―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を掻き回す重金奏《激突の編》   作:えぴっくにごつ

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5-3:「多用途隊は謀略を撃滅したい」

 三々五々へと逃走を始めた魔獣達。だが、そんな魔獣達の逃走はしかし認められる事は無く。散った魔獣達のそれぞれには、阻み、あるいは追撃の手が伸びて襲った。

 

 まず同一方向へ逃げた、二体の魔獣。

 その逃走方向に、しかし轟音を轟かせて現れた飛行物体――H-14Sが立ちはだかった。

 低空飛行で飛来したH-14Sが続け見せ、唸らせたのは。そのスタブウィングに装備する、1門の25mm機関砲による砲撃投射だ。

 生き物に向けられるには残酷過ぎる凶悪なそれ。

 正面頭上より襲い来た25mm機関砲弾の砲火は、二体の魔獣達のその屈強な巨体を。しかし菓子細工を崩すよりも容易いまでに。大穴を無数に開け、千切り弾き、細切れの肉片へと変えた。

 流石の魔獣達も、機関砲の砲火の前にはひとたまりも無かった。

 

 また別方、違う方向に逃走し掛ける一体の魔獣の姿。

 しかし直後――その魔獣の体が、爆発爆炎に包まれた。

 爆発地点より微かに伸びる薄い煙の線を辿れば、その向こうには配置し構える多用途隊隊員のチームがあった。

 その内の一名が肩に構えるは、砲の形態をしながらも、その類にしては少し小ぶりに見える1門の火器。

 ――61式68㎜無反動砲と呼ばれる、携行型の対装甲火器がその正体だ。

 先の67式7.62mm小銃と同じく、多用途隊が主としてのユーザーである装備。

 年式が示す通り大分古い火器装備であり、後継採用に伴い順次退役しつつはあるが。やはり貧乏性逞しい日本国隊では、未だ一部現役で使用されるものであった。

 その61式68㎜無反動砲のよる砲撃投射を、諸にその巨体に喰らった一体の魔獣は。その背を盛大に抉られ、そして体を焼かれ。事絶えて地面に沈む末路を迎えた。

 

 

「……な、なに……なにが……?」

 

 商議会の議員、ヘクムは一帯の一点で茫然とへたり込んでいた。

 切り札である、邪魔者を全て屠り退ける事を可能とするはずの魔獣達が。しかし投げ飛ばされて来て、事絶えたかと思えば。

 果ては、正体不明の者等の。異質で脅威的な何かの力によって、紙切れの如く千切れ飛んでいく有様を見せつけられたのだ。

 己を護らせていた、抱き込んだ警備兵や子飼いの用心棒達も。ほとんどは討たれ、残るは戦意を喪失してヘクムを放り見捨て、散り散りに逃げ去った。

 

「こ、こんなことが……」

 

 こんな事があっていいのか。ヘクムは未だ状況を信じられず、いや信じたくなく、パクパクと動かく口から動揺の声を漏らしている。

 

「――ヘクム氏ですね?」

 

 そんなヘクムの目の前に、唐突に影が差し。そして降ろされ掛かる声が在った。

 ヘクムの頭上目の前にあったのは、臙脂と濃灰色の歪な斑模様の服装に身を包む、得体の知れない男。

 明かせば。その正体は展開した多用途隊の一個隊を預かる、多用途隊尉だ。

 

「ぅぁ……な、何者なのだ……貴様等は……?こんな……」

 

 その多用途隊尉官を目の前に、ヘクムは恐怖狼狽の色を見せながらも。尉官の質問には答えずに、そんな詰問の言葉を上げて返す。

 

「っぽいな――確保しろ」

 

 しかし、否定の言葉が無かった事で、問いかけへの肯定と判断した尉官は。彼もまたヘクムの詰問には取り合わず、別方に向けてそんな一言を飛ばす。

 

「な、何を言って……――もほぉっ!?」

 

 それに不穏な気配を感じ、声を荒げかけたヘクム。

 しかし直後、ヘクムの視界は暗闇に包まれ。漏れるその声はくぐもった物へと変わった。

 見れば、ヘクムの背後にはまた別の多用途隊隊員の姿が在り。そして隊員の手によって被せられた土嚢袋に、ヘクムの頭は包まれていた。

 

「なひを……やへろ……!?」

 

 必死に抵抗の様子を見せるヘクムだが、それも虚しくヘクムは腕を後ろ手に拘束され、その動きを奪われてしまう。

 

「やめほっ!わ、わひ(儂)が手を回へば、貴様等など……――ひっ!?」

 

 なおも藻掻き身体をくねらせながら、己を拘束する目の前の存在に。忠告、警告、脅しの物と思しき喚き声を上げるヘクム。

 しかし直後。そんなヘクムの後ろ首にチクリと痛みが走り、ヘクムはビクリと震え悲鳴を上げた。

見れば、隊員の手により拳銃状の注射器材が、ヘクムの後ろ首に刺されている。それは鎮静剤を装薬したものだ。

 鎮静剤を体内に注入されたヘクムは、その藻掻く動きをみるみる緩慢にし。やがてを気を失い、地面に崩れ沈んだ。

 

