。他の女二人を文字通り獣を見下す目で射抜いた。

 

「あぁ?おめぇもやるかエイヴァ?」

「あら?おもしろいわねぇ。艦長の貴女と言えど、この子に手を出すなら躾の必要な犬とみなすわよ?」

 

 対して路氏と御堂院もそれに怯むことなく、それぞれ静かな怒りを宿す様子で湊邸を睨み返し、言葉を返す。

 三人の間で、バチバチと火花が飛ぶ。

 この女三人は経緯合って、美魔少年である魅宮遠にそれぞれ惚れこみ、そして物にしようと狙い合うライバルなのであった。

 一方、その狙われ囲われる最中にある魅宮遠当人はと言えば。その真ん中でまるで変わらぬ優雅な居ずまいで、端で子猫達がじゃれ合っている様子でも見るような、半分興味無さげな様子でいた。

 

「……あ、あの……」

 

 そんな修羅場と言える中へ。端より何かおずおずとした一声が挟み込まれた。

 声の主はブリッジの端の一席で配置に着く、一人の三等海尉の男性幹部。振り向いたその彼の顔はまた、中性的で美麗な青年のものであったが、今はそれに似合わぬ戸惑う表情がそこに作られている。

 

「艦長、皆さん……今は戦闘中です。そういったお話は……」

 

 三等海尉は、戦闘中にもかかわらず痴話喧嘩からの修羅場の様相を巻き起こす、女幹部達の様子を背後に見かね。意を決してそれを咎める旨を訴えたのであった。

 

「三尉、キミは黙っていてもらえるかい?」

「大事な喧嘩に口を出そうってかぁ?」

「無粋を邪魔をする子には、躾が必要かしらぁ?」

 

 しかし。その訴えた相手の女幹部三人から返されたのは、三者三様の圧とすごみを利かせた言葉。『邪魔をするな』と命じるそれ。

 

「ぅっ……」

 

 それを一斉に浴び、獅子に睨まれたネズミのように背筋を体を凍らせる三尉。

 ――しかしその直後。三尉は女幹部達の背後に、何かヌッと影が差すのを見――

 

 

「――――ブリッジで気色の悪いやり取りをしとんじゃ無いッッ!!!」

 

 

「ぶ!!」

「ぶべ!!」

「ぶべァ!?」

 

 突然ブリッジ内に響き渡った怒号――いた轟声。

 そして同時に上がったのは、濁った三人分の女の悲鳴。

見ればなんと、つい今まで冷たい眼と逆らい難いオーラを発していた三人の女幹部の。その頭がまるで三色団子のように連なりぶつかり合っていた。

 そしてさらに見ればその女幹部三人の連なる頭の両端には、何者かの大きな両手が見え。それが女幹部三人の頭を挟みぶつけて見せた事が判明する。

 

「「「ベッ!」」」

 

 そしてその大きな手が離れ頭が解放されると、三人の女幹部は支えを失いおかしな声を上げて床に落ちる。

 

「っ……な、何……?」

 

 ブリッジの床に落ちた三人は痛みに苛まれながらも身を起こし。内の湊邸が代表するように声を漏らす。

 

 

 

 ――ゴゴゴゴゴゴゴ。

 

 その女幹部三人の前にあったのは、凄まじいまでの存在だ。

 とてつもない体躯、ありありと分かる筋肉。

 そのオーラはとんでもなく、まるでその轟く音が聞こえて来るかのよう。

 

「――ゴゴゴゴゴゴゴ」

 

 いや。その存在は実際に効果音を自らの声で口出していた。

 そこに在ったのは、その筋肉をふんだんに宿す体躯を、海隊の迷彩作業服で包む、異様な雰囲気の海隊隊員だ。顔も身体もとてつもなく厳ついが、しかしそれでいて同時にどこかスマートさを感じさせる。

 そんな隊員が、自らその口でオーラを現す効果音を発しながら、そこに立っていた。

 