「――あんたの〝手管〟は、とうに潰れて消えてるよ」

 

 そんな気を失い沈んだヘクムの体に向けて。尉官は冷め白けた様な眼を降ろし、静かな現実を突きつける言葉を零し向けた。

 

「完了です」

「おぉし、放り込んで置いてくれ」

 

 鎮静剤の投与に当たった隊員からの、効果確認の報を受け。尉官はそれに続けての指示で答え反す。

 

「また、一作戦完了だな――拘束成功の報告を上げといてくれ」

 

 さらに続け、別の同伴していた隊員にまた別途頼む言葉を告げる尉官。

 

 

 これこそ、商議会議員のヘクムの確保拘束こそ。今回作戦を展開した多用途隊の目的であった。

 

 人類連合を離れ、魔王軍に寝返り着く事を企み、その手立てを進める商議会。

 その関係主要人物を確保拘束し。情報を一つでも多く得ると同時に、その計画を阻害し潰して行く。

 これが現在、日本国隊が展開しているプランの一つであり。その上での作戦行動を、現在主として担っているのが多用途隊なのであった。

 

 その上での一環である今作戦も、荒々しくも成功。そして全体としても、その進捗は着々と進み。

商議会の密かな企て、蓄え忍ばせた武力に影響力。その全ては多用途隊の手により一つ一つ潰し消され、崩壊の道を辿りつつあった――

 

 

 

 屠られた三体の魔獣達とは、また反対の別方向に逃走する。残る一体の魔獣の姿が在る。

 目を血走らせ、その獰猛な口からしかし苦し気な吐息を漏らし。それまでの狩る側であったはずの立場から一転、必死の逃走を見せている。

 だが。その魔獣の身を、無慈悲な追い打ちの手が捕まえた。

 魔獣の後ろ首に、むんずと掴まれる感触が走ったのは瞬間。ビクリと魔獣が身を震わせたのも一瞬、次には魔獣の巨体は宙に浮き、その脚はあわあわと空回りを始めた。

 

 魔獣の背後に、魔獣のその巨体を捕まえた主の姿はあった。

 身長こそ2m半ばに届く程度で、3m近くある魔獣には引けを取るが。それでもそれは巨大なものであり、そしてその手足体の強靭さは魔獣に引けを取らないか、いや要所にあっては上回っている。

 そんな唐突に現れた〝存在〟は。翳し上げたその片方の腕だけで、魔獣の首根っこを掴み捕まえてぶら下げている。

 背後からそんな正体不明の存在に捕まえ宙釣りになりながら、アワアワと必死の藻掻く動きを見せている魔獣。

 しかし――ゴキリと。

 鈍く嫌な音が、魔獣の首元より響き聞こえた。

 同時に『ギュゥッ』という掠れた、〝絞められた〟ものである鳴き声が。魔獣のその獰猛な口より、しかし掠れた子細い色で漏れた。

 見れば魔獣のその首は。それを捕まえている存在のその片手の指先によって、しかし器用に捻り圧され、〝圧し折られて〟いた。

 魔獣の首、そして頭部は。あってはならない曲がり方、傾き方を見せ。魔獣の眼はぐりんと白目を剥き、舌を垂れ零している。

 すでに絶命しているのは、明らかであった。

 息絶えた魔獣の巨体を、首を。その存在は捕まえている手の指先を開いて、開放。

 魔獣の体はドサリと地面に落ちて崩れ沈む。

 

「――すまないが。君たちのような危険な存在を、野放しにはできない」

 

 そしてその存在は、独特の重低音をその口より発し。詫びる一言と合わせて、そんな台詞をその重低音に反した静かで丁寧な様子で、魔獣の亡骸に向けて降ろし紡いで見せた。

 

 その、身長2m後半に届く程の。異質な正体不明の存在。

 その身長体躯に、厳つく恐怖すら煽る顔立ち。そして不気味な肌色は、この世界の亜人種、トロル等の類かと思わせる程。

 しかし。反して、纏う服装は他の多用途隊員と同じ、臙脂色と濃灰色で迷彩を描く戦闘作業服。

そして何より――その厳つい顔立ちには、微かなある面影が見える。

 

 それは――大和民族。日本人のそれであった――

 

 

 トゥレート ジャーパ(Threat Jp)――脅威の日本人。

 そんな呼称で呼ばれる存在が。元の世界、日本には在った。

 

 太平洋戦争中、日本軍時代に行われた大規模な強化人間計画――一種のミュータント実験により生まれたミュータント。

 トゥレート ジャーパとはその彼等彼女等が。戦争後期の対米戦への投入を始まりに、太平洋戦争後の対露紛争などの幾度もの戦いの中で、自然と呼ばれ始めた通称。

 戦後、その実態が明らかとなり実験は完全に封殺されたが。

 彼等彼女等自身に咎は無く、そして彼等彼女等にも大切な存在は有り。そこからその遺伝子は日本民族の一部として、多くは無いながらも細々と脈々と続き、その存在は現在に至った。

 

 そんな誕生経緯の、その血の流れを持つ。

 それがその存在の、その者の正体であった。

 

 

 そして戦闘作業服姿が示すように、その身分は多用途隊隊員。袖の階級章が、多用途三曹の階級である事を示している。

 そしてその肩より下がるは、巨大な得物――対戦車ライフル。

 正式名称は、66式17.5mm対装甲射撃銃と言う。

 また多用途隊の独自装備である、そして本来は据え置いて二名体制で運用するそれを。しかし小銃のように掛けている。

 

「――復付(ふくつ)

 

 そんなその者を。日本人である事を証明するように、その名字名前で呼ぶ声が、端より掛かる。

 その復付が視線を動かし見れば。その向こうより、悠々と優雅なまでに堂々と歩いてくる者。他ならぬ、侵須の姿が見えた。

 

「ハデに暴れたようだな」

 

 そんな侵須を見止め、開口一番。復須は、侵須の戦いっぷりを評するそんな皮肉と冗談交じりの一言を、静かに淡々と述べる。

 

「あぁ」

 

 それに侵須はと言えば。誇るでも謙遜するでもなく、ただ端的に静かに、かわらぬ淡々とした顔で、そんな一言だけを返した。

 二人は、作戦を一緒にする間柄となって少なくない関係であった。

 そんな相対し、少なく言葉を交わした二人の元へ。頭上よりバタバタと激しい轟が聞こえ届く。

 見上げれば、すぐそばの上空には低空飛行で進入して来たKV-107の巨体が在り。そしてKV-107はゆったりとした動作で二名の近くの地上へ着陸した。

 

「――信康くん!復付さん!」

 

 そして、停止はせずに回転するローターの号音に混じり。微かに二人を呼ぶ、張り上げられた声が届く。

 視線を辿り見れば、KV-107の右側面機種側のキャビンドアから。一人の女隊員が飛び降り、そして駆けて来る姿が見えた。

 

「亞帰」

 

 駆け寄って来たのは、やはり多用途隊仕様の迷彩服を纏う女隊員。

長く美麗な髪に、凛々しい顔立ちながらも不思議とホワっとした印象が特徴的。襟には三等多用途尉の階級が見える。

 彼女こそ。先に侵須に無線通信を寄こした、オペレーターの女隊員であった。

 下の名前が亞帰で、名字は未尾(みお)と言う。

 

「もぉ、また無茶して。心臓に悪いよ……ッ」

 

 名を呼び返した侵須の前に立ち、未尾はそんな呆れと困った様子の混じった様子の言葉を寄こす。それは、今先に魔獣を相手に大立ち回りを演じて見せた、侵須の行動に向けてのものだ。

 

「必要と見た」

 

 しかし一方の侵須はどこ吹く風と、淡々とそんな零すような一言だけを返す。

 

「またお疲れさんだな、三尉」

 

 続け、復付は未尾に向けてそんな挨拶の言葉を端的に飛ばす。

 

「復付さぁん……他人事みたいに……」

 

 静かに、しかし少し揶揄うように飛ばされた復付の言葉に。未尾はまた困ったように返す。

 作戦、荒事に置いて。今回のような超常極まるまでのムーヴを侵須が見せる事は、今に始まった事では無かった。

 付け加えていれば。三者が作戦を一緒にするようになったのは転移の少し前で、それから少し経つのだが。

 侵須の気質を主とする所を始め、諸々有り。階級に関わる所、もちろん良しとはされないが、流れから二の次になっている所が在った。

 

「で、次は?」

 

 少し遠くの向こうに、馬車列の後方より。展開した各隊の元に追いついてきた、待機戦力の76式装甲戦闘車の姿を見つつ。

 それから復付は、未尾に向けてそんな尋ねる旨の一言を紡ぐ。

 

「また別の要人の移動を、すでに掴んでる。別隊が当たるから私等は再編成から予備待機だと思うけど、心構えはしておいて」

 

 それに未尾は、続く以降の行動、作戦予定を説明して告げる。

 

「いいだろう」

 

 それを了承し、端的に返し告げる侵須。

 直後。その真上を、轟音を響かせてH-14Sの小柄な機体が飛び抜けた。

 

 この小さな国で渦巻く謀略。

 それを引っくり返すべく。多用途隊、日本国隊の作戦は続く――




「作者の頭はどどどどーなってんの?」なボンバーその3。

Q 超人とかミュータントなんて出てきてもうムチャクチャでは?
A 「なんでもありなファンタジーにぶつかって潰し押し通すには、こっち(日本とか現実世界)側もそれなりの武が必要にもす。そんなら科学っぽい強化存在や、超常的な個人を出してぶつけもす!名案にごつ!」とか安直に考えた結果の有様にごつ。
「おいは(後先考えず好き放題書いてて)楽しか!後に引けんごっ!」
勢いと雰囲気を楽しんで欲しいにごつよ。
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