「「「ウワァ!?〝先任兵長〟!?」」」

 

 その姿を見た女幹部三人は。次の瞬間にはそれぞれの美麗な顔に、しかし目を飛び出さんまでの驚愕の表情を作り。そしてその目の前の存在をそんな言葉で表現して見せた。

 〝先任兵長〟。

 三等海曹と海士長の間に設けられる海隊の階級で、陸隊の予勤と同一。旧日本軍の伍長勤務に類似した階級制度。先任伍長の海士版とも言えるか。

 現れた凄まじい様相の海隊隊員は、そんな制度に定められる階級を持つ海士隊員であった。

 その先任兵長は、名を存所(とどころ) (とどろき)と言う。

 

「ゴゴゴ――トンチキ騒ぎ慎むべし」

 

 そんな立ち位置存在の存所は、己の口で表現していた効果音を切ると。床に落ちた幹部達を見降ろしてそんな言葉を紡ぐ。

 

「ッ、先任兵長……君も僕達の邪魔をする気かい?」

「ヅゥ……舐めてると潰すぞ、オイ」

「フフっ……虫けらのように嬲られたいのかしらぁ?」

 

 そんな存所を前に女幹部三人は。少し気圧されながらも、しかし愛しい人の所有権を巡る大事な争いを邪魔された事への怒りを燃やし。

 それぞれが負けじと冷たく威圧するような、相手に恐ろしさを受け付ける様な瞳とオーラで存所を射抜く。

 

 

「戦闘中にトンチキ騒ぎをするなと言うとんでしょうが~~~~~~ッッ!!」

 

 

「ぶ!」

「ぶべ!!」

「ぶべァ!?」

 

 しかし、女幹部三人のそれを一蹴し消し飛ばすかのように。存所の比類なき怒号がまた轟き。

 そして同時にガン、ガン、ガン――と。存所が繰り出した拳骨の底が、女幹部三人の脳天に順番に連続して落ち。女幹部三人はそれぞれの美麗な顔をしかし盛大に崩して、またおかしな悲鳴の声を上げた。

 

「「「マ゛ッ」」」

 

 そして女幹部三人はその喰らった拳骨の衝撃勢いで、再び頭から床に叩きつけられ沈むハメとなった。

 

 そんな、一見すれば海士階級の隊員が艦長始め幹部達に手を上げると言う。本来ならあってはならない光景が繰り広げられたが。

 ブリッジ内の他各海隊隊員の反応はと言えば、さして驚くような様子は誰も見せず。何か「やれやれ終わったか」とでも言う様な空気雰囲気だけが漂っていた。

 明かせば、この女幹部達のトンチキな諍いから、存所への凄まじいムーヴをもっての終結と言う一連の流れは。この護衛艦かまくらでは最早日常的な光景であった。様々な面倒の紆余曲折を得ていまのこの現状へと終着したのだが、それにあっては今は割愛する。

 

「CICに行けCICに!」

 

 存所の一撃で沈められ、そのトンチキ騒ぎを無理やりに物理的にお開きとされた女幹部達は。存所の手により摘まみ拾い集められ、そして追い出す言葉と共に水密扉よりブリッジから放り出される。

 

「これにて完!」

 

 そして女幹部三人を放り出し終えると、存所は威勢よくそんな締め括る独特の一言を紡いだ。

 

「……先任兵長。すまない助かった」

 

 そんな存所へと端から声が飛ぶ。先に女幹部達に睨まれた三等海尉だ。言葉は彼ではどうにもできなかった女幹部達のそれを、止めてくれ存所に感謝を示すもの。

 

「三尉、あんなトンチキ共にビビっていられては困ります」

 

 対して存所から三尉に返されたのは、そんな咎める旨の言葉。しかし言葉に、そしてそれまでの凄まじいムーヴに反して、その色に強く責めるような圧は無く。

 それはあくまで若い三尉の今後を考えての、アドバイスに寄った物であった。

 

「それと、用心なさい」

 

 続け加え存所が飛ばしたのは、そんな忠告の言葉。

 実は三尉の彼はまた、その中性的な美麗さから同性異性問わずを無自覚にも魅惑し。言ってしまえば情欲を誘う魔性の青年であった。その影響で先の女幹部達からも、密かに「いつかあいつも物にしてやろう、いただいてやろう」などと企まれていたのであった。

 しかし反して全く自覚のない、お人よしの美麗な青年幹部への。存所のそれは警告を促す忠告の言葉であった。

 

「?……あ、あぁ……」

 

 それにしかし罪深くも思い当たる節が無い様子で、三尉は曖昧な返事を返す。

 

「ふふ、変わらずの素敵さだね」

 

 しかしそんな所へ、別の声が割り入る。

 その透る魅惑の声は、このトンチキ騒ぎの現況でもある海将補、魅宮遠のもの。見ればその美魔少年は、何か妖しくも焦がれるような色で、存所のことを見上げ視線を向けている。

 

「流石、このボク様が最も気に入った人。本当にこの絶対的なボク様ですら、いつしか堕ちちゃうかも」

 

 そして続け、そんな色っぽい媚びるまでの声色で、悪戯っぽく言葉を紡いで見せる魅宮遠。

 またここで明かせば。美魔少年の魅宮遠が好み、色恋の対象としているのは同性――雄々しい男性だ。護衛艦かまくらの都心もしかり。そして彼が今最も目を付けているのが、この護衛艦なにわの先任兵長のである存所。

 海将補であり群司令である魅宮遠がこの護衛艦なにわを座乗艦に選んでいるのは、機能面等の言い訳こそ表立ってしているが、本当の所は存所の所属艦であるからであった。

 今もその比類なき姿言動を見て、存所に惹かれている様子を露わにしている。

 

「――ストレートに言ってキショいッ!!」

 

 しかしそれに対して。

 存所は雄々しく腕を組んだ立ち構えの姿勢で、真正面を見据えたまま、そんなダイレクトな拒絶の言葉を轟かせて見せた。

 

「まったく、キミもつれないね」

 

 しかしそれを受けてなお。魅宮遠は傷ついた様子などを見せる気配も無く、また優雅に座したまま、悪戯っぽい言葉を寄こす。

 

「それよか、あんのトンチキ取り巻き共をしっかり躾ておいてもらいたい!」

 

 それに対して存所は、先まで魅宮遠を取り巻き取り合っていた女幹部達を挙げ。要求の言葉を叩きつける。

 元よりそれぞれ優秀ではあるが癖の強く、護衛艦なにわの乗組員等もそれには困っていた女幹部達であったが。魅宮遠の来艦座乗際にはそれに関係して一層おかしなことになるため、乗組員たちはウンザリしている面があったのだ。

 言葉はその元凶たる魅宮遠に、取り巻く女達の管理掌握を要求するもの。

 

「お願いはしてるんだけどね。ボク様は、あの子達には上官というより手に入れるべき宝石みたいに見られちゃっててね。ボク様も困ってるんだ」

 

 しかし要求の言葉に。魅宮遠は悪びれない様子で、そして自らを宝石と例える事にまるで尻込みする事の無い様子で、そんな言葉を返す。

 

「だから、キミみたいな抑止力が居る事には感謝してるんだよ」

 

 そして煙に巻くように、そんな評する言葉を存所に向けて紡いで見せた。

 

「――ったく。なにわが嘆いているわ」

 

 それに存所は最早言葉を返す事はせず。

 トンチキな司令官と艦長以下幹部が集ってしまった、自らの乗る護衛艦の境遇に。静かにそんな言葉を零す。

 

《――CICよりブリッジ!かまくらの方に不審な影が接近――ッ!》

 

 CICより。通信越しにそんな知らせの声が届き聞こえたのは、その直後であった――




元ネタは魔法少女殲滅兵器 筋肉少女より。
オモシロイヨ?
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